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sun

クチナワ湖


「そういえば、レイ聞きたいことがあるんだけど」
「ん、どうしたの?」
「あの手紙の件なんだけど、あれどういう意味?内容だけみてもピンとこなかったんだけど」
「確かにあれじゃあ伝わりにくいか」

「実はな、第四つ目の街へ行くためにはボスを攻略しないといけないだろ?だけど、その肝心のボスを見つけることが出来ないらしい。どこかのエリアにボスは必ず一体いるはずなんだけど、見当たらないんだ」


 ヒロキの言う通り、次の街へ行くためにはボスを倒す必要がある。次の街へ行くためには、ボスを倒してその奥へと続く道へと続く道を通らなくてはならないので、ボスを倒さないという選択肢はない。住民たちは私たちとは違い、ボスを倒す必要がないので別の道から各街へと移動している。だが、私たちがその道を使おうとすると、見えない壁に阻まれて通ることが出来ない。
 商人が使う荷馬車にのって強行突破を図ろうとしたプレイヤーもいたが、その際も荷馬車は何事もなく普通に通過出来たが、プレイヤーだけが押し出されて荷台から転げ落ちていたのを見たことがある。


 「まぁ、一つ心当たりがないというわけじゃないんだけどな」


 ヒロキが少し自信ありげにそう口にするので、私はどこだろうと思案した。確かメールの内容には、ボス攻略が進まなくて暇だから、遊びに・・・行こうだったはずだ。


 「あ、その心当たりがあるって場所は、もしかして」
 「えぇ、今から行く場所よ」







 「ここだ」
 「ここは?」


 ヒロキ達に付いて行った先には、広大な湖が広がっていた。


 「ここはクチナワ湖よ」
 「大きいね」


 目の前に広がっている湖の先には、木がとおせんぼうするかのように並んでいるので、その先に進むことは出来なさそうだ。小舟などがあれば湖を渡ることは出来そうだが、その先に進めないんじゃあ意味がなさそう。


 「こんなところに手掛かりがあるの?」


 目の前に広がっている湖と、それを囲っている森林ぐらいで、これといって何もないように思える。そんな私の疑問に答えるようにヒロキが口を開いた。


 「ここの湖にはボスモンスターよりは強くないが、雑魚モンスターより強い主モンスターがいるんだ。そいつが何か手掛かりになっているんじゃないかって俺は思ってる」


 確かに、そんな主モンスター的な存在がこの湖に存在しているなら、何か手掛かりがありそうだ。


 「ボスより強くないんならヒロキ達だけでも倒せるんじゃない?」
 「強さだけならそうだけど、奴は水の中にいるから中々手が出せないんだ」
 「確かにそうだね」


 水の中にいるのなら手が出せないんじゃないのかとヒロキを見てみると、指を動かして何かシステムを操作しているようだった。しばらくして、ヒロキが取り出したのは一本の釣り竿だった。それもかなり巨大な。


 「つ、釣り竿…?もしかして、その釣り竿で…?」
 「俺が主モンスターを釣り上げる!」

 「…ところでヒロキ」


 私が唖然としているとレイが横からヒロキに話しかけた。


 「おう、どうしたレイ」
 「主モンスターを釣り上げるのは、悪くない考えだとは思うけど…」
 「おう」
 「あんた、エサは用意してるの?」
 「……」
 「っぷ…アハハハハハ!何が”俺が主モンスターを釣り上げる!”だ。餌も用意してないでどうやって釣り上げるんだよ!」


 シュンが私たちのやり取りをみて我慢しきれなかったのか、ヒロキの物まねをしながら笑い出した。
 シュンの笑いっぷりにちょっと引きながらも少しおかしかったので笑っていると、横から殺気が感じられ、私は思わずヒュっと息をのんだ。





 「ちょ、まっ、俺が悪かったって!タンマタンマ!」
 「うるせえ!黙って手前は餌にでもなってろ!」
 「わ~、ちょ、やめっ、降ろしてくれええええええ!」
 「仕方ないなぁ、降ろしてやるよ」
 「おいっ、バカ!湖に降ろそうとするな!」

 「これはシュンの自業自得ね」


 笑い転げるシュンの背後から、悪い笑みを浮かべたヒロキが近づいてきて、エサの付いていない釣り竿の糸をぐるぐるとシュンに巻き付けて固定した。身動きの取れなくなったシュンは、ヒロキが操る釣り竿にいいようにされていた。
 遠くからヒロキとシュンのバカなやりとりを眺めていたリンが、いつも通りだと言いながらため息を吐く。私も、ヒロキとシュンのやり取りを楽しそうに眺めていると、ふと、水面が波打っているのを見つけた。


 「あ、水面が!」
 「え」


 私の声に反応してみんなが湖の水面に注目した瞬間、水面が激しく揺れ動き、水中からぶら下がっているシュン目掛けて何かが大きな口を飛び出してきた。


 「ちょ、まじ?この光景デジャb」
 「シュンんんん!」


 水中から飛び出してきた何かに、シュンが何かを言いかけて食われた。その光景を見たリンとレイは悲鳴を上げる。


 「よっしゃ!掛かったぜ!」

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