悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです
他国の王子
今私は初対面の少年に手を取られ跪かれている。
「ワタシと、結婚、してくだサイ。」
「は?」
片言の言語。キラキラした私とはまた違う紫色の瞳。少し癖のある黒髪の上には透けたヴェールの様な物が被さっている。この国ではあまり見られない褐色の肌。前世での中東アジアを思わせる彼は友好国のアハマド王子。
「わ、私は男ですよ。」
「構いませン。我が国でハ、同性婚も、認められていマス。」
それを聞いて少し安心する。びっくりした、一瞬女だってバレたかと思った。けれど私の後ろにいるユーリとルドルフは未だに目を見開いて固まっている。
アハマド王子が我が屋敷にいるのには勿論事情がある。私達が15歳なると入学するウェリントン魔法学園。彼は交流のためにそこに留学する。その下見として今日は訪れたらしい。だが道中、馬車の車輪が故障したとの事でどこか休める場所はないかと探していたら我が家の近くだったという事だ。
そこでせめてものもてなしと同い年の私を話し相手としてアハマド王子がいる部屋に入れた。すると彼の第一声
「ナンテ‥‥美しい‥‥。」
思わず耳を疑った。すると彼が急に私の前に跪いた。そして冒頭に戻る。
「結婚して、くださりマセンカ?」
ウルウルと瞳を潤ませこちらを見つめる彼。言わずもがな整った表情の彼にそんな事をされると悪いことをしている気がする。
「申し訳ありません。私は次期当主として自分の家を開ける訳にはいかないのです。どうかご容赦ください。」
それを聞くとあからさまに落ち込むアハマド王子。子犬の尻尾と耳が生えている様に見える。
「そうデスカ。仕方ありまセン、15歳になって、学園に入った時、また、プロポーズしマス!何度だってしマス、諦めませんカラ!!」
そう言って立ち上がった王子はニコッと微笑んで私の手を引いた。
「だから、その日まで、ちゃんと覚えていて、下さいネ。マイスイート。」
そう囁かれて頬に柔らかい感触が伝わる。ルドルフの戸惑う声が聞こえる。ユーリを含めた侍女たちの小さな悲鳴が上がる。
顔が熱い。きっと今の私の顔は真っ赤だ。なんだこの王子。10歳のくせにませてる!!
「フフッ‥‥顔が真っ赤で、熟れた果実の様に、甘そうデスネ。食べちゃいマスヨ?」
「ちょっ‥‥やめ‥‥」
拒絶しようと彼の胸を押す。しかしそれを制するかの様に腰に手を当て引き寄せられる。
「だぁめ。また、いつ会えるか、分かりません。だから、こうして、抱きしめさせテ。」
ギュウッ‥‥と愛しむ様に抱きしめられて、上手く拒絶できない。前世では絶対抱きしめられてもドキドキしない様な年齢だ。だってこんなに色っぽいけど、彼は10歳児、10歳児だから!!
「あなたは、柔らかくて、折れそうデスネ。ちゃんと、ご飯、食べてくださいネ。」
耳元で囁くのをいい加減やめてほしい。くすぐったくて身じろぎするが、それを止めるかの様に腕の力が強くなる。
「っ‥‥。」
ちょっと腰が抜けそうになった時、ようやく彼から解放された。
「抱きしめただけなのに、そんな、ドキドキなさるんデスネ。可愛い‥‥。」
反応に困ってしまい目を逸らした時、アハマド王子の従者の一人が部屋に入ってきた。
「王子、馬車の修理が完了致しました。参りましょう。」
「もう、お別れ、デスカ。また、会いに来マス。では」
そう言い残し、彼は屋敷を後にした。
「はぁぁあ〜〜‥‥。」
「く、クリス様!よく耐えられました!」
ユーリが私を励ましてくれる。ルドルフはあれから全く動かない。騎士というのはそんなにもそういう事に堪え性のない生き物なのだろうか。
学園での気がかりが一つ増えたな。
「ワタシと、結婚、してくだサイ。」
「は?」
片言の言語。キラキラした私とはまた違う紫色の瞳。少し癖のある黒髪の上には透けたヴェールの様な物が被さっている。この国ではあまり見られない褐色の肌。前世での中東アジアを思わせる彼は友好国のアハマド王子。
「わ、私は男ですよ。」
「構いませン。我が国でハ、同性婚も、認められていマス。」
それを聞いて少し安心する。びっくりした、一瞬女だってバレたかと思った。けれど私の後ろにいるユーリとルドルフは未だに目を見開いて固まっている。
アハマド王子が我が屋敷にいるのには勿論事情がある。私達が15歳なると入学するウェリントン魔法学園。彼は交流のためにそこに留学する。その下見として今日は訪れたらしい。だが道中、馬車の車輪が故障したとの事でどこか休める場所はないかと探していたら我が家の近くだったという事だ。
そこでせめてものもてなしと同い年の私を話し相手としてアハマド王子がいる部屋に入れた。すると彼の第一声
「ナンテ‥‥美しい‥‥。」
思わず耳を疑った。すると彼が急に私の前に跪いた。そして冒頭に戻る。
「結婚して、くださりマセンカ?」
ウルウルと瞳を潤ませこちらを見つめる彼。言わずもがな整った表情の彼にそんな事をされると悪いことをしている気がする。
「申し訳ありません。私は次期当主として自分の家を開ける訳にはいかないのです。どうかご容赦ください。」
それを聞くとあからさまに落ち込むアハマド王子。子犬の尻尾と耳が生えている様に見える。
「そうデスカ。仕方ありまセン、15歳になって、学園に入った時、また、プロポーズしマス!何度だってしマス、諦めませんカラ!!」
そう言って立ち上がった王子はニコッと微笑んで私の手を引いた。
「だから、その日まで、ちゃんと覚えていて、下さいネ。マイスイート。」
そう囁かれて頬に柔らかい感触が伝わる。ルドルフの戸惑う声が聞こえる。ユーリを含めた侍女たちの小さな悲鳴が上がる。
顔が熱い。きっと今の私の顔は真っ赤だ。なんだこの王子。10歳のくせにませてる!!
「フフッ‥‥顔が真っ赤で、熟れた果実の様に、甘そうデスネ。食べちゃいマスヨ?」
「ちょっ‥‥やめ‥‥」
拒絶しようと彼の胸を押す。しかしそれを制するかの様に腰に手を当て引き寄せられる。
「だぁめ。また、いつ会えるか、分かりません。だから、こうして、抱きしめさせテ。」
ギュウッ‥‥と愛しむ様に抱きしめられて、上手く拒絶できない。前世では絶対抱きしめられてもドキドキしない様な年齢だ。だってこんなに色っぽいけど、彼は10歳児、10歳児だから!!
「あなたは、柔らかくて、折れそうデスネ。ちゃんと、ご飯、食べてくださいネ。」
耳元で囁くのをいい加減やめてほしい。くすぐったくて身じろぎするが、それを止めるかの様に腕の力が強くなる。
「っ‥‥。」
ちょっと腰が抜けそうになった時、ようやく彼から解放された。
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