最強になって異世界を楽しむ!
盗賊団
不在の間にブックマークといいねが増えてて、すごいやる気が出ました。
ありがとうございます。
今日からまた毎日更新します!
翌日ワタルたち3人は王都の南門へと集まり、まだ朝早く薄暗い中出発した。
洞窟までは2日ほどかかるため、途中2回の野営が必要になる。
「マリーは上空の敵を、俺とエレナで下は倒そう」
「うむ、任せておけ」
しばらく歩いて日も傾き、そろそろ休もうかというところで魔物の群れと遭遇した。
「痛っ!」
普段であれば何の問題もない相手なのだが、移動による疲れと敵の数の多さにより死角をとられ、ワタルが脇腹に傷を負う。
動けるほどの浅い傷であったため、すぐに魔物を殲滅し野営の準備をする。
「ワタル、傷は大丈夫か?」
「うん、なにか支障があるわけじゃないし、すぐに治るよ」
「バカ者、そういう考えが大事を招くんじゃ。お主が見張りの時にわしが治療しよう」
マリーの休む時間が減るため断ったワタルだったが、その強い物言いに断りきれず治療を受けることにした。
食事も済ませた夜、ワタルはマリーに回復魔法を掛けてもらいながら見張りをしていた。
「あのさ、マリーにちょっと相談があるんだけど」
「相談じゃと? 仕方ないやつじゃな。わしの知恵を貸してやろう」
頼られるのが嬉しいのか、若干得意げに胸を張るマリー。
「いくつか試してる魔法があるから、実戦で使えるか見てほしいんだ」
「オリジナル魔法か?」
「そういうこと」
治療も終え、傷が塞がったのを確認してワタルは立ち上がり、剣を構える。
「水よ、我が剣に、纏え」
ワタルの言葉に応じて、水が剣の刀身を包み込む。
マリーが作ったゴーレムとの戦闘で使った魔法で、グラムの補助なしでも、ここまではできるようになっていた。
「前に見たことがあるな」
「ここからだよ。水よ、動け」
ゴーレムはこの剣では斬れなかったことを考え、斬れ味を上げる手段を見つけた。
纏わせた水を動かし、高速で振動させる。
その状態の剣を、近くの岩にゆっくりと振り下ろすと、抵抗なく真っ二つに斬れた。
「斬れ味が段違いじゃな。水を動かしておるのか」
「長さも変えられるよ」
剣を纏っている水に魔力を送れば、水の量が増え刀身が伸びる。
「これなら物理攻撃が効かない相手にも、かなり有効じゃな」
「ほとんど維持できないんだけどね」
マリーは少し驚いた様子で、素直に褒めてくれるがこの魔法剣には欠点はある。
その一つが持続時間の短さで、全開で使えば5分しか持たない。
「オリジナル魔法なんてそんなものじゃ。大抵は使い物にならん。それでも、その魔法剣は十分実践で使える」
「マリーがそう言ってくれるなら安心だよ。でも、本命はこれじゃないんだよね」
マリーからのお墨付きを持ったところで、ひっそりと連取を重ねてきた魔法を公開する。
いくつかの魔法をマリーに見せたところ、マリーは興奮気味に褒めてくれた。
「見たことない魔法! 私も覚えたい!」
「わかったから、一旦落ち着こう?」
口調を崩しながら詰め寄るマリーを落ち着かせ、使った魔法を説明した。
それでも、マリーはその魔法を使えなかったため、落胆し半泣きになったマリーを、見張りの間ずっと慰めるワタルだった。
***
「ワタル、疲れているようだが大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
結局ほとんど休めないまま、2日目の移動が始まった。
今回は途中で休みを多く入れ、昨日のような怪我を無くすように心掛ける。
「……気付いてる?」
「当然だ。お粗末な尾行だからな」
時刻は昼過ぎ。
休憩場所を探し始めたところで、ワタルは2人に小声で話しかける。
30分ほど前から何者かに尾行されており、ワタルはその相手をどうするか相談する。
「盗賊かなにかじゃろう。休憩する振りをして、武器を外して誘い出して返り討ちじゃ」
「そうしようか」
尾行している相手を誘い出すため、3人は適当な場所で休憩を取る。
本来は武器を外すようなことはしないが、今回は別だ。
「へへへ、動くなよ。動いたら痛い目を見ることになるぞ」
なんというか、武器を外して数分後にその尾行をしていた相手は現れた。
いかにも盗賊という風貌をした6人の男は、ワタルたち3人を囲み剣を抜いている。
「簡単に出てきたな」
「マリー、あとはお願い」
「了解じゃ」
盗賊たちは驚く素振りも見せない3人に疑問を抱き、襲いかかってくるようなことはしない。
なにせ、見た目は少年少女と幼女だ。
男6人ならば負けると考えるわけがない。
「アースゴーレムでいいじゃろう」
既に魔法を準備していたマリーが、地面に手を付き魔法を発動させる。
使うのはゴーレム創造の魔法。
合計で12体のアースゴーレムたちは、様子を伺っていた盗賊たちへと襲いかかる。
「うわっ、やめろ!」
「このっ、離れろ!」
「落ち着け、ただのゴーレムだ!」
盗賊の頭と思われる男の呼びかけも虚しく、盗賊たちは自分の倍の数のゴーレムに倒されていく。
多少腕に自信のある冒険者なら、アースゴーレムを同時に4体は相手にできるだろう。
だが、相手は盗賊。
まともな訓練も受けず、練度の低い盗賊には当然の結果だった。
「動かないでくださいね。殺しませんから」
「くそっ!」
頭の男も奮戦していたが、ワタルたちが武器を取ると諦めたようで、大人しく拘束された。
「とりあえず、盗賊団の名前を教えてください」
「……」
「別に拷問してもいいんですよ。マリー」
誰も口を開こうとしない盗賊たちに、見せしめと言わんばかりにマリーが炎球を作り出す。
人一人など容易く包み込む炎球は、盗賊たちに恐怖を与えるには十分だった。
「ウィケッド盗賊団だ」
「ギルドから討伐依頼の出されていた盗賊団ですよね。でも、数が少ないような」
「やられたんだよ、大男にな」
ウィケッド盗賊団の盗賊たちは、自分たちの置かれている状況をよく理解しているのか、何があったかを話し出す。
内容はエリヤから聞いたのと少し違い、魔剣を拾って来たら、突然大男が出てきて仲間がほとんどやられたとのことだった。
「こんなもんだ。他に知っていることはないぞ」
「情報ありがとうございます。それじゃあ、皆さんには王都の刑務所に行ってもらいます」
話を聞き終えれば、ワタルは持ち物の中から細長い筒を取り出す。
それを空へと放り投げると、破裂し赤色の煙が空中に広がる。
これは王都の兵士を呼び寄せるための発煙筒のようなもので、しばらくすれば王都の兵士の乗った馬車が来るだろう。
発煙筒の煙を確認したワタルたち3人は、盗賊たちを近くの気に縛り付け、その場を後にする。
***
「ここみたいだね」
2回目の野営を挟んで、次の日の朝。
ワタルたちは目的の洞窟の前に着いていた。
「俺が戦闘を行くから、エレナは2番目、マリーは最後尾をお願い」
洞窟の通路は狭く、同時に1人しか通れないため隊列を決め、中へと入っていく。
洞窟は天然のもののようで、緩やかな下り坂となっていた。
5分近く歩いたところで、洞窟の通路を抜け広い空間に出る。
空間は円状で、ワタルは闘技場という言葉を思い浮かべていた。
「よく来た、挑戦者たちよ」
辺りを見回していた3人へ、野太い男の声がかかり天井に光が灯る。
姿を現したのは筋骨隆々という言葉が似合う、体長3mはありそうな大男だった。
さらに、その背後の奥には剣が地面に刺さっており、それが魔剣で目の前の大男が、盗賊団と冒険者たちを壊滅させた相手なのだと直感する。
「俺を倒せば魔剣をくれてやろう」
大男は3人を見ると、そう言って口端を吊り上げた。
ありがとうございます。
今日からまた毎日更新します!
翌日ワタルたち3人は王都の南門へと集まり、まだ朝早く薄暗い中出発した。
洞窟までは2日ほどかかるため、途中2回の野営が必要になる。
「マリーは上空の敵を、俺とエレナで下は倒そう」
「うむ、任せておけ」
しばらく歩いて日も傾き、そろそろ休もうかというところで魔物の群れと遭遇した。
「痛っ!」
普段であれば何の問題もない相手なのだが、移動による疲れと敵の数の多さにより死角をとられ、ワタルが脇腹に傷を負う。
動けるほどの浅い傷であったため、すぐに魔物を殲滅し野営の準備をする。
「ワタル、傷は大丈夫か?」
「うん、なにか支障があるわけじゃないし、すぐに治るよ」
「バカ者、そういう考えが大事を招くんじゃ。お主が見張りの時にわしが治療しよう」
マリーの休む時間が減るため断ったワタルだったが、その強い物言いに断りきれず治療を受けることにした。
食事も済ませた夜、ワタルはマリーに回復魔法を掛けてもらいながら見張りをしていた。
「あのさ、マリーにちょっと相談があるんだけど」
「相談じゃと? 仕方ないやつじゃな。わしの知恵を貸してやろう」
頼られるのが嬉しいのか、若干得意げに胸を張るマリー。
「いくつか試してる魔法があるから、実戦で使えるか見てほしいんだ」
「オリジナル魔法か?」
「そういうこと」
治療も終え、傷が塞がったのを確認してワタルは立ち上がり、剣を構える。
「水よ、我が剣に、纏え」
ワタルの言葉に応じて、水が剣の刀身を包み込む。
マリーが作ったゴーレムとの戦闘で使った魔法で、グラムの補助なしでも、ここまではできるようになっていた。
「前に見たことがあるな」
「ここからだよ。水よ、動け」
ゴーレムはこの剣では斬れなかったことを考え、斬れ味を上げる手段を見つけた。
纏わせた水を動かし、高速で振動させる。
その状態の剣を、近くの岩にゆっくりと振り下ろすと、抵抗なく真っ二つに斬れた。
「斬れ味が段違いじゃな。水を動かしておるのか」
「長さも変えられるよ」
剣を纏っている水に魔力を送れば、水の量が増え刀身が伸びる。
「これなら物理攻撃が効かない相手にも、かなり有効じゃな」
「ほとんど維持できないんだけどね」
マリーは少し驚いた様子で、素直に褒めてくれるがこの魔法剣には欠点はある。
その一つが持続時間の短さで、全開で使えば5分しか持たない。
「オリジナル魔法なんてそんなものじゃ。大抵は使い物にならん。それでも、その魔法剣は十分実践で使える」
「マリーがそう言ってくれるなら安心だよ。でも、本命はこれじゃないんだよね」
マリーからのお墨付きを持ったところで、ひっそりと連取を重ねてきた魔法を公開する。
いくつかの魔法をマリーに見せたところ、マリーは興奮気味に褒めてくれた。
「見たことない魔法! 私も覚えたい!」
「わかったから、一旦落ち着こう?」
口調を崩しながら詰め寄るマリーを落ち着かせ、使った魔法を説明した。
それでも、マリーはその魔法を使えなかったため、落胆し半泣きになったマリーを、見張りの間ずっと慰めるワタルだった。
***
「ワタル、疲れているようだが大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
結局ほとんど休めないまま、2日目の移動が始まった。
今回は途中で休みを多く入れ、昨日のような怪我を無くすように心掛ける。
「……気付いてる?」
「当然だ。お粗末な尾行だからな」
時刻は昼過ぎ。
休憩場所を探し始めたところで、ワタルは2人に小声で話しかける。
30分ほど前から何者かに尾行されており、ワタルはその相手をどうするか相談する。
「盗賊かなにかじゃろう。休憩する振りをして、武器を外して誘い出して返り討ちじゃ」
「そうしようか」
尾行している相手を誘い出すため、3人は適当な場所で休憩を取る。
本来は武器を外すようなことはしないが、今回は別だ。
「へへへ、動くなよ。動いたら痛い目を見ることになるぞ」
なんというか、武器を外して数分後にその尾行をしていた相手は現れた。
いかにも盗賊という風貌をした6人の男は、ワタルたち3人を囲み剣を抜いている。
「簡単に出てきたな」
「マリー、あとはお願い」
「了解じゃ」
盗賊たちは驚く素振りも見せない3人に疑問を抱き、襲いかかってくるようなことはしない。
なにせ、見た目は少年少女と幼女だ。
男6人ならば負けると考えるわけがない。
「アースゴーレムでいいじゃろう」
既に魔法を準備していたマリーが、地面に手を付き魔法を発動させる。
使うのはゴーレム創造の魔法。
合計で12体のアースゴーレムたちは、様子を伺っていた盗賊たちへと襲いかかる。
「うわっ、やめろ!」
「このっ、離れろ!」
「落ち着け、ただのゴーレムだ!」
盗賊の頭と思われる男の呼びかけも虚しく、盗賊たちは自分の倍の数のゴーレムに倒されていく。
多少腕に自信のある冒険者なら、アースゴーレムを同時に4体は相手にできるだろう。
だが、相手は盗賊。
まともな訓練も受けず、練度の低い盗賊には当然の結果だった。
「動かないでくださいね。殺しませんから」
「くそっ!」
頭の男も奮戦していたが、ワタルたちが武器を取ると諦めたようで、大人しく拘束された。
「とりあえず、盗賊団の名前を教えてください」
「……」
「別に拷問してもいいんですよ。マリー」
誰も口を開こうとしない盗賊たちに、見せしめと言わんばかりにマリーが炎球を作り出す。
人一人など容易く包み込む炎球は、盗賊たちに恐怖を与えるには十分だった。
「ウィケッド盗賊団だ」
「ギルドから討伐依頼の出されていた盗賊団ですよね。でも、数が少ないような」
「やられたんだよ、大男にな」
ウィケッド盗賊団の盗賊たちは、自分たちの置かれている状況をよく理解しているのか、何があったかを話し出す。
内容はエリヤから聞いたのと少し違い、魔剣を拾って来たら、突然大男が出てきて仲間がほとんどやられたとのことだった。
「こんなもんだ。他に知っていることはないぞ」
「情報ありがとうございます。それじゃあ、皆さんには王都の刑務所に行ってもらいます」
話を聞き終えれば、ワタルは持ち物の中から細長い筒を取り出す。
それを空へと放り投げると、破裂し赤色の煙が空中に広がる。
これは王都の兵士を呼び寄せるための発煙筒のようなもので、しばらくすれば王都の兵士の乗った馬車が来るだろう。
発煙筒の煙を確認したワタルたち3人は、盗賊たちを近くの気に縛り付け、その場を後にする。
***
「ここみたいだね」
2回目の野営を挟んで、次の日の朝。
ワタルたちは目的の洞窟の前に着いていた。
「俺が戦闘を行くから、エレナは2番目、マリーは最後尾をお願い」
洞窟の通路は狭く、同時に1人しか通れないため隊列を決め、中へと入っていく。
洞窟は天然のもののようで、緩やかな下り坂となっていた。
5分近く歩いたところで、洞窟の通路を抜け広い空間に出る。
空間は円状で、ワタルは闘技場という言葉を思い浮かべていた。
「よく来た、挑戦者たちよ」
辺りを見回していた3人へ、野太い男の声がかかり天井に光が灯る。
姿を現したのは筋骨隆々という言葉が似合う、体長3mはありそうな大男だった。
さらに、その背後の奥には剣が地面に刺さっており、それが魔剣で目の前の大男が、盗賊団と冒険者たちを壊滅させた相手なのだと直感する。
「俺を倒せば魔剣をくれてやろう」
大男は3人を見ると、そう言って口端を吊り上げた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
3087
-
-
361
-
-
58
-
-
59
-
-
1978
-
-
93
-
-
147
-
-
1
-
-
63
コメント