武士は食わねど高楊枝

一森 一輝

6話 決別ⅩⅣ

 姉弟揃ってお忍び状態だった。姉は半ば指名手配的な状態であったため、弟は図って友人の片思い相手を寝取ってしまったためである。
 ミスカトニック大学の深部。大図書館の建物を抜けたさらに先にある研究棟の地下に、図書が働いている研究室があった。総一郎と白羽は服装のイメージをアーリのようなパンクに寄せることで変装し、人通りの少ない道を通り過ぎる。
 到着すると、すぐに妙齢の女性が迎え入れてくれた。その部屋の主である彼女は、名をサラ・ワグナーといった。あのウッドをその優秀さのみによって、一時的なりとも苦しめるに至ったNCRの生みの親だ。
「やぁ! 久しぶりだねブシガイト姉弟! 優秀な君たちにまた会えてとてもうれしいよ! しかし意外だったね! ソウチロウ君。ウッドたる君が不殺の手段を求めるなんて、私としても驚きだった! あるいはあのシュラの形質遺伝も今は不活性状態なのかな?」
「……えっ」
「あー、うん。何か言ってるけど気にしないでくれ。博士はいつもこんな感じでよく分からないことを言い出すんだ。ったく。総一郎がウッドなんて冗談にしても馬鹿げてるよなぁ?」
「そっ、そうだよもー! そ、総ちゃんがウッドだなんて、博士ったらー!」
 研究室を白羽とともに訪れて、礼儀正しく挨拶をした返礼がこれだった。余程の例外でもない限り総一郎とウッドの脳内関連は切れているはずなのに、さらりとこんなことを言われては、さしもの総一郎とて動揺は免れない。
「んー、あ、なるほどなるほど。じゃあズー君。ちょっとあの試射場のセッティングを頼んでいいかな?」
「あ、はい。んじゃまたな、総一郎、白羽」
 軽く駆け足で離れていく図書を見送ってから、総一郎は壊れたロボットのようにぎこちない動きでワグナー博士を見る。
「え、えっとその、何と言いますか……」
「ち、違うの博士! 違うっていうかその通りっていうか、今の総ちゃんはウッドなんかじゃ」
「ああ、いいんだよ。ただズー君が『君がウッドだ』っていう私の言葉を信じない様子を見て、やり手だなぁと思ってね。ふむふむ、なるほど、少し失礼するよ?」
 総一郎の戸惑い、白羽の庇いを軽く無視して、ワグナー博士は総一郎に近寄った。彼女は医者にありがちなどこか無遠慮な力加減で総一郎の瞼を引き上げたり、口内をのぞき込んだりと一通りしてから、「了解。協力ありがとう」と心底嬉しそうな顔になる。
「シラハ君の言うことは分かった。確かに彼はウッドではなさそうだ。シュラの特徴がどこにも見受けられない。が、潜伏期間というのが正しくもある。要観察といった状態かな。君、あれだけシュラに傾きながら戻ってこれたというのなら、依り代があるのだろう? 出来るだけそれと同質な、別の何かを用意しなさい。そしてそれを常に携帯することだ」
「え、あの」
「私から言えるのはそれくらいかな。……あぁ、なるほど。潜伏期間で、再発症の防止のためのズー君の新魔術という訳か! 考えたねぇ君も。そして運がいい」
「……あはは」
 笑うしかない。総一郎には何の弁解をする必要もなく、あらゆる全ての事情を看破されてしまうのだから。
 ふと気になって、聞いていた。
「その。怖く、ないんですか?」
 総一郎の漠然とした問いに、ワグナー博士は一瞬だけキョトンとした。それから悟ったような、悠然とした笑みを浮かべる。
「君はとてもいい子だね! その質問に関して、私は沈黙を返させてもらおう。その代わりと言っては何だが、先生から一つ助言を与えようか。きっと君の未来を変える一言になる」
 ――ちゃんと覚えておきなさい。何なら電脳魔術を使って記録をすべきだ。
 念押しする声色はいつも通り軽快だった。他の誰かがこんな風に言っても、総一郎が言う事を聞いたかどうかわからない。だが、ことワグナー博士にだけはそれは出来なかった。総一郎はこの言葉だけは逃すまいと録音を始める。
「準備できました」
「そうかい、じゃあ始めよう。……ソウチロウ君、マジックウェポンを知っているかい? 君にはとても縁深いと思うが」
「あ、はい。えっと?」
 質問の意図が見えずに戸惑った声を返すと、博士はにっこりと笑って言った。
「注意しなさい。マジックウェポンは、ああやって社会に溶け込んではいるが、率直に言ってあれほどのオーバーテクノロジーは存在しない。威力が魔法に対抗するレベルで抑えられているから目立たないだけだ。マジックウェポンが作れるなら、ボタン一つで一民族を例外なく滅ぼす兵器だって作れる。シルバーバレット社は、そういう企業だ」
「………………え」
「ソウチロウ君。私はね、天才だ。主観でなく客観的に見てそうなんだよ。共感能力に問題があって、それでいて人間から外れかけた頭脳を有している。そんな私だから言ってのけよう。私が開発過程にどうしても納得いかなかったのは、世界でも今のところマジックウェポンだけだ。あの魔法銃だけは、まず間違いなく何十世紀も先の代物だよ」
「そう、なんですか? 俺は、その、マジックウェポンは日本人の協力を取り付けて開発されたって」
「そう言っておけば、ジャパニーズには心証がいいからね。しかし、事実は違うよ。ジャパンからの難民が渡米してくるよりも数年前に、マジックウェポンは警察内で秘密裏に採用されていた。ジャパニーズが来てから、その存在を公にしただけさ」
 総一郎は、何も言えずに硬直する。白羽も同様だ。最後に博士は、冗談めかしてこう〆た。
「私は宇宙人も幽霊も信じる。どちらも存在していて、接触したことがあるからだ。だが唯一信じていなかったものも、今は信じられる。――この世には、宇宙人や幽霊だけでなく、きっと未来人も存在しているんだとね」


「おーい! こっちのセッティング終わったぞー! 二人とも早く来―い!」


 図書の声に、武士垣外姉弟は我に返った。その様が滑稽だったのか、博士は高笑いして一息つく。
「面白い二人だねぇ。ズー君の親友なだけある。からかい甲斐があって愉快だ」
「え、じゃあさっきのは」
「私は無用な嘘はつかないよ。じゃあ、私はこのあたりでお暇させてもらおうか。次の研究題材も興味深くってね。いずれ君たちにも協力をお願いするかもしれない。その時は快く頷いてくれれば、いざというとき助けてあげよう!」
 では、仕事に戻らせてもらうよ。と博士は席についてパソコンを叩き始めた。その表情は一目見ればわかるほど作業に没入していて、とてもじゃないが話しかけられる雰囲気ではなくなっていた。
 そこから、少し離れた場所に姉弟で移動して、こそこそ始めた。
「……白ねぇに前情報もらっててよかったよ。俺が前に遭遇したときはここまでじゃなかったんだ」
「でしょ!? 会うたびに素が出るっていうか、パワーアップしてる気がするんだよ、博士」
 すでに指以外が置物のように動かなくなった博士を見て、恐ろしい人だ、という以上の感想を抱けなくなっている姉弟である。彼女が敵でなくてよかった、とは心からの思いだ。
「おい何やってんだ? って、先生もう作業に戻っちゃってら。まぁいいや。二人とも、こっち来いよ」
 図書に指でちょちょいと招かれ、姉弟は粛々と移動する。その部屋は第二研究準備室と銘打たれていた。内装は部屋中に緑色の塗装をされただけの、家具も薬品などなどの研究に必要そうなものもない妙な部屋だった。
 辛うじて、的にする用のかかしのような人形と、部屋の隅にカバーで覆われな大きな物体が置かれているのみ。
「何この部屋」
 言いながら、総一郎は壁に触れる。手触りはどことなくべた付いていて、すぐにゴムだと分かった。
「これは」
「強化ゴムだ。それをトン単位で用意して、この中でダイナマイトが爆発しても問題ないような作りにしてある。……いい加減研究室でデカいのが暴れまわると色々データ吹っ飛んで敵わないからな」
「「ああ……」」と納得する姉弟に、「お前らすっかり仲良しに戻りやがって」と嬉しそうに図書は言った。
「んで総一郎がやるのは把握してるんだけどよ、白羽も覚えるのか? いや、そんなに難しくないし覚えてけ。多分一時間もしない内に安定するから」
「え、そうなの?」
「土と雷の魔法に親和力が高くないと少し魔力を食うかもだが。白羽の親和力ってどんなもんだったっけ?」
「んー、雷は結構雷神様にもらったけど、土は弱いかなぁ」
「雷があるなら大丈夫だな。おし、じゃあひとまず実践して見せるぞ」
 図書は聞き取りやすいようはっきりと呪文を口にした。物理魔術部分の詠唱はなかったため、手のひらにより数センチ離れ拳ほどの塊が浮いた。
「これ、ダイヤ?」
「お、よく分かったな総一郎」
「詠唱からして土魔法のダイヤ生成だったし。ちょっとイジられてたけど」
 宝石の中でもそれなりに難しい部類だ。必要魔力が多く、総一郎でも土魔法だけで生成しようとはあまり思わない。
「ダイヤで攻撃……? 宝石に目がくらんでるうちに、みたいな?」
「白ねぇ、それはもはやギャグだよ」
「だよねぇ。っていうかアメリカの宝石相場って結構日本人が来てからガタガタなところあるし」
「んなわけねぇだろお前ら。説明用にこうやって持ちやすくしてるだけだっての」
 見てろ。と図書は手にもったボール大のダイヤモンドを的用カカシに向けて投げつけた。弧を描いて宙を走り、見事ヒットする。
 目を瞠るべきは、ここからだった。
 激しい電流がダイヤを中心に放たれた。総一郎の原子分解ほどではないにしろ、まず間違いなく人一人が焼けこげるほどのそれだ。総一郎はとっさに白羽の目を覆う。その隙に何が起こったのか、気づけばダイヤモンドがカカシに薄くまとわりついていた。
「おうっ、そ、総ちゃんナイス。それで……、何これずっちん」
「辛うじて天使の目で捉えたけど、着弾時に走った電流でダイヤが炭になってなかった? 結構粘着質の」
「よく見抜いたな総一郎。その通り、これはダイヤの形をした拘束弾なんだ」
「拘束する前に拘束する相手を感電死させるのはNG」
「その辺りもちゃんと話すから聞け」
 図書の言うことには、この攻撃は日本人にとってもっとも簡単かつ確実な形での非殺傷魔法、という事らしい。
「さっきはデモンストレーションとして最初からダイヤにしたが、本来なら最初は炭として撃ち出すんだよ。んで、中心に帯電させて、その周りを絶縁体で薄く覆う。構造としてはこれだけだ。再現性の高い形で呪文にするのはかなり骨だったが」
「それがどういう原理であんなふうになるのさ」
「順に説明してくが、最初総一郎言った通りべっちょりした粘着質の炭として撃ち出す。で、着弾すると相手にああやってまとわりつくだろ?」
 図書は顎でカカシを示す。
「まとわりつくと、炭の形状が撃ち出されたときからかなり変化する。その衝撃で中心部にある脆い絶縁体が崩れて、帯電してた分の電流が流れだす。この電流の流し方が本当に難しくってなぁ……」
「言いたいことは分かった。つまり原子分解と同じ要領で炭素結合をバラバラにして再構成し、炭からダイヤモンドにしたってことでいい?」
「お、そうそう。ついでにそこで流れた電流を相手に対する電気ショックに流用ってな。だから見た目よりかはあのカカシに走った電気は少なめなんだぜ?」
「……原理は分かったけど、かなり強引なそれを成しえちゃうっていうのがこう、魔法ってやっぱりすごすぎない?」
 カバラもそうだが、魔法というのも調整すればここまで都合よくしてしまえるのか。総一郎は顎に手を当てて、いろいろと思案する。
 そこで白羽が、遠慮がちにちょいちょいと袖を引っ張ってきた。
「総ちゃん総ちゃん、お姉ちゃんに分かりやすく教えてくれる?」
 総一郎は少し考えて、極力簡略的に勢いよく並べた。
「スライム的なべっとりした炭が相手に着弾! 同時に電気ショックがバリバリ! まとわりついた炭がダイヤモンドに変化して、相手は起きても動けない! 科学の力ってスゲー!」
「科学ってスゲー!」
「お前ら本当に仲良しになったよな」
 姉弟のやり取りに図書は苦笑気味だ。
「んじゃ試しに総一郎、やってみろよ」
「いいけど、威力の調整方法を教えてもらえないかな。大型亜人とかだと、弾のサイズが対常人並じゃ電気ショックもダイヤの拘束も不十分かも。逆に小柄な相手だと電気ショックが強すぎて危険とか」
「弾の大きさを変えるだけで対応可能だぜ。この弾丸のコンセプトな不殺を重視して言うなら、当然だけど物理魔術部分が強すぎると相手に大怪我させるから気を付けろ」
「おっけー」
 呪文を脳裏に繰り返す。手をかざし、カカシに向けた。手の先で炭の塊が生まれ、そして放たれる。着弾。放電。膜のようなダイヤが、重ねてカカシを覆った。
「さすが総一郎だな、一発か」
「思った以上に魔力食わないね、これ。俺が土と雷の親和力が高いだけかもだけど」
 便利だ、というのが第一印象だった。しかし、これに加えていくつか考えることもある。攻撃方法はこれで十分だろうが、敵の魔法やマジックウェポンを潰すのに何か用意しなければ。
 考えていると、白羽が元気よく挙手した。
「では私もやります!」
「あいよ」
 白羽も同様の手順で射出。何事もなく成功だ。
「おぉー。お手軽だね。いい感じ」
「だろ? けどよ、これだけじゃあないんだぜ」
「これだけじゃないっていうのは?」
「総一郎がもの言いたげだったからな。いやー、本当お前ら武士垣外家は武闘派で怖いったらねぇわ。この魔法じゃ敵の魔法は防げない、とかそういうこと考えてたろ」
 ギクリと総一郎は肩を跳ねさせる。「な、なんで分かったのさ」と聞けば、「弟分の考えが分からいでか」とからから笑っている。
「けど当然俺だってその辺りは考慮済みだ。っていうか博士が監修してるからその程度の穴は当然指摘されまくったからな。という訳で実証機材第二弾!」
 タラー! と図書は口でアメリカ的効果音を付けながら、ちょっとした機械を取り出した。
「ピッチャーマシン?」
「今朝急遽おもちゃ屋で買ってきた」
 涙ぐましい努力である。
 ピッチャーマシン。野球を趣味とする青少年が中心にバッティングセンターなどでお世話になる、球を自動で放ってくれる機械だ。これはそこまで本格的なそれでなく、小学生などを対象としたとても簡単なもの。
「まず練習でこれを相手して、次に本格練習としてマジもんのピッチャーマシンを相手にしてもらう」
「あ、そっちも用意してあるのね」
 図書がカバーを大げさな所作で剥した。新品の、総一郎の身長ほどもあるピッチャーマシンが姿を現すのを見て、なるほどこれがしたかったがためにカバーを掛けていたのだなと推察する。
 それから細かな指示を受けつつ、総一郎は位置についた。おもちゃのピッチャーマシンが二メートル離れて設置される。
「おし! じゃあ総一郎! 行くぞ!」
「来い!」
 図書がかがんでスイッチを入れると、ぴょこん、とスポンジ製の柔らかい球が発射される。そこに極小のダイヤモンド弾をぶつけると、小さな電流を放って固まった。
「……図書にぃ、これは練習にしたってショボすぎない?」
「いや、俺の場合はノーコンだったから結構苦労したんだけどな。んならいいや。次からピッチャーマシン行くか?」
「うん。うんっていうか、これは飛来してきた魔法を相殺させることに対する有用性を示そうとしてるんだよね?」
「総一郎は難しい言葉を使いたがるな。高二病か?」
 地味にかなり胸が痛い指摘だった。
「ま、魔法を打ち消せることを証明……証明って難しい言葉じゃないよね? 普通に使う言葉だよね!?」
「俺が悪かったよ……だから疑心暗鬼になるなって。そうだよ。魔法を打ち消せることを証明する前に、怪我しないよう特訓してる」
「それなら、俺運動神経悪くないしいきなり魔法撃ってきても大丈夫だよ。このダイヤの魔法が使い物になるなら俺は絶対に怪我しない」
「――はは、言ってくれるじゃねぇか。んならそこ立て。俺が魔法をぶち込んでやるよ」
 悪そうな笑みを浮かべて、般若の面を頭に着けた兄貴分は手を構えた。オーソドックスな手から放つ魔法。その所作だけで、なんとも懐かしい。総一郎も真似をしながら、素直にこうやって魔法を撃つのはいつぶりだろうと考える。
「じゃあまず適当に火魔法ドーン」
「ダイヤモンド相殺」
 互いの手から、魔法弾が発射される。図書の手からはまさにファイアーボールと呼ぶボス球状の炎弾が。総一郎の手からは黒いスライムのような物体が。
 カバラで威力弾速を調節した甲斐あってか、総一郎と図書のちょうど真ん中あたりで二つの魔法は衝突した。瞬間的に雷光が弾ける。すると火魔法は消えたのか包まれたのか、地面に垂直に落ちた大きめのダイヤモンドが、ゴム製の地面に鈍い音を立てた。
「……一発でやり遂げるあたりさぁ、総一郎お前、今までどんな人生送ってきた?」
「悪い奴は大体友達だったよ」
「まともに答える気がないのは分かった」
 実はそんなに嘘じゃないのだが。
 図書は頭を掻いて渋い顔をする。この兄貴分は総一郎と白羽の和解を目の当たりにしてから、二人を妙に気に掛けるところがあった。図書自身もそれなりに修羅場をくぐっていたらしいが、それでも武士垣外姉弟ほどではない。そういう事だろう。
 それが嬉しくもあったし、不安でもあった。図書が要らないところで首を突っ込んで来たとき、彼の身に危険が及ばないか。彼はきっとまだ、人生で一度だって人殺しをしていない。敵に遭遇すれば、殺される心配と同時に、殺してしまわないかという危惧もある。
 人殺しをしたことがない。ただそれだけの事が、こうやって殺せなくなってさらに眩しく見える。
「んー、私はちょっと難しそうだし、ピッチャーマシン使わせてもらっていい?」
 白羽の声に、総一郎は我に返った。図書は軽い調子で指示を出す。
「ん、おう。んじゃそこのボタン押せばワンタッチでバッターボックス作れるから」
「わーい楽ちん」
 台の上にデカデカと設置されたボタンを押すと、折り畳み傘のような勢いでバッターボックスが組み上がる。「おわぁ!?」と驚いて尻餅をついた白羽にクスリとしながら、総一郎は図書に近づいた。
「図書にぃ、ありがと。この魔術、結構いいね。暴漢なんかに襲われた時、ポンポンばら撒くだけで何とかなりそうだ」
「だろ? 物騒な時代だからこそさ、こういうのが大事だと思ったんだよ」
「うん、ありがたい。……ところでこれ、雷魔法はどうなのかな。雷飛んで来たらただの炭って電気通すし意味なくない?」
「ふっ、その辺りは先生に滅茶苦茶指摘されたから対応済みだぜ。ただお察しの通り、炭の弾撃ちだすだけじゃどうしようもない。後でその辺り纏めた門外不出の奥義まとめをコピーして渡すわ」
「門外不出ってそんな軽い意味だったっけ……」

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