LIBERTY WORLD ONLINE
vs蟒蛇 再戦1
「うん、いい名前だよ。ありがとうマチ」
「気に入ってもらえてよかった」
少し不安だったが、ニルガルドと言う名前を気に入ってもらえたようでホッと胸をなでおろした。
「よし、名前を貰ったから僕からもマチにプレゼントしよう。…その、左腕を見せてもらっていいかい?」
ニルガルドにそう言われて自分の左腕を見せる。
ニルガルドは指先に光を集め、その光を私の腕についているアクセサリーにかざした。特に変化とかは起きなかったが、少しだけ腕にかかる重みが増したような気がした。
「終わったからもういいよ」
「えっと…何をしたの?」
「それは……そろそろ限界のようだね。早く戻らないと君の身体が死んでしまうからね」
「ま、待って!もう少し話を」
「それじゃあねマチ」
背景が歪み、視界が霞む中で、ニルガルドは「一つ言い忘れてた」と言い残し私の意識は反転した。
「巨人は結構気難しい性格だけど悪い奴じゃないから仲良くしてあげてね。あと、戻ったら僕の力が使えるはずだから頑張ってね」
意識が覚醒し、ここはどこだろうと思うよりも早く息苦しさを感じここは水の中だということを思い出す。HPを見れば、残りが10もない。このままだとまたすぐに気を失ってHPが全損してしまう。
ニルガルドが去り際に言い残したことが反芻する。「戻ったら僕の能力が使えるから頑張ってね」と塗るガルドは言っていた。私が陥っている状況を知っていた彼が言い残したことを信じ、貰った能力を発動させた。
「【《神獣降臨》】!」
獣化はせず獣人化で止める。足が変化して一本となり鱗が生える。驚きはあるが、混乱はなかった。
HPを見れば、減少していっていた数値はピタリと止まっていた。まずは、肺に溜まってしまった水を吐き出した。水の中なので水が出たのか確認は出来ないが、出ていった感覚はあった。そして、水の中なので飲みづらいが、持ってきていたポーションを呷りHPを回復させる。
「蟒蛇はどこに?」
HPが殆ど全快になった私は、辺りを見渡して蟒蛇の姿を探したがどこにもいる気配がいなかった。
と、なると地上かと思った矢先、上の方で爆発する音が聞こえた。
「レイ達が戦ってる!」
一度追い詰めたが水の中へ逃亡した際、蟒蛇の傷がどんどん塞がり、回復していく様子があった。どのくらい意識を失っていたのかはわからないけど、蟒蛇が全快に近い状態まで戻っていると予想した私は、一本の長い足で湖底を思いっきり蹴り上げて地上へと急いだ。
◇
「ぐぅ…」
バシィンッ!っと重量のある音を響かせる。
蟒蛇が繰り出してきた尻尾のなぎ払いをシュンが予備の盾で受け止める。最初に使っていた盾は毒で溶かされて修理しないと使えそうにない。遠心力の乗った一撃を止めることに力を使いすぎたのか、更に下から掬い上げられるようにして払われた尻尾に宙へとはじき出された。
ヒロキ達は、マチが引きずりこまれた後どうにかして助け出そうと四苦八苦しているところに再び蟒蛇が現れた。
「大丈夫か、シュン」
「いつつ…ああ大丈夫だ。打撃系の攻撃には強いからな」
そのまま地面に落下したシュンだが、そこまでのダメージを受けた様子はなく立ち上がった。
この程度のダメージならシュンの持つ【HP自動回復】のスキルによって十分回復が間に合う。
「【ファイアーボム】!」
リンのMPが多めに込められた魔法が蟒蛇へと弧を描きながら飛来するが、蟒蛇はそれを、尻尾で湖の水を弾き飛ばして【ファイアーボム】にぶつける。
接触した【ファイアーボム】は蟒蛇と離れたところで爆発し、ダメージを与えることは出来なかった。ならば、とレイが木の上から【ジャイロアロー】で蟒蛇を狙い放つ。死角から放たれた矢は、蟒蛇の目へと直撃し、蟒蛇は苦悶の声を漏らした。
「よし、ナイスだレイ!食らえ【雷鳴斬り】!」
「キシャアア」
怯んだ蟒蛇に向けて更にヒロキが追い打ちをかける。雷を纏ったヒロキの剣が蟒蛇の鱗を切り裂き、その身を焦がした。たまらず距離を取った蟒蛇に、ヒロキ達は警戒の体制を取った。
「毒が来るぞ、気を付けろ!」
ヒロキの言葉通り、蟒蛇は再びこちらを近づかせまいと毒を吐き飛ばしてきた。毒に触れたら溶かされるため防ぐことも出来ずに、ヒロキ達は避けることしかできない。一回目とは違い、リンが火魔法の【ファイアージャベリン】をぶつけて相殺させているが、MPがいつまでもつかわからないのでこのままじゃいつか溶かされてしまう。
「ん?おい、様子がおかしいぞ」
打開策をヒロキが考えていると、シュンの訝しむ声が聞こえてきた。見れば、蟒蛇がお腹を膨らませているのが見えた。一体何をするつもりなのかと怪訝に思った。
蟒蛇はそのまま口を開けて、上に向かって大量の毒を噴射した。
「なっ!?」
ヒロキは唖然として立ち尽くした。今までは、ある程度まとまった液体で飛ばしてきたから逃げ道があり、避けることが出来たが、上から広範囲にわたり降り注ぐ毒雨は躱すことが出来ない。
「……あれ?」
迫りくる毒の前に、ここまでか、と目を閉じて身構えるがいつまでたっても溶かされる気配がない。何が起きているのかと思い、目を開けてみると、ヒロキの前には半球状に広がる水のバリアがあった。リンは水の魔法を覚えていないのでこんなことできるわけがない。一体誰が、と思うヒロキの耳に馴染みのある声が響いた。
「みんな大丈夫?お待たせ!」
声のする方へ振り返ると、湖に引きずられてデスペナルティになってしまったと思っていたマチがいた。
「「マチ!」」
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