あえて鈍感のふりをしてみた

山田太郎

11話

〈裕太視点〉

桜と昼を食べようとしてたのだが、夕姫が「1人で食べるのやだー!うさぎは寂しいと死ぬんだよ!あれ実は嘘らしいけど。」とクソどうでもいい雑学を披露し、駄々をこねてきた。
が、無視した。今スマホ見たくないな。絶対夕姫がうるさい。電源をオフにして食堂についた。

「ええ、えっと、ゆ、裕太くんはぶぶぶ部活とか入る!?」

お前は落ち着け
桜は顔を真っ赤にしながら早口で言ってきた。

「軽音部だよー。桜はどこか入るの?」

「あああ、あたしも!そこ!」

なんか、重度のコミュ症の人と喋ってるみたいになってきたぞ?
ボリューム調整が苦手なのと早口で喋ってしまうあれ。だけど入試の時全くそんな感じなかったからな。変わりすぎだろ。

「はい、一回深呼吸しよっか。吸ってー、吐いてー…違う、それラマーズ法。」

ダメだこりゃ。初めて会った時あたりの春を見てるみたい。

とりあえずは落ち着いたようなので、会話再開する。

「楽器とかできるの?いやー、今うちのバンドでキーボいたらどーなんだろうって話ししててさ。」

すると、桜は目を輝かせて口を開いた。

「私!ピアノ弾ける!」

つばかかった…まあもういいや。
とりあえずキーボ枠として推薦しとくかな。

「おっけー。じゃあうちのバンドのメンバーに推薦しとくよ。」

小言で桜が「やった、やった…」と言ってるが全て聞こえてる。

そんなこんなで昼食を終え、教室に戻った。
ちなみに学食は他の私立校と似たようなものかな。

帰ってきてから夕姫にグチグチと文句を言われたのは言うまでもない。






「俺は反対。」

「私も。」

「んー、私がキーボを入れるのどうかなって言ったから私は賛成派。」

上から太樹、夕姫、沙耶の順番。
これは桜をバンドメンバーに入れるかどうか。ちなみに、桜が絶対俺のこと好きだというのは伝えている。

「バンド内恋愛で解散する未来まで見えた。しかも裕太は気付いてないふりするんだろ?絶対その安藤も猛アタックするだろ。」

「私もだいたい同じ意見。沙耶ちゃんの提案の時の話でキーボードがいたらやることができる曲が増えるっていうのは理解したけど、バンド内恋愛って素人からするとバンドがめちゃくちゃになるイメージしかないし。そんなリスクを背負ってまではこだわってない。」

反対派の意見にさすがに反論はできないが、実際問題あの性格の桜が猛アタックしてくるとも考えられない。

「私は言い出しっぺってのもあるけど、 実際この先私たちがこのメンバーで恋愛を絶対しないって保証もないし、そもそも裕太が受け入れるって可能性もあるからなー。」

味方になってくれてる沙耶にはありがたいが、正直理由としては反対派より弱いからきついな。

「まあ反対はしたが、演奏してみていい感じだったら俺は賛成派になる。」

「私はいい感じとかわからないから、そこは太樹に判断任せる。だけど、正直言うと嫌だ。」

演奏次第では太樹をこちら側に持ってこれるが、夕姫を完全にこちら側に持ってくるのは難しいかな。これは桜次第になる。まあ俺頑張ったからいいよね?事情説明と推薦以外ほとんど何もしてないけど。

「まぁ、一緒に演奏してみてだね。こんなんになってんだからそれ相応の技術なきゃハイリスクローリターンなだけだから。それは推薦者の俺も同意だから。」

言ってることは反対派よりの推薦者ってどうなんだろう。まあ実際桜が俺にどう行動するかわからないしな。
気付いてないふりって意外と大変なんだよ?春1人でキツイもん。

こうして、桜を入れる入れないの話がちょうど終えたところに音楽室のドアが開いた。

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コメント

  • I'm hamster.

    この小説…みててニヤニヤが止まらないです(笑)続き楽しみにしてます!

    2
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