異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~

柑橘ゆすら

男同士の友情の約束



 北の山に入ってから2時間ほど経過しただろうか。
 悠斗たち一向はその後も順調に探索を進めていった。


「オラァッ! どーだ! オレ様のイージスは! 絶好調だろうがっ!」


 その後も幾度となくシーフエイプと遭遇した悠斗たちであったが、ミカエルの魔法によって撃退することに成功していた。

 水属性魔法――《イージス》は世界で唯一人ミカエルだけしか使用することの出来ないオリジナルである。

 イージスで展開される氷弾は、1つ1つが高度な制御魔法によってコントロールされており――。
 ミカエルが敵と認識した存在に対して自動で飛んでいく性質があった。


「ふふふ。いくら速いとは言っても所詮は獣だな。不意さえ突かれなければ十分に対応できるスピードだ」

「何ドヤ顔で言っているんですかポンコツラーメン! そんな簡単に対処できるなら最初から使って下さいよ!」

「わ、悪い。ソフィ。里に戻ったらお前のスカートは買ってやるから!」


 悠斗がシーフエイプを倒すことによって無事に盗品を回収することができたのだが――。

 どういうわけかソフィアのスカートだけは見つけることができなかった。
 パンツ丸出しで登山するソフィアの姿は、エロいを通り越して、少し可哀想なものがあった。


「おかしいなぁ。シーフエイプってこんな好戦的なモンスターだったやろうか?」


 北の山で修行した経験の長いサリーは首を傾げていた。

 いくらなんでも遭遇する敵の数が多すぎる。
 これまで何度も温泉地に足を運んでいたサリーであったが、これほどまでにエンカウントするのは初めてのことであった。


「あの、サリー。よければ一緒に向こうの茂みに行きませんか?」


 サリーの服の袖を掴みながらもソフィアは提案する。
 体が少し内股になっていることからソフィアの言いたいことは直ぐに理解することが出来た。


「んん? なんだよ。オレに黙って何をコソコソしてやがる!」

「トイレや。トイレ。ミカエル。あんたは、そーいうデリカシーのないこと聞くからモテないんやで? 少しはユートちんを見習うんやな」

「うぐっ。どうしてオレが……」


 サリーからダメ出しを受けたミカエルは本気で落ち込んでいるようであった、
 女子たちがトイレに行っている途中は、男同士の2人きりの時間である。

 悠斗はそこで思い切って以前から気になっていたことを聞いてみることにした。


「なぁ。ミカエル」

「チッ……。なんだよ。コノエ」

「ミカエルってソフィのことが好きなのか?」

「……は、はぁ!? ぜぜぜ、全然好きじゃねーわ!」 


 分かりやすく動揺しながらもミカエルは否定する。



「そうなのか……。好きでもない女の子のために、山奥の里にまで来たりするものなんだな」

「まぁな。オレとソフィは幼馴染だったし。やつには色々と借りがあるから」

「その……借りって?」


 尋ねると、ミカエルは表情に影を落としながらも語り始める。


「今でこそ健康だが、ガキの頃のオレは体が弱くて家に籠りがちだったんだ。家族は伝説の英雄の血を引きながらも病弱なオレのこと蔑んだ眼で見ていたよ。
 そんなオレに魔法を教えてくれたのがソフィだったんだ。魔法を習い始めてからオレは変わった。アイツに追いつきたくてガンガン努力したし、体も強くなった。つまりソフィは……オレを外の世界に連れだしてくれたんだよ」


 普段のチャランポランな態度から一転。
 真剣にソフィアのことを語るミカエルの様子は悠斗の胸を打つものがあった。


「ああ。そっか。さっきの言葉を取り消すわ。やっぱりオレはソフィのことが好きなのかもしれねぇな」


 憎き恋敵に過去を語ることで大切な気持ちに気付くことができた。
 それは――10年以上に渡りミカエルが心の中に押し込んできた掛け替えのない感情であった。


「なぁ。コノエ。これはオレのワガママなのかもしれねぇけどよ。ソフィには清い体のままでいて欲しいんだ。だからお願いだ。ソフィはお前に好意を抱いているみたいだけどよ……お願いだからアイツだけには手を出さないでくれよ」


 ここまで真剣な相談を受けてしまうと断ることはできない。
 そう判断した悠斗はミカエルの願いを聞き入れることにした。


「――分かった。約束するよ」

「信じて、いいんだな?」

「ああ。男同士の……友情の約束だ!」


 悠斗はそこでミカエルと握手を交わす。

 同じ男としてミカエルの一途な気持ちは尊重してやりたい。

 この時、悠斗は異世界に召喚されてから初めて男友達が出来たような気がした。
 

「異世界支配のスキルテイカー ~ ゼロから始める奴隷ハーレム ~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く