裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

173話



ダンジョンの入り口を隠すようにある岩場が見えてきたあたりで、中からガキどもが5人ほど出てきた。
あいつらは確か冒険者になるっていってた村人たちじゃねぇか。

訓練を終えた時にそのままプレゼントした要所だけ護る革の防具を身につけているから、見た目は冒険者って感じだな。1人だけ金属製のガントレットをつけてるやつがいるが、革鎧とは見た目的に微妙にあってないな。俺がいえたことじゃねぇけど。

武器は最初に配った武器に含まれていた剣や短剣や小さな斧や槍などを持ってるやつが多く、1人2つずつ武器を携帯してるみたいだ。どっちがメインかサブかはわからんが。

変わった武器だとメリケンの端にナイフが付いたやつを持ってるやつと輪っかの刃物…チャクラムだったか?それに紐をつけてるのを持ってるやつと鎖鎌くらいか。

「リキ様?お、お疲れ様です!リキ様は今からダンジョンに行くのですか?」

5人組の中で1番大きい12歳くらいの男が声をかけてきたが、名前がわからねぇ。
悪い意味で出会いが印象深かったから知ってはいるんだが、名前を聞いたことがあったっけか?

「暇だったからちょっとな。お前らは休憩か?」

「いえ、これから町のギルドに行くところです。ギルドのクエストを受ける前にはダンジョンで軽く戦闘をすることにしてるんです。」

ウォーミングアップ的な意味か?

「フレド。リキ様がダンジョンに行くなら今日はクエスト受けるのやめて、僕らもダンジョンに行こうよ。」

「そうだよ!その方が練習になるよ!」

後ろにいた10歳くらいの男2人が口を挟んできた。
今の流れからして、最初の男がフレドだな。覚えておこう。

「確かに参考にはなるだろうけど、お金を得るためにはクエストを受けなきゃダメじゃないか。」

「じゃあリキ様も誘おうよ!」

「それがいいよ!リキ様、一緒に行こう?」

残りの2人も会話に混じってきて、俺を誘ってきた。
この2人も10歳くらいだろう。ガキらしく遠慮がないな。まぁもともと予定があったわけじゃねぇから、暇つぶしになるならそれもありだな。
それにここまで来といて今さら気づいたが、このダンジョンはちょっと前に手ごたえのある魔物はほとんど倒しちまったからあんま残ってないだろうし、未攻略フロアはアリアなしだと心配だからな。

「なんのクエストを受けるつもりなんだ?」

俺が質問をすると、10歳くらいの4人がフレドを見た。どうやらフレドがリーダーみたいだな。

「昨日受けたDランクの討伐クエストがあまりにも簡単だったので、今日は依頼が張り出されていればCランクの討伐クエストを受けるつもりでした。念のため段階を踏んでクエスト難易度を上げていたのですが、リキ様が同行してくれるのであれば、Bランクの討伐クエストを受けたいと思います。」

「そうか………ん?Bランクの討伐クエストを受けるっていっても冒険者なりたてが受けれるクエストではないだろ?」

討伐クエストならついて行ってもいいかななんて思ってたら聞き逃しそうになったけど、クエストのランクは冒険者ランクの上下1つまでしか受けられなかった気がするんだが、この短期間でまた変わったのか?

「僕たちは全員Cランクなので、問題ありません。アリアさんがCランク以上の実力は身についているといっていたので、最初に試験を受けて、全員Cランクにしました。今回Bランクの討伐クエストでも問題なさそうであればBランクの試験も受けてみようかと思います。」

冒険者なりたてでCランクだと?
いや、よくよく考えたらあの弱かったマリナでCランクだったんだから、こいつらの実力からしたらおかしくはないのか。それほど強くなるまでアリアたちが訓練しちまったからな…本当は自分の身を護れる程度の強さの予定だったはずなのに。

まぁ強い分にはいいのか。ただ、慣れないうちに調子に乗ってランクを上げすぎるとあとで痛い目を見る可能性もあるから、注意はしておくか。

「あんま急にランクを上げるとあとあと大変になるかもしれねぇから気をつけろよ。」

「ありがとうございます。身の丈にあってないランクの人たちが簡単に死んでしまう話はアリアさんから聞いているので、無理はしないつもりです。でも、ある程度はランクを上げたいんです。」


こいつらは思春期だろうに自分より年下のアリアの話をちゃんと聞き入れてるってのは偉いな。というかフレドが賢いのか。敬語もちゃんと使えてるし、ガキの集まりではなくちゃんと冒険者パーティーとして成り立ってるっぽいしな。

クローノストでバーベキュー中に肉を黙って取ろうとして怒られて、セリナに付き添われて謝ってきたガキがこの短い期間でずいぶんと成長したもんだな。

…。

こういう気分も悪くないもんだ。


「なんでランクを上げたいんだ?」

「ランクが高い方がクエストの達成報酬がいいからです。冒険者という仕事を選んだからには自分たちの力でお金を稼ぎたいんです。最強のFランクのリキ様みたいに低ランクのまま稼ぐのは僕たちには出来そうにないので、せめてAランクまでは上げたいと思っています。もちろんいずれはSSランクになるつもりですけど!」

最強のFランク?俺が?
恥ずかしいから変な呼び方はやめてほしい…。
しかもFランクで最強といわれても全く喜べねぇし。むしろ馬鹿にされてる可能性すらありそうだ。
まぁべつにどう思われてようがいいけどさ。

…でもできればあまり触れたくないからスルーしよう。

それにしても、お金を稼ぐためときたか。
まぁうちの村人であれば衣食住はどうとでもなるとしても金がないと欲しいものは手に入らねぇからな。
でも、理由が金だとしても向上心のあるやつは好きだ。SSランクってことはクランみたいになりたいってことか。じゃあまずは俺より強くならねぇとな。

せっかくこいつらは成長しようと頑張っているんだから、暇なときくらい手伝ってやるか。

「わかった。んじゃ一緒にクエスト受けるか。つっても俺は付き添うだけで緊急時以外は手伝うつもりはねぇから、CランクでもBランクでもいいけどお前ら5人で達成出来る依頼にしろよ。」

「ありがとうございます!」

「「「「やったー!」」」」

ただついてくだけなのにここまで嬉しそうにされると反応に困るな。

「…ダンジョンは行かぬのか?」

サーシャがボソッと後ろから悲しげな声で確認してきたから思い出したが、サーシャがダンジョンに行きたいってことでここまできたんだったな。完全に忘れてたわ。

「悪いがこいつらについていくことになった。外にもそれなりに強い魔物がいるだろうから、そこで力を試せばいいじゃねぇか。」

「…はい。」

サーシャが不満そうな返事をしてきた。
まぁこの辺で強い魔物が出るっていわれてたこの山の元凶だった邪龍と一対一でないとはいえ渡り合えたサーシャが他で満足出来るとは思えないよな。

ぶっちゃけ無視でもいいけど、休日付き合わせておいて来たくないなら来なくていいというのはさすがに可哀想か。

「わかったよ。もし強い魔物が出なかったら俺が少し相手してやるよ。」

確かサーシャは最初に俺と戦いたいっていってたからこれで満足するだろ。

「本当か!?それは楽しみよのぅ。」

「イーラもやりたい!」

サーシャがニヤニヤとしだしたら、イーラも便乗してきやがった。
さすがに連戦はキツいというより、イーラとは出来ればやりたくねぇな。加減とか出来るイメージがないから普通に殺されそうな気がする。

「俺に元気が残ってたらな。」

「やった!」

てきとうに返事をしたらイーラが喜んで抱きついてきた。

あとで拒否できるような返事をしたつもりなのにこの反応をされると断りづれぇな。

これは身代わりの加護をいくつか買わなきゃか?

買うにしてもどこに売ってるんだ?

おっさんの武器防具屋には置いてなかったし、クリアナのとこはさすがに行きづらいから却下だ。

…そういや町の市場にある宝石屋で前に身代わりの加護のブレスレットをもらったな。
ということは売ってるんじゃねぇか?

あそこならフレドたちがギルドに行ってる間に行けるじゃねぇか。

「じゃあとりあえず町に行くか。」

「「「「「「「「「はい。」」」」」」」」」

イーラたちだけでなく、フレドたちまで綺麗にハモった返事を聞きながら、町に向かって歩き始めた。

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