俺、自分の能力判らないんですけど、どうしたら良いですか?

朝綾 夏桜希 因みに、イラストは「クロイ」さんのフリーイラストです

第十四話~開花の儀~

「よし、お前たちには、これから"開花の儀"を執り行い"異彩"の力に目覚めてもらう。一応説明するか。"開花の儀"とは、ipウィルスを体内へ取り込み、脳内に封印されている残り90%の脳の力を解放する儀式だ。この時、力の解放の副作用により、"異彩"の力が目覚める。そして、力を解放した人間──異彩持ちパレットは通常の人間の3~4倍の身体能力を有する。この為、普段は開拓団がウィルスを管理している。ここまで理解できてるか?」

 ──ウンウンと頷く生徒達。

「よろしい。今から君たちには血を提供してもらう」
「「はいぃぃぃ!?」」

 ──唐突な教官の発言に生徒達がざわつく。

「話を最後まで聞け!!」
「「はい!すいませんでした!」」

 ──一瞬で謝る生徒達。最早お決まりの茶番と化している。

「まぁ、血を提供と言ってもごくわずかな量だ。何故血を提供するかというと、ウィルスをお前たちの肉体へ馴染ませるためだ。ウィルスは本来肉体からしたら異物だ。そのまま肉体へ入れたら、拒絶反応を起こして最悪死に至る」

 (怖っ!?魔物と命を賭け合う前に、自分で命を賭けてんじゃん!)

 ──さすがに、このタイミングで騒ぎ出す生徒は居なかった。

「だから予め血と混ぜることにより、体内へ取り込み安くしている。──まぁ、死ぬときは死ぬがな」

 ──教官の言葉に固まる生徒達。

「まぁ、心配するな。事前の検査では、全員適正が有ったんだろ?なら大丈夫だ」

 ──今度はホッと息を着く生徒達。

 (実は事前に精密検査を受けていたのだ。二時間位時間を掛けて。ホント、開拓団って金を持ってるよなぁ)

「さ、説明は以上だ。"儀式の間"へ行くぞ」

 (解説ご苦労様です。画面の前の皆もわかったかね?
 ・・・はっ!俺は、今何を・・・ってそんなことより!今聞き捨てならないことを聞いたぞ!)

「教官?質問良いですか?」
「なんだ、何か不明な点でも有ったか?我ながら結構分かりやすい説明が出来たと思っていたが?」
「いや、分かる分からん以前に、"儀式の間"って何ですか?そもそも説明されてないんですけど・・・」
「あっ・・・」
「忘れてたんですか・・・」
「・・・」
「図星なんですね・・・」
「てへっ☆」
「えっ・・・」
「ッ、・・・///」
「自分で恥ずかしがらないでくださいよ・・・」

 ──やっぱ親子だわ。と、そう思わずには居られなかった。




 ◇◇◇◇◇




「こほん。では、説明を補足する。"儀式の間"とは、開花の儀を執り行う専用の施設で、其処には開花した異彩の属性と系統を調べる装置がある。まずお前たちにはこれを渡しておく」

 ──そう言って渡されたのは針だった。

「後は、いけばわかる。以上。では、行くぞ」

 (今度こそ解説ご苦労様です。いやぁ、ワクワクしてきたぞぉ!
 "異彩"だぞ!?あの摩訶不思議な"異彩"!!一体俺のはどんな能力なんだろうか!氷を操ったり、地からが上がったり、火に強くなったりするのかな?うおおおお!!ちょー楽しみ!!
 げふんげふん。としがいもなく取り乱してしまった・・・)

 ──琥太郎がそんな事を考えている内に、"儀式の間"に着いた。

「さぁ、ここが"儀式の間"だ」

 ──そう言って立ち止まった教官の後ろに佇んでいたのはとてつもない存在感を放つ門だった。

「「っ、!・・・」」

 思わず息を飲む。まるで、品定めをされているような、見定められているような。そんな威圧感を感じる。

「流石にキツいな・・・」

 ──ふと、そんな教官の声が聞こえた。

 (あれ?よく見ると教官の額に汗が滲んでる。まじかよ・・・教官が緊張するなんてどんな扉だよ。いや、団長にも緊張してたから案外チョロいのかもしれない)

「・・・ッ!!」

 ──ゾッと背中に悪寒が走る。

 (・・・おいおい、まじかよ・・・。何で悪寒がしたんだ?それも、扉のことを馬鹿にしたタイミングで。ははっ、まさかな・・・)

「大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫だ。少し扉の大きさに驚いてただけだ」
「ならいい」

 (てか、麗奈は特に何も感じてなさそうだな。天然だからか?あ、それなら澪も当てはまるじゃん。そうだ、気にするのはよそう。触らぬ神に祟りなしって言う素晴らしいことわざが日本にはあるのだから)

「よし、これより"開花の儀"を執り行う。お前たち、今から門の中へ入って貰う。いいか?門を潜るとき、絶対にしめ縄を跨ぐなよ。絶対にだ。跨いだ者は即刻退学とする。勿論異論は認めない。守れないものは学園を去ってくれて構わない。いいな?」

 ──教官の有無を言わせぬ気迫に生徒達に動揺が走る。

 (まぁ、驚くよな普通。たかが縄を跨いだ位で退学なんて馬鹿げてるとでも思ってんだろうな。俺か?俺はここ最近驚く事がたくさんあったからな、麗奈とか教官とか魔物とか、団長とか・・・。それにさっきの悪寒、あれをどうも無視できそうにないしな。
 っていうか、普通神社とかにある明らか神々しいを跨ぐとかどんだけ神経図太いんだよ。俺はまず無理だわ。あ、あそこにしてあるしめ縄、右綯みぎなえだ。ということは、ここは一応女神様の領域って事になるのか)

「いいな?では、開けるぞ。・・・開門!」

 ──まるで悲鳴のような音をて、門が開かれる。 開かれたその先は、果てしない暗闇が広がっていた。

「準備は出来ている、後はお前たちの覚悟の問題だ。先陣を切るのは誰だ?」

「俺が行く!」

 ──静寂に包まれる中、先陣を切ったのは青山あおやま 輝樹てるきだった。

 (わぁお。まさかのサーフィン野郎が先陣を切るとは。女子に良いところを見せたいのか?)

「フッ・・・」 ウィンクがきらーん
「「キャーーー///」」

 ──サーフィンやr・・・輝樹のウィンクに女子達が色めき立つ。

 ん?明らかに今、麗奈に向かってウィンクしてなかったか?なぁあ?

「・・・」 ぼけーっ

 まぁ、本人は全く気づいて無いけど・・・。にしても、ウィンクなんて使えるやつホントにいるんだな。

 ──数分後、サーフィンやr・・・青山 てr・・・サーフィン野郎が戻ってきた。

 なんか、随分嬉しそうな顔してんな?何かいい異彩にでも目覚めたのか?

「先生!これを!」
「ほほぅ、中々有望なステータスだな」





 ーーステータスーー

 名前:青山 輝樹

 種族:人間

 年齢:16

 色彩適正:青、白

 色素量:600/600+0

 健康状態:良好

 状態異常:なし

 ーー異彩ーー

 系統:超人

 :【剣聖ソードマスター

 ー能力ー
 剣才:近接武器に属する武器の習熟速度上昇、近接戦闘においてステータス1.5倍

 聖剣:魔物対する攻撃力1.5倍


 ーーーーーーーーーー






 ~系統~
 大きく、神族、魔族、超人、武具、現象、感情、法則、概念の8つつに分類される。


剣聖ソードマスターか・・・名が体を表しているな。しかし忠告だ、あまり大っぴらに自分の異彩の""を告げるな」
「何故ですか?」
「ものにもよるが、基本的に異彩の""はその異彩の能力を表す。信頼の置ける仲間ならまだしも、誰彼構わず言いふらすのは自分を危険に晒す。だから開拓団でも、異彩については、系統しか聞いていない。まぁ、自己申告するやつもいるがな。だからあまり言いふらすのはオススメ出来ないな」
「そうですか・・・以後、気を付けます。ですが、クラスメートには伝えようと思います」
「何故だ?」
「これから一緒に学園生活を送っていく仲間なので、出来るだけ隠し事はしたくないんです。もちろん、相手が言いたくないなら、無理に聞き出しませんので」
「そうか、それは私が決めることではないからな。好きにすればいい」
「はい」
「それと、報告もわざわざ紙を見せなくていい。見られたくないやつもいるし、口頭で色彩適正、体力、生命力、色素量、系統、属性だけ伝えてくれればいい」
「わかりました」





 ◇◇◇◇◇





「終ったよ」
「ねぇ!どんな異彩だったの?」
「中はどんな感じだったの!」 

 ──サーフィン野郎が女子達に質問攻めにあってる。

「ちょ、ちょっと待って!ストップ!ストップ!ちゃんと説明するから、ね?」

 ──そう言って宥めるサーフィン野郎。

「まず、中に入ると、祠と紙の束があって、祠に儀式のやり方が掘ってあったんだ。それを読んでから儀式をしたんだ」
「具体的にはどうするの?」
「それは、行ってからのお楽しみだよ」 ニカッ
「「キャーーー///」」

 (一々こんなんやってたら何時間掛かるんだよ・・・)

「それで、僕の異彩なんだけど、剣聖ソードマスターって言って、剣才っていう近接戦闘時にステータスが1.5倍になって尚且つ剣術の習熟が早まる能力と対魔物戦闘の時に攻撃力が1.5倍になる聖剣って言う能力だったよ」
「「キャーーーかっこいい///」」
「あ、えりがとう」 テレテレ

 ──照れるサーフィン野郎。

 (剣聖ソードマスターだとぉ?まるで、主人公が持ってそうな能力・・・けっ、羨ましくなんてないもんね!・・・いや、ちょっとだけ?ちょっだけだよ?羨ましぃなぁなんて思わなくも無かったりして?
 ・・・はい、嘘です。くぅぅぅぅぅ!めっっっっちゃ羨ましぃぃぃぃぃぃ!!何だよ!ちょーかっけぇじゃん!)

 ──羨ましさのあまり、唇を噛み締める。

「それで皆に頼みがあるんだ、少し聞いてくれないか」
「何々!?」
「聞く聞く!?」
「あ、ありがとう。実は皆にも出来る限り異彩のを教えて欲しいんだ」
「どういう事?」
「あぁ、それはね、先生曰く、本来異彩の"銘"は他人には言わない方がいいらしい。自分の異彩の能力を表すのが──"銘"──だからね。でも僕は思うんだ。だからこそ皆には出来る限り異彩の"銘"を教えて欲しい、と。これから一緒に学園生活を送っていく仲間に僕たちは成っていく。もしかしたら、将来開拓団に入ってからも一緒になるかもしれない。そんな時、異彩の"銘"を知っている、と言うことは信頼の証になる。だから俺は皆の"銘"を教えて欲しいんだ!勿論強制じゃない。教えたくない人や、言いたくない人もいるだろうからね」
「うん!いいよ!」
「え!いいのかい?」
「もちろん!これから同じクラスの仲間じゃない!」
「俺もいいぜ!」
「私も!」
「僕も!」

 ──サーフィン野郎の提案に、賛同者が増えていく。

 ほへぇ、すげぇな、イケメンの力ってのは。"銘"を言うことのリスクをちゃんと説明してる癖に、無条件で"銘"を言うように仕向けてやがる。それに、どんどん賛同するやつが増えてるから自分ものらなきゃいけないって思う日本人の集団心理を巧く使ってやがる。ま、本人にその自覚はないんだろうけど。
 さて、俺はどうするか。正直、あまり言いたくは無いな。いくらこれから仲間になるといっても、会って間もないやつらに、自分の異彩を晒け出すなんて俺からしたら、頭のネジが飛んでるとしか思えない。そんな事を無条件でさせるカリスマがアイツにはあるんだろうか?そしたらモテるのか?・・・カリスマを身に付ける方法、調べとこっと。

「盛り上がるのはいいが、次は誰が行くんだ?時間は無限にある訳じゃないぞ」
「じゃあ、俺が行ってもいいですか?」
「あぁ、構わん」
「それじゃあ」
「ちょっと待ってくれ!」

 ──突然サーフィン野郎が話しかけてきた。

「何だ?」

 ──琥太郎は顔をしかめた。何故ならサーフィン野郎が正義感に道溢れた目でこちらを見据えながら話しかけて来たからだ。

「君の返事をまだ聞いてない」
「何のだ?」

(何かコイツから質問されたっけ?)

「異彩の件だよ」
「ん?・・・あぁ!」
「思い出したかい?それで、返事を聞きたいんだけど」
「無理」
「へ?」

 ──その返答を予想してなかったのか、間抜けな声を上げるサーフィン野郎(笑)

「聞こえなかったか?返事は"ノー"だ」
「ど、どうして!」
「はぁ?当たり前だろ。会って間もないのに教えられる分けないだろ。そもそも、だ。互いの事もまだ分かって無いのに、最も秘匿すべき情報をおいそれと差し出す方が可笑しいだろ」
「だ、だけど!これから一緒に学園生活を送っていく仲間じゃないか!」
「ならお前は初対面の人間に自分の個人情報を教えるのか?携帯番号や住所を、お前は教えるのか?」
「そ、それは・・・」
「なんだ?教えないのか?自分は異彩の能力を教えろと言ってんのに?それは筋違いだろ」
「っ・・・」
「これ以上話がないなら行かせて貰うからな」
「・・・」

(はぁ、折角のワクワクな気分が台無しだ。これからビッグイベントって時に言わなくてもいいだろっての。ま、気持ち切り替えていきますか!・・・カッコいい異彩でありますように!)

 ──なんとしてでもモテたい琥太郎であった。


 ◇◇◇◇◇


 ──しめ縄をくぐり抜けた先の暗闇を抜けると、琥太郎は感嘆の声を漏らす。

「おおぉ・・・!」

 ──地下空洞のようなその空間は、言い表せない神秘的な雰囲気を醸し出していた。
 壁からは水が染みだし地面を濡らしており、所々から生えている水晶が放つ淡い光によって照らされた空間の中央、そこに一つの岩を堀抜かれて造られたであろう祠が、静かに鎮座していた。

 ──そんな厳かな空間の中で琥太郎は・・・

(キッッッッッタアアァァァァァァァ!!うおぉぉぉぉぉぉぉ!!めっちゃ雰囲気出てるぅぅぅぅ!!・・・げふんげふん。お、落ち着け俺!まだだ!まだその時ではない!)

 ──テンションMAXだった。

 ──祠へ近づく。

「えーっと?何々、『なんじ、"開花の儀"を受けし者なりければ、おのが鮮血をもって我が供物くもつとし、覚悟を証明せん』・・・って、なんだこりゃ?」

 ──祠には龍の頭が掘ってあり、その口を大きく開けていた。

「この龍の口に血を垂らせばいいのか?」

 ──琥太郎は針で自分の指を刺し、龍の口へ入れた。瞬間、龍がその口を閉じた。

「がッ───あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

 ──石で構成された牙が腕に食い込み、肉を裂き、血管を食い千切り、鮮血が噴き出す。
 あまりの痛みに堪らず目を瞑り、歯を食い縛る。あまりの痛みに思考が乱れる。脳内が痛みの信号で満たされ、錯乱する。
 しかし、噛みつく力は弱くなるどころが次第に強まってき、バキッ、ボキッ、っという不快な音が鼓膜に響く。薄れ行く意識の中、何とか助けを呼ぼうとするも──

「う"───が、───」

 ──言葉を紡ぐ事が出来ない。

(く、そッ・・・こんな、とこ、ろで、死んで、堪る、か!!)


 ドクンッ!!


 ──その時、大きく心臓が跳ねる。その瞬間、失いかけた意識が覚醒する。

「ッ!! ハァ、ハァ、ハァ」

 ──呼吸が乱れる。

(俺は、何を・・・! そうだ、祠の龍に腕を噛まれ──)

「───ッ!!」

 ──そして、目を見開く。其処には──

「噛まれて──無いッ!?」

 ──其処には、怪我はおろか、龍の頭さえ無かった。

(どういう事だ!?俺は確かに腕を噛まれて・・・)

 ──いくら考えても結論は出ず、静かに祠が鎮座するのみで。琥太郎はしまいに──

「ま、いっか」

 ──思考を放棄した。

(怪我もしてないし別にいっか。疲れてただけかもしれないし。考えてもわからないんだ、成るように成るしかないだろ)

──明らかに異常事態だが、琥太郎は細かいことは気にしないタイプだったので、スルーを決め込んだ。

「あれ?こんなのあったっけ?」

──祠の隣には、紙束の積まれた机が置いてあった。

「えーっと?『この紙を祠の中の祭壇へ置き、血液を垂らして下さい。名前、年齢、種族、色彩適正、健康状態、状態異常、保有色素量、異彩、系統の9科目が記されます』──ってさっきと全然書き方変わってね?」

──そう言いながらも指示に従う辺り、やはり細かいことは気にしないタイプのようだ。

「さて、今度は何もないよな?」

──そう言って血を祭壇に置いた紙に垂らす。

「おおぉ!すげぇな、これ」

──血が紙に染み込むと、文字が浮かび上がってきた。そして、それを覗き込むと・・・




「────は?」




──思わず琥太郎は間抜けな声を上げた。














ーーステータスーー

名前:御笠みかさ 琥太郎こたろう

種族:人間

年齢:15

色彩適正:黒、白、灰色

色素保有量:2000/2000+0

健康状態:疲労[軽度]

状態異常:なし

ーー異彩ーー

系統:ηβξλΨπψφδ

銘:【ЖφξδλμωψДЁΨ】

ー能力ー
ΨЖξωДЁЁξψξДξδξψψЁλДψμξωЁДμξδЖδφμξμωψψξδψωЁΨλωξξδμωμψψДЁλΨλЁЁДψωξμξμЖδδφδξμωψωЁДψξμЖδΡγΚδξευπГυλουλιξΧΥνλγφμδВζδογξεγφεΦξσγξδΦξΨΦυριμκξΧβφλξξδφΧΧβΧΟεφεπεχμχδξγτβηΟΧβφκοεχλφπλμξγοδφεχεγξΞθΨκΛγφεχγτψ



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