俺が道端で拾った本はただの本じゃなかった件について

破錠 斬々

第6話:収穫

アスカの記憶の回復のさせ方がらからないとわかってから一週間が経過した。一緒に探そうと言っていた麻里さんからも連絡はなく只々平和な毎日が続く。

記憶のない本人はというと毎日のほほんと家で過ごしている。本人がそれでいいのなら別に何も言わないが少しは焦って欲しいとも思う。

修一「アスカ、あれから一週間は経ったけどいいの?」

さっきまで俺の漫画を見ていたアスカが俺に声をかけられてからゆっくりと起き上がる。この世界にも馴染んだもんだな。

アスカ「いいのとは何のことじゃ?」

修一「何のって…お前の記憶探しだよ」

アスカは俺に言われてからあのことかと何かを閃いたように思い出したようだ。自分のことなのだからもっとしっかりしてほしい。

アスカ「そのことなら丁度一週間前に言ったじゃろう?記憶をなくしたことは辛いが別に急いでいるわけではいと」

修一「それは聞いたけど一週間何もしないって少しのんびりしすぎていないか?」

アスカ「たとえ何かをするにしてでも今は麻里殿からの連絡を待つしかなかろう」

確かにアスカの言う通りだ。今の所俺たちはアスカの記憶の捜索をしたくてもできない状態だ。



一週間前の帰り際…

麻里「修一さん少し待ってください」

修一「何ですか?」

麻里「しばらくの間私はアスカさんの記憶の捜索を行ってみます。修一さんたちにはその間だできれば何もしないでもらいたいのです」

修一「え、どうしてですか!?」

麻里「今それを教えることはできません。機会があれば必ず教えますが今は私の言った通りに何もしないでください」

修一「わかりました…」



取り敢えずは麻里さんの言った通りに何もしていないが麻里さんは記憶の捜索ができているのだろうか?

まぁ俺たち三人よりは一番頼りになる人だけども音沙汰もないと流石に不安になる。

アスカ「そんなに心配なら繭殿を連れて本屋に行ってみるか?」

週一「うーんいや、まだ待ってみようもしかしたらもうすぐで連絡があるかもしれないから」

アスカ「お主は本当にお人好しじゃのう」

それはよく繭に言われる。自分じゃそう思っていないが俺はかなりのお人好しらしい。

恭子「修ちゃんアスカちゃん繭ちゃんが遊びに来たわよー」

噂をすると何とやら絶妙なタイミングで繭がうちに来たようだ。

繭「おっすー二人とも仲良くやってるー?」

アスカ「繭殿あいにく修一のやつは見た通り少しピリピリしておるんじゃ。何とかしてくれ」

修一「ピリピリなんかしてねーよ。ただもう少しだけ自分の記憶がないことを自覚しろって言ってんの」

繭「はいはい。喧嘩しなくていいから」

修一「で、何しに来たんだよ?」

繭「いつまで経っても麻里さんから連絡こないから痺れを切らして来ちゃった」

こいつの行動はいつも唐突だ。学校でこいつのことが好きなやつはどういう神経してんだ?

修一「って言われても何もできねーぞ。麻里さんから言われた通り俺たちはこの一週間何もやってないからな」

繭「そんなの見ただけでわかるわよ…と・に・か・く二人ともやる気を出して!」

修一「と言われても何すんだよ?」

アスカ「繭殿は何か提案でもあるのか?」

俺たちに質問された繭は微笑ましい様なドヤ顔を俺たちに見せつけたあと来るときに持ってきたリュックからノートを出してきた。

繭「じゃーん!!二人ともこれなんだと思う?」

修一「見た感じこれはノートだな」

繭「見ただけの感想なんて誰も聞いてないわよ。この中身に何が書かれていると思う?」

アスカ「はて?もしかして繭殿の日記などか?」

繭「いくらアスカちゃんでも私のプライベートを教えることはできないわね」

俺たちがいくら考えても答えが出ないので繭は呆れたようにため息をつきノートを開いた。

そのノートにはおそらく繭が書いたであろう文字がびっしり記されている。

繭「このノートは私が独自でアスカちゃんの記憶な回復のさせ方を考えました!」

修一「確かに中にはそれらしいことは書いてあるけどもこれを行うと記憶が回復するって思った根拠って何?」

何かしら根拠がなければ実行ができない。ドラマの影響や雑誌とか思いつきでやられていたら逆にこれ以上記憶がなくなりそうだ。

繭「この間テレビでこんなことしたら私の記憶が回復しましたって感じの番組があったから興味でてきたからFoogleで色々調べてきたのを書いてる」

修一「却下…」

アスカ・繭「え!?なんで!?(じゃ)」

なんでアスカまで残念そうな顔をしてるんだよ。こんな危険なやり方を自分にすることをわかっているんだろうか。

アスカ「修一、これは結構面白そうじゃぞ?」

修一「お前これ自分がやるってわかって言ってるのか?」

アスカ「やはり止めておくか…」

繭「えぇ…この『3階から飛び降りて頭を強く打つと戻る』てやつかなり信憑性あると思うんだけどな」

修一「記憶どころか命まで消えるわ」

普段の繭はとても頭が良く文武両道なやつなんだがたまに変なところで凄く何というかアレだ…

繭「でもさーこんなに一週間も麻里さんから音沙汰なかったら馬鹿したくもなるよー」

修一「確かになー」

ピリリリィッ!ピリリリィッ!

俺のスマホの着信音だ。多分こんなにタイミングよくくるってことはきっと麻里さんだ。

修一「はい、もしもし!修一です!」

麻里「相変わらずうるさいガキですね。すいませんね音沙汰なくて」

繭「麻里さーん連絡してきたってことは何か情報があったんですかー?」

麻里「その声は繭さんですか?まぁ確かに私がわざわざ連絡をしたのは繭さんの言う通り新たな情報が出たからですけど」

修一「何か役に立つ情報はあったんですか?」

麻里「電話では伝えづらいので一度私の店に来てもらえませんか?話はそこからで」

修一「わかりました。今から行きますね」





麻里「よく来ました。取り敢えずそこに座ってください」

修一「それで新たな情報って何ですか?」

俺たち三人に紅茶を注いでいる麻里さんの手元がピクリと動いた。多分怒らせてしまったかもしれない。

麻里「あなたはいつも急ぎすぎています。少しはリラックスしてください」

修一「はぁ…すいません」

麻里「ま、確かにこっちが来いと言った立場ですのでお客様には情報提供しなくては失礼ですね。まぁ話すとしましょう」

繭「麻里さんはここ一週間何をしていたんですか?」

確かにそれが今一番知りたいことだ。この一週間どこで何をしていたのだろうか。

麻里「少しの間異世界に行ってました」

修一「え、行き方があるんですか?」

麻里「えぇ少々困難がありますが行けないことはありません」

修一「それなら取り敢えずはアスカを異世界に帰してあげることができるんじゃないですか?」

まだ話の途中だったような感じの麻里さんが今度は口元がピクリと動き睨みながら話しかけてくる。

麻里「修一さん、まずあなたはレディとの講和術を身につけてはどうでしょうか?あなたと話しているととても不愉快です」

修一「す、すいません!急ぎました!」

麻里「いえ、言いすぎました。話を戻しますが異世界に行くにはかなりの困難があります。記憶のないアスカさんに行かせようとすると多分命が危なくなるでしょう」

麻里さんは紅茶をすすりながら淡々と話を進めていく。この話はかなり深刻のようだ。アスカの表情がかなりこわばっている。

麻里「異世界への行き方はいずれ話しますが今回あなたたちに話したいのは私の一週間での収穫です」

修一「異世界に行ってアスカにつながる情報は何かあったのですか?」

麻里「アスカさんには直接関係はありませんがとある道具屋に記憶をなくした子がいると相談したところ過去にも一人そんな出来事があったみたいですね」

繭「過去にもアスカちゃんみたいに記憶がなくなった人がいたってことですか?」

修一「だったらその人がどうやって記憶を取り戻したかさえわかればアスカを戻せるかもしれない」

麻里「二人とも落ち着いてください。確かにその人に会いに行くのが手っ取り早いですが人間が簡単に異世界に行けると思いますか?」

修一「確かに麻里さんでさえ困難だから無理があるか…」

麻里「私は後日にまた探してみようとは思っていますが今のところその人に関する情報が少なすぎるため大きい範囲で調べられないのです」

繭「他にその人に関することはないんですか?記憶を取り戻したっていう話だけじゃなくて」

麻里「残念ながらその人に関することはかつての記憶を取り戻したこととその人は今も生きているってだけですかね」

修一「いやそれだけでも大きすぎる情報ですよ!」

麻里「あの、手を離してもらえませんか?少し痛いので///」
俺は嬉しさのあまり反射的に麻里さんの手を握ってしまった。それは麻里さんが頬を赤めるまで気付かず麻里さんの方から離してくれと言われた。

修一「あぁすいません///痛かったですか///?」

麻里「いえ、反射的に言ってしまっただけです///」

繭「で?この後はどうすんの?」

繭が怒ったような表情で俺たちをみて話しかけてくる。なぜお前が怒ってるんだ?

麻里「すいません話が逸れましたね///今はとにかくどうやって記憶を回復させた人物に会うことを考えなくてはいけませんね」

麻里さんはまだ顔を赤くしている。そんなに痛かったのだろうか。俺の罪悪感が絶えない…

修一「じゃぁアスカだけなら異世界に連れていけませんか?」

麻里「アスカさんをですか?さっきも言ったと思いますが記憶なない状態のアスカさんを連れて行くのは命の危険があるかもしれませんよ?」

修一「記憶をなくしたのはアスカ本人なわけですから俺たち二人を連れて行くのは無理にしてでも小柄なアスカ一人ならなんとかなりませんかね」

麻里「まぁあなたたち人間を連れて行くよりはやりやすいですけど…」

修一「ならそれで考えますか」

だがこれには大きな条件がある。それはアスカ本人が異世界に行きたいか自分で判断してもらわなければならない。

修一「アスカー」

アスカ「なんじゃ修一?」

ここは聞くしかないよな。こいつの問題なんだし。

修一「お前麻里さんと二人で異世界に行くつもりはあるか?」

アスカ「…」

修一「もちろんずっとそこに行くわけじゃない。二、三日の間記憶を回復させた人物を探しに行くだけだ。見つからなかったら帰って来ればいいじゃん?」

アスカ「修一たちには悪いがお断りしよう…」

修一「そっか…記憶のない状態で故郷に帰るのは流石に辛いよな…」

アスカは辛そうに下を向きながら涙をこらえたような顔をしている。さっきの質問はアスカにとってかなり残酷な質問だっただろう。

修一「アスカさっきのことは忘れてくれ。お前が行きたくないなら別の方向で考えるだけだからな!」

アスカ「わしは修一の察してくれている通り自分の記憶がない状態で故郷を旅するのはまだ覚悟ができてなくてな…お主たちの厚意には感謝しておるぞ?」

それはわかっている。アスカはいつも俺たちが真剣に話し合っているときは邪魔にならないように隅っこにいたりお茶を汲んでくれたりしている。

それもアスカからしたらささやかな感謝を込めての行動だろう。だから俺たちもその厚意には感謝して急いで探していたつもりが結果アスカの気持ちに余裕をなくしてしまったのだろう。

修一「暗視しろアスカ。誰もお前に対して怒ったりしてないからな!ただお前の気持ちを聞いただけだよ。甘えが行きたくないならそれでいい。他の案を探せばいいさ!」

アスカ「すまぬ…わし自身の問題なのにわしが一番足を引っ張っておるな」

繭「アスカちゃん!気を落とさないで!修一がしつこく人を助けようとするのは昔からだから。何にも考えなくていいよ!」

アスカ「繭殿…」

繭、ナイスフォローだ!アスカの顔から笑顔が戻ってきている。さすが女の子同士だな。

麻里「おほん。少々話が逸れたようですが決断に入りましょう。麻里さんは異世界には来ず私一人でまた探しに行くとしましょう」

修一「はい。よろしくお願いします」

麻里「その間前回と同じようにあなたたち三人は何もしないでいてください」

またか。何故麻里さんが異世界に行っている間は何もしないようにしなくてはいけないんだ?

俺たちが麻里さんに依頼した立場だ。できれば俺たちが率先して協力したい。

繭「どうして麻里さんが異世界に行ってるときは私たち何もしちゃいけないんですか?」

麻里「そこもまだ話していませんでしたね。実は…


今回はここまでとさせていただきます。
前回に引き続きまたフォロワーの数が増えていたので読者の皆様には感謝させられっぱなしです。
本当にありがとうございます。



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コメント

  • キズミ ズミ

    続きが気になる良い作品ですね!

    次の更新楽しみにしてます!

    2
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