武士は食わねど高楊枝

一森 一輝

2話 幼き獣(1)

 盾による突進。聖神法のサポートを得たそれは、上手い具合にオークを吹き飛ばした。同時に、奴の動きからキレがなくなる。
 そこに、ローラの氷弾が迫った。先ほどまで軽々と避けていたオークは、鈍った動きの中辛うじて捨身の右腕で防ぐ。しかし、突き刺さった氷弾そのものの重みによって体勢を崩し、倒れこんだ。
「ベン、今だ!」
「うんっ!」
 『ハイド』で忍び寄っていたベンは、すでに炎を纏う剣の所作を完了させていた。突き刺すは、首。肉を焼く音と共に、オークの断末魔が上がる。だが、長くは持たなかった。剣が、気管にまで達したのだろう。察したベンは素早く剣を抜き、ファーガスが死に際の亜人へと近寄っていく。
 アイルランドの『グラビティ・ソード』は、使うと攻撃が酷く重くなる。本来は人間をまねて鎧などを身に着ける亜人や、筋肉、脂肪などの装甲を持つ敵を砕くための手段だ。
 だが、それで敵の弱点を突けば、敵は苦しむ間もなく絶命する。
「……ごめんな。俺たちが未熟で」
 重き剣で、ファーガスはオークの頭蓋を割った。オークから、苦悶の表情が消える。亜人が死ぬ瞬間の表情は、大抵安らかだった。人間のように、未練や執念と言うものが残らないのだ。
 オークの収集部位は、口からはみ出る牙である。図鑑で見た手っ取り早い方法を使って、大体二十秒で引き抜く。
「ふぅー、大分段取り良くなってきたね」
「そうですね。ベンも亜人を見て驚かなくなりましたし」
「うるさいな、もう。これでも成長してるんだよ、日々ね」
「……ローラは全く人の事言えないけどな」
「ファーガスはあっちの方で腕立て伏せでもしていてください」
「いや、腕立て伏せが必要なのはベンだろ。ベン、やって来い」
「何で!?」
 ベル、ハワードは依然として別行動のまま。ファーガスたち三人は、行動を共にするたびに馴染んでいった。ポイントの稼ぎ方も大分わかってきて、今では五百ポイント必要な三つ目のエリアを開放するようになったほどだ。
 ベンは隠密系の聖神法を伸ばしていき、戦闘中ほとんど敵に発見されないというレベルにまで達した。ローラは威力の高い技能を数多くとり、それを速射、連射のできる固定大砲の地位を確立している。対するファーガスは、少々トリッキーだ。一人でも戦えるし、二人の援護に徹する事も出来る。
 中々に、いいパーティになったとファーガスは自負していた。何となく、から始まった関係だが、長持ちすればいいなと考えていた。
「やっぱり、特待生が二人もいるチームっていうのはすごいね。まだ第二エリアの――スライムエリアにも届いてないチーム、いっぱいあるっていうのに」
「スライムは嫌だったな……。あの、何度切っても意味がない感じ。すげー嫌だった」
「そうですか? 結構楽なイメージですけど」
「それはローラだけでしょ。炎弾連射するだけだったし。けど、その分ポイントの入りがよかったんだよね。ゴブリンなんかよりも全然」
「ゴブリン冷静になると弱いですから」
「だよね! 本当、最初のビビりっぷりが今でも恥ずかしいよ」
「それ、遠まわしに私の事を攻撃していませんか?」
「え? 何が?」
「……何でもありません」
 ローラの自爆に、ファーガスは口を押えてくすくす笑う。むっとした視線が来たが、彼女はそれ以上突っ込んでこなかった。二人に「クエスト終わったけど、もうちょっと狩ってく?」と尋ねる。
「うーん……。私は帰りたいです。空もだいぶ赤らんできましたし」
「まぁ、そうだな。ベンは?」
「ちょっと残っていきたいな。あ! でも一人でいいよ? 二人は帰ってて」
「……そうか? でもそろそろ雪が降る時期だから、一人は危険だと思うんだけど」
「今更そんな、大丈夫だって。今日すぐにって訳じゃないだろうし、いつもの事でしょ? ぼく気配殺す系の聖神法は大体取っちゃったくらいだし。あと五個ツリーを進めたら、姿が見えなくなるやつが取れるくらいなんだから」
「まぁ……それもそうか。じゃあ、いつも付き合えなくて悪いな。また明日」
「また明日会いましょう」
「うん。二人とも、また明日」
 笑顔で手を振るベンと別れて、ファーガスとローラは少し歩いた。だが、どちらともなく止まる。同時に、と言ってもいいかもしれない。
「……やっぱりさぁ。何か、隠してる気がするのは俺だけか?」
「いいえ。少なくとも、私も違和感を覚えていました」
 ここ三週間ほど、ベンはよく一人で山に残るようになった。ちょうど、この第三エリア(通称オークエリア)に入ってからの事だ。
 すでに二十センチ近い背の差がある二人は、互いに視線を交わして頷いた。そして、そろりそろりと気配を殺して戻っていく。
 すると、案外すぐにベンを発見できた。しかし見つめていると、彼は勘付いたかのようにキョロキョロと周囲を見渡し始める。こちらに視線が来たので、ローラを引っ張って、二人で樹の陰に隠れた。しばらくして、再び覗き見る。一応だが、まだ視認できる距離だ。
「クッソ……。あいつの『ハイド』、本当に厄介だな……!」
「しかも、それに関してのみ聖気の燃費が良くなる聖神法も取っているらしいですから、基本的に山では常時発動らしいですよ?」
「道理で何度言っても索敵を取らないわけだ」
 言いつつ、ファーガスはベルトに挿んでいる杖に触れる。心の中で祝詞を唱え、触れさえすれば『サーチ』は発動した。広い範囲で、周囲の全てを認識する。
「どうです?」
「亜人は数匹いるけど、大体が休息中だな。あんまり近づかない限りは襲いかかられないはず」
「じゃあ、気にしなくていいってことですね。さっそくベンを追いましょう!」
 二人で息をひそめて進んでいく。彼の『ハイド』に対し、こちらの索敵は移動こそ可能な物の常時発動などさせていたら聖気が持たない。 聖気というのはもはや言うまでもないだろうが、聖神法に使うエネルギーである。日本で言う魔力に近く、聖神法にのみ使用され、使い切っても欠乏感などがない代物だ。故に残力確認が生死を分ける場合も多い。残量メーターは定価十ポンドで売店にて販売中。1ポイントで十個買える。
「……中々立ち止まりませんね」
「だな」
 木の陰からちらちらのぞき見する二人。距離もあり、遠視などを使っているから肝心のベンにはバレないものの、傍から見れば奇行である。
 そんな風に時間は過ぎていき、ベンがやっと立ち止まった頃にはすでに夜の帳が下りていた。夜目で、彼が一体何をしているのかも判然としない。ファーガスはローラに待っているよう指示し、『サーチ』で樹の裏側をダッシュで伝っていく。
「ほら、美味しいか? ケル。たんとお食べ」
 優しい声だと思った。だが同時に、不安を抱いた。一瞬、近距離で盗み見る。草むらに隠れていた何かに、餌をやっているらしい。
 そのまま、しばらく身をひそめていた。ベンが満足して立ち去った後、タブレットのメール機能でローラを呼び寄せる。
「……それで、どんな具合でした?」
「もうベンは居ない。別に声を小さくする必要ないぜ」
「そうですか。それで」
 急かすローラに、動作で示した。「暗くてわかりません」と駄々をこねられるが、しかしすぐに気づいたようだ。
「……亜人、ですか?」
「ああ、多分な。ちょっと光頼めるか」
「は、はい」
 聖神法で、光が灯った。そして、その正体が照らし出される。
「……これは……!」
 ローラが、息を呑んだ。ファーガスも、表情がこわばっている。
 その獣は、幼かった。犬に準じた体を持っていて、人懐こそうな視線がこちらに向く。だが、ファーガスたちはそれを受け入れることができない。
 その獣には、頭が三つあった。
 ケルベロスの、幼生なのだろう。


 部屋に帰ると、「アレ? 何処行ってたの?」と声がかかった。ベンだ。「ちょっとな」と苦笑して誤魔化すと、「ふぅん」と興味なさそうに納得される。
「うーん……どれを取ろうかな……」
 二つ並ぶベッドの手前の方に腰掛けるベンは、タブレットを覗き込みながら次にとる聖神法を吟味しているようだった。スキルツリーは当初は気付かなかったのだが、全体図を見ると非常に大きい。最初ほとんど1ポイントでスキルが取れて、これでいいのかと疑っていたものだったが、今ではそのくらいにしないと追いつかないのだと理解している。
「ファーガス、どっちがいいと思う?」
「どれどれ?」
 タブレットを見せられて、スキルツリーを覗いた。「これとこれなんだけど」と指で二つ示される。隠密系で言えばほとんど終わりに位置する『ハイド・シャドウ』と、戦闘系スキルでは最初から二番目の『ファイア・ソード2』。 前者の聖神法は、とある習得の難しい所作の後に敵の陰の中に入ると、たとえ正面だろうと、その上攻撃しようと気づかれなくなるというものだ。ちなみに後者の聖神法の効果だが、何と無印の『ファイア・ソード』より一割ほど威力が上がるという驚くべき効果がある。
「……ちょっと思ってたけどさ、ベンは将来暗殺者にでもなるつもりなのか?」
「え、あ、いや。……気づかれずに敵を一体一体屠っていくっていうのが楽しくて、つい」
「怖ぇよ。というか、ここまで突き詰めたなら、この学年で一番強いのってベンになるのかもしれないな」
「え!? いやいや! そんな事はないよ! 少なくともファーガスの方が絶対強いって!」
「うんにゃ、俺お前に命狙われたら生き残れる気しないもん……」
 苦い顔でそう告げると、遠い目の苦笑いが返ってくる。
「でも、別に今の攻撃力でも間に合ってるから、長所を伸ばせばいいんじゃないか?」
「そう、かなぁ……。でも、もう少ししたらまた次のエリア入れるようになるんでしょ?」
「あ、そっか。そろそろ千ポイントか。そうなると亜人の傾向も変わるからな。次のエリアって何が多いんだ?」
「まだポイントがなくって分からないんだよ……」
「あちゃー……」
 ポイントは、非常時のことを考えて常に十は確保しておくという不文律がある。10ポイントあれば、剣を少なくとも一本は買えるからだ。いくら物品が安い購買でも、武器の部類はやはりある程度の値が張る。
 その辺りの分配を考えると、百ポイント近くする『ハイド・シャドウ』を取るとじり貧になるのだ。敵の生態を知りつつ取るという事も出来ないし、ファーガス、ローラの二人は基本的にポイントを残さない性質である。 その上、エリアを開放すると新しいエリアでの狩り以外はなかなかポイントが貯まらなくなる。しかもエリア解放は今までの総合ポイントを基準にしていて、勝手になされてしまうのだ。
「うーん……、でも、欲しいなぁ……! 『ハイド・シャドウ』……!」
 葛藤である。こうなるともはや、他人の進言が通ずる領域ではないだろう。十字を切りつつ「神のご加護があらんことを」と祈ってやる。なんだかんだ言ってキリスト教なファーガスだ。
 数時間後、寝る前に少し考えた。ベンの事。そして、育てているらしい亜人の事。ここが日本なら、とがめられる心配すらなかっただろう。けれど、今となっては扱いが難しい。
 ローラに聞いた話では、接近戦に弱いスコットランドクラスは聖獣と言う聖神法を使って、亜人を使役する場合があると聞いた。大抵の生徒は杖などを防具兼鈍器として使いつつ聖神法で戦うらしいが、それでもそういう戦い方が存在していることは確かであると。
 ファーガスはもやもやとした気分が晴れなかったが、問いただしても意味はないとわかっていた。そうして、仕方なく目を瞑る。
 翌日の早朝、ファーガスがまだ暗い時間に起き出すと、すでにベンが着替えを終えるところだった。
「……ベン、早いな」
「あ、起きたんだファーガス。じゃあ丁度良かったかな」
「何が?」
 寝ぼけ眼で尋ねると、タブレットを取り出して、にこやかな笑顔を浮かべる。
「結局取っちゃった!」
「ベンって、結構思い切りいいよなぁ。分かったよ、練習付き合う」
 着替えて、共に修練場に向かった。すると、石柱に向かう黒髪の少年。げ、とファーガスは思う。
「死に腐れろやぁぁぁぁああああああ!」
 大剣を振り回す。乱雑にしか見えない所作。しかし、そこに一切の無駄がないことをファーガスは知っている。初撃が第三学年相当の硬度の石柱にひびを入れ、ニ撃、三撃と日々が大きく、細やかになっていく。全部で、十六。とうとう石柱が、その重みに自壊した。
「おーっ、凄いねぇ」
「あっ、馬鹿っ、ベン!」
 しかし注意は遅く、修練場の中心で猛威を振るう彼奴に気付かれてしまう。
「あん? ……グリンダーか。怪我は大丈夫か? 頭を打ってさらにバカになったって聞いたが」
「元からすでにバカだったみたいな言い方をするんじゃねぇよ! 少なくともお前よか頭いいわ!」
「へぇ? お前テスト何位だよ」
「ふっ、意外だろうが三位と言う高順位をキープしてるぜ」
「そうか、ちなみにオレは一位なんだが」
「はぁ!?」
「そういや、聞いた話じゃどうやらオレと同着の奴がいるらしくってな。つまりお前は二人の一位の下にいるって事だ。良かったじゃねぇか。意外に頭いいんだな、見直したぜ」
「喜べねぇ……」
「いや、こっちとしてはファーガスの意外な頭の良さに凄い驚いているんだけど……」
 ベンの言葉に、曖昧に笑ってごまかす。条件からして、こちらは負けるのが恥と言うレベルなのだ。
 条件と言えば、思い出すのはソウイチロウである。日本に居た、一番の友達。秘密の共有が原因なのか妙に気が合って、しばらくの間メールでやり取りなどもしていた。
 だが、日本が転覆してからと言うもの、一度だって連絡が取れていない。彼なら他人から酷く嫌われるという事もないだろうし、幸せにやっているのだろうが、それでも心配事は尽きなかった。
「……どうしたの、ファーガス」
「ん、ああいや。……嫌な奴に有っちゃったなと思ってさ」
「うっわ、滅茶苦茶嫌われてんじゃねぇかオレ。悲しいから八つ当たりしていいか?」
「すんなよ。俺はベンの聖神法の実験台になってやらなくちゃならないんだ。お前の相手をしてやる暇なんざねぇんだよ」
「けっ、そうかよ。……そういや、あの噂、聞いたか?」
「は? ……何が」
 あまりに切り替えの早いハワードの言葉に、主導権を取られつつあるファーガス。奴に対して質問を投げかけてしまう。
 だが、こういう時にこそ冷たいのがハワードなのだ。
「あ、知らねぇんならいいや。あっちで実験やってろよ」
「……悪かったよ。教えてくれ」
「いや、眠い。何だっけ。シルヴェスターはスコットランドクラスだよな? そっちに聞けばいいんじゃね。オレ、シャワー浴びて二度寝するからこっちくんな」
「……」
 口端を引きつらせつつ怒りに打ち震えるファーガス。ベンに懸命になだめられて、何とか自分を抑える。
「何ていうか、マイペースな人だったね……。特待生の人?」
「ああ。あんなのが特待生なんだから、貴族も末だよな」
「そんなこと言っちゃだめだよファーガス。――じゃあ、付き合ってくれる?」
「おう」
 ベンは少しファーガスから離れて、指を奇妙に動かした。その動きは不思議に艶めかしく、目が惹き付けられていってしまう。揺らぎ。はっとファーガスが我に返ると、ベンがそこから消えている。
「え? ど、何処だ……? 確か陰の中に入るとか言ってたよな……」
 ファーガスは、自分の陰の上で手を振ってベンが居ないかを確認する。居ない。とすると、まだ彼は発動していないという事なのか。木剣を翳しながら、注意深く探していく。
 その時、ファーガスは足が何かにけつまずいて転んだ。そして仰向けになり――しかし、立てない。
 もがく。自分が何かに触れられているという感覚はまるでない。ただ、自分の体がおかしいために、立つことができなかった。それはある意味で、自分の体が乗っ取られたかのような恐怖を抱かせる。
 これを、予告なしでやられたらどうだろう。ファーガスは自分でも、泣くだろうと予想する。
「ファーガス、どう?」
 ベンが、しばらくして姿を現した。いい笑顔が憎らしい。
「……ベン。お前、凄かったんだな……」
 人間、多大なストレスと共に衰えるというもので、真剣に恐怖感にやられていたファーガスは、彼の登場と共に息絶え絶えな雰囲気を纏い始める。
「えっと……、大丈夫?」
「大丈夫……。ただ、ちょっと一人で考えさせてくれ」
「そんなにショックだった?」
「未知って怖ぇなって思わされたよ」
 深い吐息を漏らして、ファーガスは低い声で漏らした。ベンはそんな少年の心の内など知らず、「大袈裟だなぁ」と笑っている。マジでド突いたろかと静かに怒髪天だ。しかし行動に移す勇気が出ない。ヘタレである。
 朝食の時間が来て、二人で向かった。食堂の飯は大抵不味いが、朝食だけは別だ。大味ながら食い甲斐のある食事を口に運びつつも、視線が勝手にベルを探しているのは、もはや癖と言ってよかった。
 今日も、彼女は取り巻きを引きつれて食堂の中央付近に座る。だが、彼女だけはいつだって笑っていない。
 ハワードの件、そして、彼女自身の問題。様々な要因が、彼女に笑顔で居させない。直接話せたのも結局初めて山に臨んだあの一度っきりで、それ以降は話しかける糸口すら掴めていないのだ。
「……はぁ」
「傍から見てるとファーガスって乙女だよね」
「意外と心の中ではどす黒い感情が渦巻いてたりするんだぜ……?」
「はいはい。君にそういうのはまだ一年早いよ。そういえば、デューク先生とブレナン先生の訓練、どっち取る?」
「うーん、デューク先生かなぁ……。っていうかさ、ブレナン先生の受け持ちって最近なかったよな? 今はあんのか?」
「アレ? ……どうだったろ。もしかしたらデューク先生のだけだったかもしれない。なんか最近休み気味だよね、ブレナン先生」
「風邪でもこじらせてんのかな。アイルランドクラスの先生なのにどのクラスにも分け隔てなくて好きだったんだが」
「たまに来る他のクラスの――ヘイ先生とかいっつもブーたれてるもんね。来るたびに毎回『この人本当に大人か?』って疑ってるんだけど」
「ベンって結構辛口だな」
「そうでもないよ。ってことは、今日はデューク先生か……。あの先生の授業って楽しいよね」
「たしかに、ベン向きではあるよな。『ハイド』とか『ハイ・スピード』の使い方を教えてくれるやつ」
「『ハイ・スピード』で乱戦を駆け抜ける戦闘スタイルも格好いいんだよね~。先に『ハイド』取っちゃったからそっちにしなかったんだけど。少しくらい迷いたかったな」
「ベンはどうせ隠密系選んでたよ。お前隠れたドSだし」
「いや、そんな事はないよ!」
「嘘だね。同室の俺が一番知ってる」
「……根拠は?」
「Sはサドのエスでもあるけど、サービスのSでもあるみたいな話を昔聞いたことがあってな」
「アレ? 褒められてた?」
「ははは。……っと。そろそろ授業始まるな。さっさと食っちまおう」
 ゆっくり食べていたベンを急かし、ファーガスも残りの数口をスプーンでかき込む。そうして、連れ立って教室に向かった。

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