武士は食わねど高楊枝

一森 一輝

4話 『おばあちゃんの爪は、どうしてそんなに鋭いの?』Ⅻ

 アイはウッドの登場と同時、一歩前へと踏み込んだ。ウルフマンは一歩下がり、静かに息を整える。ウッドは立ったままだった。着地してから、しばらくの間動こうとしなかった。
 ウッドと直接相対するのはアイだ。ウルフマンには、二人の間で緊張が張り詰めているように見えた。しかし、どうもウッドはゆらゆらと揺れていて、時折不意に笑ったり、キョトンとしたり、感心したりしていて気味が悪い。
 アイもアイで、今晩の争いが持続戦であることを見越しているから、どれほど隙だらけに見えても仕掛けられない。それ以上に、奴の隙は誘いであることの方が多かったがために、油断すらできずに消耗させられる。
 何度やっても、やり辛い敵だった。こうして睨み合っているのを見ているだけでも、いつか来る自分が奴とやりあう日が嫌になってくる。
「――――なるほどな、……面白いじゃないか」
 唐突に、ウッドは言った。その視線は、ウルフマンに向いていた。アイの事など無視して、奴は少年に近づいてくる。
 それを遮るのが、アイの役目だった。だから、彼女はナイフを更に攻撃的に構えた。それをして、ウッドはニタリと笑う。そして言うのだ。
「そうだな。折角アイが居るのだ。是非とも、手伝って貰おう」
 ウッドは拳を丸め、それをもぎ取った。その肉片は球状をとり、奴の手の再生と共に雪の上に落される。次いで、雪を吸って膨らんだ。ウルフマンのように大きく、ウルフマンのようにしなやかに、ウルフマンのように大量の毛に覆われて、ウルフマンのように牙を剥いた。
「……ぁ、ぇ……?」
 アイは弱弱しい声と共に後ずさる。ウッドは自らの体で作り上げたウルフマンの背を叩いて、「行け」と短く言った。ウルフマンモドキは一度ウッドに振り返って、「なっ、お前、何を言って!」と“抵抗”しようとする。
 それにウッドは、もう一度軽くたたいて命令した。
 ウルフマンは、その時、小さな小さな、バチッと電気の走るような音を聞いた。
「だから、行けって」
 ウルフマンモドキは慟哭し、正気を失ったようにアイに襲い掛かった。酷く恐れたようにアイが飛び退ったのも、一瞬。距離を取り直して着地するころには、すでに彼女の呼吸は平静のそれに戻っていた。
 モドキの攻撃は全て大振りで、それはウルフマン本人のものよりも稚拙だった。だから、小回りの利くアイには、それら全てをいなし、避けることなど容易いようだ。一方で、見ながら狼男は考えるのだ。その稚拙さが、むしろ、自分以上に自分に迫っているように。言わば――動揺し、泣きたいような心持で戦っている自分は、きっとこんな風なのだろう、なんて事を。
「おお、凄まじいな。やはり、アイのナイフ捌きは卓越している。惜しいものだな。もう少し前に、そう、総一郎が死ぬ前に戦っていれば、随分と面白い剣戟になったろうに」
「なっ」
 いつの間にか横に立っていたウッドは、特にウルフマンに何かをする様子もなく、少年に向けて肩を竦めた。その様子は、まるで観客が競技の選手を品評するかのような気軽さしか感じられない。
「う、ウッド、いつの間に横に……! それに、何だよ、イッちゃんが死んだって!」
「うん? ああ、今は気にするなよ、そんな小さ――別の話だ。それよりほら、見てみろ。滑稽だろう? お前を守りに出張ってきたアイが、お前の姿をした敵と戦っているのは」
 ケタケタと笑いながら観戦しているウッドに、ウルフマンは異様な感覚に襲われる。殺そうと思えば殺せる場所。それでいて、殺していいのかと困惑する気持ち。
 助走をつけずとも、ウルフマンの爪は爆発染みた威力を出すことが出来る。故に、やろうと思えばやれるのだ。けれど、相手はウッドだった。元親友で、自分をいつでも洗脳状態に置けて、策略謀略に非常に長けた、ウッド。
 様々な感情が入り乱れた結果、ウルフマンは自分の意思で、ウッドに攻撃しないことに決めた。そんな気も知らないで、ウッドは「おおっ、それを避けるのか!」などと手に汗を握っている。
「……何が、そんなに面白いんだよ」
 狼男は逆らう気を失って、木面の怪人が興奮をもって見守る決闘に目を向けた。自分の模倣体が一方的にアイに襲い掛かり、それをひたすら躱すアイ。
 彼女の視線は度々こちらに向かっていたが、それでもモドキに攻撃することはなかったし、その攻撃を抜けてウルフマンの隣に立つウッドを追い払うことも出来ないようだった。少年は、先日自分がアイを襲ったことを思い出し、顔を顰める。
「何が、とは奇妙なことを聞くな、ウルフマン。見ろ、アイのあのいじらしさを。大切な仲間であるお前の姿をしているから、と言うだけで、俺が生み出した怪物にナイフの一つも向けないのだぞ? ああ、なんて尊い光景だ。思わず涙が流れてしまうよ」
 ウッドは大仰に言いながら、面の上で雫を模った木目をするすると流していく。それを見ながら、もしかしたらこの仮面すらウッドの体の一部なのではないかと疑った。それならば、ケタケタ嗤う理由も説明がつく。
「……それが、どうかしたかよ。アイはずっと昔から、おれを支えてきてくれたんだ。おれだって、お前がアイに似た何かを生み出しても、攻撃する事なんて出来ねぇよ」
「それはまた、敵に易々と弱点を晒すものだな。ピッグに叱られるぞ?」
「うぐっ、……でも、仕方ないだろ。大切な人に似てたら、手を上げたくなくなるなんて当然だ。おれに限らず、誰だって」
「確かにそんなことは自明だ。だからこそ俺は『ウルフマン』を産み落とした。しかし、所詮は模倣なのだ。自分よりも大切な相手の模倣でも、それが自分の命の危険となれば、流石に攻撃するだろう? 何せ、本物ではないのだから」
「それは、……そうだろうが」
 ウッドの言葉の意図が分からず、ウルフマンは訝る。怪人は、拳を固めながら、密かに嗤った。
「だから、そうするのさ」
 拳はひとりでに千切れ落ち、雪を吸ってウルフマンの形をとった。やはり新しいモドキは困惑していて、小さな電気の音を纏ったウッドの「行け」によって無理やりアイに襲い掛かっていく。
 それをして、ウルフマンは口を閉ざした。アイは二体目のモドキに余裕を失い、ギリギリのところで避け続ける。「まだ頑張るか。ウルフマン、いい仲間を持てて幸せだな」と言いながら、三度怪人はモドキを産み落とす。
 三匹のモドキを相手にしても、アイは努力した。服を僅かに裂かれても、モドキを攻撃しなかった。四匹目のモドキが来て、ナイフを威嚇程度に使い始め、けれど決してその刃でモドキを切り裂くことはなかった。五匹目のモドキの登場にも、しばらくは耐えていた。
 ウルフマンはとっさに、止めなければ、と飛び出そうとした。その時、ウッドは静かにに「いいのか?」と尋ねて来た。体が縮こまった。ピッグの命令と、昨晩の失敗が狼男の巨躯を雁字搦めにし、動くことを許さなかった。
 結局、六匹目が現れた瞬間、アイは一刀にて三匹のモドキを始末した。
 彼女の息はとうに切れ、ウルフマンは初めて、アイが戦闘で大量の油汗を掻いているところを見た。
 そこからはアイも躊躇いを止めた。現れるウルフマンモドキを、その大振りな挙動の隙をついて簡単に切り裂いていった。モドキは嫌にリアルで、頸動脈を切れば血を吹き出し、腹を裂けば内臓をこぼし、首の骨を折れば即死した。
 その光景は異様だった。ウルフマンは、言葉の発し方が分からなくなった。アイが、正気を失った自分を鮮やかな手並みで殺している。客観的に見れば、そういう状況だ。だが実際の奴らは本物ではなく、ウッドの手先で、その為順当な結果のはずだった。
 それでも、胸のざわつく感じは抑えられない。
「……ふむ。そろそろ頃合いかな?」
 拳を最後に一つ地面に転がして、ウッドはアイにモドキを差し向けることを止めた。残るは、ウッドと、アイと、ウルフマンと、そのモドキが一匹ばかり。
 すっかり息を切らして、ウッドに「行け」をされなかった一匹を除いて、アイは全てのウルフマンモドキを始末した。疲れたように地面に手をつき、荒い息を吐いている。
「な、え? 何が、一体、どうなって」
 ぶつぶつと戸惑いを露わにするのは、最後のモドキだ。ウルフマンにそっくりなそれは、ウルフマンにそっくりな所作で、ウッドとウルフマンの間で視線を右往左往させている。
「最後は、“ウルフマン”、お前たちで決着をつけろ。アイもいい具合に消耗した。邪魔は入らないぞ」
 しかし、どちらも動き出さない。片方のウルフマンはくしゃりと顔をゆがめ、もう片方のウルフマンはいまだ動揺を解けないでいる。
「何だ、お前たち。やはりどちらもウルフマンだな。精神力が一般人のそれと変わらない。普通に生きるのならばそれで良かったろうが、自らの願いのために戦争を起こす人間はそうもいかないだろうに」
 ウッドのぼやきに、どちらのウルフマンも同じ反応をした。すなわち、反駁できずに悔しさを込めて睨み返す、ということ。次いで同時に互いの行動が同一であることを知って、戦くのだ。
「まぁいい、僅かなズレも無くなってきたようだしな。さぁ、そろそろどちらでもいいから動き出せよ。でないと、『もう片方』に“ウルフマン”を取られるぞ」
『どういうことだよ』
 その言葉は重なった。そして、見合う。同じタイミングで同じ反応、行動を起こす。アイを襲えと言われて抵抗する。ウルフマンは鈍いが、その意味くらい分かる。
 同時に飛び退って、対峙した。両方の脳裏に、相手に殺され、何もかも奪われる未来が去来する。どちらも自分が本物のつもりで、どちらも相手が偽物だと思い込んでいる。二人は入り乱れて、動きを見逃してしまったアイには見分けが付かない。真実を知るのはウッドだけ――いや、ウッドでさえ真実は分からないのかもしれない。
 何せ。
「流石、ウルフマンの体内に送った『修羅』が集めて来たアナグラム通りに作っただけはある。恐ろしいまでの完成度だ」
 ウルフマンにその言葉の意味は分からない。だが、意図は理解できた。
『スワンプマンってことかよ、畜生……!』
 その言葉さえ、重なる。ぎりり、と同時に、ウルフマンは歯ぎしりをする。





 以前、ジェイコブは愛見とこんな話をしたことがあった。
「J君~。J君は、何をもって自分を自分たらしめると思いますか~?」
「え?」
 聞けば、スワンプマン――沼男と言うものを知って、考えることがあったのだという。
 スワンプマンとは、1987年にアメリカの哲学者ドナルド・デイヴィッドソンが考案した思考実験の事だ。主に、「私とは何か」といった同一性やアイデンティティーの問題を考えるのに使われる。
 ――例えば、ある男が一人ハイキングに行ったとしよう。そしてある沼の近くで、不運なことに、男は雷に打たれて死んでしまう。その時別の雷が沼に落ち、なんという偶然だろうか、雷と沼の汚泥が化学反応を起こし、死んだ男と原子に至るまで同一の生成物が生み出されたとしたら、それはその男本人と言えるのか、というものだ。
 その沼から生じた生成物をスワンプマンと名付けるが、スワンプマンは死んだ男と原子レベルで一緒なので、服や外見、つまり見かけでは全く見分けることは出来ない。また脳も全く同じなので、本人にしか分からないことを尋ねてもぴたりとまるで本人が如く答えてくる。
 だからスワンプマンは自分を死んだ男だと思っているし、事実男の死ぬ直前の姿のまますたすたと死んだ男の家へ帰っていき、死んだ男の家族に電話をかけ、死んだ男の読み途中だった本の続きを読みふけりながら眠りにつく。翌日になると、死んだ男の会社に通勤する。
 さてこの時、他者が、いやスワンプマン自身を含めて、スワンプマンを死んだ男と別の存在だと看破することは可能だろうか。この思考実験の考案者であるデイヴィットソンから言わせれば、自身の経験に基づいて得られた知識こそが本物であり、スワンプマンの持つ情報はそれと全く別であるとしているが、今回それは問題ではない。
 ウルフマンはウルフマンと対峙する。そこに区別をつける人間はいない。つけられない彼らと、敢えてつけずに笑っている悪魔。場は悪魔が支配していて、悪魔の味方をするものなどただの一人も存在しないのに、誰一人、奴に敵意の矛先を向けられない。
 睨み合い。膠着。状況は動き出さない。吹雪だけが、絶えず吹いている。
 どちらが勝ってもおかしくはないし、決着がつかないのもある意味では自然だ。二人のウルフマンが抱くのは、たった一つの確信。
 “動揺した方が、負ける”。
 だが、どちらのウルフマンも動揺せずにはいられない。自分と全く同一の存在が目の前に立って、自分を排除しようとしている。それも、自身を本物だと信じ切ったうえで、だ。奴は自分を殺しても何の良心の呵責もないだろう。まるで当然のような顔をして、自分の全てを奪っていく。
 その時、狼たちは不意に考えるのだ。
 自分が勝ったならそれでいい。しかし、自分が負けたなら?
 負けた自分を、誰が自分と認めてくれるのか?
『―――――――――ッ!』
 二匹はぞっとした。吹雪が強まり、一瞬互いの姿をかき消した。――そんな結末には耐えられない。そう感じたが為に、唸り声をあげて駆けだした。コンマ一秒の狂いもなく、同時。それが恐怖を、更に駆り立てる。
 勝敗を決したのは、運だった。
 雪が僅かに高く積もっていた場所に足を踏み入れた方のウルフマンは、それよりも薄い方に足を踏み入れた方のウルフマンよりも、ほんの一瞬だけ遅れた。達人同士の立ち合いですら誤差と呼べるような時間のズレ。その巨大で鋭い爪が、敵に先に刺さった方が勝った。それだけだった。
 ウルフマンはもう片方のウルフマンの腕を引きちぎり、返り血で体を汚す。
 腕を取られた方は、文字通り血の気が失せて無我夢中で反撃に出ようとした。つまりは、冷静さを失った。だからその一撃は大振りだった。そして、一撃入れて動揺を退けた方は難なく避け、残るもう一本の腕を爪で裂いた。
 周囲に、桜吹雪が舞う。血が凍るほどの夜だった。血に染まる夜だった。
 趨勢は決し、安堵と共に無傷の勝者は止めを刺す。武器を失った敗者は血まみれで逃れようとする。それをして、ざわついた。勝者は敗者を踏みつけにして、怒鳴りつける。
「テメェ! 情けない真似するんじゃねぇよ!」
 同族嫌悪、と言い表せばよいのか。勝者は、熱くなった。殺す前に、一撃入れてやろうと考えた。身内――いや、『自分自身』だからこそ、その動きが許せなかった。
 その余計な行動が、誤解を招いた。
 頭部や腹部ではない、四肢の、命に届かない場所への一振り。それは殺すためでなく、ありていに言って嬲るためのものだ。故に、防ぐものが現れた。アイ。彼女は勝者の攻撃をナイフで防ぎ、敗者を守るように動いた。
 そのことが、勝者を傷つける。勝ったなら、自分は自分だと認められるのではないのか。勝者は呼吸を止めて彼女を見た。か細い声で、「……アイ?」と名を呼ぶ。
「何で、何でそいつを庇うんだ? そいつ、ウッドが生み出した偽物だろ? なのに、何でそんなことするんだよ……?」
「……」
 アイは、混乱していた。震える唇。食いしばられた歯。表情が、それを如実に物語っていた。その困惑は、ウッドの策略だ。
 偽物のウルフマンを虐殺させることで、アイの中のウルフマン像はゲシュタルト崩壊を起こしている。次いで起こった、本物と偽物の区別のつかない対決。ウッドの生み出したモドキは、アイが息切れを起こし、目を離した瞬間に大きくなった。場所も移動している。カバリストでも二匹の判別をつけることは困難だろう。
 そして、勝者たるウルフマンが敗者たるウルフマンを嬲ろうとしたことが、アイに咄嗟の行動をとらせた。ダメ押しに、ウッドは僅かな精神魔法でアイの戸惑いを肥大化させている。
 冷静になって、ウルフマンたちの足跡を辿ることさえ、今のアイには出来ない。それが理由で、敗者を守った。敗者が本物だったら、取り返しがつかないから。
「な、なぁ……! 何でか、答えてくれよぉ! 何で、何でおれに、ナイフを向けるんだよぉ……!」
 勝者は必死になって問い詰める。ウルフマンにとって、アイは姉のような存在だ。知り合ってから数年。家族のような関係だった。
「……!」
 アイは、答えることが出来ない。筋道の通った答えを用意できる程、彼女もまた冷静ではなかったのだ。それに直感があった。下手な回答をすれば、ウルフマンとの信頼関係は粉々になる。
 すでに、ひびが入っているのだ。
 それが分かっているから、ウッドは動く。
「お前たちは七面倒くさいな。とりあえず負けた方の屑は殺しておくぞ」
「ぇっ」
 アイは勝者と見つめあっていたがために、敗者へと目を向けなかった。彼女が振り向いたとき、ウッドはすでに敗者の頭をつぶしていた。血と脳がぐしゃぐしゃに混ざり合って雪の上にばら撒かれた。横殴りの風の音が、すべてを塗りつぶした。
「……あ、ぁぁ、……!」
 一テンポ遅れて、アイを激情が襲う。全身が震え、彼女はウッドによって増幅された激昂に身を任せ、ナイフを振るい、叫んだ。
「―――ウッドッ! あなただけは許さな――!」
 悪魔は、遮って嗤う。
「ふふっ、おいおい。アイ、お前は酷い奴だな。後ろを見ろよ。ウルフマン、泣いてるぞ」
 今度は、アイが呼吸を止める番だった。全身を硬直させ、恐る恐る振り返る。少年は、全身を虚脱させてそこに突っ立っていた。泣いているのかは、狼男ゆえに目では分からない。けど、分かった。ウッドの言う意味が、理解できてしまった。
「あ、違、違うんです、ウルフマ」
「――いいよ」
「え?」
 力ない、嗚咽のような笑い声が狼男の口についた。
「……ははっ、……もう、いいんだ」
 ウルフマンは、踵を返してその場から離れていった。アイはそれに追いすがろうとするが、到底追いつける速度ではない。「ウルフマンッ!」と背中から追ってくる声が虚しかった。彼の持つ少年の心は、悪魔にとってはガラスも同然だった。
 脳裏で繰り返される記憶。自分を根本から否定した祖母。自分を判断できなかったアイ。ウルフマンは、自分を見失った。誰も認めてくれない自分は、一体何者なのだろうと思った。
 吹雪の中、逃げ続けた。身も心も、冷え切っていくのが分かった。

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