充実した異世界ライフを送る......はずだったが

ざん

4話 おじいさんとの出会い。


   俺は、魔獣に喰われ、痛みを感じながら死ぬより、いっそ、この剣で自殺しようと考え剣を右手にとった。

(あぁ、俺の人生ろくなことなかったな...........母さんと父さん勝手に出てって怒ってないかな)

目を閉じ、涙が出た。そして、剣を首もとに持ってきて斬る用意をしていた。

(みんな、あの世で先に待ってるよ)

「おやおや、これはどうしたもんかね」

(?!)

目を開けると、魔獣の奥の森から出てきたおじいさんが立っていた。

「おじいさん!逃げて!!」

とっさに声をだすが、間に合わず狼がおじいさんに標的をかえた。

「ガァルルルルル」

うなり声をだした狼は一斉におじいさんに飛びかかった。俺は、見てられず目を閉じ下を向いてしまった。
何秒かたち、魔獣の声がしなくなり、恐る恐る目を開けると何10体かいた狼が一匹残らず死んでいて、手に剣を持っているおじいさんだけが立っていた。

「なっ...!」

「大丈夫だったかね」

「は、はい」

「あの、助けてくれてありがとうございます」

「いやいや、礼にはおよばんよ。ところでなぜこんなところに?」

「それは......」

さすがに他の世界から来たって言っても信じてもらえないだろうと思い口を閉じた。

「まぁ人には皆に言えない一つや二つあるもんだ。そうだ、今から昼食を食べるとこなんだよ。一緒に食べないかい?」

なんて優しいんだろう。
俺は頷き、渡されたパンを受け取った。

(この世界にパンがあるのか、しかもクロワッサン......)

おじいさんは、俺の隣に座り「いただきます」と言うとパンを食べ始めた。
俺も食べてみると、日本で食べていたクロワッサン、いや、パンの味とは違った。食べたことのない味と食感、おいしい。
聞いてみると、自家製だそうだ。
パンのサイズはメロンパンと同じくらいで、それを何秒かで食べ終えた。

「ぷはー、うまい!」

「ハハハ。それはうれしいねぇ、ほらおかわりはあるよ」

そう言ってもうひとつパンをくれた。

(そうだ、この人に話してみよう)

さすがにこれから一人で過ごすのも無理だし、こんな優しい人になら話してもいいかなと思い、なぜここにいるのか、実は異世界から来たってことをおじいさんに偽りなく話した。

「そんなことが............大変だったね」

おじいさんは、笑って受けとめてくれた。

「それなら、私の家に泊まっていきなさい」

「いいんですか?」

「あぁ、君をここに置いていけないからね」

「あ、ありがとうございます!」

あぁ神様みたいだ。見ず知らずの人にそこまでしてくれるのは本当に神様なんじゃないかと疑ってしまうほどだ。

「さて、そうと決まれば早速行こうか」

「はい!」

おじいさんの家は、ここからそう遠くない。今は1時ぐらいなので、3時にはつくと言っていた
30分程たち、山道をおじいさんとともに歩いていた俺は、ずっと疑問に思っていたことを思いきって言ってみた。

「あの」

「なんだい?」

「さっきの狼を倒したのっておじいさんなんですよね?」

「そうだよ」

「お強いんですね」

「まぁこれでも、元A級冒険者だからね」

(冒険者?ゲームとかでよくあるギルドで依頼をこなしたり、魔物を討伐するあれか?)

「ハハッそういえば異世界から来たんだったな。このままずっと黙って歩くのもなんだから、いろいろ話してもやろう」

「ありがとうございます!」



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