異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~
VS 白虎2
悠斗の予想は、そのものズバリ的中していた。
弱体化しているということもあって白虎の攻撃そのものは、悠斗にとって注意をしていれば簡単にいなせるものであった。
当初の予想通りに脅威となったのは、白虎の保有する《再生》+《巨大化》のスキルである。
元々、悠斗が好んで使用する技は短期決戦用のものが多く、どちらかというと持久戦は不得手であった。
先程放った《破拳》よりも更に威力を上げた《破鬼》で強引に突破する手段もあるのが――。
その場合は失敗した時のリスクが大きすぎる。
結果。
悠斗は基本的な武術のみで応戦するしか選択肢はなくなり、両者の戦闘は膠着状態を維持することになった。
(凄い……! これが本当に私たちと同じ人間の力だというの……!?)
悠斗の苛烈な戦い振りを目の当りにしたソフィアは、1秒たりとも両者から目を離すことが出来なかった。
多少なりとも武術を嗜んでいる自分だからこそ理解できる。
悠斗の戦闘スタイルは、単一の流派に拘らずに古今東西の様々な武術の長所が組み込まれた特殊なものである。
ソフィアは今ここに人類が誰1人として到達することが叶わなかった――『武術の完成形』を見たような気すらした。
自らの肉体1つで強大な魔族を圧倒できる存在に出会ったのは、ソフィアにとっては悠斗が2人目であった。
「ミカエル! 貴方の魔力はまだ戻らないのですか!? 部外者のユウトさんはこんなに頑張っているのですよ!?」
「うぐっ……。すまねぇ。最大威力のエクスプローションを撃つには、最低でも後5分は時間がかかりそうだ」
それにしても肝心な時に役に立たないのはパートナーの魔術師である。
本来であれば何時ものように殴り殺してやりたいところだが、今は1秒でも時間が惜しい。
この膠着状態を打破する唯一の方法は、ミカエルの全力の魔法しかないのだから――。
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第三者の視線から見ると悠斗VS白虎の戦闘は、均衡しているかのように見えたのだが――。
当事者たちが抱いていた感想は違っていた。
(畜生……! なんだってんだ!? どいつもこいつも……!)
これで再生のスキルが発動するのは17回目のことである。
心臓さえ守ることが出来れば半ば無敵に近い再生のスキルであるが、そこには1つだけ致命的な欠点が存在していた。
それは再生のスキルが発動には膨大な魔力を消費することである。
初期の頃と比較をすると白虎の回復力は徐々にだが鈍りを見せてきている。
そのことに気付いた悠斗は、以前までの時間を稼ぐことに重点を置いた戦闘スタイルから一転。
リスクを最小限に抑えながらも、着実にダメージを蓄積させる方向に舵を切っていた。
(まただ……! どうして攻撃があたらねぇ!?)
相手の攻撃を先読みして裏をかこうにも戦術の幅が膨大過ぎて、まるで対策を立てることが出来ない。
悠斗と拳を交える度に白虎は、まるで実態のない透明人間を相手にしているかのような錯覚に苛まれることになった。
(よくよく考えてみると……似ている……のか……?)
その時、白虎の脳裏に映ったのはあの日――。
四獣の塔で起こった悪夢の光景であった。
気の置けないライバル。
積み上げてきたプライド。
絶対的な権力者によって守られてきた地位。
異世界から召喚された『近衛愛菜』という少女は、白虎の全てを一瞬で奪って行った。
両者の風貌には何処か共通点が多かった。
「もしかしてお前……コノエ・アイナという女の血縁者なのか……?」
白虎が何気なく尋ねた次の瞬間。
ズキンッ!
悠斗の心臓は痛いほど脈打つことになった。
「お前……今なんて言っ……!?」
胸の動揺を抑えきることが出来ない。
頭がフラフラとして眩暈もしてきた。
近衛愛菜という少女が与える影響度は、悠斗が自分で考えていた以上のものがあった。
「ハァァァアアアアアアアア!」
この隙を白虎は見逃さない。
体内の魔力は既に底を尽きている。
おそらくこれが最後のチャンス。
次にダメージを受ければ《再生》のスキルが発動することはないだろう。
白虎が最後の力を振り絞って悠斗の頭に牙を突き立てようとした直後であった。
「旋風キ~~~~~~クッ!」
底抜けに明るい少女の声が洞窟の中に鳴り響く。
「ぶごおっっっ!」
背後から後頭部を蹴り飛ばされた白虎は地面の上を転げ回る。
結局、その一撃が決め手となり白虎は、そのまま息を途絶えさせることになった。
黒宝のイヤリング@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆
(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)
これは一体どういうことだろう?
突如として白虎の頭を目掛けて見事な蹴りで仕留めたのは、身長150センチくらいの紅髪をした少女であった。
「サリー! テメェ今まで何処に行っていたんだよ!?」
「ごめんごめん。花畑にごっつ綺麗なチョウチョが飛んでいたんや。ソイツを追いかけとる内に皆のことを見失ってもうて」
「……呆れてものが言えねぇ。だからお前はレジェンドブラッド1のバカ娘と揶揄されるんだよ」
「悪かったよ~。せやけど、間に合ったから別にええやんか」
サリーと呼ばれる少女は、チロリと悪戯っぽく舌を伸ばす。
「紹介します。彼女の名前はサリー。サリー・ブロッサム。レジェンドブラッドの武闘家にして、私たちのパーティでは前衛職を務めています。見ての通りに腕は確かですが、頭が少し足りないのが難点です」
「ううっ。酷いよ~っ! ソフィちゃんまでウチのことをバカって言うた!? バカって言うた!?」
仲間内から立て続けに酷評を受けたサリ―は涙目になる。
「レジェンドブラッド……か。なかなか侮れないやつらだな」
魔術師・賢者に続く3人目のレジェンドブラッドと出会った悠斗は神妙な口調で呟いた。
「たしかに。どの方々もその道の達人! という雰囲気で凄そうなオーラを感じます」
「うむ。流石は人類最強と言ったところだろうか」
「えーっと。俺が言ったのは女の子のレベルが高いなぁ、という意味だったのだけど?」
「「…………」」
この期に及んで女の子ばかり見ている悠斗に対してスピカ&シルフィアは、軽蔑の眼差しを送るのであった。
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