俺、自分の能力判らないんですけど、どうしたら良いですか?
第五話〜向き合うこと〜
 さて、一体何処に行ったんだ?こはるちゃんの母親は。まずはこはるちゃんに聞いてみるか
琥太郎「こはるちゃん、お母さんと一緒に居た場所って覚えてるかな?」
こはる「うーん、わかんない」
琥太郎「そっか、わからないか・・・。」
 おいおい、いきなり手掛かりがなくなったぞ
 取り敢えずこの子の覚えてる範囲で通った道を地道に辿るしかなさそうだな・・・
琥太郎「こはるちゃんはここに来るまでに何処を通ったか覚えてるかな?」
こはる「うん!覚えてるよ!」
琥太郎「じゃあ俺を通ったところに案内してくれないかな?」
こはる「いいよ!」
 よし、早速案内して貰おう。仮にここに来るまでに母親と別れたなら、今もこはるちゃんを探している可能性が高い。急いだ方がいいな・・・
琥太郎「じゃあ案内よろしくね?」
こはる「うん!」
琥太郎「と、いうわけだ。今からこの子の母親を探して来る。みんなは避難誘導をしていてくれ」
宗「ちょいと待ちぃや。単独行動はするなっていわれへんかったか?それにこはるちゃんのお母さんも避難してるかもしれへんのやろ?だったらここで避難誘導をするべきちゃうんか?」
 確かに宗の言うことも一理ある。だが、こはるちゃんの母親が避難しているという確証もない。それにもし、なんらなのトラブルに巻き込まれていた場合を考えると探しに行くべきだ
琥太郎「いや、俺は探しに行く。こはるちゃんの母親がなんらかのトラブルに巻き込まれている可能性もあるんだぞ?」
宗「せやけど・・・」
澪「単独行動で無ければ良いのですね?」
琥太郎・宗「「?」」
 どういう事だ?単独行動で無ければいいって?そりゃあ教官は単独行動はするなって言ってたが・・・
宗「どういうことや?」
澪「文字通りの意味ですわ。宗は単独行動をさせたくない、琥太郎はこはるちゃんの母親を探しに行きたい。ならば二人て行けばいいのです!」
 なんか澪のテンションが高いな・・・
琥太郎「じゃあ誰が俺と一緒に行くんだよ。避難誘導は全員上手く回してるんだから離れられないんじゃ・・・あ。」
一人いた。質問責めにされて狼狽えてたやつが。
澪「そう、麗奈が琥太郎と行けばいいのです!」
宗「それや!」
澪「本来なら皐月といって貰いたかったのですが、皐月が居ないと避難が上手くいきませんの」
 確かに皐月は人との距離を縮めるのが上手いからな、混乱する避難誘導には必要不可欠な存在だ。それに、麗奈ってあんま役に立ってないし
琥太郎「わかった俺は構わないが麗奈には聞いたのか?」
澪「それなら大丈夫ですわ。琥太郎が麗奈に頼めばいいのですわ」
琥太郎「それもそうか。こはるちゃんは麗奈が一緒でもいいかな?」
こはる「いいよ!れいなお姉ちゃんともっと仲良くなりたい!」
琥太郎「だ、そうだ。じゃあ麗奈に頼んでくる」
澪「はい、宜しくお願いしますね?」
琥太郎「了解。」
ーー澪ーー
 成功ですわ!ふふっ、全く麗奈も恥ずかしいのか大胆なのかわかりませんね。好きっ!という気持ちはバンバン伝わってくるのですが・・・それに気づかない琥太郎も琥太郎ですね。このまま二人がいい感じになったくれると一友人としては喜ばしいのですわ!
澪「ふふっ」
琥太郎「どうした?急に笑い出して?」
澪「っ、な、なんでもありませんわ。」
ーーあ、あぶなかったですわ、顔に出てしまうなんて、私もまだまだですわね。
琥太郎「そうか。よし!それじゃ行こうか?」
こはる「うん!」
ーー琥太郎ーー
 先ずは麗奈に頼みに行かないとな。受けてくれるといいんだが・・・
琥太郎「麗奈」
麗奈「何?」
琥太郎「今からこはるちゃんの母親を探しに行くんだが、麗奈も来てくれるないか?」
麗奈「ん」
琥太郎「そうか助かる。なら早速こはるちゃんに案内して貰おう。宜しくこはるちゃん」
こはる「うん!まかせて!
麗奈「・・・。」
琥太郎「どうかしたのか?」
麗奈「ん、なんでもない」
こはる「がんばろうね!れいなお姉ちゃん!」
さて、人数も揃ったし、行くとするか
 それから俺たちはこはるちゃんの案内の元、来た道を辿っていった。時々不鮮明な所もあったがそこはまだ子供でこんな状況じゃ仕方ないだろ。今いるのは最初に魔物が出現した公園だ
こはる「ここからよくわかんない」
琥太郎「そっか。ありがとう」
 俺には今一つの仮説がある。もしその通りだとしたらここに母親が居るはずだ
琥太郎「少し休憩しようか?流石に歩き疲れちゃったよね」
こはる「うん・・・」
 元気が無いな、やはり母親がいなくて寂しいのだろう。そんな中でこの子から離れるのは心苦しいがやるべき事がある
琥太郎「少しトイレに行ってくる。麗奈この子を見ててくれ」
麗奈「ん」
琥太郎「すまんが頼む」
 もちろんトイレに行く訳じゃない。こはるちゃんの母親を探すのだ、いや、母親だったものと言うべきか。
琥太郎「あぁ、ここに居たのか、あんた・・・」
 公園内の魔物が出現したと思われる場所。酷く荒れていて遊具などは最早原型を留めていない。そこに誰かを庇うような体勢で背中から内臓が溢れる程の傷を負い死んでいる女性の死体が一つー 
 ーーーこはるちゃんの母親だろう
琥太郎「こはるちゃんなら無事に保護したよ・・・だから、せめて安らかに。」
 こはるちゃんの母親の死体を木の下に横たわせる。後で教官に報告しよう。しっかりと弔って貰わなければ
琥太郎「すまん、遅れた」
こはる「いいよ!」
麗奈「ん」
 さて、俺の目的は達成したがこはるちゃんにどう説明しようか。真実を伝えるにはまだ幼すぎるだろう。仕方ないこはるちゃんには黙っていることにしよう
琥太郎「お母さん見つかった?」
こはる「ま、だだ、よ?う、ひぐっ、うう・・・
琥太郎「大丈夫。きっと見つかるからね?泣いてないで行こう!」
・・・うわぁぁぁん!!」ダッ!
琥太郎「っ!!」
麗奈「琥太郎・・・」
 しまった・・・まだこはるちゃんは6歳なんだ。どれだけ明るく振舞っても寂しいだろうに。母親と離れ離れのこの状況で普通笑顔で居られるわけがない。くそッ!・・・そんな事もわかんねぇのか俺は!急いで追いかけないと!
 しかしどうしたもんか、こはるちゃんの母親は亡くなっているからまず母親には会えない。かと言って泣いてるこの子に母親が亡くなっている事実を話す事は酷だろう。うーん、駄目だ、何も思いつかん。仕方ない、今はこの子を慰める事に専念しようそしてこの場から今すぐ離れよう。もし母親の遺体がこはるちゃんに見つかったらマズイ
まてよ?確かその方向はさっき俺が来た方向ーーー
琥太郎「しまッーーー
こはる「お母さん?」
 心臓の凍りつく音がした。
 
こはる「お母さん?寝てるの?待ってて!今お兄ちゃんを呼んで来るから!」
こはる「お兄ちゃん!こっちに来て!お母さんがね!いたの!こっちこっち!」
琥太郎「・・・」
麗奈「?・・・行かないの?」
琥太郎「あぁ、今いくよ・・・」
 見つかっちまった、もう隠し通す事は出来ない。こはるちゃんは真実を知る事になるだろう。そうなった時俺は何をしてやれるんだ?
こはる「お兄ちゃん、ありがとう!お母さん見つかったよ!ねぇ、お母さん起こすの手伝って?」
 そう言いながらこはるちゃんはお母さんを起こそうとする
こはる「ねぇねぇ、お母さん、お兄ちゃん連れて来たよ?一緒に行こう?ねぇ、起きてよ、起きっててば〜」
 当然母親が起きる事はない。死んでいるのだから
 中々起きない自身の母親を起こそうと、体を揺すり始める
こはる「ねぇねぇ起きてよ〜」
 ーーーーーーーーベチャ
こはる「え?」
琥太郎「・・・」
 こはるちゃんのその小さな手には赤い液体が、べっとりと付いていた
 ドサリ、こはるちゃんが揺らした事により母親の遺体がうつ伏せに倒れる
 その背中から臓物が垂れ下がり赤い液体が周囲を染め上げる
こはる「あ、ああ、あぁぁぁぁ・・・
麗奈「ひっ」
琥太郎「・・・」
 あぁ、ついに見てしまった、見させてしまった。こんなに小さな子供に、まだ幼いその心に
こはる「おかあ、さん?ねぇ、お母さん?ねぇ、起きてよ?一人にしないでよ!置いてかないって、寂しくさせないって言ったじゃん!嘘つき!ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇーーーー」
 ーーその光景は昔の自分を見ているようだった
 いや、まさしくその通りなのだろう。親父はきっとこんな風に俺を見ていたのだろうか
 今ならわかる、この子にどうさせるべきか、親父が俺の背中を押したように、今度は俺がこはるちゃんの背中を押す番だ。同じ体験をしたからこそできる事を
琥太郎「こはるちゃん」
こはる「ねぇねぇねぇねぇねぇーーー
琥太郎「こはるッ!!!!」
こはる「ッ!?」
 勇気を振り絞れ。親父みたく上手く言葉は掛けられないだろう。もしかしたら伝わらないかもしれない。だけど、今言わなければ、今ここで言わなければ、この子の心が壊れてしまう
琥太郎「よく聞け」 
 親父、俺に勇気をくれーーー
琥太郎「お前の母親は死んだ」
こはる「!!」
麗奈「琥太郎」
琥太郎「黙っててくれないか」
 そう言って麗奈を睨みつける
麗奈「ひっ」
 すまない、麗奈。だけど今は邪魔をしないでくれ
琥太郎「もう一度言う、お前の母親は死んだ」
こはる「違うもん!」
琥太郎「いいや、違わない。お前の母親はsーー「違うもん!」
こはる「お母さんは!お母さんは、死んでなんかないもん!怪我してるだけだもん!まだ大丈夫だもん!だからお兄ちゃんが助けてくrーー「現実を見ろ!!」
こはる「ッ・・・」
 こんな小さな子供に何を言ってるんだろうか、俺は
だって6歳だぞ?まだ友達と遊んだり親に甘えたりする年齢だ。そんな子供に"現実を見ろ"なんて言っても分かるわけがない
 それに、今の口調もそうだ。ずっと年上の人間からこんなキツイいい方をされてるんだ、相当な負担がこの子には今かかってるだろう
 だが、今克服させないといけない、今一歩踏み出させないといけない
 俺が両親の死という過去から立ち直れているのはもちろん周囲の人たちの助けもあるだろう。だが一番大きいのは親父があの日、俺を無理矢理にでも現実と向き合わせたからだと思う
 向き合わせる事でしっかりと死を実感させ導く事でないと立ち直れないと思う。だから、例え嫌われてでも俺は心を鬼にしてこの子に現実を教える
琥太郎「お前の母親は死んだ、これは変えようのない事実だ。だがそれはお前の為なんだ」
こはる「え?」
琥太郎「俺はお前に嘘を付いていた。さっきは本当はお前の母親の死体を探していたんだ。その時お前の母親はどんな体勢で死んでいたと思う?」
琥太郎「ーー誰かを庇うように死んでいたさ。庇うように、蹲るようにして死んでた、背中に大きな傷を負ってな」
麗奈「!」
 どうやら麗奈は気付いたらしい
琥太郎「これがどういう事か分かるか?ーーーお前の母親はお前を庇って死んだんだ」
こはる「!!」
琥太郎「"私のせいで"なんて思うなよ」
こはる「え、な、何で!お母さん、は!こはるを庇ったからしんじゃったんだよ?こはるがいなければ、こはるが・・・」
琥太郎「勘違いするなッ!!お前は母親に守られたんだ!お前の母親は、自分の命よりお前を守ることを選んだんだ!それを"私がいなければ"だと?巫山戯るな!お前は母親の分まで、生きなければいけない!母親が守ってくれた命だぞ!お前は母親に胸張って生きろ!」
こはる「!!!」
 困惑してるだろうな、当然だ。いきなり一人になって、母親が死んで、しかも自分を守る為に死んだと聞かされた。困惑して当然だろう。今の俺に出来るのは、この子に寄り添ってあげる事だけだ
琥太郎「いいか、今、ここで、母親に別れを告げて来い。"今までありがとう"って"守ってくれてありがとう"って伝えて来い。いいな?」
こはる「・・・うん」
 其処にはもう、泣き噦る子供はいなかった。今いるのは、母親の死を乗り越えようとする一人の勇気ある少女の姿が其処にあった
こはる「お母さん・・・今までありがとう、守ってくれてありがとう、お母さんのこと大好きだよ。バイバイ、お母さん」
琥太郎「よく出来ました」
 上手く伝えれただろうか、伝わってるといいな
そう思ってこはるの頭を撫でる
こはる「ありがとう、お兄ちゃん」
琥太郎「え?」
こはる「お兄ちゃんのお陰でこはる、勇気がでたよ、ありがとう」ニコッ
 あぁ、よかった。また笑顔がみられて
ーーその時、唐突に麗奈がこはるを抱きしめた。
麗奈「」ギュッ
こはる「っ!?///」
麗奈「大丈夫。私達が、一緒だよ?」ナデナデ
麗奈「安心、して?」ギュッ
 驚いた、まさか麗奈からこはるを抱きしめるなんて。てっきり子供嫌いだと思っていたんだが・・・
 それに麗奈の顔がとても優しげだ。いつかのパフェを食べた時とは違う、聖母のような慈愛に満ちた微笑を浮かべ、こはるちゃんを抱きしめている
こはる「うん!ありがとう、れいなお姉ちゃん!」
麗奈「ん」
 これからこはるは苦労することになるだろう。もし、そうなったらこの子を支えてあげよう。俺を支えてくれた人達のようにーーー
琥太郎「こはるちゃん、お母さんと一緒に居た場所って覚えてるかな?」
こはる「うーん、わかんない」
琥太郎「そっか、わからないか・・・。」
 おいおい、いきなり手掛かりがなくなったぞ
 取り敢えずこの子の覚えてる範囲で通った道を地道に辿るしかなさそうだな・・・
琥太郎「こはるちゃんはここに来るまでに何処を通ったか覚えてるかな?」
こはる「うん!覚えてるよ!」
琥太郎「じゃあ俺を通ったところに案内してくれないかな?」
こはる「いいよ!」
 よし、早速案内して貰おう。仮にここに来るまでに母親と別れたなら、今もこはるちゃんを探している可能性が高い。急いだ方がいいな・・・
琥太郎「じゃあ案内よろしくね?」
こはる「うん!」
琥太郎「と、いうわけだ。今からこの子の母親を探して来る。みんなは避難誘導をしていてくれ」
宗「ちょいと待ちぃや。単独行動はするなっていわれへんかったか?それにこはるちゃんのお母さんも避難してるかもしれへんのやろ?だったらここで避難誘導をするべきちゃうんか?」
 確かに宗の言うことも一理ある。だが、こはるちゃんの母親が避難しているという確証もない。それにもし、なんらなのトラブルに巻き込まれていた場合を考えると探しに行くべきだ
琥太郎「いや、俺は探しに行く。こはるちゃんの母親がなんらかのトラブルに巻き込まれている可能性もあるんだぞ?」
宗「せやけど・・・」
澪「単独行動で無ければ良いのですね?」
琥太郎・宗「「?」」
 どういう事だ?単独行動で無ければいいって?そりゃあ教官は単独行動はするなって言ってたが・・・
宗「どういうことや?」
澪「文字通りの意味ですわ。宗は単独行動をさせたくない、琥太郎はこはるちゃんの母親を探しに行きたい。ならば二人て行けばいいのです!」
 なんか澪のテンションが高いな・・・
琥太郎「じゃあ誰が俺と一緒に行くんだよ。避難誘導は全員上手く回してるんだから離れられないんじゃ・・・あ。」
一人いた。質問責めにされて狼狽えてたやつが。
澪「そう、麗奈が琥太郎と行けばいいのです!」
宗「それや!」
澪「本来なら皐月といって貰いたかったのですが、皐月が居ないと避難が上手くいきませんの」
 確かに皐月は人との距離を縮めるのが上手いからな、混乱する避難誘導には必要不可欠な存在だ。それに、麗奈ってあんま役に立ってないし
琥太郎「わかった俺は構わないが麗奈には聞いたのか?」
澪「それなら大丈夫ですわ。琥太郎が麗奈に頼めばいいのですわ」
琥太郎「それもそうか。こはるちゃんは麗奈が一緒でもいいかな?」
こはる「いいよ!れいなお姉ちゃんともっと仲良くなりたい!」
琥太郎「だ、そうだ。じゃあ麗奈に頼んでくる」
澪「はい、宜しくお願いしますね?」
琥太郎「了解。」
ーー澪ーー
 成功ですわ!ふふっ、全く麗奈も恥ずかしいのか大胆なのかわかりませんね。好きっ!という気持ちはバンバン伝わってくるのですが・・・それに気づかない琥太郎も琥太郎ですね。このまま二人がいい感じになったくれると一友人としては喜ばしいのですわ!
澪「ふふっ」
琥太郎「どうした?急に笑い出して?」
澪「っ、な、なんでもありませんわ。」
ーーあ、あぶなかったですわ、顔に出てしまうなんて、私もまだまだですわね。
琥太郎「そうか。よし!それじゃ行こうか?」
こはる「うん!」
ーー琥太郎ーー
 先ずは麗奈に頼みに行かないとな。受けてくれるといいんだが・・・
琥太郎「麗奈」
麗奈「何?」
琥太郎「今からこはるちゃんの母親を探しに行くんだが、麗奈も来てくれるないか?」
麗奈「ん」
琥太郎「そうか助かる。なら早速こはるちゃんに案内して貰おう。宜しくこはるちゃん」
こはる「うん!まかせて!
麗奈「・・・。」
琥太郎「どうかしたのか?」
麗奈「ん、なんでもない」
こはる「がんばろうね!れいなお姉ちゃん!」
さて、人数も揃ったし、行くとするか
 それから俺たちはこはるちゃんの案内の元、来た道を辿っていった。時々不鮮明な所もあったがそこはまだ子供でこんな状況じゃ仕方ないだろ。今いるのは最初に魔物が出現した公園だ
こはる「ここからよくわかんない」
琥太郎「そっか。ありがとう」
 俺には今一つの仮説がある。もしその通りだとしたらここに母親が居るはずだ
琥太郎「少し休憩しようか?流石に歩き疲れちゃったよね」
こはる「うん・・・」
 元気が無いな、やはり母親がいなくて寂しいのだろう。そんな中でこの子から離れるのは心苦しいがやるべき事がある
琥太郎「少しトイレに行ってくる。麗奈この子を見ててくれ」
麗奈「ん」
琥太郎「すまんが頼む」
 もちろんトイレに行く訳じゃない。こはるちゃんの母親を探すのだ、いや、母親だったものと言うべきか。
琥太郎「あぁ、ここに居たのか、あんた・・・」
 公園内の魔物が出現したと思われる場所。酷く荒れていて遊具などは最早原型を留めていない。そこに誰かを庇うような体勢で背中から内臓が溢れる程の傷を負い死んでいる女性の死体が一つー 
 ーーーこはるちゃんの母親だろう
琥太郎「こはるちゃんなら無事に保護したよ・・・だから、せめて安らかに。」
 こはるちゃんの母親の死体を木の下に横たわせる。後で教官に報告しよう。しっかりと弔って貰わなければ
琥太郎「すまん、遅れた」
こはる「いいよ!」
麗奈「ん」
 さて、俺の目的は達成したがこはるちゃんにどう説明しようか。真実を伝えるにはまだ幼すぎるだろう。仕方ないこはるちゃんには黙っていることにしよう
琥太郎「お母さん見つかった?」
こはる「ま、だだ、よ?う、ひぐっ、うう・・・
琥太郎「大丈夫。きっと見つかるからね?泣いてないで行こう!」
・・・うわぁぁぁん!!」ダッ!
琥太郎「っ!!」
麗奈「琥太郎・・・」
 しまった・・・まだこはるちゃんは6歳なんだ。どれだけ明るく振舞っても寂しいだろうに。母親と離れ離れのこの状況で普通笑顔で居られるわけがない。くそッ!・・・そんな事もわかんねぇのか俺は!急いで追いかけないと!
 しかしどうしたもんか、こはるちゃんの母親は亡くなっているからまず母親には会えない。かと言って泣いてるこの子に母親が亡くなっている事実を話す事は酷だろう。うーん、駄目だ、何も思いつかん。仕方ない、今はこの子を慰める事に専念しようそしてこの場から今すぐ離れよう。もし母親の遺体がこはるちゃんに見つかったらマズイ
まてよ?確かその方向はさっき俺が来た方向ーーー
琥太郎「しまッーーー
こはる「お母さん?」
 心臓の凍りつく音がした。
 
こはる「お母さん?寝てるの?待ってて!今お兄ちゃんを呼んで来るから!」
こはる「お兄ちゃん!こっちに来て!お母さんがね!いたの!こっちこっち!」
琥太郎「・・・」
麗奈「?・・・行かないの?」
琥太郎「あぁ、今いくよ・・・」
 見つかっちまった、もう隠し通す事は出来ない。こはるちゃんは真実を知る事になるだろう。そうなった時俺は何をしてやれるんだ?
こはる「お兄ちゃん、ありがとう!お母さん見つかったよ!ねぇ、お母さん起こすの手伝って?」
 そう言いながらこはるちゃんはお母さんを起こそうとする
こはる「ねぇねぇ、お母さん、お兄ちゃん連れて来たよ?一緒に行こう?ねぇ、起きてよ、起きっててば〜」
 当然母親が起きる事はない。死んでいるのだから
 中々起きない自身の母親を起こそうと、体を揺すり始める
こはる「ねぇねぇ起きてよ〜」
 ーーーーーーーーベチャ
こはる「え?」
琥太郎「・・・」
 こはるちゃんのその小さな手には赤い液体が、べっとりと付いていた
 ドサリ、こはるちゃんが揺らした事により母親の遺体がうつ伏せに倒れる
 その背中から臓物が垂れ下がり赤い液体が周囲を染め上げる
こはる「あ、ああ、あぁぁぁぁ・・・
麗奈「ひっ」
琥太郎「・・・」
 あぁ、ついに見てしまった、見させてしまった。こんなに小さな子供に、まだ幼いその心に
こはる「おかあ、さん?ねぇ、お母さん?ねぇ、起きてよ?一人にしないでよ!置いてかないって、寂しくさせないって言ったじゃん!嘘つき!ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇーーーー」
 ーーその光景は昔の自分を見ているようだった
 いや、まさしくその通りなのだろう。親父はきっとこんな風に俺を見ていたのだろうか
 今ならわかる、この子にどうさせるべきか、親父が俺の背中を押したように、今度は俺がこはるちゃんの背中を押す番だ。同じ体験をしたからこそできる事を
琥太郎「こはるちゃん」
こはる「ねぇねぇねぇねぇねぇーーー
琥太郎「こはるッ!!!!」
こはる「ッ!?」
 勇気を振り絞れ。親父みたく上手く言葉は掛けられないだろう。もしかしたら伝わらないかもしれない。だけど、今言わなければ、今ここで言わなければ、この子の心が壊れてしまう
琥太郎「よく聞け」 
 親父、俺に勇気をくれーーー
琥太郎「お前の母親は死んだ」
こはる「!!」
麗奈「琥太郎」
琥太郎「黙っててくれないか」
 そう言って麗奈を睨みつける
麗奈「ひっ」
 すまない、麗奈。だけど今は邪魔をしないでくれ
琥太郎「もう一度言う、お前の母親は死んだ」
こはる「違うもん!」
琥太郎「いいや、違わない。お前の母親はsーー「違うもん!」
こはる「お母さんは!お母さんは、死んでなんかないもん!怪我してるだけだもん!まだ大丈夫だもん!だからお兄ちゃんが助けてくrーー「現実を見ろ!!」
こはる「ッ・・・」
 こんな小さな子供に何を言ってるんだろうか、俺は
だって6歳だぞ?まだ友達と遊んだり親に甘えたりする年齢だ。そんな子供に"現実を見ろ"なんて言っても分かるわけがない
 それに、今の口調もそうだ。ずっと年上の人間からこんなキツイいい方をされてるんだ、相当な負担がこの子には今かかってるだろう
 だが、今克服させないといけない、今一歩踏み出させないといけない
 俺が両親の死という過去から立ち直れているのはもちろん周囲の人たちの助けもあるだろう。だが一番大きいのは親父があの日、俺を無理矢理にでも現実と向き合わせたからだと思う
 向き合わせる事でしっかりと死を実感させ導く事でないと立ち直れないと思う。だから、例え嫌われてでも俺は心を鬼にしてこの子に現実を教える
琥太郎「お前の母親は死んだ、これは変えようのない事実だ。だがそれはお前の為なんだ」
こはる「え?」
琥太郎「俺はお前に嘘を付いていた。さっきは本当はお前の母親の死体を探していたんだ。その時お前の母親はどんな体勢で死んでいたと思う?」
琥太郎「ーー誰かを庇うように死んでいたさ。庇うように、蹲るようにして死んでた、背中に大きな傷を負ってな」
麗奈「!」
 どうやら麗奈は気付いたらしい
琥太郎「これがどういう事か分かるか?ーーーお前の母親はお前を庇って死んだんだ」
こはる「!!」
琥太郎「"私のせいで"なんて思うなよ」
こはる「え、な、何で!お母さん、は!こはるを庇ったからしんじゃったんだよ?こはるがいなければ、こはるが・・・」
琥太郎「勘違いするなッ!!お前は母親に守られたんだ!お前の母親は、自分の命よりお前を守ることを選んだんだ!それを"私がいなければ"だと?巫山戯るな!お前は母親の分まで、生きなければいけない!母親が守ってくれた命だぞ!お前は母親に胸張って生きろ!」
こはる「!!!」
 困惑してるだろうな、当然だ。いきなり一人になって、母親が死んで、しかも自分を守る為に死んだと聞かされた。困惑して当然だろう。今の俺に出来るのは、この子に寄り添ってあげる事だけだ
琥太郎「いいか、今、ここで、母親に別れを告げて来い。"今までありがとう"って"守ってくれてありがとう"って伝えて来い。いいな?」
こはる「・・・うん」
 其処にはもう、泣き噦る子供はいなかった。今いるのは、母親の死を乗り越えようとする一人の勇気ある少女の姿が其処にあった
こはる「お母さん・・・今までありがとう、守ってくれてありがとう、お母さんのこと大好きだよ。バイバイ、お母さん」
琥太郎「よく出来ました」
 上手く伝えれただろうか、伝わってるといいな
そう思ってこはるの頭を撫でる
こはる「ありがとう、お兄ちゃん」
琥太郎「え?」
こはる「お兄ちゃんのお陰でこはる、勇気がでたよ、ありがとう」ニコッ
 あぁ、よかった。また笑顔がみられて
ーーその時、唐突に麗奈がこはるを抱きしめた。
麗奈「」ギュッ
こはる「っ!?///」
麗奈「大丈夫。私達が、一緒だよ?」ナデナデ
麗奈「安心、して?」ギュッ
 驚いた、まさか麗奈からこはるを抱きしめるなんて。てっきり子供嫌いだと思っていたんだが・・・
 それに麗奈の顔がとても優しげだ。いつかのパフェを食べた時とは違う、聖母のような慈愛に満ちた微笑を浮かべ、こはるちゃんを抱きしめている
こはる「うん!ありがとう、れいなお姉ちゃん!」
麗奈「ん」
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