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sun

優勝賞品



 「ん…ここは?」


 私の意識が覚醒し、目を開けてみると天井が見えた。
 闘技場には天井がなかったのでここはどこだろうかと辺りを見渡すと、ここは選手控室であることがわかった。
 どうやら私は選手控室にある仮眠室にて運ばれて眠っていたらしい。


 (そっか…私、アイリスさんとの戦いの後、気を失ってたんだ。)


 私は、ここから出ようとしてベッドから起き上がろうとしたが、獣化を使った後の反動に来る倦怠感に苛まれ再びベッドへと倒れ込んだ。


 「うっ…忘れてた…」
 「あ、マチ!起きたんだ…って大丈夫?」


 身体を動かすのがつらいので声の聞こえるほうへ首だけ動かして視線を向けてみると、出入り口の方から顔を出したレイがこちらに駆け寄ってきた。

 「身体に異常はない?」
 「う」
 「う?」
 「動くのが怠いの…」
 「…なんだ、心配して損したじゃない。みんな外で待ってるわよ、早く起きてヒロキたちと合流しようよ」
 「ち、違うのレイ。気持ちの方じゃなくて……」


 はぁ~…なんだ、そんなことか——とため息をついて、早く起き上がるように急かすレイにスキルによる反動だということを説明した。


 「だから今は24時間のステータス9割減と倦怠感、24時間のスキル一切使用不可。獣人化の方は24時間のステータス半減があるの」
 「なるほどね。そりゃ、あれだけ強力なスキルを使ったらそれ相応のリスクがあるわよね。あれでリスクがなかったらおかしいわよ」


 だとしても、リスクがあってもあれは強すぎよ!チートよチート!と叫ぶリンに私は「あはは」と苦笑いを浮かべる。


 「それにしても、あんなスキルどこで見つけたのよ」
 「それは…」


 私は、別に隠すことでもないだろうし話しても問題はないだろうと思い、ゲームを開始してすぐに不思議な空間に飛ばされ、そこで巨大な白竜に出会った出来事を話した。
 そこで出会った白竜と色々な会話をし、帰り際にアクセサリーを貰い、気づいたらスキルを使えるようになっていたと伝えた。

 
 「そんな不思議な空間やそこに閉じ込められているドラゴンの話なんて聞いたことがないわね……。」
 「私も初めてあそこに飛ばされたときは驚いたよ」
 「驚かないほうが無理よ」
 「あはは、だよね」
 「決勝トーナメントでもあのスキルを使ってたのに反動が来なかったのはなんでなの?」
 「獣化の他に獣人化ってのがあって、それだと能力が本来の半分になるけど反動なしで使えるの」
 「半減であの強さなら十分じゃない」
 「獣化できるようになったのは最近だけどね」


 ◇


  私はレイに肩を貸してもらいながら、ヒロキたちが待っている闘技場の外まで


 「お、マチ起きたのか」
 「マチさんもう身体は大丈夫なの?」
 「身体は怠いけど大丈夫だよ」
 「それは大丈夫なの?」
 「多分…?」
 「多分って…おい適当かよ」


 そう言って、やれやれとため息とヒロキとそれを見て笑うレイやリンさん。
 シュンは特に何も口にはしなかったが、私が大丈夫だと言ったときにほっとするような顔をしていたので心配してくれていたみたい。


 「とりあえず優勝おめでとうだな、マチ!」
 「おめでとうございます!」
 「おめでとう」
 「本当すごいよ!」
 「みんなありがとう!」


 (そっか、私、あのアイリスさんに勝って優勝できたんだ…)


 レイ達から「おめでとう」と言われたことで、アイリスさんに勝利して優勝したことを実感し、嬉しさが込み上げてきた。


 「あ、そういえばアイリスさんがあの後どうしたのか誰か知らない?」


 確か、アイリスさんも一緒に気絶していたので私と同じ控室にあるベッドに運ばれてると思ったんだけど、起きた時にはアイリスさんの姿は見えなかった。


 「[氷の魔女]のこと?彼女ならマチが起きる2時間くらい前に目を覚ましてどっか行ったわよ」
 「え、私どのくらい寝てたの?」
 「4時間くらいじゃない?」
 「うぇ!そんなに寝てたの!?…みんなごめんね」
 「大丈夫よマチさん、気にしてないから」
 「そうだぜマチ」
 「うぅ、ありがとう」

 「ところでマチさん」
 「ん?どうしたのレイさん」
 「今イベント大会の優勝賞品ってなんだったの?」
 「そう、それ!俺も聞きたかったんだよ!」


 レイさんがもじもじしながら言いにくそうにそう聞いてきた。
 ははぁ~ん、なるほど。 
 「ど、どうしたのよマチさん」


 私がニヤリとレイさんに視線を向けてみると、何かを察したのかレイさんは挙動不審になりながらも聞いてきた。


 「優勝賞品の内容が知りたくて4時間も待ってたんでしょ?」
 「うぅ~、ばれた!でも、心配してたのは本当だからね!」


 自分から切り出すのは言いにくいけど、どうしても聞きたかったのね。
 ヒロキは最初っから聞く気満々だったみたいだけどね。

 
 「あ、これかな」

 
 何か通知が来てないかと調べてみると、運営からのメールが2通届いていた。


 ━━━━━━━第一回公式イベント バトルコロシアム《結果》━━━━━━━━━━


第一回公式イベント バトルコロシアムの結果出ましたのでここに1位から3位までの結果を発表致します。


第一位  優勝:マチ   ユニークスキル(【《八咫烏》】):非公開

第2位 準優勝:アイリス スキル(生命)非公開、アイテム1つ(選択)

第3位     ガルド  アイテム1つ(選択)


一位から3位までに残ることが出来なかった皆様は、是非次のイベントで頑張ってください


          from あなたの運営★より


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 後で、話を聞いてみたところ、私が気絶している間に三位決定戦が行われていたらしく、辛くもガルドさんが勝利したとのことだった。
 そして、もう一方のメールを開けてみると白透明色の玉が一つ入っていた。



 ・ユニークスキル 八咫烏:太陽の光を屈折させ自分の姿の蜃気楼を作り出す。ただし、日光がないところでは発動させることが出来ない。太陽の光じゃないと発動できない。

       ・ スキル玉    使うとスキルを入手することが出来る白透明色の玉

 「ユニークスキル【《八咫烏》】だって」
 「ユニークスキル!?」
 「どんな効果なの?」
 「えっとね、昼限定の太陽光があるところじゃないと使えないんだけど、蜃気楼を作り出す能力だって」
 「まぁ、いいバランス調整ね」
 「でも、これ以上強くさせたらダメだろ運営…」
 「これ、昼にマチを倒せるプレイヤーはいるのか?」
 「昼じゃなくても勝てないわよ」
 「だよな」
 「何よ、二人とも。人を化け物みたいに!」
 「「割と違わないでしょ(だろ)」」
 「ひどい!!」






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