普通な僕の非日常

Kuro

第2話 あぁ、そういう感じか・・・・・・

    一面桃色の通学路を抜け、いつもの見慣れた門は・・・・・・
と、この描写は前回も使ったか。
まぁ、上のことから想像できる通り、現在は通学途中。
僕が通う私立豊沢高校は、家からはあまり距離はないので僕はいつも自転車で登校している。
今日は、卒業式の日に起きた謎告白、もとい友達申請から二週間経過した高校二年の初の登校日である。
「すぐに会える」と言った彼女とは春休み中一度も会ってない。その時点で、すぐに会えてないじゃないか。というツッコミは置いといて。
僕は少し焦っている。久しぶりの早起きに失敗し、春休みはあまり運動もしなかったので妙にペダルが重く感じて思うように漕げず、ますます遅刻のデッドラインが迫っている。
いつもより速いスピードで校門を抜け、自転車を降り、駐輪場を目指す。遅刻の焦りと久々の運動のせいで汗ばんだシャツが肌に張り付き、何とも気持ち悪い。時間の余裕は心の余裕と言うが、全くその通りだと思う。
ある程度落ち着いたところでシャツの第一ボタンを開け、パタパタと服の中に空気を送り込みながら体育館に到着する。
普段通りなら教室に直行するのだが、今から始業式があるのだ。
「一話二話連続で式の話かよ」などと思わないでくれるとありがたい。季節上、仕方が無いんだ。
それに、今回は『PTA会長の話』が存在しない。それだけで多少は救われる。などと、浮かれ気分でいるとすぐに神様は僕を潰しにかかる。僕というか、生徒全員をだが。
『新任教師の紹介』これがまた長いのなんの。PTA会長はひとりで喋り倒したが、これは一人一人は短いのだが二十名余りいるので奴に匹敵するほどの長さを誇る。
最初の頃は新鮮味がある分、拍手も大きく鳴り響くのだが、中盤に差し掛かると、一気に生徒の興味が無くなりマンネリ化した空気の中、挨拶が進行していく。
そもそもの話、朝の眠い状態でありきたりなスピーチを聞かされて睡魔に襲われない方が凄いのだ。
そう自分に言い聞かせながら、前回では使えなかった作戦、『居眠り』を発動した。のも束の間で、瞼を閉じた数秒後に周囲の笑い声で目を覚ます。
どうやら終盤に控えていた、若手の教師がボケをかましたらしい。こうなると起きて残りの先生方の話を聞かざるを得ない。
微妙に微睡んでしまった頭を無理矢理覚醒させ、話に耳を傾ける。が、案の定、残りの数人の話はお世辞にも笑える話では無かった。元々、挨拶だから面白みのある話である必要は微塵もないのだけれど。



ガヤガヤとした教室の中、俺は一人机にうつ伏せになる――――――
というのが最近のラノベ主人公のスタイルなのだろうが、生憎、僕はラノベ主人公では無いから、そのガヤガヤの原因の一つになっているモブキャラAという立場だ。
今はクラス発表がされた後で、新しいメンバーでの教室待機という状態だ。ちなみに僕は二年Fクラス。
別に、Aクラスの方が設備がいいだとか、頭が良いとかそういうことはこの学校では無い。
担任教師が来るまでの間、去年同じクラスだった友人と喋っているところだった。
僕(モブキャラ)の友人であるから、さしずめそいつはモブキャラBくらいだろう。
「なぁ翔太、この学校に編入してくる奴がいるらしいぜ」
「どんな奴だ?」
「聞いた話だとすんげー可愛いらしい!」
「そうかー、そりゃあ楽しみだー(棒」
「なんだよ、興味無いのか?」
「このクラスにはあの人がいるから誰も勝てねーよ」
「あ、あぁ、確かに・・・・・・」
「この学校、いや、この地区一番の美少女と言っても過言じゃないからな」
「梓紗さんほど完璧な人間を俺は見たことないぜ」
僕らが話しているこの女性は、桜美梓紗さくらみあずさ
どこか違う世界からやってきたような、絹のように綺麗な銀髪はもはや幻想的としか言いようがなく、出る所は出て、引き締まるところはキュッと引き締まった抜群のスタイル。さらにはモデル顔負けの超絶美人。
さらには、どの競技をこなしても上位に入賞する程の運動神経。学力の方も今まで一度も学年首席を逃したことがないという天才。
そして、誰にでも分け隔てなく優しく、さながら天使のよう・・・・・・いや、ここまで来ると女神だ。僕には見えないが翼も生えているらしい。
おおよそ良い意味の形容詞の後に全て桜美 梓紗という単語を入れても成り立つような完璧超人・・・・・・いや違う、完璧女神!
『豊沢高校の優等生』とかで近々映画化されるそうだ。(冗談です)
以上が、校内随一の優等生、桜美 梓紗の紹介でした。
あ。これは噂程度でしかないからプロフィールに入れなかったが、家は大金持ちで桜美さんはお嬢様らしい。
と、そんな他愛ない話をしている内に担任が来た。
「お前らー、席につけー」
教室の喧騒が一気に止むと、担任は続ける。
「このクラスに新しい仲間が加わるぞー、皆仲良くしろなー」
収まった喧騒が再び帰ってきた。
そこでモブキャラBと目が合う。あちらも同じことを考えていたようだ、十中八九『例の美少女』だろう。
さっきは興味がないと言ったが、多少は気になるもので期待を込めるというよりは気持ちが高ぶる程度のものだった。
「入っていいぞー」
その言葉と同時に教室の扉がゆっくり開かれる。
そしてその生徒が入ってきた途端、クラスがさっきの倍以上の騒がしさに変わる。男子の熱気が異常に凄い。
全員が衝撃を受けるほどにその子は可愛かった。
綺麗な黒髪をショートボブで切りそろえており、顔立ちの整ったーーーーそう、あの子だった。
教室の皆が騒いでいる間、僕はずっと唖然していた。
「(すぐ会えるってそういう事かよ!)」
まさかうちの学校に来るとは誰が思おうか。
この子には驚かされてばっかりである。
「(そういえば、まだ名前知らないな・・・・・・)」
と考えている僕の頭の中を覗いたかのごとく担任が言う
「じゃあ、自己紹介をお願いしよっかなー」
そのお願いされた子は少しあたふたしながら、キチッと背筋を伸ばし口を開く
「今日からこの学校に入ることになった、篠宮美愛しのみやみなみです!これからよろしくお願いします!」
彼女はあの時と変わらない可愛い声と、この時初めて見た満開のヒマワリのような、心を晴れやかにする笑顔でこの場全員の心を鷲掴みした。(勿論、僕も例外なく)
「篠宮さん、後ろの空いている席に座ってねー」
担任がそう言うと、篠宮さんは、「はい!」と返事をして奥の席に向かった。その途中、篠宮さんは僕を見つけて胸の下で小さく手を振ってきた。
「(めちゃくちゃ可愛い)」
「(これはもしかすると、桜美さんの一強時代から桜美さんと篠宮さんの二大政党での戦いに発展するかもしれない)」などと益体のないことを考えていると担任が喋り出す。
「篠宮さんの紹介も終わったところで、次は私の紹介といきたいとこだが、全員授業もったことあるからいらないよなー?」
数学教師の高橋沙織たかはしさおり
アラサーであるが、同い年と言われても気付かないレベルの若々しさで、長く透き通った黒髪をいつも後ろで束ねている。
身長は女性にしては割と高い方で、スーツがとてもよく似合う。
なのに、独身。まぁ、彼氏はいるらしいから安全圏ではあるのだろうけど。
全く、さっさと結婚すればいいのに・・・・・・
「佐藤ー、お前後で一緒に職員室に来い」
「なんでですか先生!?」
「お前とても失礼なこと考えていただろー?」
「そ、そんなことあるわけないじゃないですかー
心配してただけですよ」
「その言葉で確信できた、みっちり話をしようじゃないか」
「あ!くそっ、墓穴を掘った・・・・・・」
クラスが笑い声に包まれる中、僕の職員室行きが決定した。
「(てか、なんで心の声読んでるんだよ・・・・・・)」

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二話終了です!
登場人物が結構増えました^^;
更新は不定期ですが、精一杯頑張るのでよろしくお願いします!!!

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