2次元脳のポタクがラノベ的超展開に巻き込まれ異世界に行き必死に頑張る物語

黒月

1.4話まぁ異世界に行くには手続きとか責任とかあります。

「う…うぅん…」
ふと、目が覚める。
「なんだ…夢…夢じゃないのか?」
周りの異変を感じ違和感を覚える。
まず、布団が違う、肌触りとか重さとかがまるで違う。
次に周りの様子だ。いつもと起きる場所じゃない。
左腕には点滴がしてある。着ている服もいつもの半袖半パンの黒の寝巻きじゃなく病院で渡される服を着ていた。身体も腹を中心的に包帯を巻かれていた。
そして、もうひとつ違うものが。

「肉が…無い…?」

腹にある筈のいや、あった筈の脂肪が無いのだ。
「夢…夢じゃないよな…」
夢では無い、夢はモノクロで曖昧な意識が続いてる感じだが、これは鮮明だ…ちゃんと色もあるし意識もしっかりしている。

「じゃあ…アレは夢じゃなかったのか…」

半ば確証が得られた。
脂肪は戦いの最中に切り落とした。
包帯は傷ついている箇所に巻かれているのだろう。
それと痛みだ。身体を動かす度に微かながら痛みが走る。
そして場所だ。多分、というより絶対にここは病院だ。
白いベッドに横には柵のようなもの、更には点滴に心電図らしき物がある。

「夢じゃないなら…いや、先ずは試してみるか。」

俺は横にある柵のようなものを右手で思い切り握る。
何も起きない。俺は手を離し右手を見る。
少しの痛みと共に赤くなっている。
次は右手に集中する。右手に何かを集めるように力を入れる。身体中の筋肉や骨を這うように右手に集まる感覚が伝わる。
(あぁ…そうだ、この感触だ。)

俺はさっきと同じように横にある柵を握りしめる。
瞬間に、

『ベキンッ』

という音を鳴らして握りしめた箇所の柵がへこんだ。
「夢じゃないな…」
静かに呟く。
すると、いきなり扉が開く。

「む、やっと起きたか。」
扉から入って来たのは黒いスーツ姿の男二人組だった。
俺はへこんだ柵を布団で隠す。
男一人は扉のすぐ近くに、もう1人は俺の左側に来る。
左側にいる男が話し出す。

「初めまして、坂本涼さかもとりょう様。私はこういう者でございます。」
そう言いながら名刺を差し出してきた。
俺は名刺を貰い見てみる。
「え?どういう事ですかこれ?」
俺は名刺を見た瞬間驚き男に聞いていた。
だってそこに書いてあったのは…

二世界共通政府日本政府四国本部三課にせかいきょうつうせいふにほんせいふしこくほんぶさんか
三課部長 西岡奈央也
と書かれただけの名刺だったからだ。

「それでは、簡略に事情を説明させていただきますね。」
男、西岡氏はにこやかな笑顔で説明をする。




「まずは二世界の話しです。二世界という名の通り二つ世界があります。この地球と、そして地球と繋がっている異世界です。」
「いせ…かい?ファンタジー世界によく出てくる?」

「はい。私も数回行きましたが非常に世界観は似ていましたよ。まぁ今では現代よりの異世界のようなものですが、まぁそこら辺は見た方が早いので説明は致しませんが。」
西岡氏が呆れたように言う。

「それでは本題に、この地球と異世界の繋がりは飛鳥時代から奈良時代にかけて築かれた物です。飛鳥時代後期にお互いの存在を確認し交流を始め、深めました。そして、奈良時代前期に二世界共通政府という物が作られそれぞれ、地球に対する法律。異世界に対する法律を作り双方、協力しながら今でも多少は変わりましたが暮らしています。」

「あ、あの…二つ程質問があるんですがいいですか?」

西岡氏は少し眉を顰めるが
「どうぞ」
と促す。

「お互いの存在って言ったけど異世界に存在していたのは人なんですか?」

「えぇ…彼らは人ですよ、内面的にも外面的にも、違う点と言えば彼らは魔力を使い魔術や魔法を使うだけですが」

(なるほど…なら俺が戦っていたアイツウルは異世界から来たって事になるのか…)

「じゃあ二つ目の質問ですが…戦争は起きなかったんですか?」

「いや…戦争は無かったですね。小競り合い程度ならありましたがかなり前の事ですし。」

(あてが外れたか…てっきり土地争いか何かおきていると思ったんだが…まぁ無ければそれに越したことは無いよな。)
「なるほど…ありがとうございます。」
軽い会釈をし感謝の意を伝える。

「いえいえ、それでは次に参りましょう。次は貴方の事です。」

「僕ですか?」

「えぇ…簡単に申しますと貴方は偉業を成し後に戻れなくなりました。」

「偉業を成した…???」
(そんな記憶無いぞ。新しい世界見れるとか言われて石食ってアイツ殺しただけだぞ?)

「はい。貴方は異世界の王の一人を倒しました。」

「はい?」
もう訳が分からなくなった。
「え?じゃあウ…アイツが異世界から来た王様って事?」

「そうです。」

「え?大丈夫なんですかそれ…俺、王様倒しちゃったんですけど…反逆罪で処刑とかされるんですか???」
現実に考えたら不味すぎる案件だ。王を殺すなんて国を崩壊させるのとほとんど同じじゃないか…

「いえ、その辺は大丈夫です。むしろ向こうの王の方が悪いので」
「向こうが悪い?殺したのは俺ですよね?」

「えぇ、貴方が殺しました。しかし貴方は異世界への法律の義務に従う権利がありませんでした。更に向こうの王は法律を無視しました。つまり貴方は巻き込まれた被害者であり加害者では無い事になるんです。更に貴方には法を無視した王へかけられた莫大な懸賞金が与えられます。」

「法律と…莫大な懸賞金ンンンン?!」
真面目に考えようとするが突然考えもしなかった事を言われ驚愕する。

「えぇ、総額約七千兆円の懸賞金です。法律については無断申請の無断入国と非魔力保有者との過多な接触、建造物破壊、非関係の殺人、等と色々ありますね。」

「えーと…えー…おぉふ…」
過多な情報のせいで脳の処理が追いつかない。
「えーとまぁ…僕の方で整理させてもらってもいいですか?」
「はい、どうぞ」

「それじゃあ…まず僕は異世界の王と戦って勝った。」
「はい。」
「次に、その王は法律を無視して懸賞金をかけられた。」
「まぁそうですね。」
「そして、その王を倒した僕はかけられていた懸賞金を貰える。」
「はい。総額約七千兆円ですね。」

うん!分かったぞ!理解出来ねぇ!!!!
もういいや…法律とか異世界とかは後で考えよう…
とりあえず、お金が貰える事だけ覚えとこ…
うん、お金大事。

「あ、答えてくれてありがとうございます。」
「いえいえ、仕事ですので。それではこれから先の事なのですが貴方には異世界に行ってもらわなければなりません。」

「まぁ…ここまで知ったら後には引き返せませんよね…」
「いえ記憶は関係ありませんよ?魔力を消して記憶を一部分消すという事もできますし、ただし貴方は例外ですがね。」
「記憶を消せるのに例外???」
少し意味が分からない。脳がパンクしそうだ…

「えぇ、貴方は…いえ坂本涼様さかもとりょうさま
現在、戸籍上からもデータ上からもこの世界から死亡された者とされています。偽の葬式も行われ、お墓まであります。」

「死んだ事になってる…?」

「はい。貴方の身体は魔力を使えるようになり、そして異界の王を倒しました。しかしその実力を殺すのは勿体無いと言う政府からの声があり貴方を強制的に異世界に送ることが決まりました。」

「あの…なんで異世界に行く必要があるんですか?異世界は平和じゃないんですか?」
(もしかして島流しの刑みたいに巻き込まれてるんじゃ?)

「いや、まぁ異世界はほぼ平和ですよ。ただ魔獣達との戦いがありますし、反逆軍のような者もちらほらいますから人員不足はあるんですよ。」

「なるほど…それで僕が異世界へ行くのは決まってるって事なんすね…まぁ行くのは良いんですけどね…」

「何か問題でも?」

「あ、いや、ただ僕が買ったラノベとかゲームってどうなってますかね?」

少なくない金額を注ぎ込んだのだ一応存在は気になる。

「貴方様に関する物は全て保存してありますよ。今はもう向こうに輸送するために輸送車に積み込んでありますよ。」

「ありがとうございます。」
(良かった…まだ読んでない本もゲームもあったからな…)

「えぇ…では次の話しなのですが…」
「まだあるの?!」

西岡氏の話しは続いた。
身体が治るまで1ヶ月程病院にいてもらうだの
その間にリハビリをするだの言われた。
夜中に外でリハビリをしていいか聞くと難なく許可が降りた。
後は色々と話されたが難しい話しでよく覚えていない。
そして最後に…

「後は名前ですね…坂本涼という名前は使えませんので新しい名前に変えて頂くしかありませんが…」

「新しい…名前ですか…?」

「はい、まぁすぐに思いつかないとは思いますので退院する日までに考えておいてください。」

「はぁ…わかりました。」
そして、西岡氏との話しは終わった。

西岡氏が病室から出ていき部屋の中が静まる。
(今日は疲れたな…少し早いけどもう眠ろう…明日からリハビリだ…)
「あぁ…言い忘れてたな…」
ある事に気づき天井を見上げ言う
「知らない天井だ…」
少しの満足感を得た後眠る。





「ん…」
目が覚め、掛け時計を見る。
(まだ6時30分か…もう少ししたら朝飯だな…)
そんな事を考えながら起き上がる。
眠気を覚ますため先ずは顔を洗う。
冷えた水が脳に染みる。
そのまま服を脱ぎ風呂場に移動する。
シャワーだけだが気持ちがいい。
(通常は勝手に風呂に入ってはいけないがある程度の自由を貰っているので入れる)
シャワーから出るとタオルで身体を拭き、変えの服に着替えベッドで朝飯を待つ。
朝飯を食べ少しして検査を受けた。

検査内容は肉体的な損傷や魔力による肉体の変化を調べると言われた。
レントゲンや採血などをされた。
結果は異常は無く健康的だと言われた。
つまりリハビリも必要無いという事だが身体作りの為に一応やってみる…することもないしな…

検査途中で鏡に写った自分の姿に驚いた。
明らかに顔が違っていた。目尻や鼻などは変わっていないが顔の大部分が細ってまるで他人を見ているようだった。

「まぁこんなところかな…」
夕方、パソコンに文字を打ち込み1日の流れを簡単に書き留めた。
実は西岡氏から連絡があり1日にあった事を簡略でいいからメールしてくれと頼まれていたのだ。
「後はリハビリ紛いだけだし送っていいだろ」
送信をダブルクリックする。
「さて…報告も済ませたしリハビリでもしましょうか」

夜七時、外は暗闇に包まれ街頭の明かりと月の光だけが道を照らす。
「とりあえずランニングするか…」
病院の近くにある公園で走る。
今気づいたのだがここは近くに家がほとんど無く少し遠い所に街がある程度だ。

病院の裏手には山が連なっている。
俺は走っていた足を止め、身体中に魔力を込める。
そして山に向かって駆け出す。
身体は軽く周りへの反応が早い。
反射神経が上がったのか思考力が上がったのかは分からないがちゃんと速さに慣れている。

大体公園から山までが700メートル辺りで14秒ほどかかった。
「つまり100メートル辺り2秒か…はや…」
自分が走った速さに驚きを通り越してもはや呆れる。

魔力を込めたまま俺は周辺を走る。
周りに慣れるため、何回も何回も往復する。

気づくと辺りは静けさを包んだ夜になっていた。
「ふぅ…もう夜か…そろそろ戻るとしますか!」
病院から少し離れた場所から一気に走る
ものの数秒で病院に辿り着き院内に入っていく。

病院の中はまるで違和感の塊だ。
電気がついているのに人の気配も音もしない。
いや、音はする。俺の足音だけがこだまする。
そんな雰囲気を壊すために鼻歌を歌う。

そんな風にしているとエレベーターが見えた。
しかし、俺はエレベーターではなく階段に向かう。

決して怖いからでは無い。密室で幽霊が出てきたら怖いとかでもない。全然ちっとも怖くなんか無い。怖くなんか…怖くなんか無いもん…(><)

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