裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

188話



昨日は早く寝たからか、だいぶ早く目が覚めちまったみたいだ。窓の外を見ると若干薄暗いような、明るくなりきっていない時間のようだ。

とくに怠さもないからそのまま上体を起こして周りを見るとこんな早い時間にもかかわらず全員起きているようだ。

「「おはよう。」」

急に近場から声をかけられて少し驚いたが、イーラが昨日と同じ場所にいたみたいだ。今日はテンコも一緒なんだが、2人して俺の寝顔でも見てたのか?俺の寝顔ってそんなに面白い顔してるのか?自分じゃわからねぇし、変な顔してるなら見られたくねぇし、いっそ俺の寝顔を見るのは禁止にするべきか?

「…おはようございます。」

俺が寝起きの頭で自分の寝顔について考えていたら、6人がけのテーブルに座っていたアリアが俺が起きたことに気づいて挨拶してきた。それで気づいた他のやつらも続けて挨拶をしてきた。

「あぁ、おはよう。」

アリアたちの方を向いて挨拶を返したから、イーラとテンコの挨拶を無視した形になっちまった。驚いたせいで反応が遅れたからとはいえ、さすがに悪いと思い、2人の頭を撫でて誤魔化してから体を伸ばして背骨を鳴らした。

イーラとテンコは俺のベッド脇にしゃがんで顔だけ出して俺を見上げてる。まぁこの2人はいつもよくわからないからべつにいいんだが、アリア、アオイ、ヒトミ、サーシャ、ウサギ、ニアの6人はテーブルで何か話し合ってたみたいだな。こんな早くからテーブルについて話し合うなんてなんかあったのかと一瞬心配したが、アリアが何もいってこないってことは気にする必要はなさそうだ。たまたまみんな早く起きたから話していただけだろう。

「あれ?ヴェルは?」

「訓練するっていって明るくなる前に出てったよ〜。南側には行かないっていってたから止めなかった〜。」

俺の独り言のような質問にイーラが答えてくれた。

あの6人のガールズトークに入れなくて居づらかったから出てったか?いや、さすがにそんな時間からアリアたちは話し合ってたわけではないだろうし、そもそもヴェルはそんなこと気にしないだろう。

「まぁヴェルならこの町にいるやつにどうこうされることはないだろうから大丈夫だろ。不意打ちでも傷一つつかねぇんじゃねえか?」

「ヴェルは硬いからね〜。」

「鱗なくても、弱い攻撃、通らない。」

イーラが硬いっていうくらいなら問題ないだろ。テンコがいってることが本当なら、不意打ちでも即死はなさそうだから心配する必要はなさそうだ。それよりも襲ってきたやつを返り討ちにするさいに暴れすぎて一般人にまで被害が出る可能性の方が問題としてはありえるな。

そんなことを考えていたら、汗だくのヴェルが帰ってきた。汗で服が張り付くのが嫌だったのか、それともただ暑かったからなのか、そもそもそれ以外最初から何も着ていかなかったのかはわからないが、ビキニアーマーしか着てない。

漫画で見る分にはそこまでなんとも思ってなかったが、リアルで見るとかなり違和感がある。

ハッキリいったらバカなんじゃねぇの?っていいたくなるような装備だろ。護れる部分が少ないし、見た目的にも出歩く格好じゃねぇだろと俺は思う。
まぁ買ったのは俺だから口には出さないけどな。

それにヴェルの場合は防具に頼る必要がねぇし、この世界では見た目的にも変ではないのかもしれねぇから、俺が目を瞑れば問題ないはずだ。でも他にビキニアーマーを着てるやつなんて見たことねぇけどな。

「おはよう。みんな起きていたんだね。もしかして待たせてしまったか?」

ヴェルは俺らを見てから一度シャワー室に視線を送ったあと、俺に視線を戻してアイテムボックスからタオルを取り出して拭き始めた。

「おはよう。俺は今起きたところだし、すぐに朝食にするつもりはねぇからシャワーを浴びたいなら浴びてこい。」

「ありがとう。そうさせてもらう。」

ヴェルはそういって、シャワー室に入っていった。






ヴェルがシャワーを浴び終えてから全員で朝食を済ませ、そのまま全員で人形屋に向かうことになった。

まだだいぶ早い時間だが、歩いて向かえばちょうどいいだろう。せっかく全員で向かうのだし、今日くらいは町を見ながらゆっくり向かうことにした。
昨日までは人形探しにどの程度時間がかかるかわからなかったから小走りだったしな。


10人で歩いても邪魔にならないくらいの道幅で、出店なんかも出ている道を選びながら歩いて南に向かう。

まだ日が昇り始めたばかりだというのに既に半分くらいの店が開いている。出店もチラホラと開店してる。
この世界は夜でも光が普通に使えるし、日本の生活環境とそこまで違わないと思うんだが、この世界はかなり動き出すのが早いんだな。ずいぶん健康的なことで。

いや、なにいってんだ?日本と生活環境が変わらないわけねぇだろ。確かに歪な発展をしてるから俺はとくに不便は感じねぇけど、コンビニもスーパーもねぇし、電車や車もない。町から出たら山や森や草原しかないから、本来なら町から町へ移動するだけでも大変なはずだ。俺たちはイーラや魔法で楽してるけどな。
光や水道があるだけで勘違いしてしまうほど、ここの生活に慣れちまったみたいだな。悪いことだとは思わねぇけど。

というか思考がかなり脱線した。

…夜の魔物は強いとか前に薬屋の女がいってたし、夜は人間の活動時間じゃないから早寝早起きなんだろう。きっと。

そんなどうでもいいことを考えているせいで楽しめないのはもったいないからと、考えを終わらせて、てきとうに出店を回りながらアリアたちと南に向かって歩いていく。

朝食を食べたはずなのに俺を含めて全員よく食べるな。まぁたまにはこんな無駄遣いもありだろう。






「待ってたぞ!」

人形屋に入るなり、店員がカウンターから身を乗り出していってきた。
このおっさんは駆け引きとかする気なさすぎだろ。

「ずいぶんと楽しみにしてくれてたみたいだが、先に話さなきゃいけないことがある。」

「もしかして、蘇生の方法がわからなかったのか?」

おっさんがあからさまに残念そうな顔をした。
なんかおっさんを丸め込もうとか考えるのがバカバカしくなってくるな。これは普通に情報と人形を交換して、誰にもいうなと口止めすれば良さそうな気がしてきた。

なんか脅しとか必要なさそうだしな。

いや、これが演技の可能性もあるのか。めんどくせぇな。

「違う。教える前に守ってもらわなきゃならない条件があるんだが、それを先に確認しようと思ってな。」

「何だ?」

「まずは当たり前だが他言無用だ。」

「そりゃ当たり前だ。」

…。

「それと俺らが提供できるのは蘇生できる可能性のある情報だけで、蘇生自体は出来ない。だが、この情報を与えたら、その情報がお前の欲しいものでなかったとしても人形はもらうぞ。納得できないならこの話はなしだ。」

「情報だけでも十分だ!10年以上も探してその情報すら手に入れられなかったんだ。情報さえあるならあとは自力で探すさ!」

……。

「いっておくが、俺は約束は守らせる主義だからな。」

「約束を違えるつもりはねぇよ。俺もそれなりに裏の世界で生きてきた。だから敵にしちゃならない相手くらいはわかる。」

………。

念のため全てに識別のスキルを使ってたんだが、どれも『本音』と出やがった。

俺はおっさんを見ながら、念話をアリアに向けて発動した。

「アリアはこいつをどう思う?」

俺にはこのおっさんが何を考えているのかよくわからなくなった。というか昨日の時点でよくわかってなかったんだが、なんでこんな素直にいうことを聞くのか意味がわからない。何かを企んでるのか?
だからもうアリアに任せようかと思う。本当は丸投げしたいが、昨日アリアに話し合いは任せとけって感じでいった手前、丸投げはしづらいから、それとなくヘルプを求めるだけにとどめた。

「…本当に蘇生の方法が知りたいだけなんだと思います。この方にとっては全財産を差し出してでも欲しい情報だから、間違ってもこの話がなかったことにならないように本音だけで話しているのではないでしょうか?」

そういわれるとそう見えなくもないのか?

「…それにこの方の話からして、リキ様のことを知っているのだと思います。だから敵対することはないと思います。」

「どういう意味だ?」

「…そのままの意味です。」

それがわからないんだが、まぁいい。
アリアが大丈夫だというなら大丈夫だろ。

「識別でも『本音』と出たし、アリアもそういうなら、疑うだけ時間の無駄だな。」

「…一つだけ条件を追加してもいいですか?」

「なんだ?」

「…もし『御霊降ろし』のスキルを持つ者を見つけた場合、勝手に蘇生させずに私たちに知らせる約束をさせてください。」

「べつにかまわないが、なんでだ?」

「…スキル使用者に人間の蘇生が出来ることを教えるわけにはいかないからです。」

「それだとスキルを持ってるやつが見つかってもスキルを使わせられねぇじゃねぇか。」

「…対策はあるので大丈夫です。」

「わかった。」

俺がアリアと念話をしている間、おっさんは俺から目をそらさずに待っていた。
俺もおっさんを見ていたから、そこそこな時間無言でおっさんと見つめ合ってたと思ったら気持ち悪いな。
…気にしたら負けか。

「最後の条件だが、蘇生をするには他者の力が必要なんだが、そいつをもし見つけたとしても勝手に蘇生をさせずに俺たちに教えろ。これら全部の条件が飲めるなら、あの人形と情報を交換してやる。」

「…あぁ、わかった。」

最後の条件については少し悩んだように見えたが、従う以外に方法がないと思ったのか、真剣な顔で頷いた。

「じゃあ説明はアリアに任せた。」

「…はい。」

アリアがおっさんに『御霊降ろし』についての説明をし始めたから、俺は暇をつぶすように店の人形を見て回った。見て回るっていってもたいした広さじゃないんだが、壁際にギッシリ並べられてるから人形の数はそこそこあるし、出来もかなりいい。

一体くらい買ってもいい気はするが、高いんだろうな。というか、どうせならアオイ用の人形だけじゃなく、もう1、2体の人形も条件に入れときゃ良かったな。戦闘で使いこなせるかはわからねぇけど。

人形を端から順に見ていたら、視界の隅でおっさんが両手で顔を覆って俯くのが見えた。
どうしたのかと思ってカウンターを見ると、おっさんは数秒後に顔を上げて裏に入っていった。おっさんの顔は少し悲しそうに見えた。

俺はカウンターまで歩いて近づいた。

「おっさんはどうしたんだ?」

「…あの方が蘇生をしたかったのは奥さんらしいので、もしかしたら蘇生は出来ないかもしれないと伝えたせいかもしれません。」

「蘇生が出来る出来ないってのがあるのか?」

「…魂が弱いとスキルによる強制的な蘇生に耐えられない可能性があります。」

「魂が弱いってなんだ?」

「…ごめんなさい。ハッキリとわかることではないので、説明が出来ません。たぶんですが、レベルやステータス、年齢といったものが関係してくると思います。」

そりゃアリアは『御霊降ろし』を持ってないんだから魂について詳しいわけねぇか。

アリアと話していたら、おっさんはアオイ用の人形を持って戻ってきた。

「可能性がゼロじゃないってだけでもありがたい話だ。あんたらには感謝しかない。これはもうあんたらの物だ。着せてる服はサービスだ。」

そういってアオイ用の人形をカウンターに寝かせた。

「ありがとう。とりあえずアイテムボックスにでも入れておくか。」

「それは無理だ。」

おっさんがいうのが遅いから、アイテムボックスを開いて入れかけたが、たしかに入らなかった。

「なんでだ?」

「それは仮死状態だからな。半分生きてる。だからアイテムボックスには入らない。」

「…は?」

「といっても生命活動を行うモノがないから常に仮死状態なんだけどな。魔道具でMPを作り出すのには成功したが、PPは素材にしたものの総量でしかない。今後も増えることはないだろう。回復方法も休ませるしかない。だが、MPは中の魔道具を入れ替えれば最大値を増やすことも出来るし、自然に回復の他に食事をすることでも少しだが回復が可能だ。ただ、口から入る容量は決まっているし、魔道具による消化以外に口から入れたものの排泄方法がない。だから食い過ぎ注意だ。性人形としての使用も出来るが、子どもは作れない。あとは成長しないってのと『再生』のスキルが付いてるくらいだな。説明はこんなところだろう。質問があれば聞くが、もしこの人形を使うのが確定しているなら、素材については聞かないことをお勧めする。」

ダメだ。思考停止したところで説明が始まったからほとんど聞いてなかった。
チラリとアリアを見ると首を横に振られた。たぶん俺と違って聞いてなかったって意味ではなく、質問は特にないって意味だろう。

「これはメンテナンスとか必要なのか?」

「よっぽどのことをしなければ必要ないだろう。傷は再生するし、シャワーで汚れを落としてやるくらいでいいだろう。ただ、PPがなくなると体が崩れて再生しないだろうから気をつけてくれ。」

PPがなくなったら死ぬってことはやっぱり人形というより生物なのか。通りで死体に見えるわけだ。

「質問は特にない。」

「なら今日はこれで取引終了だな。あとは『御霊降ろし』のスキル持ちを見つけたら、嬢ちゃんからもらったこの指輪で連絡する。」

「あぁ。」

「妾の体になるのだから、妾が運ぼう。」

俺がおっさんにてきとうな返事をし、アオイ用の人形を運ぼうとしたら、いつからいたのか後ろからアオイに声をかけられた。

どう持とうか迷ってたからちょうどいい。

「じゃあ任せた。」

「本当に、心より感謝する。ありがとう。すぐにでも『ソウ……。」

アオイが俺に謝意を述べてから人形をお姫様抱っこするように持とうとして、両手を膝裏と背中に通したところで止まった。
持ち上げられないほど重かったのか?

「どうした?」

「…。」

アオイからの返事はない。

アオイが変な体勢で止まったからか、人形の左腕がだらりとカウンターから落ちた。…ん?違う。なにかを探すようにアオイの腰を触っている。
というかなんで動いてんだ!?
わけわかんねぇと思っていたら、人形がアオイの刀を奪いやがった。

「……って…の……つった…。」

今度は急に声が聞こえた。
俺らが声のする方を見ると、どうやら人形が喋ったみたいだ。
生命活動する器官がないからずっと仮死状態のようなことをいってなかったか?
普通に動いて喋りだしたぞ?

おっさんを見ると会ってから今までの中で一番驚いた顔をしてる気がする。

「…カハッ、ゲホッゴホッ……あー、あー、…うむ、声の出し方は理解した。体はまだ硬いがやはり馴染むのぅ。差異はあるが懐かしい。」

人形は喋りながらゆっくりと上体を起こし、左手で刀を握ったまま、右手で体を触りだした。

「ん?妾はもっと胸があったはずだがどういうことじゃ?」

人形は首を傾げながらおっさんを見るが、おっさんは訳がわからずそれどころではないみたいだ。

「アオイなのか?」

「そうじゃよ。この人形は一応生きているからなのか、妾の素材を使っているからなのかはわからぬが、『ソウルシェア』というのを使わずとも動かせるの。」

「ならそのまま帰るぞ。」

「少しだけ待っておくれ。」

おっさんが元に戻るのを待つのは面倒そうだから、アオイが人形を動かせるならそのまま帰ろうと思ったら、アオイが待ったをかけた。

どうしたのかと思ったら、アオイがカウンターの上で上体を捻ったり倒したりとストレッチを始めた。動かすたびにパキパキと骨がなる。骨がならなくなったらカウンターから下りて、屈伸や腰を捻ったりしてまた骨を鳴らし始めた。

「待たせてすまぬ。では帰ろうか。」

しばらくして満足したのか。ぎこちない笑顔で声をかけてきた。
筋肉はまだ硬いのかもしれないが、既に歩けてるからすぐに普通になるだろ。

「イーラはこの分身を回収しといてくれ。」

「は〜い。」

てきとうに店内の人形を見ていたイーラがトテトテと走ってきて、そのままアオイが使っていた分身体を吸収した。

「ちょっと待て!いや、待ってくれ。どういうことだ?」

いざ帰ろうと歩きだしたら、今度はおっさんに止められた。どうやら正気に戻ったみたいだ。…戻ったんだよな?

「何が?」

「なんで人形が喋る?」

「アオイが乗り移ったからじゃねぇの?」

「乗り移った?どういう意味だ?」

「昨日アオイがいってたろ。アオイは魂だけの存在で、刀が本体だって。そこからこの体に乗り移ったんだよ。」

乗り移ったっていっても本体は変わらず刀だから、手放せば動かせなくなるだろうけどな。

「ってことは嬢ちゃんもその『御霊降ろし』で蘇生されたんだよな?なのにあんたらはそのスキルを使えないのか?一度きりしか使えないスキルなのか?」

答えるのが面倒だなと思ってアリアを見たら、頷いて説明を引き継いでくれた。さすがアリアだ。

「…わたしたちは誰も『御霊降ろし』を持っていません。アオイさんはわたしたちと出会ったときには既にこの状態でした。なので、アオイさんが『御霊降ろし』で蘇生されたのか、他の方法で蘇生されたのかはわかりません。ただ、わたしが知っている蘇生できる可能性があるのが『御霊降ろし』というだけです。スキルの使用制限についてはわたし自身が持っていないスキルなのでわかりません。」

「…そうか。」

早く蘇生させたかったのか、出来ないと知ったおっさんは悲しそうな顔をした。

これ以上俺らはやることもないし、このまま帰ろうと出口に向かって歩きだしたら、アオイがおっさんを見たまま動こうとしていなかった。
どうしたのかと俺も立ち止まったら、アオイが口を開いた。

「して、なぜ妾の胸が元と違うんじゃ?」

わりと本気で気にしてたのかよ…。
そんなのどうでもいいじゃねぇかと思ったが、成長しないなら多少は気にするのかもな。
俺もナニが短小過ぎてそれ以上成長することないっていわれたら半端なく落ち込む気がするしな。

「は?いや、流石に元のサイズはわからねぇからその見た目に合わせたサイズにしたんだが、違ったのか?」

まぁおっさんのいうこともわからなくない。綺麗といっても体は小さいし、細身だからへたに胸が大きいと違和感がありそうだ。

「嘘をつくでない。顔をここまで似せておるのに元を知らぬわけがなかろう。」

「嬢ちゃんはわからねぇかもしれねぇが、頭蓋骨があれば肉付けするだけである程度元の顔に似るし、体の骨からある程度の体型も再現できる。あくまで生前に太り過ぎてたり痩せ過ぎてたりしなければだが。だけど、胸は流石に参考にできる骨なんかないからな、想像しか出来ねぇ。俺が一番しっくりくるサイズにしたつもりなんだがな。にいちゃんはどう思うよ?」

おっさんが急に俺に振ってきやがった。
アオイも真顔で俺を見てきた。

「似合ってるんだからいいじゃねぇか。胸はあった方がいいって気持ちは理解できるが、そのせいでアンバランスになったらもったいねぇぞ。せっかくスタイルいいんだからよ。」

全体的に小さいから、綺麗でもモデル体型とはいえないけどな。
まぁ余計なことをいうつもりはないが。

「そ、そうか…。リキ殿がそういうのであれば、まぁ良いかのぅ。文句をいってすまなかった。」

「お、おう。いいってことよ。」

アッサリ引いたアオイにおっさんがちょっと戸惑っていた。べつに命令したわけじゃないんだが、本人が納得したならいいか。長引いても面倒だし。

「んじゃ帰るぞ。」

「「「「「「「「「はい。」」」」」」」」」

「じゃあ、スキル持ち探し頑張ってくれ。」

「おう。本当にありがとうな。見つけたら連絡する。」

思った以上にすんなりと話が決まって拍子抜けだが、結果良ければ全て良しかと自分にいい聞かせながら、俺らは店を出た。

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