クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!

TNKt_k

220話 貿易

「難しい話は得意ではない。だから早速言わせてもらおう。セレン聖教国との戦争に冒険者の力を借りたい。となれば力を借りることはできるのか?」

まあ、そんなところか。
冒険者が戦争に参加するなんてことはあり得るのだろうか?

「それは悪いが協力出来ない。冒険者は賞金首の人間以外に力を振るうことを許されていない。」

「そう………なのか。」

リョンさんは宛が外れたのか少し落ち込んでいるように見える。
しかし再び顔を上げて話をする。

「それであれば武器を売って欲しい。我々が持っている魔物の素材にはそれなりの価値があるはず、それとの交換ならどうだろう?」

「うーん。そうだな………。もしリョンさんが冒険者になるならこのギルドで素材は買い取ろうし、冒険者にならなくても街の商業ギルドにでも持ち込めば登録なしで買ってくれるだろう。それで得た金でこの街の小売店で買う分に好きにして構わない。」

「おお!そうですか!我々にも魔剣の類いがあれば今まで以上に戦える。」

「だが、他の町から剣や防具を獣人のために仕入れてくることは恐らく不可能だろう。貿易や売買は商業ギルドの仕事だ。俺が口利きしてやってもいいが、武器なんかを領地を越えて輸入することは戦争の補助と何ら変わらん。商業ギルドも冒険者ギルドも治癒師ギルドも特定の国に肩入れしない中立組織、助力は難しいだろう。…………もし商業ギルドが良いと言ってもガレンディアの領主様が黙っちゃいねぇだろうさ。」

へぇー中立組織ねぇ。
まぁじゃないと国境を越えて色んな国に支部を作るのなんて無理だろうな。
ギルドがもし中立組織でないなら、ある日突然自国内のギルドが敵対関係になることも有り得るからな。そんなのは容認できないだろう。

「ならこの街にはどのくらいある?」

「街にある魔剣なんかはせいぜい十本あるかないか、性能の良い武器なんかもそう沢山は無いだろう。それに、並みの鍛治士なら次に2,3本m性能の良い武器を造れるだろうが、魔剣に関して言えば一流の鍛治士が数ヵ月掛けて作る上に、場合によってはその後付与士に効果を付与してもらはねぇとならねぇ場合もある。とてもじゃねぇがあんたが求める程の量は出てこねぇだろうよ。」

「…………分かった。取り敢えず、後日素材を持ってきてお金に換えていただこう。その後はあるだけ武器を買って帰ることにしよう。」

リョンさんは少し落ち込んだ様子であったが、武器を手に入れることが出来てそれなりの成果にはなっただろう。

「あぁ………。そういえばレッドオーガのリーダーの娘と同盟を結ぶんだったか?」

あっ!そういえばローズ達と同盟を結んでるのは冒険者ギルド的に大丈夫だったんだろうか?

「気にするな。それについてうちは特に口を出すつもりはない。………流石に街の中をフリーで歩かれると困るが大樹海で同盟を組む分には構わない。まあ、もし民間の人間を襲うようなら討伐の依頼を出すことになるがな。その辺はギルド支部毎に決めることだからもしかしたらセレン聖教国のギルドではクエストが出るかもしれん。」

なんだ。良かった~。
いざとなればローズは僕の召喚獣だから許してくれと言おうと思っていたが良かった。

「それで、美月………君にローズと言ったかな?オーガ達の長を呼び出して欲しいんだ。」

「それはなんのためですか?」

「見極めないといけないからな。仮にも冒険者を纏める立場だから、放置は出来ないんだよ。せめて話し合いをしておきたい。」

…………それならいいかな?

「じゃあ今から呼びますね。[鬼召喚 (ローズ)]!」

「早速呼び出しか!あたしが敵をぶっ潰し…………何処だここ?…………おお!美月…………誰をぶっ殺せばいい?」

物騒すぎる!!
お前は世紀末の人間かなにかなのか!

「いや、戦いが目的で呼んだんじゃ無いんだよ。こっちにいる人は大樹海に戦いにくる人間達を纏めている人なんだ。ローズと話してみたいんだって。」

説明が難しい。
リョンさんは人間の生活に関してもある程度知ってるみたいだったけど、ローズは人間について本当に殆ど知らないからな。

「ふーん。……で用って?」

「あぁ。………俺は冒険者ギルドガレンディア支部ギルドマスターのメデルジオだ。」

「うむ。」

………………うむじゃねぇー。
自己紹介しろってことだよ。

「ローズ自己紹介だ。」

「ん?……おお!あたしはローズだ。レッドオーガ達の長だ。」

そのあと簡単な取り決めを作った。
主には
・それぞれがそれぞれの人員に攻撃をしない。()
・もし、何らかの形で人間から攻撃をされた場合は反撃はしても構わない。なるべく殺さないで欲しい。
・冒険者(ここではダレン王国ガレンディア支部所属の冒険者に限る。(今後他の地域も追加予定))・民間人には攻撃は認めない。密漁者やレッドオーガを滅ぼそうとするものは例外。)
・取り決めに変更・追加の必要性があれば、もう一度会合を開き話し合う。(ローズは参考人としてローズの指定する人間を会議に参加させることができる。)

という風に決まった。
ローズが何にも考え無しに話すから僕やエミリアさんがフォローしなくてはならずものすごい疲れた。
特にエミリアさんは元王族であり、不利な条件にはことごとく訂正、拒否をしてくれた。
ものすごく助かった。
そして会談も終わりを迎えるときにリリアが一つの提案をする。

「そういえば、獣人の皆さんは食糧が少なくて困っていましたよね?食糧を交易するというのはいかがですか?」

そうだ。
ただでさえ、食糧が少ないところレッドオーガを受け入れると食糧難がさらに加速するという問題があったんだった。
そしてエミリアさんが補足するように続ける。

「ここガレンディアは東大陸一番の農業・畜産国家ですね。余剰し過ぎで西大陸まで輸出しているとか?もし、近くで買ってくれるのであれば輸送コストが減る分かなり助かるはずです。」

「………確かに、食糧の取引なら戦争には関係ない………。どっかとの取引を制限するわけでもないし、どっかの国に肩入れするわけでもない………。輸送コストが浮くのは商業ギルドの連中も嬉しいだろう。紹介状を書こう。」

「………本当に食糧が買えるのか?」

その後、商業ギルドに行った。
商業ギルドからしても輸送コストは目の上のたんこぶだったらしく、直ぐに獣人族達との貿易交渉の草案を作成した。
獣人達の文化には農業・畜産業は殆どなく、それが余るという事態は想像できなくて、まさか食糧を買えるとは思わなかったらしい。
リリアさんのお陰で大きな問題が一つ解決された。

「クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く