そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

殺害事件

 いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
 多分冷静な俺がここまで取り乱しちゃってるよ。
 やってらんねぇぜ。

 もう一回川に写る恐らく俺の姿を確認する。
 うん、ゴーレムだな。
 いや、もしかするとゴーレムが水に沈んでるだけじゃね?と思うけどそんなわけがない。

 決定、俺、ゴーレム。
 体は、うん、不自由なく動く。
 間接部分どうなってるんだか。
 いかんいかん、何時までも川にいたら風邪を引く。

 取り敢えず、元いた場所まで戻ってみた。
 いやぁ、意外とすんなり歩けたな。
 手足が2本ずつだったんだが何の問題もないな。
 むしろ馴染みがあるような気分だ。

 さて、俺がいた場所は、なんだ。
 祠って言うんだろうな。
 蔦や苔が所々に生えてて、古びれた感じ。
 それと、石で出来ているんだが、俺の体と同じものだろう。
 そして、一番目立つのが俺が無理やり出てきた場所だろう。
 この祠そこそこ大きいのだがその真ん中に俺がいたと思われる。
 なにせ、ボロボロになってるからな。
 そして、目の前にある祠の入り口だ。
 中が気になるけど小さくて入れないな。
 小人の様な物達が使っていたのだろうか。
 俺の半分程しかない。

 一先ず俺の身の回りは確認したな。
 さて、その辺でも散歩してみようかな。
 なにせ、2ヶ月ぶりの行動だからな。
 取り敢えず適当に進むとしよう。





 迷った。
 ここはどこだ。
 まさに秘境だな。
 草と木ばっかりだ。
 ここはどこの山なのだろうか。

 まぁ、場所なんぞ言われてもわからんのだが。
 どれくらい歩いただろうか。多分二時間くらいだな。全く景色が変わらないせいで困ったぞ。
 取り敢えず祠には戻っておきたい。
 目安として使えるからな。

 というか良く見ると俺が歩いた場所は結構拓けていた。
 なんだ、普通に行った場所から戻れば良かっただけじゃん。
 確か昼過ぎに動けるようになって、結構な時間歩いたからな、辺りが暗くなってきた。
 戻る頃には夜になっているだろうな。
 でも動けない間も別に真っ暗でなにも見えない何でことは無かったな。
 走れはするのだが、別に急ぐことも無いだろう。
 ずっと同じペースで歩き続けるとしよう。

 
 暫く歩いた。
 そして俺は森の中で立ち尽くしていた。
 目の前に変な奴がいるからだ。

 緑色の皮膚を持っためちゃくちゃ小さい奴。
 顔は歪んでるし、着ているものもボロボロだ。
 はっきりいって可哀想なやつだ。
 こいつは魔物だな。
 名前も何故かわかる。

 ゴブリンって言うやつだ。

 不思議なことに俺は、何者だったのかは分からないそれとも何者でも無かったのかも知れないが、
 微妙に知識だけはある。
 木を木と認識できるし、こいつが魔物でゴブリンと言う名前で有ることも何故かわかる。
 そして、俺ことゴーレム。
 俺も魔物だな。

「オイ! テメェ! ナニモンダ!」

 しゃがれた声で誰かが話しかけている。
 一体どこから?

「オイ! ムシシテンジャネェヨ!」

 下にいるゴブリンがピョンピョン跳ねている。
 全然可愛くない寧ろキモい。
 あー、ハイハイ、忙しいんであっち行って貰えるか。

「オイ! ハナシヲキキヤガレ! コノ、デカブツ」

 コイツ……もしかして俺に話しかけているのか?
 しかもなんか偉そうだな。

「ココハオレサマノ、ナワバリダ! デテイケ!」

 ほうほう、どうやら俺は、勝手に不法侵入を犯していたようだ。
 仕方ない大人しく出ていってやろう。
 いや、立ち塞がるなよどけよ。

「シンニュウシタンダ! ナニカオイテケ!」

 コイツ本当に偉そうだな。
 ゴブリンは知能が低くて高価そうなものが好きらしいな。
 残念だが無視だ。
 俺は何も持っていない。

「ムシスンジャネェヨ! コノ! カッテェ!」

 む、ゴブリン流のあいさつか?
 まぁ確かに、ご近所付き合いは大事だよな。

 俺は、挨拶を返すために右腕を振った。
 すると気付かずに俺の足へと挨拶をしているゴブリンは俺の手に辺り真横へとぶっ飛んでしまったのだ。

「チョ! チョットマッ  ブヘェ!」

 俺の掌は彼の肩に当たると、彼は何故か横っ飛びになって茂みへと消えた。
 面白い人だ仲良くなれそうだな。
 どこに行ったのか確かめるためにゴブリンの元へ行くがそこには無惨な光景が広がっている。

 誰にやられたのだろうか。
 全身の骨が砕けているのか、変な方向にひしゃげていた。
 そして、様々な臓器が潰れたのか、大量に血を流し、死んでいたのだ。
 どうやらこの森にはかなり恐ろしい魔物がいるらしい。 
 そして、俺の初のご近所さんを殺した罪、償わせてやる!

 まだ遠くには行っていないだろう、探してみることにしよう。

 捜索すること一時間。
 何の痕跡も見つからなかった。
 犯人は相当な手練れらしいな。
 俺も襲われないようにさっさと帰るとしよう。

 何とか戻ってこれたが、しまった。
 ゴブリンの墓を作ってやるのを忘れていた。
 今から戻っても良いが、あのゴブリンを殺害した犯人に俺が襲われるかも知れないしな。
 今日動くのは止めておこう。


 気分は寝たつもりだが全く寝ていない俺は、夜が明けた後、早速ゴブリンの死体の方へと向かっていく。
 するとどうだろうか。
 昨日まであったゴブリンの死体が無くなっているではないか。
 昨日までは確かにあった。
 もしやゴブリンを殺した奴が片付けたのかもしれない。
 犯人は現場へ戻るとは良く言ったものだ。
 あのまま見張っていれば取っ捕まえたものを、一体どこのどいつだと言うんだ。

 仕方ない。
 犯人探しも含めて探索をするとしよう。
 ここは物凄い広いからな。  
 気長に動くとするさ。


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