そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

エマvs牙、角、ガケトカゲ

 俺は、女冒険者、狐人間に連れられて狼とガケトカゲがいる森の西側へと向かって歩いている。
 連れられている筈なのに俺の肩にどちらも乗っている。
 連れられているんだよな? おかしくないか?

 「いやぁ、ゴーレム君がいると移動も早いし疲れないから助かるよぉ」
 「そうですよね、大きいから1歩の歩幅が違いますし、景色も良いですもん!」 
 「お、話がわかるねぇ」
 「狐さんこそ」

 すっかり意気投合している1人と1匹、おい、さっきまでの言い合いはなんだったんだ。
 俺はすっかり置いていかれている気がする。
 これはいつの間にか俺の静かに暮らす計画は失敗に終わってしまう。
 どうにかしなければ。

 そんなことを1人考えていると、つい最近できた狼の集落へとついた。
 狼達は何故かガケトカゲを囲みあっちこっちに俊敏に移動していた。
 一方のガケトカゲは時々飛び付いてくる他のグラスウルフを避けるとその場所にハンマーを叩きつけてくる。

 「へぇ、どうやら戦闘の訓練をしているみたいだねぇ」
 「ほぅ、魔物って訓練をするんですね! 初めて知りました!」
 「いや、普通はしないよ、でも私達は上に上がりたいものだからね、ほんとは角にこそ本腰入れて貰いたいが君の事が先だね」

 あー、やっぱり模擬戦というやつだったか。
 なかなか言い動きだな、しかし、あの囲みかたは何処かで見たことが有るような気がするな。
 気のせいだろう。

 「おーい、牙、ガケトカゲ君、ちょっと言いかなぁ?」
 「む、中止だ! ……これは尻尾殿何用で、む、人間、ゴーレム殿が追い払ったのでは?」
 「ゴーレム君が呆れるほどの根性を見せてねぇ、他の皆に認められるならもう1度話し合う事になったよぉ」
 「ふむ、それで、我とガケトカゲ殿に審査をしてもらうためにと言う訳だ。ガケトカゲ殿、こちらへ!」

 物分かりが良いな、この狼は、ガケトカゲなんてこっちにも気づいてなかったからな。  
 あれはのんびりしすぎてアホだ。

 「んだ、オラになんか用だべ?」
 「うむ、人間殿がこの森に滞在したいそうだが、我らの意思をききたいそうだ」
 「新しい人がくるべ? オラは大歓迎だべー!」
 「うむ、本来審査をするのだが……ダメだな話を聞いておらん」
 「多分あの調子だとどっち道賛成派だねぇ」
 「うむ、ここは我がしっかり審査をするとしよう」

 確かにどうみても話を聞いていなくて危機感の欠片もないガケトカゲが審査なんて勤まるわけがないか。
 でも、狼も大概だと思うけどな。  
 雰囲気でわかる、お前賛成派。

 「それで、牙、どう審査をするつもりなんだい?」
 「うむ、我の部下と戦ってもらおう、安心してくれ降参したら終わりだ、勝てば認めよう」
 「牙がやる訳じゃ無いんだねぇ」
 「うむ、個人としてはこの森に奥のは賛成だからな、だが、我の部下にも勝てないのならば心苦しいが去ってもらう」

 やっぱり賛成派だったな、ここの魔物は正直、人への警戒心が軽い。
 女冒険者は本当に口だけなのかも知れないと言うのに。

 「ゴーレム君、私達の警戒心が薄すぎる事を考えているのは感じてるよ。でもね、人間が1人いれば情報収集に於いては役に立つのは事実だよぉ、私も気軽には行けないからねぇ、私が行って森に万が一があれば取り返しが着かなくなる。そういった意味では人間がいることは必ずしも悪くはない」

 これは、魔物の言葉だな、女冒険者が何を言っているのか理解ができていなかった。

 「それで、やるか? やらないか?」
 「……やります! やらせてください! 冒険者としても実力を見せてあげます!」

 俺の肩を飛び降りながら、女冒険者はそう言う。
 狼も頷いて、自らの部下を呼び、先ほどガケトカゲ達が戦闘をしていた場所へと移動すると、お互い構えた。

 「はじめ!」

 狼が吠えると、グラスウルフはその俊足を活かし、飛び掛かる、それを転がるようによけた女冒険者はグラスウルフの着地の瞬間を狙った後ろ回し蹴りを放つ。

 グラスウルフは着地と同時にその場に深くしゃがみ、回避をすると体勢を立て直し、距離を取らず空かさず飛び掛かる。

 女冒険者はグラスウルフの前足をがっちりつかみ、棒立ちをする。グラスウルフは万歳のポーズでプランプラン浮いてる状態だ、微妙な空気が数秒流れる。

 「ま、負けました、この状態は無理です牙様」
 「うむ、流石にそう言う負け方をすると思わなかった、尻尾殿、結果を」
 「うん、勝者、人間君だよぉ」
 「やりました! やりましたよぉ!」

 グラスウルフを掴んだままくるくると回る女冒険者。
 ハンマー無げのようになっており、掴まれているグラスウルフは目を回していた。

 「じゃあ、これで、牙とガケトカゲの許可を得た訳だねぇ、それじゃあ、次は角の元へと行こうかぁ、ゴーレム君、よろしくぅ」

 やっぱりか、どちらも俺の肩に乗り、仕方ないので東側へと回ることにした。


 おっさんは直ぐに見つかった。
 いや、集落にいた訳じゃない、東側へと入った後、直ぐに酒の瓢箪を持ったまま爆睡していた。
 木の枝に引っ掛かっていてなお寝れるとは酔っぱらいは恐ろしいな。

 「ゴーレム君、起こしてあげなよ」

 自分でやれよ、仕方ない。
 俺はおっさんが寝ている木の幹を殴りその振動で枝に引っ掛かってたおっさんが頭から落ちた。

 「いってぇな! 何すんだコラ!」
 「こっちの台詞だよぉ、なんでそんな所で寝てるのさ」
 「んあ? 尻尾とゴーレムと……人間!? まだ居やがったのか! 俺がぶっ殺してやる!」
 「落ち着きなって、角君に頼みがある。この人間君をこの森に置くかの話なんだけどねぇ」
 「あ!? そんなの反対に決まってんだろうが! この前の話で決まった筈だろ!」
 「いや、それがね彼女しつこくてねぇ、私達の出す条件をクリアできたら話し合いの場を設けようと約束しちゃった! てへっ!」

 可愛くねぇよ、ほら、おっさんみてみろ。
 「何言ってんだコイツ」って顔してるだろ。
 よし、頑張れおっさん、お前が最後の砦だ。

 粗方説明が終わったらしいな。
 少し考えているおっさん、考えることなんてできたんだ。

 「おい、ゴーレム、なんか下らねぇこと考えてないよな?」

 はて、何の事やら。

 「それで、こちらが出す審査をねぇ……そうだな、俺を満足させる酒を持ってこい」
 「あ! それなら私が居座ることを許可してくれたら街に行く遂に持ってきますよ!」
 「何!? 人間の酒か!? ホントだな! よし、合格!」

 この酔っぱらいが!
 今までで一番アッサリとしてるじゃねぇか!
 条件を逆に叩きつけられてんぞ!

 「すんなり言って私は驚きだよぉ」
 「ふふふ、私、約束は守る女ですから、期待していてくださいね!」
 「楽しみにしてるぜ!」
 「これで、話し合いを設けてくれるんですよね?」 

 ふむ、これで全員終わったか?
 いや、まだだな、何だかんだで着いてきてはいるけれど狐人間の奴自分は1度も条件を出していない。

 「まだだねぇ、私が残ってるよぉ」
 「そ、そんな! でも着いてきてはいたじゃないですか!」
 「着いてきただけさ、私は何の条件も出しちゃあいないよぉ」

 通訳を買って出ただけだからな。
 どんな条件を出すか楽しみだな。

 「私の条件は、ゴーレム君の棲む祠の中を調べることだよぉ」
 「ん? 祠? あ、あれですか、私まだ入ってませんでした。てっきりゴーレムさん以外の人が住んでるかと思ってましたよ。」

 なるほど、人間を使う言い機会だからな、俺は祠に多分入れるがでかすぎて入らないからな。
 丁度良い、なかなか良い条件だ。

 「調べるのは明日、私は牙、角、ガケトカゲを呼び祠に行くよ、調べれば話し合いを設ける手筈だからね、明日やってくれる方がこちらの都合も良い」

 確かに、今日はもう暗くなっているからな。
 調べるにも中が暗い可能性がある。
 日が高い内にやるのが無難か。

 「分かりました。では、今日のところは?」
 「解散、と言うことで良いよぉ、何が起こるかわからないからねぇ、少しでも休んでいてくれ。では、また明日」

 アイツ、多分女冒険者が来てからずっとこの事を考えていたな。
 さすがは狐、セコい事をする。

 「なんか手のひらの上で踊らされている気がします。」

 こっちも少し気づいているみたいだな。
 まぁ、明日になればわかるだろう。
 俺の事についても何かわかると良いんだが。

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