聖剣を抜いたのが僕でごめんなさい!
第十八話 炎帝の業火!
コロッセウムは超満員で通路でさえ立ち見客で溢れている。
貴賓席にはローランド国王とクリュム大臣。『六王衆』のエリスとトコナッツ王国軍大将のガルムンド。そして、ある意味本日の主役の1人であるリーン王女が既に着席している。
「暑いわ、、早く始めなさいよ!」
「申し訳ございません!観衆があまりに多い為入場に時間がかかってまして、、」
貴賓席担当の衛兵が慌ててリーンの対応をするも、ギッと睨まれ一瞬にして怯んでしまった。
暑さからか、あるいは冷や汗か。両頬から水が滴っている。
ドォーン!!
大きな銅鑼の音が鳴り響く。
「大変お待たせ致しましたぁあ!これより特別試合を開始します!両者入場ぉお!!」
気合いが入ったレフェリーの掛け声とほぼ同時に両者が黄色い砂の地面に足を踏み入れた。
2人の姿を眼球で直接確認した観客たちは割れんばかりの歓声をあげる。
「虎の門!学生にしてローランド王国特別兵士長!『新世代最強』と呼ばれる男!タケル・リクドウぉお!」
「キャー!イケメン!」
「黒い髪がミステリアスでたまんないわー!」
チビとノッポの個性的な見た目を持つ女性2人組を筆頭に黄色い歓声が巻き起こる。
それは男たちの怒号的な雄叫びを秒で搔き消してしまうほどだった。
「ちぇ!なんでいなんでい!」
同じ男として、この立場の違いにやりきれなくなるのは当然である。そう言い切れるほど本日の主役2人には華がある。
「続いて龍の門!生まれてこの方負け知らず!誰が呼んだか付いた呼び名は『南方不敗』!不出の天才!国王・サウザンド・ハン・アラジーン!!」
「キャー!イケメン!」
「その危険な男の香り、、たまんないわー!」
(((お前らさっきから黙れよっ!!!)))
個性的なチビとノッポに周りの男は総じて、心の中でツッコミを入れてしまう。
賑やかなアリーナ席とは対照的に、貴賓席一行は静かその時を待っていた。
「なあエリス、どっちが勝つと思う?」
「愚問ですわよガルムンド。十中八九、、」
「タケルですわ!」「殿下だな!」
各王国最強クラスの2人の意見は見事に割れる。
タケル、サウザンド。本人の実力を知る者同士には、それぞれそ負ける姿が想像出来ないのだった。
「殿下のスキル『炎帝の化身』が出たら一発だぜ?この俺ですら勝てる自信がねえ」
「それを言ったらタケルは破格のエンチャント系固有スキルを3つも持っていますのよ。相当な実力差がない限りまず相手になりませんことよ」
「そいつは見ものだね」
女性と口でやりあってもまず勝ち目はない。
ガルムンドは早々と撤退を決めるのであった。
「準備はよろしいかぁあー!!」
2人の言い合いを空で聞いていたリーンは目線を闘技場中央に集中させた。
いよいよ始まる。
どちらも属性は『剣士』。
闘技用の短剣を片手で軽く構えるサウザンド。
対照的に長剣を体の中心に両手で構えるタケル。
両者とも臨戦態勢に入っている。
レフェリーが赤い旗を天に向かい突き上げると、少し間を置き、一気に振り下げた。
「はじめぇええ!!」
ギュン!!!
「デヤァー!」
先手を打ったのはサウザンド。
短剣の機動性を生かした連撃は目にも留まらぬ速さで繰り出される。
ガキン!!スッ、スッ、ブン。
タケルは最初の一撃のみ剣で受けきると、それ以外を切っ先と肌が数ミリと言う距離感を保ったまま華麗にかわし続けた。
「ハハッ!まだまだぁあ!」
サウザンドの剣速は衰えるどころか徐々に早くなる。
スッ、キン!キン!ガキン!!
ついに避けきれなくなる。
剣の打ち合いになるものの、明らかに押しているのは筋力に勝るサウザンドだった。
『間』を嫌ったタケルは一瞬の隙を付きサウザンドの足元を地面ごと薙ぎ払う。
「ッフン!」
凄まじい爆発音と共に土煙が両者の視界を遮り、怒涛の連撃は止んだ。観客は地響が起こるほどの大歓声を巻き起こすが、当人たちはそれが聞こえないほど集中していた。
「強いねー本当に、、じゃあそろそろ行こうか!」
「サウザンド様こそ、、『準備運動』にしてはいささかやり過ぎでは?」
二人の会話はもちろん客席まで届かない。
これが『準備運動』だと言う事に気付いていたのは、貴賓席に居るエリス、ガルムンド、リーン。それと入場口付近の通路で立ち見を余儀無くされた老人と少年の5名のみであった。
「あれま、、どちらも若いですな!ハッハ!」
「師匠、、凄いです!感謝感激雨あられ!です!」
「よく見ておきなさい。これがお前を含めた『新しい波』の先頭を行く者達の闘いです、、ほれ!次が来ますぞ!」
ブァン!
次第に土煙が薄くなり視界が晴れて行く。
と、同時にとてつもない熱波が会場にエフェクトする。
土煙の合間から見え隠れしているのは間違えなく『炎』。
しかもそれは人体から異様な勢いで放出されている。
「なんなのアレ!(なんて強い生命エネルギーなの、、)」
「さっそく出やがった、、『炎帝の化身』だ!」
「意外、、サウザンド王の方は勝負を長引かせる気がないらしいですわ」
サウザンドは固有スキル『炎帝の化身』を発動する。その放出エネルギーから見るに『肉体強化』が発動しているのは確かだが、王道魔法『オーバーステート』とは明らかに威力が違う。
「エリス!だからアレは何なのよ?」
「『炎帝の化身』。そもそも化身系の固有スキルは強力な物が多い事で知られていますわ。特に[天・風・火・水・土]の元素系は『創造の化身』と呼ばれ、どの文献でも伝説級扱い、、情報が極端に少ないの」
「伝説級って、、、タケルに勝ち目はあるわけ?」
「わからないですわ、、ただ一つ言えるのは、サウザンド王が『最強の鉾』を持っているとしてもタケルには『最強の盾』があると言う事ですのよ!」
土煙が完全に晴れると、全身を赤と橙色の炎に包まれたサウザンドが身を低くし構えていた。両脚がまるでバネが弾ける寸前のように折り曲げられている。
「オーバーステート!」
タケルは肉体強化魔法を発動し、臨戦態勢を取る。
「そんな安物の強化魔法じゃ無理だぜ、、」
バゴンッ!!
サウザンドは縮めた両足を一気に解放する。凄まじいクラウチングに地面が深くエグれた。
「炎舞!火速陣!」
ズザザザザザザザザァ!!
炎を纏った短剣の超高速連撃が無規則にタケルを襲う。全身で起こる細かい爆発が剣速を更に強化、加速させている。
「ック、、」
1撃目防御。
2撃目防御。
3撃目被斬、、
4撃目被斬、、、
5撃目、、、
[閃光の技:S]を擁していても防ぎきれない連撃。
炎による物なのか、斬撃による物なのか。半径数十メートル内の地面は無慈悲にエグられ焦げ付く。
気付くとタケルは空中高くに打ち上げられていた。サウザンドは短剣を腰に戻し両方の手の平を広げるとそれを頭上に舞うタケルに向ける。
「炎舞。万炎戯々!」
ズドドドドドドドドドドドド!!
拳ほどの大きさの火球が、マシンガンの如く撃ち放たれた。
タケルはなす術なく、連続して被弾する。
空中で爆炎が上がり焦げた匂いが会場を包む。
「おいおい、、おたくの『最強君』は大丈夫かい?もう勝負にすらなって無いようだが、、」
「エリスや、、」
ガルムンドに続いて話し出すローランド王。その表情はタケルの身を案じているのか緊迫しているように見える。
「サウザンド君がもしこのまま攻撃の手を休めぬ様ならば、頼む。」
「承知しました。(タケル、、まだやれますわよね)」
闘技場内のサウザンドは再び両手をタケルが居るであろう空中にかざす。
「あれ?中々落ちてこないね、、まあいいや!これで終わり!」
無数の火の玉が爆炎の中に居るタケルを囲んだ。
「エリス!!」
ローランド王が叫ぶ。
(ここまでなの、、)
エリスは杖を構えるものの次の一手を躊躇っていた。
「炎舞!万炎戯々!」
「、、勾玉よ我を守護せよ」
ズドドドドドドドドドドド!
爆炎の中から一瞬、紫がかった光が放たれるのとほぼ同時に火の玉による集中砲火が始まった。
ローランド王は肩を落とし俯く。
エリスは構えを解き、大きくため息をついた。
「ローランド王、、」
「なんじゃエリス、、ワシはお前に失望したぞ、、」
「、、止めるも何も、、『勝負はこれから』でしたので」
その言葉にローランド王は顔を上げる。
「な、なんじゃアレは!!」
とてつもない爆風が球状になって、宙に浮いたタケルを包んでいる。
サウザンドの放つ業火もどうやら無力化しているようだった。
「ようやくお目覚めかい!ハハ!」
爆風で作られた防御壁が解かれる。
紫色に怪しく光る人の顔程の勾玉が3つ、タケルの周囲を規則的な円周運動をしている。
「貴殿の攻撃はもう当たりませんので、ご了承ください」
タケルは服についた砂埃を払いながら静かに地面へ着地し、攻撃の体制を取り直した。
貴賓席にはローランド国王とクリュム大臣。『六王衆』のエリスとトコナッツ王国軍大将のガルムンド。そして、ある意味本日の主役の1人であるリーン王女が既に着席している。
「暑いわ、、早く始めなさいよ!」
「申し訳ございません!観衆があまりに多い為入場に時間がかかってまして、、」
貴賓席担当の衛兵が慌ててリーンの対応をするも、ギッと睨まれ一瞬にして怯んでしまった。
暑さからか、あるいは冷や汗か。両頬から水が滴っている。
ドォーン!!
大きな銅鑼の音が鳴り響く。
「大変お待たせ致しましたぁあ!これより特別試合を開始します!両者入場ぉお!!」
気合いが入ったレフェリーの掛け声とほぼ同時に両者が黄色い砂の地面に足を踏み入れた。
2人の姿を眼球で直接確認した観客たちは割れんばかりの歓声をあげる。
「虎の門!学生にしてローランド王国特別兵士長!『新世代最強』と呼ばれる男!タケル・リクドウぉお!」
「キャー!イケメン!」
「黒い髪がミステリアスでたまんないわー!」
チビとノッポの個性的な見た目を持つ女性2人組を筆頭に黄色い歓声が巻き起こる。
それは男たちの怒号的な雄叫びを秒で搔き消してしまうほどだった。
「ちぇ!なんでいなんでい!」
同じ男として、この立場の違いにやりきれなくなるのは当然である。そう言い切れるほど本日の主役2人には華がある。
「続いて龍の門!生まれてこの方負け知らず!誰が呼んだか付いた呼び名は『南方不敗』!不出の天才!国王・サウザンド・ハン・アラジーン!!」
「キャー!イケメン!」
「その危険な男の香り、、たまんないわー!」
(((お前らさっきから黙れよっ!!!)))
個性的なチビとノッポに周りの男は総じて、心の中でツッコミを入れてしまう。
賑やかなアリーナ席とは対照的に、貴賓席一行は静かその時を待っていた。
「なあエリス、どっちが勝つと思う?」
「愚問ですわよガルムンド。十中八九、、」
「タケルですわ!」「殿下だな!」
各王国最強クラスの2人の意見は見事に割れる。
タケル、サウザンド。本人の実力を知る者同士には、それぞれそ負ける姿が想像出来ないのだった。
「殿下のスキル『炎帝の化身』が出たら一発だぜ?この俺ですら勝てる自信がねえ」
「それを言ったらタケルは破格のエンチャント系固有スキルを3つも持っていますのよ。相当な実力差がない限りまず相手になりませんことよ」
「そいつは見ものだね」
女性と口でやりあってもまず勝ち目はない。
ガルムンドは早々と撤退を決めるのであった。
「準備はよろしいかぁあー!!」
2人の言い合いを空で聞いていたリーンは目線を闘技場中央に集中させた。
いよいよ始まる。
どちらも属性は『剣士』。
闘技用の短剣を片手で軽く構えるサウザンド。
対照的に長剣を体の中心に両手で構えるタケル。
両者とも臨戦態勢に入っている。
レフェリーが赤い旗を天に向かい突き上げると、少し間を置き、一気に振り下げた。
「はじめぇええ!!」
ギュン!!!
「デヤァー!」
先手を打ったのはサウザンド。
短剣の機動性を生かした連撃は目にも留まらぬ速さで繰り出される。
ガキン!!スッ、スッ、ブン。
タケルは最初の一撃のみ剣で受けきると、それ以外を切っ先と肌が数ミリと言う距離感を保ったまま華麗にかわし続けた。
「ハハッ!まだまだぁあ!」
サウザンドの剣速は衰えるどころか徐々に早くなる。
スッ、キン!キン!ガキン!!
ついに避けきれなくなる。
剣の打ち合いになるものの、明らかに押しているのは筋力に勝るサウザンドだった。
『間』を嫌ったタケルは一瞬の隙を付きサウザンドの足元を地面ごと薙ぎ払う。
「ッフン!」
凄まじい爆発音と共に土煙が両者の視界を遮り、怒涛の連撃は止んだ。観客は地響が起こるほどの大歓声を巻き起こすが、当人たちはそれが聞こえないほど集中していた。
「強いねー本当に、、じゃあそろそろ行こうか!」
「サウザンド様こそ、、『準備運動』にしてはいささかやり過ぎでは?」
二人の会話はもちろん客席まで届かない。
これが『準備運動』だと言う事に気付いていたのは、貴賓席に居るエリス、ガルムンド、リーン。それと入場口付近の通路で立ち見を余儀無くされた老人と少年の5名のみであった。
「あれま、、どちらも若いですな!ハッハ!」
「師匠、、凄いです!感謝感激雨あられ!です!」
「よく見ておきなさい。これがお前を含めた『新しい波』の先頭を行く者達の闘いです、、ほれ!次が来ますぞ!」
ブァン!
次第に土煙が薄くなり視界が晴れて行く。
と、同時にとてつもない熱波が会場にエフェクトする。
土煙の合間から見え隠れしているのは間違えなく『炎』。
しかもそれは人体から異様な勢いで放出されている。
「なんなのアレ!(なんて強い生命エネルギーなの、、)」
「さっそく出やがった、、『炎帝の化身』だ!」
「意外、、サウザンド王の方は勝負を長引かせる気がないらしいですわ」
サウザンドは固有スキル『炎帝の化身』を発動する。その放出エネルギーから見るに『肉体強化』が発動しているのは確かだが、王道魔法『オーバーステート』とは明らかに威力が違う。
「エリス!だからアレは何なのよ?」
「『炎帝の化身』。そもそも化身系の固有スキルは強力な物が多い事で知られていますわ。特に[天・風・火・水・土]の元素系は『創造の化身』と呼ばれ、どの文献でも伝説級扱い、、情報が極端に少ないの」
「伝説級って、、、タケルに勝ち目はあるわけ?」
「わからないですわ、、ただ一つ言えるのは、サウザンド王が『最強の鉾』を持っているとしてもタケルには『最強の盾』があると言う事ですのよ!」
土煙が完全に晴れると、全身を赤と橙色の炎に包まれたサウザンドが身を低くし構えていた。両脚がまるでバネが弾ける寸前のように折り曲げられている。
「オーバーステート!」
タケルは肉体強化魔法を発動し、臨戦態勢を取る。
「そんな安物の強化魔法じゃ無理だぜ、、」
バゴンッ!!
サウザンドは縮めた両足を一気に解放する。凄まじいクラウチングに地面が深くエグれた。
「炎舞!火速陣!」
ズザザザザザザザザァ!!
炎を纏った短剣の超高速連撃が無規則にタケルを襲う。全身で起こる細かい爆発が剣速を更に強化、加速させている。
「ック、、」
1撃目防御。
2撃目防御。
3撃目被斬、、
4撃目被斬、、、
5撃目、、、
[閃光の技:S]を擁していても防ぎきれない連撃。
炎による物なのか、斬撃による物なのか。半径数十メートル内の地面は無慈悲にエグられ焦げ付く。
気付くとタケルは空中高くに打ち上げられていた。サウザンドは短剣を腰に戻し両方の手の平を広げるとそれを頭上に舞うタケルに向ける。
「炎舞。万炎戯々!」
ズドドドドドドドドドドドド!!
拳ほどの大きさの火球が、マシンガンの如く撃ち放たれた。
タケルはなす術なく、連続して被弾する。
空中で爆炎が上がり焦げた匂いが会場を包む。
「おいおい、、おたくの『最強君』は大丈夫かい?もう勝負にすらなって無いようだが、、」
「エリスや、、」
ガルムンドに続いて話し出すローランド王。その表情はタケルの身を案じているのか緊迫しているように見える。
「サウザンド君がもしこのまま攻撃の手を休めぬ様ならば、頼む。」
「承知しました。(タケル、、まだやれますわよね)」
闘技場内のサウザンドは再び両手をタケルが居るであろう空中にかざす。
「あれ?中々落ちてこないね、、まあいいや!これで終わり!」
無数の火の玉が爆炎の中に居るタケルを囲んだ。
「エリス!!」
ローランド王が叫ぶ。
(ここまでなの、、)
エリスは杖を構えるものの次の一手を躊躇っていた。
「炎舞!万炎戯々!」
「、、勾玉よ我を守護せよ」
ズドドドドドドドドドドド!
爆炎の中から一瞬、紫がかった光が放たれるのとほぼ同時に火の玉による集中砲火が始まった。
ローランド王は肩を落とし俯く。
エリスは構えを解き、大きくため息をついた。
「ローランド王、、」
「なんじゃエリス、、ワシはお前に失望したぞ、、」
「、、止めるも何も、、『勝負はこれから』でしたので」
その言葉にローランド王は顔を上げる。
「な、なんじゃアレは!!」
とてつもない爆風が球状になって、宙に浮いたタケルを包んでいる。
サウザンドの放つ業火もどうやら無力化しているようだった。
「ようやくお目覚めかい!ハハ!」
爆風で作られた防御壁が解かれる。
紫色に怪しく光る人の顔程の勾玉が3つ、タケルの周囲を規則的な円周運動をしている。
「貴殿の攻撃はもう当たりませんので、ご了承ください」
タケルは服についた砂埃を払いながら静かに地面へ着地し、攻撃の体制を取り直した。
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