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スキルの反動



 
 「あ~、もう何だったのよあのモンスター!全然話かみ合わなかったし…。私は神狼じゃないし、ちゃんとマチっていう名前があるし!……ってモンスター相手に文句言っても意味ないよね。」


 フェンハイルにある教会で復活した私は重い身体を引きずって、宿屋まで歩いて行った。途中、すれ違うプレイヤーに具合悪そうに歩く私を見て訝しげな目で見てきたが気にしない。
 宿に着いた私はドサッっとベッドに倒れこんで、ここにはいないモンスターに対して愚痴を溢した。ヨルムンロートの探索やレベルを上げを行おうにも、スキルの反動があるおかげで24時間経つまで何もすることが出来ない。スキル使用不可だけならレベル上げは出来たかも知れないけど、全能力値が一割まで低下しているので、それすらも出来ない。


 (あれ?そういえば、私って死んでデスペナルティになったんだよね。デスペナルティに加えてスキルの反動の効果もあるけどどうなんだろう…)


 デスペナルティとスキルの反動があるけど重複されるのかなと思いステータスを開いて確認してみると、[状態]のところに〚全能力値低下:90パーセント 効果時間24時間、スキル使用不可 効果時間24時間、デスペナルティ 全能力値低下:50パーセント 効果時間24時間〛と書いてあった。


 「ん~、値はスキルの反動だけだよね」


 スキルの反動とデスペナルティの効果が重複されて、140パーセントとかになるのかなとか思ったけど、そんなことはなかったようだ。ステータスの値を見てみてもマイナスとかにはなってなかった。


「デスペナにはなったけど、スキルの反動の方が強すぎて全く機能してないねこれ…」


 一応デスペナルティとしての効果は反映されているようだが、スキルの反動の効果の方が強すぎて上書きされたようになっている。


 (そういえば、デスペナより重い反動があるこのスキルを良くゲットできたよね…)


 このスキルを入手できたのも、このゲームを始めて最初の街に転送される際に偶々不思議な空間に迷い込んだからなんだよね…。そこで、巨大な白竜―――今はシグファルドと呼んでいる―――に出会って、別れ際にペンダントを貰った。そして、いつの間にか【《神獣降臨》】のスキルがあった。
 もし、あの時、あの空間に迷い込んでいなかったらシグファルドに出会えず、スキルにも目覚めていなかった。闘技場大会でも、予選は突破できたとしても決勝トーナメントでは勝ち進むことが出来なかったと思う。

 思い出に浸っていると突然通知音が鳴りビクッとなった。
 何だろうとメニュー画面を開くと、メールの所に一件の未読メッセージがあった。誰からのメールかなと思いメッセージを見ると、レイ達からだった。


 「お、レイ達倒したんだね」


 メールの内容は、メタルジュエルワームを討伐できたという主旨のメールだった。それと、ボスに挑む前に買っていったポーションのことについてのお礼も書いてあった。ボス戦でまたシュンがやらかして死にそうになったけど、ポーションを使って立て直せたらしい。あの回転攻撃も距離を取ってみんなで集まることで対処したらしい。
 回転攻撃後にはジュエルは全て飛ばしきった後だから、大ダメージを与えることが出来たみたい。リンの火魔法でメッキをはがしつつ、剥き出しになった皮膚にレイの弓でじわじわ攻撃して倒したらしい


 「レイ達も頑張ってるから私もがんばろう」


 デスペナルティにはなったけど、目的の薬草は採取出来ているので後はポーションを作るだけ。私はインベントリから道具を取り出して、ポーション作りを始めた。





 ◇





 ここはある洞窟の中。
 そこで、一体の邪悪なオーラを纏った獣が横になって寝ていた。だが、寝心地が悪そうに何度も寝返りを打っていた。


 「……ググググググ。やはりおかしい」


 しばらく横になっていたが、我慢出来なくなったその獣は目を開けて起き上がる。


 「何故だ!どうして倒したはずのあやつ、神狼の気配が消えておらぬ…」


 確かに【《邪風咆哮》】によって、神狼は跡形もなく消し飛ばしたはずだ。だが、消し飛ばしたはずの神狼の気配が完全に消えてはいない。神狼の他にも、残りの封印されている6体の気配も正確な場所はわからないが感知できている。そして、今は元の場所に戻っているが何故か神狼の気配だけはいきなり瞬間移動したかのように動いていた。


 「グググググ……。どうやってあの攻撃から逃げ出したのかは知らないが……面白い。それでこそ我のライバルよなぁ!神狼の!」


 さっきまでの雰囲気から一片させて、遊び相手を見つけたかのように口の形をぐにゃりと曲げ、おぞましい笑みを浮かべた邪悪なオーラを纏った獣は再び神狼を探し求め、洞窟を飛び出していった。




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