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sun

vsグランドシャーク



 「よし、開けるぞ」

 ヒロキが扉に手を当てて力を込める。ギィィっという音を立てながら、ゆっくりと扉が開いてゆく。

 「ここで間違いないようだな」
 「ああ。俺たちが一番乗りだな」

 中へ入ると、広い空間の洞窟のようで、上には鍾乳石のようなものがぶら下がっていた。その奥には先へと続く扉が見える。両側には、割と大きな水溜まりが存在していた。

 「ここのボスは何かしらね」
 「さあな。俺たちが最初なわけだからまだ情報は出回ってないから見てみないとわからないな。…来たか」
 
 両側に存在する水辺のうち、左側で水しぶきが上がる。直後に、大きな影が水面から現れ、ズシンっという音を響かせて洞窟内に着地する。
 
 「鮫?」
 
 水の中から現れたのは、大きな背びれに鋭い歯が並ぶ巨大な口。そして、泳ぐために必要な尾ひれがある。それだけ見れば確かに鮫なのだが、その鮫には四本のワニのような足がついていた。
 じっくりと観察をすれば、その魔物の名前が浮かび上がってくる。

 「グランドシャーク?」
 「なるほど、水陸両用の鮫ってわけね」

 私たちの姿を確認したグランドシャークは、ドシドシと大地を揺らしながら走ってくる。それほどスピードはないが、あの巨大で体当たりをされたらかなりのダメージを負いそうだ。

 「【グラビティシールド】!」

 盾を構えたシュンが、グランドシャークに向かっていく。
 スキルのおかげで当たり負けすることもなく突進の勢いを見事相殺したシュン。
 私も刀を抜いて、左右からヒロキとグランドシャークを斬りつける。

 「ぐっ!」
 「きゃっ!」
  
 私たちを振り払おうとする回転攻撃によって弾き飛ばされる。

 「どいて、シュン!」

 シュンが横にずれると同時に、リンの炎魔法がグランドシャークに直撃する。
 
 「あまり効いていないわね」

 蟒蛇もそうだったが、水場の魔物に火はあまり効いている様子がない。そして、今度は近くにいたシュンに標的を定め突進してくる。
 
 「うおっ!」

 再び受け止めようと盾を構えていたシュンだったが、口を開いたグランドシャークに噛みつかれてしまった。喰われまいと必死に抵抗を見せるシュンだが、鋭い歯によって徐々に体力が減っていくのが見える。
 だが、後方で弓を構えていたレイが【ジャイロアロー】を放つことで、怯んだグランドシャークはシュンを解放した。

 「助かったぜ」
 「あんた、本当によく食べられるわね」
 「俺だって好きで喰われてるわけじゃねえよ!」
 
 危うく食べられそうになっていたシュンを見て呟いたリンに、思わずシュンが突っ込みを入れる。

 「敵が怒ったぞ。何をするかわからないが、気を付けろ!」

 目の色が怒りに染まったグランドシャークは、その身体を高く持ち上げ、全体重を地面に叩きつけた。

 「地震か!?」
 「わっ!」

 洞窟全体が揺れているほどの地震を起こしたグランドシャークは私たちが動けないのをいいことに、水中の中へと身を沈ませた。その次の瞬間、上の方でピシリッという音が聞こえると同時に、洞窟内に存在する鍾乳石がフロア全体に降ってきた。
 鍾乳石が降ってきたことに一瞬驚きはするものの、そこまでの脅威ではなかったため各個破壊する。

 「これが攻撃にしては弱いな。まだ何かある、気を付けろよ」

 地震と降ってきた鍾乳石では、ボスの攻撃としては確かに弱い。
 と、次の瞬間――

 「がはっ!」

 ザパァっ!と水が持ち上がると同時に、すごい速さでシュンへとぶつかった。
 咄嗟に【グラビティシールド】で身体を固定するも、宙に弾き飛ばされる。
 私は、背中を打ち付けたシュンの元へ急いで駆け寄ってポーションを飲ませる。
 
 「シュン大丈夫?」
 「あ、ああ…なんとか生きてるぜ」

 シュンを弾き飛ばしたグランドシャークは、反対側の水の中へと既に潜っている。

 「方向は分かっているが、あれは直撃したら終わりだな」

 あの攻撃は、シュンがタンク職だったから耐えることが出来た。私やレイ、リンがあれを受けたらHPが全損するかもしれない。
 MPを温存している場合じゃなくなったので、私は【《神獣降臨《フェンリル》獣人化》】を発動させる。
 いつ襲い掛かられても避けられるように構える私の背後・・で水のしぶきが上がる。フェンリルの空間把握能力によって察知し、なんとかギリギリで回避する。

 「な、後ろからだと!?」

 危なかった…。
 あと一歩反応が遅れていたら、シュンと同じように空中に弾き飛ばされていた。フェンリルの感知能力とスピードがなかったら死んでいた。

 「くそっ、このまま黙って殺されるわけにはいかねえ!何か手は……これならっ!」
 「ヒロキ、危険よ!」

 何かを思いついたヒロキが、グランドシャークが潜っていった水面に走っていく。近づいていくヒロキに気づいたリンが必死に呼び止める。

 「水の中ならこれが有効だろ!【雷鳴斬り】!」

 リンの呼び止めを無視したヒロキは雷鳴斬りを発動させ、そのまま水の中へと突き刺した。バチバチと音を鳴らし、凄まじい量の電流が水の中を流れる。
 すると、耐え切れなくなったグランドシャークが水面から飛び出し、陸へと打ち揚げられる。

 「いけぇぇぇ!」
 
 【雷鳴斬り】による痺れで動きが遅くなったグランドシャークへ、レイの【《ジャイロアロー×10》】が突き刺さり、リンの火魔法が炸裂する。
 そして、両手を地につけ、衝撃に耐えれるようにして発動させた【《神風咆哮ゴッドブラストハウル》】で、グランドシャークを壁へと叩きつけた。そのままグランドシャークはドサッと地面に落ち、動かなくなった。
 







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