異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

告白



「なぁ。いいだろう? 嬢ちゃん。俺たちのパーティーに入りなって。悪いようにはしないからさ」

「もう。しつこいなぁ。アタシはソロで挑戦するから放っておいてよー」

「そう言うなって。こう見えて俺は腕が立つ。今回この部屋に集まったヘボたちを見ろよ! どいつもこいつもブロンズランク以下のクズばかりじゃねえか。
 その点、俺はシルバーランクなんだぜ? な? 俺に付いて来るのが、賢明な判断ってもんだろうよ」


 ロビン・クルーガー
 種族:ライカン
 職業:冒険者
 固有能力:なし


 ロビン・クルーガーは頭に犬耳を生やした身長160センチほどの小柄な男であった。
 短足で頭が大きく、その風貌は何処かブルドックを彷彿とさせる。

「はぁ……。ロビンのやつ。また、パーティーに誘うことを口実にしてナンパをしやがって」

「その、ロビンっていう人、強いんですか?」

「ああ。正直この部屋に集まった冒険者の中では実力はピカ1だな。単純な戦闘能力も高いが、かれこれ10年以上も冒険者稼業を務めているベテランだ。今回のダンジョン攻略クエストにおける最有力候補と言って良いだろう」

「しかし、見たところ素行には色々と問題はありそうですね」

「まあ、冒険者をやっている人間は誰だって大なり小なり問題を抱えているもんなんだよ。
 特にダンジョン攻略クエストのような大きな仕事には曲者が揃っているみたいだな。あそこにいる男を見てごらん」

 ロビンに引き続きラッセンは、今回の参加者の中から注目の人物の紹介を始める。

「先程、今回のクエスト攻略の最有力候補はロビンだと言ったが。アタシとしては、あそこの壁に寄りかかっている男がダークホースになりそうな気がしている」


 黒宝の首飾り@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)


 ラッセンの視線の先に目をやると、そこには全身黒ずくめの長身の男がいた。

「なるほど。たしかに只者ではなさそうな感じですね」

 ここに集まっている冒険者とはケタが違う。
 黒のフードで覆われているのでその顔つきまでは分からないが、悠斗の目から見ても黒服の男からは強者特有のオーラを感じることができた。

「あの黒フードの男はここ最近、エクスペインの冒険者ギルドに通うようになったのだが、他人に対して全く自分の情報を開示しようとしないんだ。アタシの勘が正しければ、あの男はかなりの手練れだね」

「たしかに。身に付けている装備も高価な感じがしますね」

 自分以外に黒宝の首飾りを装備している人間を見たのは、悠斗にとって初めての経験であった。

 レアリティがランク7の黒宝を首飾りを装備していることからもその男の実力の程が窺える。


「……しつこいなぁ! いい加減にしてよね!」


 パシン、と。
 突如として、強く手を払う音が部屋の中に鳴り響く。

 音のした方に目を向けると、何やら先程の女子高生のような外見をした魔族と冒険者ロビンが険悪な雰囲気になっていた。

「……チッ。もう頭に来たぜ! 人が下手に出れば良い気になりやがって! どうしてシルバーランクの俺様がお前のような小娘に袖にされなきゃイカンのだ!」

「…………」

 ロビンの言い分は、傍から見ても支離滅裂なものであった。

 言葉を吐く事にテンションを上げて行くロビンとは対照的にベルゼバブの表情は、薄暗く、静かなものになって行く。 


「ええ? この野郎! なんとか言ったらどうなんだ! おい!」


 怒りに身を任せたロビンは、そのままベルゼバブの顔面に向けて拳を振り下ろす。


(……危ない!)


 その直後、悠斗はベルゼバブの放った殺気からロビンの死を確信した。

 このままロビンが目の前の少女に拳を振り下ろせば、間違いなく彼は少女からの反撃を受けて死ぬことになるだろう。

 ロビンが殺されたところで悠斗にとっては何の痛手もないのだが、それでも目の前に救える命があるのならば、助けておかないと寝覚めが悪い。


「その辺にしておきましょうよ」


 悠斗は背後からロビンと手を掴んで、二人の間に割って入る。

「はぁ? 何だお前? お前に何の関係があるんだっつーの!」

「いや。関係はないかもしれませんが……」


(……このまま放っておくとお前が死んでいたかもしれないんだよ!)


 という説明をしたところで理解してもらえるはずもなく――。
 悠斗は二の句を継げないでいた。


「何を黙っている! 意味分からないこと言ってんじゃねーぞ! この雑魚……」


 顔をタコのように赤くして激昂するロビンであったが、悠斗の顔を見た途端、その表情を青ざめさせて行く。


『凄い新入りが入ったらしい』


 今から半月ほど前からだろうか。
 エクスペインの冒険者ギルドにそんな噂が頻繁に飛び交うようになっていた。

 何でもその新入りは1回の冒険で平均して50以上の素材を持ち帰り、僅か1週間足らずの内にブロンズランクに昇格したという話である。

 ロビンは自分の戦闘能力に対して過大な評価はしていない。

 新人からブロンズランクに昇格するまで1年はかかった。
 ブロンズランクからシルバーランクに昇格するまで10年はかかった。

 ここまで成り上がることが出来たのは、決して危ない橋を渡ろうとせず、常にパーティーを組んで魔物と戦い、堅実な成果を上げていたからに他ならない。

 ここで悠斗を敵に回すのは得策ではない。
 冒険者でありながらも慎重な性格の持ち主であるロビンは、悠斗を見てからそんな判断を下すことにした。


「……ふん。興が削がれた。行くぞ。野郎ども」 


「…………」

(やれやれ。人が親切で助けてやったのに)

 ロビンは捨て台詞を吐くと、ゾロゾロと仲間を引き連れて、冒険者ギルドを後にする。


「……王子様」


 ポツリ、と。
 目の前にいた制服姿の少女がキラキラとした眼差しで呟いた。

「え?」


「ようやく見つけた! アタシだけの王子様! 好きです! この手は二度を離しません! 離しませんからねっ!」


 ベルゼバブはガシリと悠斗の腕を掴みながらも情熱的にアプローチをする。

「えええぇぇぇ……!?」

 魔族に殺されそうになっていた冒険者を救ったと思ったら、何故か魔族から愛の告白を受けることになっていた。

 予想外の斜め上を行く展開の連続に、悠斗は頭を抱えるのであった。



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