男尊女卑の改革者
第一章『異世界転生!?』第二話「俺と女神様?の物語」
……………って、あれ?なんだ?コレ?
不幸な事故でついさっき?死んでしまった俺、如月悠人は、奇妙な感覚に包まれていた。
「(なんだ?よくわからんが、フワフワしたものに包まれてるのか?)」
なにかはよくわからないが、とても安心して今にも寝てしまいそうになる。さらに、どこからか子守唄のようなものも聞こえてきて、寝ろと言わんばかりの状況だ。
「(………?それになんか……柔らかい?)」
そして俺を包むソレは、フワフワしているだけではなく、柔らかさを感じさせる。それに、なんか暖かい。ポカポカしてきてしまう。
「(………っていうか、今更だけど、うまく目が開かない)」
先程からなんとか目を開けようとしているのだが、開けることができない。それどころか、体を動かすこともできない。
「(…………あ、目開きそう)」
そして自分の体と格闘?すること数分。少しずつ、体に感覚が戻ってきた。……………っていうか、死後も感覚ってあんのか?
そして、ゆっくりと目を開く。
「(っ!?…………まぶしっ)」
まるで、とても長い間会っていなかったように感じる光が俺の目に入ってくる。ぼやけた俺の視界は徐々にはっきりとしてきて、人影のようなものが見えてきた………………って、
「(……………え)」
そこには、女神のような女性がいた。薄く微笑みながら鼻歌を歌っているようだ。さっきから、聞こえていたのはこの人?だったのか。その女性は金髪のストレートロングで先程も言ったように、女神のような微笑みを浮かべている。さらに、女性らしい体(お胸様)をしており、まさに完璧な女性である。この神々しいとさえ言える光景を目にした俺は、あることを確信した。
「(あぁ………。ここは天国ってことか)」
それ以外に考えられないと思う。ってことは、やっぱり死んだんだな、俺。まぁ、アレで生きてたら人間じゃないよな。もはや、バイ○ハザードだよ。
俺がそんなことを考えていると、じっと見つめていたからだろうか。女神様?が目を開けて、ニッコリと微笑む。そして、口を開いて話し始めた。
しかし、次に放った一言は、俺にとっては今までの出来事の中で、一番の衝撃を持っていた。
「…………おはよう、ユウトちゃん。ママですよ〜。よく寝れたね〜」
……………ん?悠人ちゃん?な、なんで俺の名前を??っていうか、ママ??
俺の頭を優しくなでながら女神はそう言った。俺は状況についていけず、目をぱちくりしていると、
「?どうしたの〜?」
と、少し心配そうな表情をする女神様。
「(現在進行形で混乱中だが、とりあえず大丈夫って伝えないと…………いや、全然大丈夫じゃないけどさ)」
女神様を安心させようと、俺はとりあえず声を出そうとしたが、
「あう〜〜」
「(ん?なんか、赤ちゃんの声が聞こえる?)」
何故か赤ちゃんの声しか聞こえない。…………上手く声が出なかったのかもな。とりあえず、もう一度、
「うぅ〜〜〜」
「(……………あれ?なんで俺がしゃべるタイミングで赤ちゃんの声が聞こえるんだ?)」
それでもなんとか俺は声を出そうとする。
「やぁ〜〜〜」
「(………………え?いや、ちょっと待て。なんか、おかしくないか?)」
俺は流石に違和感を感じて、少し考える。
「(いくらなんでも、高校生の声が赤ちゃんの声にかき消されるなんてありえない。なのに、赤ちゃんの声しか聞こえない……………おいおい、まさかコレって)」
ある考えに至った俺は四度目の正直で声を出そうとしてみる。
「あぃ〜〜〜〜!」
「(コレって、まさか………………俺の声!?ど、どういうことだ!?)」
さらなる驚きが俺を襲う。俺が驚いた様子を見て勘違いしたのか、女神様が俺を抱きかかえたまま立ち上がり、
「よしよし。ど〜したの〜?怖い夢でも見たのかな〜?」
と部屋の中を歩いてあやしてくれる。
「(えっ!?いや、高校生なんですけど、俺!?なんで、こんなに軽々しく持ってんの!?この人!?!?)」
しかし、この答えはすぐに分かることになる。いや、ここまで来たら九分九厘分かっていたが、現実感がなさ過ぎるのだ。…………まぁ、女神様はいるんだけど。
そんな考えながら、女神様が俺を抱きかかえて歩いていくと、部屋の中に大きな鏡が見えてくる。そして、女神様がその鏡の前を通ったときに、俺たちの姿が写る。
「(…………………………マジかよ)」
そこに映っていたのは一人の女神と、その女神に抱っこされている一人の赤ちゃんだった。
「(………………これは、まさか)」
前に葵が押し付けてきたラノベに書いてあったような展開。そう………これはまさに、
「(異世界転生…………ってやつか!?!?)」
…………よし、落ち着いた。なんとか割り切って、自分が転生したことを認める。何故俺がとかの疑問はとりあえず置いといて、現状を確認したい。
先程から俺を見て、ニコニコと嬉しそうに笑う女神。転生って考えたとき、一瞬ここは転生する一歩手前、いわゆる神界?みたいなところで、この人は女神か天使なのかなぁ、と考えたが最初にこの人が言ってたことを思い出した。……………やっぱりさっき言ってたみたいに俺の母親ってことなのか?
「フフフッ。よ〜しよ〜し」
…………それにしても、本当に楽しそうだな。元の世界?の俺の母親は、俺と父親(認めたくないが)をおいてどこかへ行ってしまった。正直なんでアイツと結婚したのかはよくわからないが………。まぁ、あの二人が結婚してなかったら俺は居ないわけだしいいんだけど。
そういう訳で俺は母親の暖かさみたいなものを知らない。だから、こんなふうに甘やかされるのもなんというか、不思議な感じだ。自然と笑みが溢れる。
「あぃ〜〜♪」
「〜〜〜っ!かわいいわね〜〜」
女神…………じゃなかった。俺の母親はさらに俺をぎゅっと抱きしめる。そして頬をスリスリとしてくる。
「うぅ〜〜〜」
「フフフッ」
そんな風にイチャイチャ?していると、この部屋の扉からコンコンとノックが聞こえる。
「は〜い?」
俺の母親が返事をする。……………早く名前が知りたいな。
「失礼します」
そう言って入ってきたのは、これまた綺麗なメイド服姿の女性だった。ミディアムとショートの間くらいの黒髪でなんとなく、クールなイメージを抱かせる。しかし、俺の意識は彼女のある一点に向けられていた。
「(あ、アレは、ネコ耳、か?…………ほんとにファンタジーだな)」
そう。この女性の頭にはなんと、黒いネコ耳がついていたのだ。さらに後ろには黒い尻尾も見える。
「(この調子じゃ、魔法やら魔王とかが出てきても、全然おかしくないぞ)」
猫耳メイドさんは部屋に入ってきてから一度綺麗なお辞儀をしてから、僕たちに向き直り、
「…………あっ、起きていらっしゃったんですね。おはようございます、ユウト様」
そう言うとメイド姿の女性は俺たちに近寄ってきて、ニコリと微笑む。クールな印象だったけど、こんな表情もできるんだな。
「はじめまして。私はユウト様のお世話係のマルシアと申します。これから、よろしくお願いしますね……………って言っても、分かりませんよね」
そう言って、クスクスと口に手をあてて笑う。…………とりあえず、返事くらいはしておいたほうがいいよな。
「あい!」
と、なるべく元気に返事をする。すると、マルシアは少しだけ目を見開いて、
「…………すごいですね。私の言ったことがわかっているみたいです。流石はミリア様の息子ですね」
「フフッ。そうでしょ〜。しかもこんなに可愛いのよ!……………はぁ〜、見てるだけで癒やされるわ〜。ユウちゃ〜ん」
「うぅ〜〜〜」
また頬でスリスリされる。このときはいつもニコニコしている俺の母親、ミリアの笑顔も一段と輝いている気がする。
「…………デレデレですね、ミリア様」
「マルシアも子供が出来たら分かるわよ。ね〜、ユウちゃん?」
…………いや、赤子に同意を求めないで欲しいんだが。
「それで、どうかしたの?」
ミリアがそう聞くとマルシアは、姿勢を正して、
「………失礼しました。旦那様がお部屋でお呼びです」
「あら、そうなの?」
「(旦那様?)」
旦那様ってことは、つまり俺の父親ってこと?…………父親、か。前世ではアレだったからな。
まぁ、二人の様子からは悪いようには見えないし、大丈夫…………だよな、うん。
「それじゃあ、行きましょうか。ユウちゃん?これから、パパに会いに行くわよ〜」
「あいっ!」
俺は大きな期待と少しの不安を抱えながら、そう返事をした。
「…………やはり、本当にわかっているのではないでしょうか?」
部屋を出ると、目の前に赤い絨毯の引かれた長い廊下が現れる。
「(やっぱりこの家、相当デカイよな。メイドさんもいるし…………ウチは貴族、なのか?)」
建物の造形などは、元の世界の中世ヨーロッパ風だ。なんかの本で見たことがある。見るからに高級そうな絵画やらツボやらが置かれている。
俺がキョロキョロとしていると、
「フフッ。いろんなものがたくさんあるわね〜。またいろいろと見せてあげるからね〜」
「(ふむ……。まぁ、この世界のことを知るにはそういう機会は逃したくないな)」
そう考えた俺は、
「あいっ!」
と、元気よく返事をする。すると、その様子を見ていたマルシアが、
「…………やはり賢すぎませんか?この子。生まれてから、まだ一週間も経っていませんよ?」
じと〜っ、とした目を向けてくる。
「(……………あれ?ヤバイな。やり過ぎたかも。っていうか、一週間も経ってないのかよ。そりゃ、そう思うよ、普通)」
俺が内心でヒヤヒヤとしていると、
「……………」
じーっと、俺を見つめるミリア。…………ま、まさか、バレた?
「……………そんなの、当たり前じゃない」
「「(へ?)」」
思わぬ返事に、俺の心の声とマルシアの声がハモる。
「だって、この子は私とあの人の息子だものっ!この子はきっと天才だわっ!!ね〜、ユウちゃ〜ん」
「うぅ〜〜〜」
本日三度目のほっぺウリウリである。…………うん。気づいてたけど、やっぱこの人、親バカだな。ありえないほど。……………まぁ、別に悪い気分はしないからいいんだけど。
「…………ふふっ。そうですね。お二人の息子さんですものね」
口に手を当てて、クスクスと笑うマルシア。
「(ほっ………バレずにすんだか)」
これからは気をつけないとな……………まぁ、この人たちなら大丈夫な気がしてしまうけど。すると、二人が一室の前で止まる。
「ユウちゃん。着いたわよ〜」
そして、マルシアが扉をノックする。…………なんか、緊張するな。
「失礼します、マルシアです。ミリア様とユウト様をお連れしました」
「入ってくれ」
マルシアがそう言うと、若い男性の声が聞こえてきた。
「失礼します」
ミリアに抱かれながら部屋に入る。その中には一人の男性が座っており、その後ろに何人かのメイドが立っていた。男性は銀髪紅眼のイケメンで、身長も結構高そうだ。
その男性は俺たちを見てニヤリと笑う。その様子はなんというか、とても様になっていた。
しかし次の瞬間、
「っ!!」
……………俺の目の前にいた。フワッと風が吹いて俺の髪を流す。
「(………………ギリギリ見えた………けど)」
俺の目は動き自体はなんとか捉えたものの、反応は全くできなかった。この人が俺の敵だったならば、体を動かすこともできずにやられていただろう。…………流石は異世界、といったところか。
「……………」
その男性はジーッと俺を見つめる。次の瞬間、目をカット開いた……………と思ったら、
「よ〜しよしよし!パパでちゅよ〜。ユウちゃんの パパでちゅよ〜」
と思いっきり破顔して、デレっとした表情を見せる俺の親父。
「(oh……………)」
さっきのニヤリ、とかカッコつけてたアンタはどこへいったんだ!と言わんばかりの豹変ぶりにもはや、呆れるしかない。
俺がそんなことを考えていると、
「(……………って、あれ?な、なんか、泣きそう?そ、そんなつもり無いのに)」
ジワジワと自分の目に涙が溜まっていくのがわかる。そして、
「びえぇぇぇんっ!!!!」
と泣き始めてしまう俺。
「(ちょっ!?え!?ほ、ホントに泣きやめない!?)」
赤ちゃんの体に行動が引っ張られてしまっているようで、泣き止むことができない。
まぁ、確かにアレをいきなりやられたら、普通の赤ちゃんは泣くだろうな。
「う、うぉぁぁ!?!?ご、ごめんな!?ごめんな?!?!」
「クライドっ!!何してるんですかっ!!!」
「い、いやっ。俺も早く会いたくて………」
「だからといって、身体強化まで使う必要はないでしょう!?だいたい、最初からあそこで『ニヤリ』とか、カッコつけずにこっちにいればよかったじゃないですか!!」
「い、いや……その………父親として、カッコいいところを、見せたいと思って」
おろおろし始める親父、クライド。それを咎める母親。…………なんか、ゴメン。
「お〜、よしよし。大丈夫だからね〜。あのこわ〜いおじさんはもう居ないからね〜」
「こわいおじさんっっ!?!?」
「(キッ!!!!)」
「ヒイッッ!!!すみませんっっ!!!!」
「(…………今ので、力の関係がわかったな)」
まぁ、どの時代も男<女なのだろう。
「うえぇぇぇんっ!!!」
「大丈夫よ〜。ママがいるからね〜〜」
と、俺が泣き止むようにあやしてくれる母親。
「うぅ………嫌われた」
と、部屋の角っこでしゃがみこんでのの字を書いている父親。
「だ、大丈夫ですよ!旦那様!!まだ、間に合いますからっ!!!」
そんな父親、クライドをなんとか慰めようとしているマルシア、という地獄絵図?のような状態が生まれてしまった。
…………とりあえず、早く泣き止まないとな。
To be continue.
コメント
D_9
To24歳ー覚醒です さん
コメントありがとうございます!実を言うといろいろとアイデアはあるのですが、なかなか時間が取れないのが現状で、これからも不定期更新になってしまうと思います。それでもよろしければ、これからもどうか、この作品をよろしくお願いします!!
Beast先輩
先が気にはなるんだけど 一話と二話の間がそこそこあるしエタりそう... 応援してます。