最強になって異世界を楽しむ!
雷帝2
「2人とも、既に回復しておるじゃろう?」
「あ、うん。ありがとねマリー」
「助け合うのは当然のことじゃ」
マリーの言葉で我に返ったワタルは、急いで立ち上がり、雷帝の様子を確認する。
ダメージは受けているようで、鎧も腹の部分がひび割れているが、意識はあるようで立ち上がろうとしている。
「ワタル、マリー、援護を頼む」
ワタルよりも早く行動を開始したエレナは、2人にそう言って雷帝へと走り出す。
ワタルは続くように走り出し、マリーは魔法陣を展開して援護を始める。
「突っ込むだけで俺に攻撃は当たらんぞ」
「見えたら、の話だろう」
エレナは加速のスキルを使い、3人の視界から姿を消すほどの速度で、雷帝に肉薄する。
エレナを一瞬見失ったことで、雷帝の反応が一瞬遅れる。
エレナはその勢いのまま、マリーの魔法により鎧がひび割れた腹部へ、両手の刃を袈裟懸けに振り、クロスするように斬り掛かる。
「ぐうう!」
避けきれず、後ろへ下がることもできない雷帝へその攻撃は直撃し、赤い血が飛び散る。
それでも雷帝は反撃をしようと、稲妻を纏った右腕を振り上げ、エレナへと叩きつける。
攻撃後のためエレナの動きは止まっていたが、追いついていたワタルが、エレナを抱き抱えて拳を避ける。
地面を走る稲妻を避けるためにワタルはエレナを抱き抱えたまま、大きく跳躍する。
「そこの魔導師は怖いな」
雷帝の拳が叩きつけられた地面には、先程と同様に稲妻が走る。
だが、その稲妻は広がることはなく、一直線にマリーへと向かう。
「これでは有効な魔法は使えんな」
それを避けるため、マリーは魔法陣と詠唱を破棄し、横へ飛ぶ。
威力の高い魔法を放つには足を止め、魔法陣を展開しなければならない。
それを封じられ、マリーは苦い顔をする。
「水よ、弾丸となり、貫け」
空中でエレナを離したワタルが、次の行動を起こそうとする雷帝へ、水の弾丸を作り出して放つ。
雷帝は盾を構え、ワタルの放った水の弾丸を全て防ぎきる。
「なに?」
雷帝が盾に目をやれば、そこには無数のヒビが入っていた。
ワタルが今回イメージしたものは、この世界にはない兵器。
現代社会の銃弾をイメージしていた。
この世界の弾丸というのは普通に撃ち出すのみで、回転などかけられていない。
一方でワタルの弾丸には、魔法でのみ実現可能な、現代社会では考えられないほどの回転をかけている。
貫通力は大幅に上がり、盾を貫くまではいかずとも、弾痕を残しヒビを入れるには十分な破壊力だった。
「水よ、刃となり、切り裂け」
追い打ちをかけるように、地面へと散らばった水を操り、水の刃が四方八方から雷帝を切り裂こうと、一斉に飛んでいく。
こちらは回転などかけることはできないため、鎧と盾により簡単に防がれるが、ワタルの狙いはそれでよかった。
「我が剣の錆となれ」
水によって視界を塞がれ、動きの止まった雷帝の腹部へ、エレナの粛清剣が突き刺さる。
「ぬうう、この程度で!」
流石に効いたのか呻き声を漏らすも、まだ動けるのかエレナへと蹴りを放つ。
エレナはそれを予想していたのか、突き刺した時には既に後ろへ下がる準備をしており、粛清剣を引き抜いて大きく後退する。
「これほど強い相手は数える程しかいないな。あまり使いたくないが、そうも言ってられない」
なにがくるのかと警戒する3人にそう言い、雷帝は右手を何かを持っているかのように、軽く握る。
そこへ、今まで腕に纏っていた稲妻が集まり、さらに右手へ魔力を集めていく。
「止めるよ」
「当然だ」
その様子を見たワタルとエレナがじっとするわけもなく、稲妻が集まるのを中断させようと、同時に左右から斬り掛かる。
マリーは魔法陣を展開し詠唱を開始しているが、時間がかかるようで援護はない。
「焦りか、動きが単調になったな」
未知の攻撃への不安からか、無意識に焦りが生まれたのだろう。
2人の攻撃は盾とバングルにより、いとも簡単に弾かれる。
マリーを放っておくようなこともせず、右足に稲妻を纏わせ、地面を踏みつけ稲妻をマリーへと向かわせる。
耐久の低いマリーは、直撃すれば命の危険もあるためまたもや魔法陣と詠唱を中断させられ、回避を強制される。
「これは神の鉄槌なり」
3人が攻撃ができない間に、雷帝の右手には雷の槌が握られていた。
「神に逆らう愚か者へ、裁きの鉄槌を下す」
槌をゆっくりと振り上げ、一言一言言葉を紡ぎ詠唱していく。
「雷槌」
振り下ろされるその槌を、防ぐ術は3人にはなかった。
雷の槌は地面に触れると、電撃が地面を走る。
その範囲はこの空間全てに届くほどで、とても避けられるものではなかった。
「っ!?」
最初の稲妻とは比べ物にならない痛みが3人を襲い、体が硬直し倒れることもできず、その場に立ち無防備な姿を晒す。
「ここへ来たのを後悔して、死ぬがいい」
雷帝は目の前のワタルとエレナの間を通り過ぎ、マリーへと雷の槌を振り下ろす。
「……!」
魔法で防ごうとしたマリーだが、全身が痺れているため呂律が回らず、詠唱ができない。
咄嗟に無詠唱の魔法に切り替え、土の壁を5枚作り、4枚を壊されるも槌を止める。
雷帝は槌を消し、横から盾をぶつけようと左腕を振る。
そちらへも土の壁を作るが、槌の攻撃よりも速度が早く、土の壁を1枚しか作ることができなかった。
壁はあっという間に壊され、その後ろのマリーを吹き飛ばす。
威力は下がっているのか、壁への激突は防ぐも地面を転がり、ピクリとも動かない。
「トドメだ」
確実に殺すためにマリーへと近づく雷帝へ、地面の水が礫となり襲いかかる。
ワタルが無詠唱により操った水の礫は、盾と鎧によりほとんどが防がれるが、特に小さくした礫が、防御を縫って避け、雷帝の目に当たる。
ダメージはないが、目潰しには十分で時間を稼ぐことはできた。
「今度はわしが助けられたな」
その間に、回復魔法を自分にかけ終えたマリーが立ち上がり、ワタルとエレナのそれぞれに近寄り回復魔法をかける。
「しつこいな」
「それはお互い様じゃろうて」
雷帝の目が回復する頃には3人は動けるようになっていたが、ダメージは完全には消えない。
今も3人の体は痛みが駆け巡り、どうにか動けているぐらいだ。
「2人とも、このままではわしらが負ける。そこで提案があるのじゃが」
「なに?」
「なんだ?」
「雷帝の動きを少しでいい。数秒だけでいいから完全に止めて欲しいんじゃ。その後はわしに任せてほしい」
「それはいいが、どうやって止める?」
「俺が止めるよ。エレナは俺が合図したら、思いっきり後ろに下がって」
「わかった。お前たちに任せよう」
「ああ、わしが今から使う魔法は範囲が広いからな。ワタルも離れるんじゃぞ?」
「うん、それじゃやろうか」
素早く相談をし、戦闘での役割を決める。
その間に雷帝は雷の槌を再び作ろうと、右手に魔力を集める。
「そう何度もやれると思うなよ」
次にあの電撃を受けると全滅するため、エレナが突っ込み、ワタルが続く。
マリーも背後から炎球を飛ばし、援護する。
雷帝は少し小さい雷の槌を作り終えて笑い、3人を迎え撃つべく腰を落とし、槌と盾を構えた。
「来い、挑戦者たちよ」
「あ、うん。ありがとねマリー」
「助け合うのは当然のことじゃ」
マリーの言葉で我に返ったワタルは、急いで立ち上がり、雷帝の様子を確認する。
ダメージは受けているようで、鎧も腹の部分がひび割れているが、意識はあるようで立ち上がろうとしている。
「ワタル、マリー、援護を頼む」
ワタルよりも早く行動を開始したエレナは、2人にそう言って雷帝へと走り出す。
ワタルは続くように走り出し、マリーは魔法陣を展開して援護を始める。
「突っ込むだけで俺に攻撃は当たらんぞ」
「見えたら、の話だろう」
エレナは加速のスキルを使い、3人の視界から姿を消すほどの速度で、雷帝に肉薄する。
エレナを一瞬見失ったことで、雷帝の反応が一瞬遅れる。
エレナはその勢いのまま、マリーの魔法により鎧がひび割れた腹部へ、両手の刃を袈裟懸けに振り、クロスするように斬り掛かる。
「ぐうう!」
避けきれず、後ろへ下がることもできない雷帝へその攻撃は直撃し、赤い血が飛び散る。
それでも雷帝は反撃をしようと、稲妻を纏った右腕を振り上げ、エレナへと叩きつける。
攻撃後のためエレナの動きは止まっていたが、追いついていたワタルが、エレナを抱き抱えて拳を避ける。
地面を走る稲妻を避けるためにワタルはエレナを抱き抱えたまま、大きく跳躍する。
「そこの魔導師は怖いな」
雷帝の拳が叩きつけられた地面には、先程と同様に稲妻が走る。
だが、その稲妻は広がることはなく、一直線にマリーへと向かう。
「これでは有効な魔法は使えんな」
それを避けるため、マリーは魔法陣と詠唱を破棄し、横へ飛ぶ。
威力の高い魔法を放つには足を止め、魔法陣を展開しなければならない。
それを封じられ、マリーは苦い顔をする。
「水よ、弾丸となり、貫け」
空中でエレナを離したワタルが、次の行動を起こそうとする雷帝へ、水の弾丸を作り出して放つ。
雷帝は盾を構え、ワタルの放った水の弾丸を全て防ぎきる。
「なに?」
雷帝が盾に目をやれば、そこには無数のヒビが入っていた。
ワタルが今回イメージしたものは、この世界にはない兵器。
現代社会の銃弾をイメージしていた。
この世界の弾丸というのは普通に撃ち出すのみで、回転などかけられていない。
一方でワタルの弾丸には、魔法でのみ実現可能な、現代社会では考えられないほどの回転をかけている。
貫通力は大幅に上がり、盾を貫くまではいかずとも、弾痕を残しヒビを入れるには十分な破壊力だった。
「水よ、刃となり、切り裂け」
追い打ちをかけるように、地面へと散らばった水を操り、水の刃が四方八方から雷帝を切り裂こうと、一斉に飛んでいく。
こちらは回転などかけることはできないため、鎧と盾により簡単に防がれるが、ワタルの狙いはそれでよかった。
「我が剣の錆となれ」
水によって視界を塞がれ、動きの止まった雷帝の腹部へ、エレナの粛清剣が突き刺さる。
「ぬうう、この程度で!」
流石に効いたのか呻き声を漏らすも、まだ動けるのかエレナへと蹴りを放つ。
エレナはそれを予想していたのか、突き刺した時には既に後ろへ下がる準備をしており、粛清剣を引き抜いて大きく後退する。
「これほど強い相手は数える程しかいないな。あまり使いたくないが、そうも言ってられない」
なにがくるのかと警戒する3人にそう言い、雷帝は右手を何かを持っているかのように、軽く握る。
そこへ、今まで腕に纏っていた稲妻が集まり、さらに右手へ魔力を集めていく。
「止めるよ」
「当然だ」
その様子を見たワタルとエレナがじっとするわけもなく、稲妻が集まるのを中断させようと、同時に左右から斬り掛かる。
マリーは魔法陣を展開し詠唱を開始しているが、時間がかかるようで援護はない。
「焦りか、動きが単調になったな」
未知の攻撃への不安からか、無意識に焦りが生まれたのだろう。
2人の攻撃は盾とバングルにより、いとも簡単に弾かれる。
マリーを放っておくようなこともせず、右足に稲妻を纏わせ、地面を踏みつけ稲妻をマリーへと向かわせる。
耐久の低いマリーは、直撃すれば命の危険もあるためまたもや魔法陣と詠唱を中断させられ、回避を強制される。
「これは神の鉄槌なり」
3人が攻撃ができない間に、雷帝の右手には雷の槌が握られていた。
「神に逆らう愚か者へ、裁きの鉄槌を下す」
槌をゆっくりと振り上げ、一言一言言葉を紡ぎ詠唱していく。
「雷槌」
振り下ろされるその槌を、防ぐ術は3人にはなかった。
雷の槌は地面に触れると、電撃が地面を走る。
その範囲はこの空間全てに届くほどで、とても避けられるものではなかった。
「っ!?」
最初の稲妻とは比べ物にならない痛みが3人を襲い、体が硬直し倒れることもできず、その場に立ち無防備な姿を晒す。
「ここへ来たのを後悔して、死ぬがいい」
雷帝は目の前のワタルとエレナの間を通り過ぎ、マリーへと雷の槌を振り下ろす。
「……!」
魔法で防ごうとしたマリーだが、全身が痺れているため呂律が回らず、詠唱ができない。
咄嗟に無詠唱の魔法に切り替え、土の壁を5枚作り、4枚を壊されるも槌を止める。
雷帝は槌を消し、横から盾をぶつけようと左腕を振る。
そちらへも土の壁を作るが、槌の攻撃よりも速度が早く、土の壁を1枚しか作ることができなかった。
壁はあっという間に壊され、その後ろのマリーを吹き飛ばす。
威力は下がっているのか、壁への激突は防ぐも地面を転がり、ピクリとも動かない。
「トドメだ」
確実に殺すためにマリーへと近づく雷帝へ、地面の水が礫となり襲いかかる。
ワタルが無詠唱により操った水の礫は、盾と鎧によりほとんどが防がれるが、特に小さくした礫が、防御を縫って避け、雷帝の目に当たる。
ダメージはないが、目潰しには十分で時間を稼ぐことはできた。
「今度はわしが助けられたな」
その間に、回復魔法を自分にかけ終えたマリーが立ち上がり、ワタルとエレナのそれぞれに近寄り回復魔法をかける。
「しつこいな」
「それはお互い様じゃろうて」
雷帝の目が回復する頃には3人は動けるようになっていたが、ダメージは完全には消えない。
今も3人の体は痛みが駆け巡り、どうにか動けているぐらいだ。
「2人とも、このままではわしらが負ける。そこで提案があるのじゃが」
「なに?」
「なんだ?」
「雷帝の動きを少しでいい。数秒だけでいいから完全に止めて欲しいんじゃ。その後はわしに任せてほしい」
「それはいいが、どうやって止める?」
「俺が止めるよ。エレナは俺が合図したら、思いっきり後ろに下がって」
「わかった。お前たちに任せよう」
「ああ、わしが今から使う魔法は範囲が広いからな。ワタルも離れるんじゃぞ?」
「うん、それじゃやろうか」
素早く相談をし、戦闘での役割を決める。
その間に雷帝は雷の槌を再び作ろうと、右手に魔力を集める。
「そう何度もやれると思うなよ」
次にあの電撃を受けると全滅するため、エレナが突っ込み、ワタルが続く。
マリーも背後から炎球を飛ばし、援護する。
雷帝は少し小さい雷の槌を作り終えて笑い、3人を迎え撃つべく腰を落とし、槌と盾を構えた。
「来い、挑戦者たちよ」
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