スキルを使い続けたら変異したんだが?
第二話 目標達成
「おおっ!」
俺は今日何度目になるかわからない感動の声を上げる。
レベル3となった俺は、残り1となったMPを回復するため、初期の拠点となる始まりの街リーレへ向かうことにした。
入口の石作りの門を潜ると、そこには中世の町並みが広がっており、思わず感嘆してしまったのだ。
ベージュやピンクなどの色合いをした石造りの建物の間には石畳が敷かれ、他のプレイヤーが歩いていたり、NPCの商人が露店を広げている。
NPCには最新のAIが使われているそうで、自然な会話ができるようになっている。
ただし、
「悪い、ポーションちょっと飲んでみてくれないか?」
『はっはぁ! 面白いことを言うなぁ!』
俺が露店の商人のおっさんにそう言うと、彼は両腕を腰に当てて豪快に笑う。
「この毒消しの原価っていくらなんだ?」
『はっはぁ! 面白いことを言うなぁ!』
豪快に笑う。
「商人やっててやめたくなったことはあるか?」
『……はっはぁ! 面白いことを言うなぁ!』
豪快に笑う。
というように、大して重要ではないNPCにはそれなりのAIしか充てていないようで、予期せぬ答えには一定の言葉を返してくるようだ。
最後の質問だけ間の空いた事実はいかんともし難いが、とりあえず気にしないことにして宿屋を目指す。
和樹の話によると、初期の拠点はゲームを始めた時期によって異なるらしい。
確かに一つだけだとすぐに人で溢れるだろうし、他のMMOでいうワールドの違いのようなものなのだろう。
ここは比較的新しい拠点のようで、他のプレイヤーも初期装備の者が多い。
こうして見ると。やはり若い人たちが圧倒的に多い。
男女比は大体半々ほどに見える。最初の設定で顔認識があるので、実際の比率とイコールのはずだ。
年齢も十代、二十代、三十代……と、選べるアバターも違うので、年も大体合うようになっている。
七十代以降も設定されているようで、思わず振り返るような風格を持つ老人をさっき見た。
シニア層も取り入れるため、その年齢のアバターにもかなりの力を入れているようだ。
仙人や歴戦の戦士という風貌で初期装備なのはシュールだったが。
ナンパのように至る所でフレンド登録を行っているプレイヤーが見えたが、とりあえずまだフレンドは要らない。
フレンドが先に進みたい! と言ってそれに合わせるのも面倒だ。
まだ俺はこの辺りで感覚を掴んだり、レベル上げをしたいのだ。
目的の宿屋に着く。
扉を開くとプレイヤーで溢れていた。しかし、並ぶ必要はないらしい。宿屋に入った直後に、タブレットが目前に現れる。メッセージが表示されていた。
宿屋に泊まりますか?
所持金:24ゴールド
宿泊:10ゴールド
YES
NO
うお、流石に最初の街だけあって破格の安さだ。
迷わずYESをタップすると、ピコピコンと電子音が鳴り、HPとMPが全快となる。
HP:25/25
MP:10/10
少し時間が掛かるものかと思ったが、そこは運営も利便性を考えたのだろう。
目的を終えた俺は、宿屋から出る。
そして、プレイヤーたちの流れに逆らうように初期エリアへと戻っていくのだった。
それから一週間が過ぎた。
夏休みということを利用して、朝から晩まで俺は初期エリアでスライムとウルフを狩り続けていた。
俺はどんなRPGでも初期の町周辺でレベルを上げまり、それからサクサクと進めるのが好きだった。
友達にそのデータを見せて、驚いた顔を見るのも好きだった。
その悪友の一人である和樹からは何の連絡もない。招待ボーナスをもらうだけもらってあとは放置である。まあ、これだけ楽しいとその気持ちはわからなくもないが。
朝食を食べ終えた俺は早速ログインし、仮想空間へダイブする。
最後にログアウトした場所にプレイヤーは送られる。場所は、もう見慣れた草原だった。
俺はタブレットを取り出し、ステータスを見る。
名前:ユウト・カミシロ
性別:男
レベル:9
クラス:剣士
HP:65/65
MP:28/28
攻撃:30
魔攻:8
防御:38
魔防:10
敏捷:15
次のレベルまであと50の経験値が必要です。
ふっふっふっ、ようやくここまで来た。あの途方もない経験値をあと50まで減らしたのだ。
本当なら昨日のうちに10まで上げたかったのだが、ゲームのやりすぎか疲労感が強く、今日に持ち越したのだ。
しかし、このエリアでここまでレベルを上げたプレイヤーは俺ぐらいのものだろう。
さらにタブを装備からスキル。攻撃タブへ移す。
SP:45/45
スキル1:ブレイズソード
スキル2:
前に見た画面が表示され、そのさらに下にあるSP振り分けの画面を開く。
剣:0
大剣:0
長剣:0
レイピア:0
刀:0
ナイフ:0
ナイフのところで俺は手を止める。まだまだ下まで行くのは、スクロールバーの大きさを見れば容易に予想がつく。
これらにSPを振り分けることで新たなスキルを習得出来るらしいのだが、俺はまだ振り分けていない。
一度振り分けたらもう振り直しは効かないという、他のプレイヤーの話しを聞いていたからだ。
ブレイズソード自体も強化できるようだ。
威力、移動距離、攻撃速度、属性攻撃力、追加効果、命中補正、会心率、技後硬直時間短縮……と、その強化の種類は多岐に渡る。
面倒くさいし、初期スキルをわざわざ強化するつもりもないが。
しかし、リーレから先へ進むと敵の強さが上がるらしく、SPを振らずには進めないらしい。
まあ、今日でレベル10になる俺には関係のない話だ。
他のプレイヤーが四苦八苦して見つけた一番良いスキルが手に入るものに振ってやるのだ。
さて、あともう少しここで頑張るかな。
俺は使い慣れた相棒を抜き、他のプレイヤーもまばらな草原を掛ける。
「ブレイズソード!」
あと、42。
「ブレイズソード!」
あと、36。
「ブレイズソード!」
あと、28。
このエリアでは経験値の高いウルフを重点的に狙う。
スキルの出し惜しみはしない……というか、する必要なかった。
何百体倒したときかわからないが、モンスターの名前の後ろに星マークが付き、倒すと一割のMPが回復するようになっていた。
微々たるものだが、MP消費2の初期スキルならば気にせず使用することが出来る。
通常攻撃の代わりに使いまくり、もう動きにも体が慣れてしまった。今ならスキルを使わなくても同じ動きが出来そうだ。
「ブレイズソード!」
そうこうしている内に残り一体の魔物を屠る。
待ち望んだ電子音が脳内に響き渡り、タブレットが目の前に現れる。
レベルが10に上がりました。
HP:65→80
MP:28→40
攻撃:30→44
魔攻:8→14
防御:38→68
魔防:10→16
敏捷:15→24
おお、これがレベル10ごとの能力値ボーナスという奴か。今までとは比にならないステータスの上がり方だ。
「よっしゃああっ!」
歓喜と達成感に俺は身体を震わせて声を上げる。。
よし、これで次のエリアに進めるな……そう考えた直後、聞いたことのない電子音が脳裏に響いた。
なんだ? と思いタブレットを見るも表示はない。
何かの誤作動か。そう思い、特に気に留めずに俺はリーレへ向かう。
さあ、新しい冒険の始まりだ!
俺は今日何度目になるかわからない感動の声を上げる。
レベル3となった俺は、残り1となったMPを回復するため、初期の拠点となる始まりの街リーレへ向かうことにした。
入口の石作りの門を潜ると、そこには中世の町並みが広がっており、思わず感嘆してしまったのだ。
ベージュやピンクなどの色合いをした石造りの建物の間には石畳が敷かれ、他のプレイヤーが歩いていたり、NPCの商人が露店を広げている。
NPCには最新のAIが使われているそうで、自然な会話ができるようになっている。
ただし、
「悪い、ポーションちょっと飲んでみてくれないか?」
『はっはぁ! 面白いことを言うなぁ!』
俺が露店の商人のおっさんにそう言うと、彼は両腕を腰に当てて豪快に笑う。
「この毒消しの原価っていくらなんだ?」
『はっはぁ! 面白いことを言うなぁ!』
豪快に笑う。
「商人やっててやめたくなったことはあるか?」
『……はっはぁ! 面白いことを言うなぁ!』
豪快に笑う。
というように、大して重要ではないNPCにはそれなりのAIしか充てていないようで、予期せぬ答えには一定の言葉を返してくるようだ。
最後の質問だけ間の空いた事実はいかんともし難いが、とりあえず気にしないことにして宿屋を目指す。
和樹の話によると、初期の拠点はゲームを始めた時期によって異なるらしい。
確かに一つだけだとすぐに人で溢れるだろうし、他のMMOでいうワールドの違いのようなものなのだろう。
ここは比較的新しい拠点のようで、他のプレイヤーも初期装備の者が多い。
こうして見ると。やはり若い人たちが圧倒的に多い。
男女比は大体半々ほどに見える。最初の設定で顔認識があるので、実際の比率とイコールのはずだ。
年齢も十代、二十代、三十代……と、選べるアバターも違うので、年も大体合うようになっている。
七十代以降も設定されているようで、思わず振り返るような風格を持つ老人をさっき見た。
シニア層も取り入れるため、その年齢のアバターにもかなりの力を入れているようだ。
仙人や歴戦の戦士という風貌で初期装備なのはシュールだったが。
ナンパのように至る所でフレンド登録を行っているプレイヤーが見えたが、とりあえずまだフレンドは要らない。
フレンドが先に進みたい! と言ってそれに合わせるのも面倒だ。
まだ俺はこの辺りで感覚を掴んだり、レベル上げをしたいのだ。
目的の宿屋に着く。
扉を開くとプレイヤーで溢れていた。しかし、並ぶ必要はないらしい。宿屋に入った直後に、タブレットが目前に現れる。メッセージが表示されていた。
宿屋に泊まりますか?
所持金:24ゴールド
宿泊:10ゴールド
YES
NO
うお、流石に最初の街だけあって破格の安さだ。
迷わずYESをタップすると、ピコピコンと電子音が鳴り、HPとMPが全快となる。
HP:25/25
MP:10/10
少し時間が掛かるものかと思ったが、そこは運営も利便性を考えたのだろう。
目的を終えた俺は、宿屋から出る。
そして、プレイヤーたちの流れに逆らうように初期エリアへと戻っていくのだった。
それから一週間が過ぎた。
夏休みということを利用して、朝から晩まで俺は初期エリアでスライムとウルフを狩り続けていた。
俺はどんなRPGでも初期の町周辺でレベルを上げまり、それからサクサクと進めるのが好きだった。
友達にそのデータを見せて、驚いた顔を見るのも好きだった。
その悪友の一人である和樹からは何の連絡もない。招待ボーナスをもらうだけもらってあとは放置である。まあ、これだけ楽しいとその気持ちはわからなくもないが。
朝食を食べ終えた俺は早速ログインし、仮想空間へダイブする。
最後にログアウトした場所にプレイヤーは送られる。場所は、もう見慣れた草原だった。
俺はタブレットを取り出し、ステータスを見る。
名前:ユウト・カミシロ
性別:男
レベル:9
クラス:剣士
HP:65/65
MP:28/28
攻撃:30
魔攻:8
防御:38
魔防:10
敏捷:15
次のレベルまであと50の経験値が必要です。
ふっふっふっ、ようやくここまで来た。あの途方もない経験値をあと50まで減らしたのだ。
本当なら昨日のうちに10まで上げたかったのだが、ゲームのやりすぎか疲労感が強く、今日に持ち越したのだ。
しかし、このエリアでここまでレベルを上げたプレイヤーは俺ぐらいのものだろう。
さらにタブを装備からスキル。攻撃タブへ移す。
SP:45/45
スキル1:ブレイズソード
スキル2:
前に見た画面が表示され、そのさらに下にあるSP振り分けの画面を開く。
剣:0
大剣:0
長剣:0
レイピア:0
刀:0
ナイフ:0
ナイフのところで俺は手を止める。まだまだ下まで行くのは、スクロールバーの大きさを見れば容易に予想がつく。
これらにSPを振り分けることで新たなスキルを習得出来るらしいのだが、俺はまだ振り分けていない。
一度振り分けたらもう振り直しは効かないという、他のプレイヤーの話しを聞いていたからだ。
ブレイズソード自体も強化できるようだ。
威力、移動距離、攻撃速度、属性攻撃力、追加効果、命中補正、会心率、技後硬直時間短縮……と、その強化の種類は多岐に渡る。
面倒くさいし、初期スキルをわざわざ強化するつもりもないが。
しかし、リーレから先へ進むと敵の強さが上がるらしく、SPを振らずには進めないらしい。
まあ、今日でレベル10になる俺には関係のない話だ。
他のプレイヤーが四苦八苦して見つけた一番良いスキルが手に入るものに振ってやるのだ。
さて、あともう少しここで頑張るかな。
俺は使い慣れた相棒を抜き、他のプレイヤーもまばらな草原を掛ける。
「ブレイズソード!」
あと、42。
「ブレイズソード!」
あと、36。
「ブレイズソード!」
あと、28。
このエリアでは経験値の高いウルフを重点的に狙う。
スキルの出し惜しみはしない……というか、する必要なかった。
何百体倒したときかわからないが、モンスターの名前の後ろに星マークが付き、倒すと一割のMPが回復するようになっていた。
微々たるものだが、MP消費2の初期スキルならば気にせず使用することが出来る。
通常攻撃の代わりに使いまくり、もう動きにも体が慣れてしまった。今ならスキルを使わなくても同じ動きが出来そうだ。
「ブレイズソード!」
そうこうしている内に残り一体の魔物を屠る。
待ち望んだ電子音が脳内に響き渡り、タブレットが目の前に現れる。
レベルが10に上がりました。
HP:65→80
MP:28→40
攻撃:30→44
魔攻:8→14
防御:38→68
魔防:10→16
敏捷:15→24
おお、これがレベル10ごとの能力値ボーナスという奴か。今までとは比にならないステータスの上がり方だ。
「よっしゃああっ!」
歓喜と達成感に俺は身体を震わせて声を上げる。。
よし、これで次のエリアに進めるな……そう考えた直後、聞いたことのない電子音が脳裏に響いた。
なんだ? と思いタブレットを見るも表示はない。
何かの誤作動か。そう思い、特に気に留めずに俺はリーレへ向かう。
さあ、新しい冒険の始まりだ!
「SF」の人気作品
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