不器用プラトニックラブ
32話 穢星那依の劇場 ー前編ー
「私と同じ…?
  どういう事ですか?」
「僕にも大切な人が居たんだ。
  ずっと前に亡くなったけど。」
「あ…すみません、言わせてしまって…」
「いや、ここまで言ったんだから話すよ。
  彼女と会ったのは20年前、かな?
  君と同い年くらいの頃だったんだ。」
穢星那依の高校時代-
あの頃は、高校1年の春だった。
桜のアーチが続く中、突き当たりに曲がると、小さく古びた公園がある。
僕は昔から、桜満開になった時に必ず来ている。
何で来るようになったのかは自分でも分からない。
きっと、運命の出会いが訪れるかもしれないからか?
そんな自惚れ屋の僕が可笑しかったので、1人でくすくすと笑っていた記憶があった。
ある日、何時ものように公園に行くと、桜木の下にぽつんと立っている少女が居た。
僕と同じ学校の制服を着ているので、もしかしたらと思って、無意識に声をかけていた。
「ねぇ、君、新入生?」
「…っ、はい、そうですが。」
僕は息を呑んだ。
それ以上の語彙力がない程の、麗らかさだった。
長くて艶がある茶髪で、顔立ちも良く、スタイル抜群と言ってもいい位の身体をしていた。
「…貴方も、私と同じ、新入生ですか?」
「はい。
  あの…」
「はい?」
「何かの縁だし、名前を教えてくれませんか?」
「私は弥栄祈莱です。
  貴方は?」
「僕は穢星那依。」
「珍しい名前ですね。」
「よく初対面の人に言われます。」
「そうなんですか。
   …穢星さんは、よく此処に来るんですか?」
「はい。
  この公園の桜が、1番綺麗だから。」
「同じですね。
  私もこの公園の桜が、1番綺麗だと思っています。
  他の桜と比べ物にならない位の可憐さが漂っていますから。」
「そうですね。」
お互いに顔を合わせて笑い合った。
東絮高校 校門前-
今日は入学式ということで、クラス発表がある。
僕は…B組だ。
彼女は何組だろう…
横からつんつんと違和感があり、振り向いて見たら、嬉しそうにしている彼女が居た。
「穢星さん、私もB組!」
「本当にっ!?
  1年間宜しく!」
「こちらこそ宜しく!」
入学式-
「えぇ、諸君!
  入学おめでとう!…」
校長の祝辞を述べ、そして新入生代表挨拶。
代表は彼女だった。
(弥栄さん、頭良いんだ…)
入学式は無事終了した。
1ーB-
「じゃあ、これで終わりだから、各自自己紹介するように。
  解散。」
「弥栄さん」
「ねぇねぇ、君何て言うのー?」
「あ、あの、止めて下さい…!」
「止めなよ。」
「穢星、さん…」
「ちぇっ…行くぞ。」
「はぁ…大丈夫?」
「有難う。
  穢星さんが助けてくれるって信じて良かった。」
この時の僕は、心臓を撃ち抜かれた。
帰り道-
「送ってくれて有難う。」
「ううん、いいよ。
  じゃあ、また明日。」
「うん、また明日。」
1ーB 昼休み-
入学してから学校生活に慣れていったけど、1つ問題がある。
彼女のモテ期が到達したことだ。
今日の朝もだ。
彼女の靴箱に大量の恋文が入っていた。
休み時間の度に呼び出されてた。
こっそりついて行って見たら、男子共が口説いていた。
彼女が困っていることを分からないのか?
「穢星さん、一緒にお昼、食べよ?」
「うん、勿論。」
照れてる彼女、可愛い…
屋上-
「ごめんね、急に言って…」
「ううん、僕は大丈夫だよ。
  それより弥栄さん、何時も大変だね。」
「そうなの。
  穢星さんなら、どうする?」
「僕は…好きな人がいるって言う、かな?」
「自分から?」
「うん。
  そうすると、誰も近寄って来ないでしょ?」
「そうかもだけど、後々後悔するんじゃない?」
「まぁ、それは自分次第だけどね。」
「…。」
放課後-
僕は屋上で休憩することが多い。
何でかって?
何でだろう?
そんな事を考えていると、下から会話が聞こえた。
覗いてみると、彼女と告白している男子だった。
悪いけど、盗み聞きをすることに。
「あの、俺!
  弥栄さんのことが好きです!
  前から可愛いなって思ってて…ひ、一目惚れなんて初めてで…」
「そう、なんですか…」
「だから、俺と付き合って下さい!」
「…ごめんなさい。
  私…好きな人がいるんです。」
「…好きな人って、もしかして穢星?」
「えっ…!?」
はっ…!?
何を言ってるんだあいつ!?
「穢星じゃなくて、俺にしてよ!」
独占欲が増してる男だな…。
「えっと、あの、その…ごめんなさい!」
「ちょっ、弥栄さん!?
  待って!」
僕は彼女にああ教えたけど、いやまさか本当に好きな人が居るのか!?
いたらアタック出来ないじゃないか!?
1回、さり気なく聞いてみるか…
翌日-
「ね、ねぇ弥栄さん…その、突然なんだけど、す、好きな人って、いるの…?」
「えっ…」
「(弥栄さん困ってるー!?
   あー、何て切り替えれば…)」
「いるよ。」
「えっ?」
「私、好きな人がいるの。
  とても優しいの。
  一目惚れって言うのかしら。
  ちょっと照れるね。」
「そ、そう、なんだぁ…」
嘘だろ!?
まさかのまさか!?
まぁ、彼女でも好きな人は出来るか。
「僕、応援するよっ!
  弥栄さんの恋、実ると良いね!」
「あ、有難う、穢星さん…。」
「ん?
  弥栄さん?」
「あ、ううん、何でもない!」
「…?」
1週間後-
あの日から、彼女の様子が可笑しい。
聞くべきじゃなかったかな?
僕が喋りかけると、赤面して何処か行くし…
はっ!?
もしかして…僕、格好悪かった所があったとか!?
行く前に身だしなみをしていれば!?
僕ったら何て失敗をー!?
「え、穢星さん…」
「や、弥栄さん!?
  ど、どうしたんだい?」
「今日の放課後、時間ある?」
「あ、あぁ、あるけど…」
「良かった。
  じゃあ、空けておいてね。」
「う、うん…」
条件反射で答えてしまったけど、何かあったのかな?
放課後-
気まずい…!
何か…何か話題を!
「穢星さんと帰るの、久しぶり。」
「あ、うん、そうだね…!」
「ねぇ、あの公園に行こうよ。」
「え、うん、いいよ…!」
公園-
僕達は沈黙のまま、ブランコに乗っている。
もう、言っちゃおうか…
「「あの…」」
「「あ…」」
お互いに譲って、また沈黙。
「わ、私から言っていい?」
「ど、どうぞ…」
「今日、穢星さんを誘ったのは、大事な話をする為なの。」
彼女は胸を当て、深呼吸をした。
そして、思いがけない言葉が…
面と向かって、彼女が口を開いた。
「穢星さんのことが好きです。
  一目惚れ、したんです。
  お付き合いしませんか…?」
僕の返事は、もう決まっている。
「僕も弥栄さんのことが好きです。
  実は、僕も一目惚れで…
  両想いですね。」
「はい。」
こうして僕達は、付き合うことになった。
  どういう事ですか?」
「僕にも大切な人が居たんだ。
  ずっと前に亡くなったけど。」
「あ…すみません、言わせてしまって…」
「いや、ここまで言ったんだから話すよ。
  彼女と会ったのは20年前、かな?
  君と同い年くらいの頃だったんだ。」
穢星那依の高校時代-
あの頃は、高校1年の春だった。
桜のアーチが続く中、突き当たりに曲がると、小さく古びた公園がある。
僕は昔から、桜満開になった時に必ず来ている。
何で来るようになったのかは自分でも分からない。
きっと、運命の出会いが訪れるかもしれないからか?
そんな自惚れ屋の僕が可笑しかったので、1人でくすくすと笑っていた記憶があった。
ある日、何時ものように公園に行くと、桜木の下にぽつんと立っている少女が居た。
僕と同じ学校の制服を着ているので、もしかしたらと思って、無意識に声をかけていた。
「ねぇ、君、新入生?」
「…っ、はい、そうですが。」
僕は息を呑んだ。
それ以上の語彙力がない程の、麗らかさだった。
長くて艶がある茶髪で、顔立ちも良く、スタイル抜群と言ってもいい位の身体をしていた。
「…貴方も、私と同じ、新入生ですか?」
「はい。
  あの…」
「はい?」
「何かの縁だし、名前を教えてくれませんか?」
「私は弥栄祈莱です。
  貴方は?」
「僕は穢星那依。」
「珍しい名前ですね。」
「よく初対面の人に言われます。」
「そうなんですか。
   …穢星さんは、よく此処に来るんですか?」
「はい。
  この公園の桜が、1番綺麗だから。」
「同じですね。
  私もこの公園の桜が、1番綺麗だと思っています。
  他の桜と比べ物にならない位の可憐さが漂っていますから。」
「そうですね。」
お互いに顔を合わせて笑い合った。
東絮高校 校門前-
今日は入学式ということで、クラス発表がある。
僕は…B組だ。
彼女は何組だろう…
横からつんつんと違和感があり、振り向いて見たら、嬉しそうにしている彼女が居た。
「穢星さん、私もB組!」
「本当にっ!?
  1年間宜しく!」
「こちらこそ宜しく!」
入学式-
「えぇ、諸君!
  入学おめでとう!…」
校長の祝辞を述べ、そして新入生代表挨拶。
代表は彼女だった。
(弥栄さん、頭良いんだ…)
入学式は無事終了した。
1ーB-
「じゃあ、これで終わりだから、各自自己紹介するように。
  解散。」
「弥栄さん」
「ねぇねぇ、君何て言うのー?」
「あ、あの、止めて下さい…!」
「止めなよ。」
「穢星、さん…」
「ちぇっ…行くぞ。」
「はぁ…大丈夫?」
「有難う。
  穢星さんが助けてくれるって信じて良かった。」
この時の僕は、心臓を撃ち抜かれた。
帰り道-
「送ってくれて有難う。」
「ううん、いいよ。
  じゃあ、また明日。」
「うん、また明日。」
1ーB 昼休み-
入学してから学校生活に慣れていったけど、1つ問題がある。
彼女のモテ期が到達したことだ。
今日の朝もだ。
彼女の靴箱に大量の恋文が入っていた。
休み時間の度に呼び出されてた。
こっそりついて行って見たら、男子共が口説いていた。
彼女が困っていることを分からないのか?
「穢星さん、一緒にお昼、食べよ?」
「うん、勿論。」
照れてる彼女、可愛い…
屋上-
「ごめんね、急に言って…」
「ううん、僕は大丈夫だよ。
  それより弥栄さん、何時も大変だね。」
「そうなの。
  穢星さんなら、どうする?」
「僕は…好きな人がいるって言う、かな?」
「自分から?」
「うん。
  そうすると、誰も近寄って来ないでしょ?」
「そうかもだけど、後々後悔するんじゃない?」
「まぁ、それは自分次第だけどね。」
「…。」
放課後-
僕は屋上で休憩することが多い。
何でかって?
何でだろう?
そんな事を考えていると、下から会話が聞こえた。
覗いてみると、彼女と告白している男子だった。
悪いけど、盗み聞きをすることに。
「あの、俺!
  弥栄さんのことが好きです!
  前から可愛いなって思ってて…ひ、一目惚れなんて初めてで…」
「そう、なんですか…」
「だから、俺と付き合って下さい!」
「…ごめんなさい。
  私…好きな人がいるんです。」
「…好きな人って、もしかして穢星?」
「えっ…!?」
はっ…!?
何を言ってるんだあいつ!?
「穢星じゃなくて、俺にしてよ!」
独占欲が増してる男だな…。
「えっと、あの、その…ごめんなさい!」
「ちょっ、弥栄さん!?
  待って!」
僕は彼女にああ教えたけど、いやまさか本当に好きな人が居るのか!?
いたらアタック出来ないじゃないか!?
1回、さり気なく聞いてみるか…
翌日-
「ね、ねぇ弥栄さん…その、突然なんだけど、す、好きな人って、いるの…?」
「えっ…」
「(弥栄さん困ってるー!?
   あー、何て切り替えれば…)」
「いるよ。」
「えっ?」
「私、好きな人がいるの。
  とても優しいの。
  一目惚れって言うのかしら。
  ちょっと照れるね。」
「そ、そう、なんだぁ…」
嘘だろ!?
まさかのまさか!?
まぁ、彼女でも好きな人は出来るか。
「僕、応援するよっ!
  弥栄さんの恋、実ると良いね!」
「あ、有難う、穢星さん…。」
「ん?
  弥栄さん?」
「あ、ううん、何でもない!」
「…?」
1週間後-
あの日から、彼女の様子が可笑しい。
聞くべきじゃなかったかな?
僕が喋りかけると、赤面して何処か行くし…
はっ!?
もしかして…僕、格好悪かった所があったとか!?
行く前に身だしなみをしていれば!?
僕ったら何て失敗をー!?
「え、穢星さん…」
「や、弥栄さん!?
  ど、どうしたんだい?」
「今日の放課後、時間ある?」
「あ、あぁ、あるけど…」
「良かった。
  じゃあ、空けておいてね。」
「う、うん…」
条件反射で答えてしまったけど、何かあったのかな?
放課後-
気まずい…!
何か…何か話題を!
「穢星さんと帰るの、久しぶり。」
「あ、うん、そうだね…!」
「ねぇ、あの公園に行こうよ。」
「え、うん、いいよ…!」
公園-
僕達は沈黙のまま、ブランコに乗っている。
もう、言っちゃおうか…
「「あの…」」
「「あ…」」
お互いに譲って、また沈黙。
「わ、私から言っていい?」
「ど、どうぞ…」
「今日、穢星さんを誘ったのは、大事な話をする為なの。」
彼女は胸を当て、深呼吸をした。
そして、思いがけない言葉が…
面と向かって、彼女が口を開いた。
「穢星さんのことが好きです。
  一目惚れ、したんです。
  お付き合いしませんか…?」
僕の返事は、もう決まっている。
「僕も弥栄さんのことが好きです。
  実は、僕も一目惚れで…
  両想いですね。」
「はい。」
こうして僕達は、付き合うことになった。
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