異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

魔術師と賢者


「あ~。お前はたしか……あの時のダンジョンで会った!」


 悠斗はそこで頭の奥底から男に関する記憶を引っ張り出す。
 卑劣なトラップで女子高生魔王ベルゼバブを一方的に攻撃していたミカエルに対して悠斗は一戦を交えたことがあった。


「コノエ・ユート……どうして此処に!? お前はエクスペインの冒険者だろうが!」

「どうしてって……。俺は冒険者として真面目にコツコツと討伐クエストをこなしているだけだが」


 悠斗はミカエルの言葉を聞き流しながらも、エンジェルの頭の上にある輪を採取する。


「ちょい待ち! テメェこら! 何をやっているんだよ!」

「ん?」

「そのモンスターはオレが仕留めたものだろうが! 勝手に人の獲物を横取りしているんじゃねー!」

「いやいや。言い掛かりは良くないぞ。この魔物は100パーセント俺が投げつけた氷塊で倒したものだ」


 間一髪のタイミングではあったが、そこに関しては自信を持って言い切ることができる。

 悠斗はそこでステータス画面を確認。


 近衛悠斗
 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進 魔力精製 魂創造 魔力圧縮
 魔法  : 火魔法 LV4(12/40)
       水魔法 LV6(10/60)
       風魔法 LV5(4/50)
       聖魔法 LV6(37/50)
       呪魔法 LV6(3/60)
 特性  : 火耐性 LV3(19/30)
       水耐性 LV3(0/30)
       風耐性 LV4(6/40)


 エンジェルを倒す前と比較して聖魔法が1ポイント上がっていた。


(う~ん。やっぱり俺が倒したことは間違いないんだが……)


 ここで能力略奪のスキルを根拠に自分の正当性を主張するのはバカバカしい。
 エンジェル討伐の報奨金を得るために自分の能力を喋るのは割に合わない計算である。


「ミカエル! 何をやっているのですか!」


 黒宝の首飾り@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)


 声のした方に目を向けると、修道服を着た少女がそこにいた。
 綺麗な銀髪をしたツリ目の少女は、遠目に見ても容姿が整っていることが分かった。


「ミカエル。その人は……?」

「ああ。ソフィには話したよな。こいつが前に言ったコノエ・ユートだ」

「…………!?」


 ミカエルの言葉を受けた銀髪の少女は驚きで目を見開く。


「紹介が遅れました。私の名前はソフィア・ブランドール。レジェンドブラッドの『賢者』と言った方が話が早いでしょうか」

「ご丁寧にどうも。エクスペインの街で冒険者をやっている近衛悠斗です」

「なぁ。ソフィ! お前からも何か言ってくれよ! そこの盗人……俺が倒した魔物を横取りし……」


 ミカエルが己の正当性を主張しようとした直後であった。


「ふんどりゃぁぁぁっ!」


 額に青筋を立てたソフィアは、ミカエルの腹に向けて勢い良く拳をめり込ませる。


「げぼぉっ!?」


 この世界の『賢者』は、近接戦闘にも長けているのだろうか?
 様々な武道を極めた悠斗の目から見てもソフィアのパンチは、非の打ちどころのないものであった。


「このポンコツラーメンが! 騒ぎを大きくしてどうするのです!? 私たちは任務の最中なのですよ!?」

「…………」


 返事はない。
 ただの屍のようである。

 ソフィアの本気の拳を受けたミカエルは、内臓の一部を機能停止に追いやられるほどの重傷を負っていた。


「ユウトさん。この度はウチのバカが失礼しました」

「いえいえ。えーっと……それよりもあの人……大丈夫なんですか?」


 ミカエルの体からはドクドクと血が流れ花畑を赤く染めている。
 悠斗の目から見てミカエルの負ったダメージは、取り返しのつかないレベルのものに見えた。


「はい。私はレジェンドブラッドの『賢者』ですから。仮に死んでいたとしても魂さえ離れていなければ生き返らせることくらいは容易です」


 ペタンコの胸を張りながらもソフィアは説明する。

 決して伊達や酔狂で言っているようには思えない。
 どうやら彼女は本当に死人を生き返らせることが出来るらしい。


(おいおい! この世界の連中は……流石に人間離れが深刻過ぎないか!?)


 死人を生き返らせることなど前の世界では考えられないことである。
 ソフィアの発言を受けた悠斗は底知れないショックを受けていた。


「それはそれとして私は個人的に貴方に対して興味があります。よろしければこちらを受け取って下さい」

「これは……?」

「はい。そこに書かれているのはマクベールにある私の家の住所になります。もしユウトさんがマクベールを訪れる機会がありましたら是非ともウチに来て下さい。今回のお詫びもかねて食事でもご馳走しますよ」

「ありがとうございます。機会があれば是非ともお邪魔させて頂きたいです」


 表面的には平静を取り繕ってはいたが、悠斗は内心の興奮を抑えきることで精一杯であった。


(うおっしゃああああ! 可愛い女の子の住所ゲットしたぁぁぁ!)


 性格がキツかろうと、胸が小さかろうと、問題ない。
 外見が美少女でさえあれば、大抵の欠点を受け入れることが可能な器の大きさが悠斗にはあった。


「……流石はご主人さまです。このパターンは頻出過ぎてツッコミを入れる気力すら湧きません」

「……恐れ入ったぞ。人類最強の『賢者』にすら劣情を催すとは……主君は一体どこに向かっているというのだろう」


 初対面の少女に対してデレデレする悠斗の様子を目の当りにしたスピカ&シルフィアは、主人に対して白い目線を送るのであった。

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