異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
受難
屋敷の中に入るなりラッセン&ルナは、改めてその敷地面積の広さに驚くことになる。
霧の立ち込めた夜に訪れたこともあって屋敷の中は不気味な雰囲気が漂っていた。
「なんだ……ここは……」
「まるで森林型のダンジョンのようですね」
敷地の中は何処までも見渡す限りの果樹が広がっていた。
貴族たちの中には戯れで自宅にブドウの樹を栽培する者もいるという話も聞いたことがあるが、ここまで本格的な果樹園を保有している家をラッセンは知らなかった。
「立ち止まっていても仕方がない。さっそく探索に乗り出そうではないか」
ラッセンは屋敷を目指して庭の中心に向かって進んで行く。
「なんだ……? この樹は……? 見慣れない果実がなっているようだが」
そこでラッセンの目に止まったのは、ケットシーの村から持ち帰ったアイテムから栽培した《神樹》である。
若返りの実@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(実年齢を1歳若返らせる。効果時間は永続)
ランク7のレアアイテム《若返りの実》を始めとする珍しい木の実を付ける神樹は、情報屋を営んでいるラッセンの琴線に触れるものであった。
「えーっと。これは神樹といってケットシーの村に伝わる伝説の木ですね。元々は私たちの祖先がダンジョンの奥から持ち帰った種を植えたことで生えたと言われています。
色々と高値で売れるアイテムを実らせるので、ケットシー村では欠かせない収益源になっているみたいです」
「……ちょっと待て! どうしてそんなものがユートくんの家の庭に生えているのだ!」
「さぁ……。私にもそこまでは」
屋敷の中に忍び込めば何か分かるかと期待していたのだが――。
ラッセンの中の悠斗に対する謎は深まるばかりであった。
「「「ホネー!」」」
「……しまっ」
気が付くと、ラッセン&ルナは囲まれていた。
普段の二人であれば魔物の気配を察することが出来たのだが、周囲の木々に目移りをして油断していた。
彼女たちの周囲にいたのは総勢20匹を超えようかというスケルトンの大軍である。
「どうしてこんな所に魔物が……!?」
「詳しい話は後にしよう。まずはこの包囲網を突破しなければなるまい」
神秘の火銃 レア度@☆☆☆☆☆
(大気中の魔力を吸収して火属性の魔法を射出する武器)
ホルスターの中からピストルを取り出すと、ラッセンはスケルトンの足元に向けて発砲する。
ランク5のレアアイテム《神秘の火銃》から放たれた火炎球は、スケルトンたちを怯ませる。
「たぁぁぁぁぁ!」
半月の魔刀 レア度@☆☆☆☆☆
(三日月のように刀身の反り返った刀。込められた魔力によって切れ味が強化されている)
ルナは自身の愛刀である《半月の魔刀》を鞘から抜くと、素早い身のこなしでスケルトンたちを斬り付けていく。
「……クソッ! 次から次に!」
「先輩! これではキリがありませんよ!」
屋敷の中を警備するスケルトンたちの数は50匹にも達していた。
付け加えてアンデッドであるスケルトンたちは、骨の中にある《核》を剥ぎ取らなければ何度でも復活する習性があるので始末に負えない。
「撤退しよう。どうやら我々は……踏み込んではならない魔境に足を踏み入れてしまったらしい」
「……了解です!」
こうなってしまっては既に情報収集どころではない。
そう判断したラッセン&ルナはスケルトンたちの包囲を掻い潜り、屋敷からの脱出を試みる。
「ズギャァァァ!」
だがしかし。
全長8メートルを超える巨大な竜がラッセン&ルナの行く手を塞いだ。
「ド、ドラゴンだと……!?」
現存する魔物たちの中でも現存するドラゴンという生物は、最強種としてその名を知られていた。
中でも強力な炎のブレス攻撃を有するブレアドラゴンは、他のドラゴンと比較しても強力な戦闘能力を有していた。
ラッセンはすかさず手にした《神秘の火銃》でドラゴンに向かって発砲する。
が、しかし。 
立て続けに射出された火炎球は、虚しくもブレアドラゴンの鱗に阻まれる結果となった。
炎のブレス攻撃を得意とするブレアドラゴンは、火属性に対する耐性値も異常に高かったのである。
その直後。
突如としてラッセンの視界は暗転することになる。
自身の体がブレアドラゴンの口の中に閉じ込められていることに気付いたのは、それから少し後のことになる。
「クッ……! なんなんだ……ここは!?」
ブレアドラゴンの口内は、息を吸うことができないほどの酷い臭いであった。
そのあまりに強烈な臭いをかぎ続けることになったラッセンは、次第に意識を薄れさせていく。
「このっ! ドラゴン! 先輩を離せ!」
ラッセンの窮地を目撃したルナは、すかさず《半月の魔刀》を手にしてブレアドラゴンに向かって斬りかかる。
が、しかし。
直後に彼女の体を植物の蔓が覆った。
タナトスから奪った《魂創造》のスキルによって生み出された《木の化身》は、蔓を使ってルナの首を締め上げていく。
「い、息が……」
刀で蔓を切断しようにも肝心の武器が、既に蔓によって取り上げられている。
(な、なんでしょう……この魔物は……。全く見たことがない種族です……)
薄れゆく意識の中、最後にルナはそんなことを思うのであった。
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