ノスタルジアの箱

六月菜摘

時よ、止まれ


永遠に続くなんて、未来永劫なんて、信じているわけではない。
そんなこと、有り得ないことは知っている。

ここで 時が止まってしまえばいいのに。
ここで 人生が終わってしまえばいいのに。
しあわせな一瞬に、いつも想うこと。

君の無邪気さは、人を傷つけるんだ。
誰かに言われた いつかの言葉が いつまでも刺さって、消えない。
無邪気さを 身に纏うことでしか、逢えなかったのに。

でも、私は、また同じことを 繰り返す。 

いつかの終わりを 決して望んでいないから
いつも 誰かの言葉に頼ってしまう。 甘えている。
決して 誰かに 心を渡しなどしない人間のくせに。
心は いつまでも自由に、誰にも束縛されずに。



一人でも 生きていきたい。
そう想って 武装して 粋がって 早足で歩いていた。
そんな過去の自分に 言ってあげたいよ。
君の人生は、しあわせだよって。一人じゃないよって。

そして、同時に
大切な人たちのことを 今度は、君が守っていきなさいって。 
守られてばかりいないで。

そうして、春の風になりたいと願う 私が生まれ
包みきれないことばかり、たくさん抱えて、消えてゆく。
涙は枯れることを 知らず、彼方へと飛ばされてゆく。 

もうすぐ、雨の季節だ。



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