裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
55話
玉作りをした翌日、さっそく試すことにした。
ただ、今日の行動は2班に分ける予定だ。
玉を試す班とカレンを指導する班だ。
内訳はいうまでもなく俺とアリアが試す班で他がカレン班だ。
イーラが抗議をしてきたが、カレンの相手ができるのがイーラしかいないんだと説明したら、若干機嫌を直してしょうがないなぁと引き受けてくれた。
カレンに斬る感覚を覚えさせるために斬られる役なんてイーラ以外がやったら死んじゃうからな。
というか、玉を試すさいに自爆しないよう、アリアのルモンドなんちゃらを使うつもりだから、試す班は必然的に俺とアリアの2人になるわけだ。
残りのイーラはカレンの斬撃の的でセリナは指導、アオイはカレンとセットって感じでちょうどいいっちゃちょうどいいだろう。
セリナにイーラの使い方を指示し、イーラにはセリナの発言は俺の発言だからちゃんと聞くようにといい聞かせて、カレンには遠慮はするなとだけ伝えてからダンジョンに向かった。
イーラに直接いわなかったのはまたブーたれる可能性があるからだ。
ダンジョンに向かって歩き始めて、気づいたことがある。
イーラがいないから1時間くらい歩かなきゃいけねぇんだった。
行きだけでもイーラを連れて来ればよかったな。
まぁ今さら戻るつもりはないけどさ。
アリアと2人だった頃は歩いて移動が基本だったけど、ほとんど無言だったな。懐かしい。
今も無言でいいんだが、なんか聞きたいことがあった気がする…。
…。
そうだ。
「アリア。禁忌魔法ってなんだ?」
アリアは肩をビクッと跳ねさせて立ち止まり、こちらを見た。
俺もアリアにあわせて立ち止まる。
できれば歩きながら話したいのだが…。
「…禁忌魔法は遠い昔に封印されたといわれている魔法です。」
「もっと詳しく知らないか?使い方とか発動するとどうなるとか。アリアも持ってるんだしさ。確か…嫉妬だったか?」
前に自分のスキルは使わなくてもなんとなくわかるっていってたしな。
アリアの禁忌魔法が嫉妬であっていたかを念のため確認しようとアリアのスキル画面を見たが、禁忌魔法自体がなくなっていた。
何度か確認するが見当たらない。
なくなることもあるのか?
アリアを見るといつもの無表情のまま、ポロポロと涙を流していた。
なんでだ!?
「…ごめんなさい。」
「なんで謝る?」
「…禁忌魔法は所持しているだけで大罪となります。知られると即処刑もしくは一生国の奴隷です。それが怖くて…黙っていて…ごめんなさい。」
途中からしゃくり上げて泣き始めてしまった。
というかそんなヤバいものなのかよ。
俺も持ってんだけど…。
「べつに黙っていたことに怒ってるわけじゃねぇよ。単純にどんなのか知りたかっただけだ。とりあえず泣く必要はない。」
泣き止むまで頭を撫でていると、しばらくして落ち着いたようで、またごめんなさいと謝った。
べつに謝る必要はないといって歩き始めると、アリアも歩き始めた。
「だけどアリアはもう所持してないんだから、怖がる必要なんてねぇじゃん。」
「…え?まだ所持しています。現在は使えませんが。」
は?
使えない状態のときは奴隷画面で確認できなくなるのか?
なんとなく鑑定でもアリアのスキルを確認してみるが、やっぱりなくなっている。
なら使えない状態であればバレる心配もないわけか。
じゃあ俺は極力怒らないようにすればいいわけだ…無理だな。
ん?ってことはアリアはつい最近まで何かに嫉妬してたのか?
んで気づいたらもう嫉妬してなかったと。
アリアとはずっと一緒にいたと思うが、この短期間でなんかあったっけか?
まぁいいか。
「ちなみにさっきの質問の使える条件とか使うとどうなるかってのはわかるのか?」
「…わたしの感覚ですが、『禁忌魔法:嫉妬』を使用するためにはその名の通り『嫉妬』の心を持つことが最低条件のようです。次に必要なのが膨大なMPです。間違って個人で無詠唱で発動させてしまったら、MPもPPも一瞬でなくなって死んでしまうと思います。国が使う際には選ばれた魔導師20人でマジックシェアをして使うそうです。発動したら、嫉妬の対象に呪いをかける類の魔法だと思います。どんな呪いかは使ってみないとわかりません。ただ、嫉妬の対象に仲間が含まれる可能性は大いにあります。」
味方を巻き込む危険な魔法だから昔の人は封印したってところか。
「発動が大変なうえに味方を巻き込むような危険な魔法ってことは理解したが、なんで持ってるだけで即処刑なんだ?国の奴隷になるってのも意味不明だし。」
「…禁忌魔法は固有魔法です。つまりは世界に1人しか所持できません。そして、禁忌魔法は強力な魔法です。だからどこの国も戦争に使いたいのでしょう。国の奴隷になるのであればよし。ならないのであれば殺して独自に所有者を生み出すといったところだと思います。」
酷いな。
ってか独自に生み出すってなんだ?
「…『色欲の巫女』、アラフミナが所有している禁忌魔法使いの名前です。本名は知られてません。」
巫女なのに色欲って…。
「禁忌魔法は七つの大罪なのか?」
「…七つの大罪?禁忌魔法は確かに全てが大罪です。ただ、正確な数はわたしは知りません。有名なのが先ほどの『色欲の巫女』と『暴食の孤児』あとは今は亡き『憤怒の悪鬼』です。」
今は亡きか…そいつが生きてりゃ俺が手にすることはなかったんだろうな。
それにこの世界には七つの大罪ってやつがないのかもな。
だから禁忌魔法と俺の国の大罪は関係ないと思っておいた方が良さそうだ。
「禁忌魔法が所持してるだけで大罪になるとか知っておいてよかったよ。ありがとう。」
礼を述べてアリアを見ると、アリアは俯いていた。
「…わたしはもうリキ様とは一緒にいられないのでしょうか?」
「なんでだ?」
「…知られたらリキ様に迷惑をかけてしまいます。」
「そんなことか。それなら大丈夫だ。アリアがバレるときには俺もバレてるだろうから。」
いってる意味が伝わらなかったようで、首をかしげられた。
アリアの前で使ってるからわかると思ったんだがな。
「俺も禁忌魔法を持ってるからさ。憤怒をな。」
「…え!?」
基本が無表情なアリアが感情のある表情を見せるとなんか得した気になる。
さて、そろそろダンジョンに着くし、気持ちを切り替えて本来の目的を果たすか。
「…リキ様?あの。」
「なんだ?」
「……………いえ、なんでもないです。」
何かいいたそうだが、いうのをやめたらしい。
どうせ禁忌魔法についてだろ。
あんまり話して誰かに聞かれてもバカらしいから、この話は終わりにしよう。
だから俺も聞き返さない。
…そういえば、さっきアリアのスキルを鑑定で見たとき、前ほど頭が痛くなかったな。
慣れるとかあるのか?
…まぁ気のせいだろ。
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