to be Continued ~ここはゲームか異世界か~

秋乃ヒダマリ

7話 『初戦闘』




 翌日、オレは街の外に出てみる事にした。正直、この世界の平均ステータスが分からないから、怖さはあるが。



 ……まぁ、この近くには弱いモンスターしか居ないはずだし大丈夫だろう。

 街の出入りは、北と南に二ヵ所ある壁門を通る必要があるのだが、出るときは身分証を見せる必要はないらしい。飛行機などの検査が出国より入国の方が念入りなのと似ている。



 ――と、いう訳でオレは今、街の外にいる。

 まずは人気のない場所で、スキルの発動方法を確かめていた。
 思った通り、スキルの発動は感覚的に行うらしい。三時間ほど、スキルや武器の練習をしてある程度のコツはつかむことが出来た。
 感覚で言うと、コントローラーで打つコマンドを頭の中で変換して発動する感じだ。
 コントローラーでやるほどの速さはまだ無いが今でも十分戦えるだろう。


「さてと、そろそろ行くか……」
 ぼちぼち、森の中に入らないと帰るころには日が暮れそうだ。


___________________________ 


「お、あれは――」

 前方二十メートル付近、白い毛並みのウサギに似た生き物が、こちらの存在に気付いて威嚇するように身構えている。

「デカいな…あれは…ジャビットか……」

 ゲーム時代、初期の頃に経験値としてお世話になったウサギに似た、大型犬くらいのサイズの魔物だ。画面で見るのとは違ってかなりの威圧感がある。

 いよいよ、初戦闘……か。

 銃を使えるのは幸いだった。正直、生き物を殺すことには多少なりとも抵抗はあるが、銃ならまだやれそうだ。刀で切るとなると早々に挫折していただろう。

 ふぅ、と一呼吸入れて覚悟をきめる。

 装備――――〔づつ双葉ふたば

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 〔夜銃双葉〕
 形態:双銃
 レア度:UR 
 固有:〔必中〕〔バフ付与〕〔魔力弾〕
 入手法:一周年最高職限定ガチャ(現在入手不可)
 耐久値:∞
 ※レア度は下からCコモンUCアンコモンRレアSRエスレアSSRエスエスレアURウルトラレア

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 この世界では、武器の耐久値は減らないらしい。とさっき知った。

 ……まったく、便利なもんだよ。


 サッ、と銃を構えて狙いを付ける。
 危機を感じたのか、ジャビットは物凄いスピードで突っ込んでくる。
右……左……右――正面
 ――見える



狙いを定め、引き金を引く――

 パーン
「ギュァァーッ………………」

 乾いた音と共にジャビットがその場に倒れこむ。
 そして、そのままピクリとも動かなくなった――


「………………え?」


 マジか……一撃ってか……。


「そりゃレベル差はあるだろうけどさ……」


 まさか、通常弾一発だとは思わなかった。もうちょっと、戦闘で苦戦しながら倒す事になると思っていたのに、これは拍子抜けだ。
 力の確認は出来たものの、あまりにもあっさりしすぎて物足りなさすら感じる。
 と、そんな秋山の意思を汲み取ったのか、周囲に無数の影が――

「「「ギュゥーー!!!」」」


「え?…………マジ?」

 秋山の周りに、軽く五十体以上のジャビットが威嚇しながら近寄ってきていた。
この近くにはジャビットの巣があるのだが、秋山はそんな事など知る筈もなく、立ち入ってしまったのだ。

 ゲーム時代にも魔物の群れはあった。
 だが、銃は多対一には向いていない。元々《ゼノスト》はパーティーありきのゲームなのだ。
 それでも、本来の秋山なら、連射やスキルで何とかできなくもないが、あいにくとまだゲームのようにスムーズにスキルを発動できない。
 今はせいぜい一度に十体程度しか相手に出来る自信がない。


 ……自分の力量も分かったし、ここは無理せず一旦引くべきか。

 実際、それほど苦労もせずに勝てるだろうが、流石にノーダメージとはいかないだろう。
 単に痛いのが嫌なのもあるが……



 今は引こう、そう判断して高速移動スキル〔歩光・閃〕を発動す――


「――加勢するわ!!」

「……はァ?」

 突然、背後から声がした――と同時に人影が現れてジャビットに突っ込んでいった。


 え……あいつはたしか……


 その人物には見覚えがあった。いや、そんな事よりも――

「弱ッ!!」

 突っ込んでいったまではいいが、ジャビットの群れに数秒で囲まれてしまっている。
ほんの数秒で、噛まれ、引っ掻かれ、ズタボロでまさに絶体絶命の状態だ。

 えーッ、なんできたの。

存外、ゲームに置いての秋山はドライなのだった。

 正直なことを言うと、生身に近い体で生き物を大量に殺すのは気が進まないのだが……ジャビットに噛みつかれて、青い顔で今にも死にそうな奴を放って逃げるのは後味が悪い。

 嫌々ながら、武器を構えて直してジャビットの群れを相手にすることとなった。

 だが、自分でも気づかないうちに秋山は――ニヤリと笑っていた。







 ――あいつ……回復ポーションで治るのかな……


 そんな事を考えながら、秋山による第二ラウンドが始まった――




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