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sun

巨大な石像


 「お買い上げありがとうございました」


 ポーションの最後の一つを買っていったプレイヤーを見送った私は、「ふぅ」と息を吐いて被っていたフードを外した。
 一回目にポーションを販売した時に比べて、今回はかなり早い段階で全て売り切れた。一回目の時に来てくれたプレイヤーが殆どで、その中に初めて買うプレイヤーがちょくちょく混ざっていた。どうして一回目に来てくれたプレイヤーがいるのか分かったのかは、ポーションを買っていく際に使った感想を言ってくれたからだ。感想を言ってくれなかったプレイヤーもいるが、ほとんどのプレイヤーは言ってくれたため一回目に買ってくれたプレイヤーなんだなと分かった。
 買いに来てくれたプレイヤーの中には、ポーションを買い占めようとしたり、横入りするプレイヤーがいたけど、そういうプレイヤーにはお断りしてもらった。しつこく迫ってくるものもいたが、ちゃんと並んで規定分買おうとしてくれているプレイヤーに袋叩きにされて退出していった。
 昼過ぎにはポーションがすべて売り切れ、余っている薬草もないため、暇になった私は新しいエリアの探索を進めることにした。


 「レイ達がこの辺にいるはずなんだけど、どこにいるんだろう」


 転送装置を使ってヨルムンロートにやってきた私が、フィールド探索に出かけようとした時、誰かからメールが飛んできた。自分からは全くメールを使わないため、全く頭から抜けていたマチは「こんな機能もあったなぁ」と思いながらメールを開いて中身を確認した。私がフレンドに登録している人は少ないし、連絡を取り合ったことがあるのは、レイ達やミーシャくらいだ。今はミーシャに装備は何も頼んでいないので、考えられるのはレイ達だけ。
 開いて見ると、メールの差出人は案の定レイからだった。内容は、ボス攻略が進まなくて何もできないから、暇なら私たちと一緒に遊ばない?というものだった。


 「どういうこと?」


 ボス攻略ができないというのならわかるが、ボス攻略が進まないと言われていまいちピンとこない私は、メールの文章を見て首を傾げた。


 「一先ず、レイ達と合流しないとね」


 メールの文章だけ見てもよくわからなかった私は、「遊べるよ。待ち合わせ場所はどこにする?」とレイに返信しておいた。すぐにレイから返信があり、「でっかい石造の前でよろしく!」とあった。でっかい石像と言うのは、この前渡し舟のおじさんが口にしていたこの街ーヨルムンロートの街ーで祀っている神獣の石像のことだろう。


 (ん、待って。確か渡し舟のおじさんが神獣の形を模した石像が街の中心にあるって言ってたような…。)


 前には転移装置があるだけなので、もしやと思い後ろを振り返ってみると、巨大な蛇みたいな形をした石像があった。


 「もう既に着いてたのね」


 こんな巨大な石像があったのにどうして気づかなかったんだろうと思いながら、目の前にそびえたつ石像を観察した。


 「よくこんなリアルに作れるなぁ」


 巨大な石像を作るだけでも一苦労なはずなのに、鱗や毛などの細かいところまでかなり良くできる。それに、このサイズの巨石を人間が運べるのか不思議に思う。それゆえに、この石像を中心にしてこの街が作られたかのようにすら考えてしまう。


 「実は、生きたまま石になってたり……なんてね」









 レイ達が来るまでの間、何で潰そうかなと考えていたが数分も経たないうちにレイ達はやってきた。


 「あれ、早いねマチ。私たちが最初だと思ったのに」
 「転移装置前にいてね。たまたまその近くに巨像があっただけだよ」
 「なるほどね」
 「マチ、ポーション助かったぜ!お陰でメタルジュエルワームを倒せた」
 「えへへ、どういたしまして。でも、勝てたのはヒロキ達の実力だよ」
 「俺も頑張ったんだぜ!」
 「シュンはまた死にそうになってたくせに」
 「う、うるせぇ!」
 「あははは」


 「それにしてもマチがポーションを作れると聞いたときはびっくりしたわ」
 「マチから作り方を聞いて俺たちも作ってみようかと思ったんだけど、いざ作るかってなった時に道具が何もないことに気づいて何もできなかったわ」
 「そうそう」
 「あ~、確かに」


 掲示板に作り方を乗せたけど、肝心の道具がポーションが作れないんじゃ詐欺だ詐欺とか言われてそう…。


 「ポーションを作る道具を探して色々見てまわったんだが、どこにも売ってないんだけど、どこで売ってるかわかるか?」
 「ごめん、私も分からないの。あの道具は貰ったものだから一つしかないの」
 「なるほどなぁ。それならどこにもないわけだ」


 ただでさえポーションを作るのは難しいのに、道具がないんならどうしようもない。店売りも数が少ないし、ポーションを作れるプレイヤーが私一人だけだと絶対に供給が追い付かないよね。


 「後で私の師匠に相談してみるね」
 「それは助かるな」

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