異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

レッドスライムの逆襲



 現時点で悠斗は《火》・《水》・《風》・《聖》の4種類の魔法を扱うことが可能である。
 この中でも悠斗は《火属性》の魔法に関して、未だに使用した経験がなかった。

 理由は単純に他の属性に比べて《火属性》は、気軽に試し打ちが出来るものではなかったからである。

 悠斗はこれまで基本的に魔法の訓練を宿屋の部屋の中で行っていた。
 使い方を誤って火事を起こしてしまえば大惨事である。


 火魔法 LV3 
 使用可能魔法 ファイア ファイアボム


 火属性の魔法は《水》・《風》と同様にLV3になるとボム系の魔法を放てるようであった。

 どうせなら魔物に対して、どの程度ダメージを与えることが出来るかも検証してみたい。
 よくよく考えてみれば、これまで魔法を使って魔物を討伐した経験がなかった。

「ご主人さま。このまま正面を歩いて行ったところにレッドスライムが1体だけいるみたいです」

「よし。分かった。今度は俺1人で戦ってみたいから2人は手出ししないでくれ」

 悠斗は二人の承諾を得るとスピカが示した方角に向かう。


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 レッドスライム 脅威LV1


 暫く歩くと目的の魔物に遭遇した。

 数は1体。
 魔法の試し打ちを行うには、おあつらえ向きの相手である。

 スライム系の魔物は視力が極端に低いため、5メートルの距離まで近づかなければ襲ってこないという習性を持っていた。

 悠斗はスライムに気付かれないギリギリの範囲で距離を詰める。

 それから。
 右手を翳して心の中で呪文を唱える。


(……ファイアボム!)


 直後、悠斗の掌からは直径10センチほどの球体が出現する。

 ボム系の魔法は威力が高いが、射程距離が短いのがネックであった。
 悠斗は爆発に巻き込まれないために念のため、3歩ほど後ろに下がってから様子を窺うことにした。

 ゆっくりとしたスピードで移動を続ける魔法球は、1メートルほど飛んで行ったところで破裂。

 激しい爆発音が聞こえたかと思うと、辺り一帯に凄まじい熱風が吹き荒れる。


「おぉ……!」


 その威力は悠斗の予想を遥かに上回るものであった。
 同じボム系の魔法でも《水属性》や《風属性》に比べて殺傷能力は桁外れに高い。

 これ程の爆風が直撃すれば、人間の頭くらい訳なく吹き飛ばすだろう。

 ボム系の魔法の宿命なのか射程距離は致命的に短い。

 日々の特訓の成果により魔法のコントロール技術が向上しているからだろう。
 以前に比べれば多少は、飛距離が伸びたような気がする。

 それでも尚。
 レッドスライムにダメージを与えるには程遠かったらしく――。


「ピキー!」


 攻撃を受けていることに気付いたレッドスライムは悠斗に向かって飛びかかる。

 鳴き声だけはやたらと可愛いが騙されてはいけない。
 中の臓器が透けて見えるスライムという生物はグロテスクの一言に尽きる。

「……おっと」

 悠斗は余裕をもってそれを躱す。

(シルフィアはともかく……男の俺がネバネバの体液を被っても誰得だろう……)

 このままポケットの中に入った石を投げて倒すのも良いが、せっかくなので別の魔法も試してみる。
 右手を翳して呪文を唱える。


(……ファイア!)


 悠斗の掌の先からは激しい炎が放出される。

 その火炎量は悠斗の予想を遥かに上回るものであった。
 これならば人間相手に撃ってもかなりの火傷を負わすことが出来るに違いない。

(炎属性の魔法は全体的に殺傷能力が高そうだな……)

 レッドスライムの体は紅蓮の炎に包まれる。
 悠斗としてはそのままレッドスライムを焼き尽くす――。

 つもりであった。


 レッドスライム 脅威LV8


「ぬおっ!?」

 悠斗は驚きのあまりバックステップを踏む。
 激しい炎を浴びたレッドスライムはその体積を3倍ほどに増加させていた。

 脅威LVも1から8にアップしている。
 脅威LV8というのはこれまで戦った魔物の中でも最大であった。

「ご主人さま! 気を付けて下さい! レッドスライムは炎を浴びると一時的にパワーアップするみたいです!」

「マジかよ……」

 迂闊であった。
 能力略奪で取得できる能力が《火耐性》であることから、火魔法に強いことはなんとなく予想していたのだが。

 まさか炎を浴びると強くなるとは予想外である。

「……!?」

 そのとき悠斗は何処からともなく「ピー!」という小さな音を耳にすることになる。
 その音が先日手に入れたスキルによる効果であることを理解するまでには、少しだけ時間を要した。


 警鐘@レア度 ☆☆☆☆☆
(命の危機が迫った時にスキルホルダーにのみ聞こえる音を鳴らすスキル。危険度に応じて音のボリュームは上昇する)


 音のボリュームは、非常に微弱なものである。
 それはつまり……目の前の相手の危険度が悠斗にとってそれほど高くないことを意味していた。

(でもまあ……俺の命を脅かす可能性のある相手っていうのは間違いないんだよな)

 脅威LV1のスライムと脅威LV2のバットと戦っている時は、一切の音が鳴らなかった。

 従って。
 目の前のレッドスライムが警戒するべき魔物であることは確かなのだろう。


「ビ~ギ~!」


 肥大化したレッドスライムの鳴き声は低音になっていた。

「……っと」

 悠斗はレッドスライムの攻撃を軽く躱す。
 体が大きくなった分、スピードはかなり落ちているようであった。


(しかし、どうしたものかな……)


 これまで悠斗はスライムとの戦闘の際は落ちている石コロを投げて対応していた。

 だがしかし。
 流石にこれだけ大きくなると石コロを投げて一撃で討伐……という訳にもいかなそうである。


(まさか初めて警鐘が発動する相手が……レッドスライムになるとは思わなかったぜ……)


 思いがけずも出現してしまった難敵に対して悠斗は、頭を悩ませるのであった。



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