裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

159話




張られた布を何かが連続して叩くような音が聞こえ、ふと目を開けた。
どうやら寝ていたようだ。

意識が覚醒したことにより、ガタガタという音とともに腰や背中に伝わる痛みや視界に映る景色を認識し、馬車のようなものに乗っていることがわかった。
普通に考えて、来た時に乗っていたイグ車だろうな。

ということは帰り道か?

それと最初はまさかと思いながらも、後頭部に伝わる柔らかさを堪能しながら眼前の2つの突起物をしばらく見つめることにより確信した。
なぜかは知らんが、膝枕をされているようだ。
それにしてもこんなに胸がデカいやつって俺の仲間にいたか?デカいといっても良識のある程度だが…自分でいっててなんだが、胸のデカさの良識ってなんだ?まだ寝ぼけてんのか?

そもそも夢かもしれないしな。

なんとなしに目の前の胸を鷲掴みにした。
ノーブラってことはさすがにないと思うが、日本の下着とは使ってるものが違うのか、思った以上に柔らかかった。

とくに揉んだわけでも強く握ったわけでもないが、触られた側がビクッと動いた。

ヴェルはそこそこ胸があった気がするが、イメージとしては胸筋なんだよな。だからこんなに柔らかくないはずだ。しかも服の下にはビキニアーマーをつけてるはずだしな。
もしかしてイーラか?
イーラだったら肉体変化は自由自在だからあり得るか。その場合、服も肉体に変わりないから、直揉みしてることになるのか…そりゃ柔らかいわけだ。そもそもスライムに胸という概念があるかは謎だが。

「…おはようございます。リキ様。」

ふと視界に入ってきたアリアが挨拶してきた。その両隣にはイーラとセリナもいるな。
どうやら俺の視界の外にいたようだ。

ん?じゃあこの膝枕をしてくれてんのは誰だ?というか俺はなんで人の胸を鷲掴みにしてんだ?寝ぼけてるときの行動は自分でも驚きだな。

胸から手を離して起き上がる。

少しクラっとしたが、問題はなさそうだ。強いていうなら体が怠いくらいか。

アリアたちの方に向き直って座り直して気づいたが、どうやら俺の仲間は全員このイグ車に乗ってるみたいだ。あとはなぜか綺麗なお姉さんが1人いた。いうまでもなくこのお姉さんが膝枕をしてくれてたみたいだ。

「おはよう。まだ頭がボヤけている。簡潔に状況説明を頼む。」

ここがどこで今はどんな状況なのかとわからないことだらけで、自分でも何を聞きたいかがいまいちわからん。だから全部アリア任せにした。

「…現在はイグ車にてカンノ村に帰る途中です。戦争はわたしたちに死者はなく、ケモーナの生存者は3名で、ケモーナ騎士団の団長とルモーディア様とで話し合いの末、終結したようです。リキ様は半日ほど寝ていました。リンカネイラさんはわたしが頼んで膝枕をしていただいてました。」

本当に1日で終戦したのかよ。
戦争に詳しくない俺にはよくわからんが、そんなことあり得るのか?

「本当に終わったのか?」

「…はい。今回の完敗により、ケモーナ側はリキ様に攻撃を仕掛ける愚かさを身をもって知ったかと思います。それにケモーナ最強の戦士はケモーナ王国との契約を更新せずに拠点を変えるつもりのようです。なのでよほどの愚王でなければ二度と攻めてくることはないと思います。ただ、私怨で戦争をするような国なので、絶対にないとはいいきれません。それでもクルムナが脅威でなくなるまでは何もしてこないかと思います。」

まぁ可能性をいい出したらキリがないか。
今回はこれで終わったことを喜ぼう。誰も死なずに済んだんだし。

「あと、リンカネイラさんだっけ?誰?」

「リンカネイラ・サラディウスです。ルモーディア様のもとに仕える者です。」

リンカネイラが座ったまま自己紹介をして、かるく頭を下げた。

今ルモーディアが連れてきてんのは私兵だけだったよな?ってことはこいつも私兵か?
この世界はこんな綺麗な女性も普通に戦うんだよな。顔面偏差値のことをいってるわけではなく、肉体的に戦闘向けではないような細身の巨乳…スタイルがいい女性もって意味だ。

そんな人が重い鎧を着てたり、武器を振り回したりできるのは加護やレベルってのがあるからこそなんだろうが、やっぱり違和感があるな。

ちなみにリンカネイラは顔面偏差値も高めだ。

今はTシャツっぽいのと短パンというかなりラフな格好なんだが、凄えいいな。

「なんであんたが膝枕なんてしてんだ?」

一瞬リンカネイラの目線がアリアの方に泳いだが、アリアと目が合うとすぐに俺に向き直った。

「すみません。やはり私の太ももでは硬くて寝心地が悪かったでしょうか?」

ちょっと泣きそうな顔をしている。なんで?
しかも質問の答えとしておかしいし。
そういやアリアが頼んだとかいってたっけ?だからそれを知ったうえで聞いてきたのだから不快だったといっているのかと思ったのか?でも、だとしたら頼まれたからしてやってんのにと怒ることはあっても泣くのはおかしくね?

「いや、十分に柔らかくて寝心地良かったぞ。なんか勘違いしてそうだから、まずは礼をいう。ありがとう。それと、仕事に含まれないようなことまでさせちまってすまない。」

「いえ、そんな…お世辞でもありがとうございます。」

「ん?べつに世辞ではないんだが…あと、寝ぼけてたとはいえ胸を掴んですまん。」

今度は言葉だけではなく、一応かるく頭も下げた。やっといていうのもなんだが、さすがに知らないやつの胸を触るとかありえないからな。

「だ、大丈夫です。ビックリしましたが、減るものではないので…気にしないでください。」

え?じゃあもっと触っていいってことか?
いや、1回目だからこそ許されただけだろう。
相手も気を使ってくれただけだろうから、調子に乗るべきではないな。

べつに俺の視線がリンカネイラの胸にいった瞬間にアリアたちの俺を見る目が一斉に変わったことに危険を感じたからでは断じてない。

「それで、帰りも町に立ち寄っていくのか?俺らだけで先に帰ってもいいものなのか?」

「…現在、雨が降っているのでわたしたちだけで帰るのは難しいかと思います。なので、ルモーディア様と同行して、帰った方がいいかと思います。その場合、来たときと同じように2ヶ所の町に立ち寄ることになります。」

超級魔法の扉を使えば帰れるんじゃないかとも思ったが、別に急ぐ必要はないか。
ルモーディアについて行けば美味い飯もタダで食えるしな。

「別に急いでないし、せっかくだからゆっくり帰るか。村に残ってるやつらにお土産を買ってやるのもいいしな。」

「…はい。リキ様の怪我は完治しましたが、まだ安静の必要があると思いますので、ゆっくり休んでください。」

確かに疲れてるな。
PPは満タンなのに疲労感が抜けてないし、血が足りてないのか少しクラクラする。
魔法も万能ではないんだな。

いや、左腕がくっついているだけで十分だろ。当たり前に五体満足だったから、斬り落とされてたことをすっかり忘れてた。

「…あと、リキ様。こちらの人形をお返しします。」

「ん?あぁ、ありがとう。」

アリアがアイテムボックスから俺がフォーリンミリヤでもらった人形を取り出した。
寝る前は綿が飛び出してた気がするが、今は綺麗に縫い合わせてあった。
というか、今アリアはアイテムボックスから取り出さなかったか?
試しにアイテムボックスにしまおうとしたら、普通にしまえた。なぜだ?…まぁいいか。

「ルモーディア様にリキ様が起きましたことを伝えましたので、最寄りの町に立ち寄ります。」

リンカネイラがルモーディアに連絡を取ったらしい。俺が寝てたから止まるに止まれなかったのか?町に止まったら起こさなきゃならなかったから?…ずいぶん気を使われてんな。





俺が起きてから30分ほどで町に着いた。

行き道で寄った町とは違うみたいだが、アラフミナはけっこう町があるんだな。
まぁ町っていっても王都ほどでかくはないが、村ほど小さくもなく、王族が泊まれるような高級宿もちゃんとある。もしかしたらアラフミナってけっこう栄えてんのかもな。

すぐに宿を取って飯を食い、その後は自由時間となったんだが、俺以外は全員お疲れのようだ。
俺も肉体的疲労感は少しだけあるが、目はかなり冴えてしまっている。まぁさっきまで寝てたしな。

アリアたちには寝ておくように命令し、俺は町をうろつくことにした。
まだ雨は降っているが、小雨だから『中級魔法:風』を常時纏っておけば濡れないだろう。中級魔法程度ならしばらくは常時発動しててもMPが尽きないくらいにはなってるしな。

もう完全に夜中だからか、酒屋と宿屋くらいしかやってねぇな。
村のやつらにお土産っていってもなにがいいだろう。
酒屋に美味そうなもんがあったらそれでいいか。

どの酒屋に入ろうかと考えながらブラブラしていると、200メートルほど先の道の真ん中に何かが落ちていた。
雨だからか人通りは少ないが、全くいないわけではない。見かけたやつらはみんなローブを着て早足でかけているみたいだが、そのゴミを避けるように通っていた。

まぁゴミをわざわざ片す善良な人間の方が珍しいか。俺も片付けるつもりはねぇし。

あと20メートルほどに近づいたところで勘違いに気づいた。これはゴミじゃなくて人じゃねぇか。
雨で出来た水たまりに血が滲んでいるところを見るに怪我してるっぽいな。
酔っ払って喧嘩でもしたのか?

まぁだとしたら自業自得だ。弱いのに酔った勢いで調子に乗ったのが悪い。

倒れてる人間を避けて先に行こうと思ったが、うめき声が聞こえて視線を倒れてる人間に向けたら顔が見えた。
まだガキじゃねぇか。

…。

若く見えるだけかもしれねぇな。

鑑定を発動すると、何の抵抗もなく情報が見えた。

ステイル・クラーチカ 人族 11歳
冒険者LV15
状態異常:衰弱

冒険者みたいだし、地味にレベルを上げてるみたいだが、間違いなくガキだな。

…。

『ハイヒール』

よく見ると腕や足が変な方向を向いてるな。
それに一度のハイヒールでは完治しないほどの怪我だったみたいで、まだ痛々しい。

俺はかがんでガキの顔を覗き込んだ。

「おい、どうしてこうなった?」

返事はない。

これが自業自得なら放置するんだが、ガキができる範囲でここまでされることってあるのか?

とりあえず治すか。

『ハイヒール』

『ハイヒール』

『ハイヒール』

こんなもんか?
強めにかけたからか、けっこうMP食ったな。

これだけすればさすがに完治しただろう。顔の傷は消えたし、腕や足の向きも違和感なくなったし。ただ、歯が数本抜けたままハイヒールをかけてしまったのは悪いと思ってる。許せ。

ガキがゆっくりと目を開けた。

「大丈夫か?とりあえず怪我は治したが、動けるか?」

ガキは数回瞬きを繰り返したのち、周りをキョロキョロと確認して、あらためて俺を凝視した。

「あ、ありがとう。」

「あぁ、気をつけて帰れよ。」

いろいろ聞こうかとも思ったが、なんかどうでもよくなったな。わざわざ自分から面倒ごとに首を突っ込みたいとも思わないし。

宿の近くにあった酒屋が1番良さげだったし、これ以上探すのはやめて戻るとするか。

俺が立ち上がって戻ろうとしたところで、ガキに袖を掴まれた。

「あ?」

「え、えっと…お礼がしたいと思って、咄嗟に掴んじゃったけど、今は隠れ家にはなんの食料もないんだった…。」

俺が不機嫌になったと思ったのか、目を泳がせながらオドオドとしだした。

「あぁ、べつに礼はいらん。早く親んとこに帰ってやれ。心配してんだろ。」

「お父さんもお母さんもいないよ。でも妹が心配してると思うから帰るね。本当にありがとう!」

「あぁ。気をつけて帰れよ。」

俺は来た道を歩いて戻り、ガキは俺と反対方向に走り出した数秒後、ボゴッという鈍い音が聞こえて振り返ると、地面に蹲るガキとそれを見ているローブを着た男が3人いた。

「ほら、やっぱり戻って来て正解でしたでしょう?」

「そうだな。まさかこんなガキがあの怪我を治すほどのポーションを持ってるとは想像もしてなかったぜ。」

「他にもアイテムボックスにアイテム類をしまってるんじゃねぇか?今度はちゃんとそっちを出させてから、またゆっくりいたぶってやろうじゃねえの。」

不快な笑い声が聞こえてきた。

本当にどこにでも腐ったやつはいるんだな。
ただ、男たちがやり過ぎてるからといって、どちらが悪いかはこれだけじゃわからねぇか。
それでも俺が治したガキにまた怪我を負わせたことは不快でしかない。

俺はガントレットを装着して、歩いて男たちに近づいた。

「おい、俺が助けたガキに何してんだ?」

俺の声に気づいた3人はこっちを向いた。

「どうやら仲間がいたようですね。どうします?」

「面倒だから殺しちまおうぜ?」

「いいんじゃねぇの?見られた時点で帰すわけにはいかねぇからな。」

救いようがねぇな。

男たちはそれぞれの武器を持ち、先に仕掛けてきたが、ずいぶん遅いな。
この程度の実力じゃたいした防具も持ってないだろうし、簡単に殺せそうだ。

イライラするから思い切り殴ってストレス発散も悪くないが、せっかくだ。実験台にしよう。

『超級魔法:闇』

とりあえず1番近かったやつを指定しようと思ったら、これは範囲攻撃らしい。決められるのは範囲と強さだけだ。

範囲を俺を中心に半径5メートル程度にし、強さは特に変更しなかった。


「アアアァァァァァアアアァァァアァ!」


3人中2人は白眼になって泡を吹いて崩れ落ちて痙攣し始めたが、1人は頭を抱えて奇声を上げ始めた。マジでウルセェ。

でもちょうどいいクズがいたおかげで実験できてよかった。やはりこれは普段は使うべきじゃねぇな。
こいつらみたいなクズがどうなろうがかまわないが、殺さずに精神だけ破壊するってのは俺には合わないみたいだ。無性に気分が悪い。

「アアアアァァァァァアアアァァ!」

「ウルセェ!」

いつまでも奇声を上げてる男の顔に回し蹴りをしたら、泡を吹いて気絶した。

もう殺す気にもなれねぇ。はやく帰りてぇ…。

あぁ、そういやガキがいるんだったな。また変なのに絡まれたらめんどくせぇし、家まで送ってやるか。

『ハイヒール』

「起きろ。」

足で小突くと、ガキは痛みがなくなっていることに気づいたようで、ゆっくりと起き上がった。

「あ、ありがとう、ございます。」

ん?なんか凄い震えてねぇか?まぁいいや。

「また巻き込まれたら面倒だ。送ってやる。」

「あ、いえ、大丈夫…です。」

「ガキが遠慮なんかするんじゃねぇよ。まぁでも人に甘えない姿勢は嫌いじゃねぇ。」

アイテムボックスから一本のナイフを取り出した。今まで加護付きの武器を店で見つけるたびに安ければ買っていたものの1つ。確か成長の加護がついた鋼のナイフだった気がする。調理用のナイフはべつにあるし、魔物相手じゃ使いどころがないから使っていない武器の1つだ。対人相手なら役にたつだろう。

ナイフを取り出した瞬間にガキがビクッと強張ったようだが、べつに攻撃するつもりなんかねぇよ。

「これをやる。成長の加護付きだから使ってれば使いやすくなるはずだ。また攻撃してくるようなやつがいたらこれで刺せばいい。じゃあな。」

皮のケースに入ったままのナイフをガキの手前に投げ、俺は踵を返した。

「…ありがとう…ございます。」

もう酒屋に行く気にもなれねぇ。

なんか疲れたな。

帰るか。





けっきょく気分が乗らなかったから、どこにも寄ることなく宿屋に帰ることにした。
宿屋に向かう最後の曲がり角を曲がったら、宿屋の前になぜかアリアたちがいたから立ち止まった。

「あ?寝とけっていったはずだが、何してんだ?」

全員フル装備じゃねぇか。なんかあったのか?

「…リキ様ですか?」

「は?どういう意味だ?意味わかんねぇこと聞いてんじゃねぇよ。」

何故か1番後ろにいたアリアが小刻みに震えながらさらに一歩下がり、アリアを庇うような位置にヴェルが立った。

「リキ様!にゃにがあったのかわからにゃいけど、殺気を抑えて!」

前にいるイーラとサーシャを押しのけるようにセリナが前に出て、意味がわからないことをいいだした。というか殺気なんて出し方すらわからねぇよ。

アリアたちの立ち位置からして、俺側に向けての戦闘態勢だよな?
振り返ってみるが後ろには誰もいない。なのにアリアたちは武器を下げようとしない…。

「あ?もしかして俺に武器を向けてんのか?」

全員がビクッと肩を震わせたが、武器を下げようとはしなかった。
なんでこのタイミングで裏切る?俺が何かしたか?裏切るならなぜイグ車で寝てるときに殺さなかった?むしろその前にほっとけば死んでいただろう状態だったのになんでわざわざ俺の傷を治した?

…意味わかんねぇ。

そういやちょうどガントレットを着けてんじゃねぇか。

「お主は本当にリキ様なのか?」

サーシャは馬鹿だとわかっていたが、そんなことすらわかんなくなってんのか?

「さっきまで一緒にいたのにもう忘れたのか?それとも馬鹿にしてんのか?」

「リキ様、怖いよ。あのときの悪魔みたいだよ。」

イーラまでわけわか………いや、怖い?イーラが?
あのときの悪魔って空で会ったやつだよな?確かにあいつは怖かった。今の俺があいつみたいだと?

べつに今は殺意も何もないし、それほどイライラしてるわけでもない。むしろ何もやる気が起きないくらいだ。なのに怖い?

何か異常でもあるのかとステータスを確認すると、“状態異常:憂鬱”となっていた。

いつなった?

気分が沈んだのは…『超級魔法:闇』を使った後だったよな?もしかして副作用なのか?

「アリア、悪い。俺に『フェルトリカバリー』をかけてくれ。出来れば強めに頼む。」

「…はい。」


『マジックシェア』

『ステアラ』

『マジパラ』

『フェルトリカバリー』


ステータスを確認すると異常はなくなったようだ。
まぁステータスを見るまでもなくモヤモヤしてた気分が晴れてるのがわかるくらいだ。

「ありがとう。というかむしろ怖がらせたみたいで悪いな。周りに迷惑がかかる状態異常があるなんて知らなかった。すまん。」

『超級魔法:闇』はマジで使うべきじゃないな。まさか副作用がある魔法があるとは驚きだ。もしかしてこれも禁断魔法とかいう部類なのか?

「いつものリキ様だ!」

イーラが抱きついてきた。鬱陶しい。

「…いえ、リキ様が状態異常になっていると気づけず武器を向けてしまい、ごめんなさい。」

アリアが謝罪してきたが、むしろ悪いのは俺…いや、あのクズどもだ。だからアリアが謝ることではないだろう。

「もう今のことは忘れて、早く寝ようぜ。明日も出発は早いんだし。」

「「「「「はい。」」」」」

今度こそ宿に戻り、部屋に入ってからお土産を買ってないことを思い出した。

まぁ次の町で買えばいいか。覚えてたらな。

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