家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

21話 勉強会は苦痛で始まる


「はぁ〜」
「今日も1日疲れたなぁ」
「だな」

 放課後の教室で二人の男が机にもたれかかる。
 いや待て。これだと少し卑猥に聞こえるな。言い方を変えます。
 
 放課後の教室で二人の男が一日の授業で疲れ果てていた。

「でも、勉強しないとなぁ......」

 成績が悪い亜紀斗は、期末の勉強をしないとやばいらしい。

「なんで俺まで」

 亜紀斗の勉強会に俺は無理矢理付き合わされている。

「だってお前、学年一位じゃねぇか」

 そう、一応俺は勉強が出来る男だ。
 でも、決して夜遅くまで勉強しているわけでもなく、塾とかに通っている訳でもない。単純に記憶力と理解力が優れているだけだ。全て授業で覚えてしまう。

「だからって、俺は教える立場じゃないと思うが......伊藤さんとかに頼んだ方が良いんじゃないか?」
「げっ......」
「成績優秀、スポーツ万能、才色兼備。さらにクラスの委員長だ。伊藤さんの教え方の方が分かりやすいと思うが」
「俺は嫌なんだよあいつに貸しを作りたくない。頼むよ〜」
「分かった分かった。教えてやるから抱きつくな。気持ち悪い」
「酷い!」
「で、何処が分からないんだ?」

 亜紀斗は、机の上にドンッ!と教科書を置く。ペラペラとページをめくり、50ページ手前で止まる。
 そしてーー

「最初からここまで............全部分からない!!!!!」
「..................」

............................は?

 亜紀斗が分からないところは、高校の数学の最初から、今習っている所までの全部だった。

「よしっ...............................帰るか」
「おいおいおいおいおいおいおい!何で帰るんだよ!」
「だっておかしいだろ!何で全部分かんないんだよ!お前今までどんな耳持って授業受けてたんだよ!!」
「だって......しょうがないだろ!」
「しょうがないで済む話じゃないぞ」

 亜紀斗の想像以上の馬鹿さに驚きを隠せず、大声でツッコミをいれてしまった。

「ちょっとあんたたち!何騒いでいるの!」
「あ......」
「げ......」

 うるさい俺たちを注意してきたのは、クラス委員長の伊藤さんだった。

「や、やぁ伊藤さん」
「質問に答えて。何で騒いでいたの?」
「じ、実は............」

 俺は伊藤さんにこれまでの経緯を話した。
 勉強会の事、亜紀斗の頭が想像以上にダメな事。

「ふーん。なるほどね」
「だからさ伊藤さん、亜紀斗に勉強を教えてあげてくれないかな?」
「うーんでも、今までの全部を一から教えるのは少し苦労するわね」
「で、ですよねー」

 流石の量に伊藤さんも困り果てる。
 俺の通っている学校は、毎日数学があるため進みが早いのだ。

 (はぁ〜、どうしようかなぁ......。なんか、遅くなりそうだし、母さんに連絡しとくか)

 俺はカバンの中から携帯を取り出す。亜紀斗も携帯をいじり始め、伊藤さんも何かを確認するためだろうか?携帯を取り出した。

ーー春鷹)ごめん母さん。帰りが遅くなると思うから、先ご飯食べてて
ーー母さん)どうして遅くなるの?まさか......女!?
ーー春鷹)ち、違うよ!亜紀斗と勉強するんだよ!
ーー母さん)なーんだ、良かったー。勉強会ね了解。でも、なるべく早く帰ってきてね♡
ーー春鷹)はいはい

 とりあえず母さんに連絡しといたし大丈夫だろ。

ーブルルッ!
ーブルルッ!

 俺と伊藤さんの携帯が同時になった。

(ん?何の通知だ?)

((バトルロワイヤルゲーム))アップデート新情報!「新武器追加」!

(おお、新武器だ。帰ったらやるか)

「さぁとりあえず、できる限りやってみましょう」

 伊藤さんは優しい人だ。高校の数学を1から亜紀斗に教えるみたいだ。

「しょうがない。僕も付き合うよ」
「学年一位と二位か、厳しい勉強会になりそうで俺は少し怖いよ」
「期末で苦しみたくないなら、今から死ぬ気で勉強するわよ」

 ーー僕達の長い勉強会が幕をあげる。















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コメント

  • ペンギン

    最初から一気に読みましたが、間にツッコミとかが入っていたりして、全体的にいろんな意味で面白いです!これからも、頑張ってください!応援しています!

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