家族に愛されすぎて困ってます!

甘草 秋

23話 しれっとただいま言えました


 「春ちゃん、遅くなるとか言ってたけどどのくらい遅くなるのかしら」

 近衛家食卓にて。
 春鷹を除く近衛家は既に晩御飯を食べていた。

「フハハハ!何を言ってるんだ母さん、春鷹の事を心配なんかしないで、今は晩御飯を食べようじゃないか!......モグモグ。んー、この唐揚げ美味しいぞ!母さん!」
「お父さん、春ちゃんのが無くなっちゃうからもう食べないで」
「何で!?」

 今の食卓には近衛家母と父しかいない。

「ところで、どうしてみんな降りてこないんだ?」

 晩御飯の時間なのに、娘達は一向に降りてこないようだ。

「みんな、春ちゃんと一緒に食べたいんだって。春ちゃんと一緒じゃないと美味しくないって」
「何!?......俺という者がありながら!」
「あっそう」
「なんかいつもより冷たくないか!?」

 春鷹がいないことで不機嫌になっているのだろうか。



ーーガチャ

「ただいまー」

ーードタドタドタッ!

 二階の自室にいた姉たちが玄関に集結し、食卓にいた母さんもいつの間にか玄関で春鷹の帰りをwelcomeしていた。

「春ちゃんお帰り!ただいまのハグしよっ!」
「随分とアメリカンだね!」
「春くんお帰り!ほら早く早く!一緒にご飯食べよ!お姉ちゃんが「あーん」してあげる!」
「自分で食べれます!」
「春お帰り。隠し味に私の唇なんてどう?」
「まったく意味が分かりません!」
「たーくん!遅くなった罰として、今夜は私の部屋で寝てね!」
「理性が持たないのでやめてください!」
「春お兄ちゃん。首にキスマークついてるよ」
「蚊に刺されだから!」

 よしっ......これで今日のツッコミは終了だな。

「ふ~。腹減った......って、親父帰ってたのか!?」
「......」

 なんか、やけに静かだなぁ。

「なぁ春鷹」
「な............なんだよ......」

  親父は下に向けられていた顔をゆっくりと上げーー

「死ねぇぇぇぇぇえぇぇえぇぇ!!」
「ひゃぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁ!!」

 帰ってきて早々、親父にボディブローをくらい、俺は意識を失った。









「ん?んん〜..................あれ?」

 俺はいつの間にか自室のベッドに寝ていた。

「......あー。確か......親父に一発くらったんだっけ......?」

 なんか俺、親父に会う度に毎回気絶させられてる気がするんだけど......。
 息子に嫉妬するとかどうゆう事だよ......。

「あー腹減った」

 一発くらった後からもう1時間も過ぎていた。気絶していたとはいえ空腹感が無くなる訳では無い。

 「リビング行くか」

 ゆっくりと体を起こし、階段を降りてリビングへ行く。

「あれ?姉さん達何で居んの?」

 あれから1時間も経ってるし、もうとっくに食い終わって自室にでもいると思っていたが、母さん、姉三人、真子はまだリビングにいた。

「春ちゃんと一緒に食べたいから!」
「春くんと一緒に食べたいの!」
「春を......食べたい......」
「たーくんと食べるー」
「春お兄ちゃんと一緒に食べたーい!」

 一人、興奮している輩は置いといて。

「我慢してたの?」
「そりゃまぁ、ちょっとはつまみ食いしちゃったけど......」
「お......おう」

 まぁいいや。俺の為に待っててくれたみたいだし、ここは素直に感謝するか。

「待っててくれてありがとう」
「「「「「はうっ......//」」」」」
「あれ?......お、おい!母さん!姉さん!真子!」

 たった1回の感謝の言葉&満面の笑みによって、近衛家の女性軍は萌え死に直前であった。

「そういえば、親父は......?」




ーー近衛家 庭の物置倉庫

「んっー!んんっー!!」

 親父は縄で縛り付けられ、監禁されていることを春鷹は知らない......。

「んんんんんんっーー!!!」





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