異世界スキルガチャラー
深夜:長い1日の終わり
ステージから降りると、ほぼ全方位から同時に声をかけられる。
ルカは腕を引っ張られて人々の中に引き込まれそうになっている。
「おい、お前達!大臣達にしては随分品がないじゃないか!?ん!?」
しかし、シーヴァの怒鳴り声でその騒ぎはピタリと止んだ。
「さあ、ここからは社交パーティとなんら変わらないんだ!1度グラスを傾けて来い!」
この言葉には、言外に
「今は僕達が話すのだからあっちに行っていろ」
という意味が込められていた。
それを理解した貴族達は潔く引き下がっていった。
「いや、すまないね。多分、君の実力を見て早くも手駒にしたいと思っているクズ共だ」
「どれだけ国が素晴らしくても意地汚い輩は必ず居るものさ。気をつけた方がいい」
シーヴァはいつになく毒舌で言う。
「まぁいい。そうだ、乾杯しようじゃないか。英雄同士の信頼を、共に酒を酌み交わすことによって確固たるものにしよう!」
そう言って酒類が置いてあるテーブルにシーヴァは歩いていってしまった。
そこで素早くゼーテに聞いてみる。
「なぁ、ゼーテ。この国はアルコール類って何歳から飲んでいいんだ?」
「17からよ。シーヴァ、今年から飲めるようになったからって、色んな種類飲み比べしまくってるの。気をつけてね。
って言っても、会場からは出られないから逃げても捕まると思うけど」
ゼーテから逃走不可能だという宣告を突き付けられた。
そうこうしているうちに、シーヴァがお盆にグラスを4つ乗せて戻ってきた。
「さあ、グラス持て。おいゼーテ、嫌がるな!これは儀式に等しいんだから!」
「なにが儀式よ、気持ち悪いこと言わないでくれない!?」
シーヴァは3人に(無理やり)グラスを渡し、自分もグラスを持つ。
「では、改めて!ここに揃いし救国の英雄4人に、乾杯!」
シーヴァは気取って、ルカはノリノリで、ゼーテは嫌がりながらも楽しげに、啓斗は諦めを滲ませて、グラスを掲げた。
そしてアルコールを摂取した4名(ルカは「今年17歳だから問題ないない!」と言って啓斗の制止を聞かなかった)はどうなったかというと、啓斗は意外とアルコールが大丈夫だったらしく、おかしくならずに済んでいた。
ルカは3杯目に口にした桃の果実酒が美味しかったらしく、様々な果実酒を試しては一喜一憂していた。
問題は、この双子である。
「そこで僕がこう言ったのさ!「我が闇と煉獄の火炎にて消え去るがいい」とね!その時の奴らの怯えた顔ったらもう!」
先程からシーヴァは魔物の住処を全滅させた際の武勇伝を2時間休み無しで語り続けている。
一方のゼーテはと言えば、
「まだ来ないの?仕事がおっそいわねー」
数分前、ジェイド王に何やらコソコソ話しかけたあと、何かをずっと落ち着きなく待っている。
その正体はすぐに分かった。
ステージ上にはいつの間にかピアノとオーケストラセット、さらに人員まで揃っていた。
「それでは皆様!パーティの最後にダンスでもいかがでしょうか!」
ゼーテが声を張り上げる。
次々と歓喜の声が上がる中でたった2人、背筋が冷たくなった人物がいる。
もちろん啓斗とルカだ。
2人とも立場は違えど、お互いダンスなど生まれてこの方1度もしたことがない。
オロオロしていると、啓斗はゼーテに、ルカはシーヴァに声をかけられた。
「男なのに女性にダンスのエスコートもできないの?じゃ、徹底的に今から叩き込んであげる」
ゼーテの顔は悪魔の笑みを浮かべていた。
「お目に麗しい妖精の森のお嬢さん、僕と踊って頂けますか?」
シーヴァの目はどこまでも優しい色をしていた。
軽快なリズムに合わせて参加者は全員ダンスを始める。
ルカはシーヴァの動きに合わせて踊っているのだが、正直シーヴァ達が少し驚愕するレベルで感覚と運動神経が良い。
啓斗はゼーテに無理やりターンやステップを教えられており、ぎこちなさが目に見える。
そんな対照的な2組のダンスは、最後の曲に差し掛かる。
情熱的なアップテンポの曲だ。
一気に激しさを増した動きに、既にヘトヘトな啓斗はきりきり舞いにされ、ルカは全身全霊でシーヴァの動きに合わせる。
そして最後に、シーヴァとゼーテが2人を回転させ、同時に押す。
ルカと啓斗が抱き合った瞬間、曲は終わり、拍手喝采が沸き起こった。
「ああ……まだ胃の中がグルグルしてるな……」
見るからに疲労困憊といった状態で啓斗は呟く。
啓斗とルカは、ジェイド王に指定された部屋へと続く廊下を歩いていた。
「そう?私はすっごく楽しかったよ!」
ルカはまだ興奮が冷めやらない様子だ。
そんなルカを見つめていた啓斗は、おもむろに後ろを振り向く。
「……そこのフード被った怪しい奴。お前に構ってる暇はない。さっさと帰れ」
突き刺すような視線を廊下の真ん中に向ける。
「な……私の幻覚術が通じないだと…!?」
啓斗の背後を尾行していたフードを被った人物が驚きを露わにした。
「いや、最初に気づいたのは俺じゃない。尾行が得意なのか?尾行されるのは慣れてないらしいが」
「なっ……」
その瞬間、フードの人物の体が急速に膨張したかと思うと、見事に爆散した。
「おっと、生かしておいた方が良かったか?」
「別にいいんじゃない?これなら尋問とか無しで掃除だけで済むし」
その奥には、眼帯を外した双子がいた。
「よし、面倒事なんて無かったということだ。それじゃあ、お休み!ケイト君、ルカさん、良い夢を!」
「じゃ、また明日ね」
すぐに眼帯を着け直すと、そう声をかけて2人は去っていった。
ルカと啓斗は向かい同士の一人部屋だ。
「じゃ、また明日」
「うん、お休み」
2人はドアを開けて中へ入ろうとしたが、その前に思い出したように啓斗がこう言った。
「あ、そういえば、ドレス凄い似合ってた。ゼーテのセンスが良かったのもあるかもしれないけど、俺は良いと思ったぞ」
そう言ってそのまま部屋に入ってベッドにスーツのままダイブする。
時刻はもうすぐ午前0時。
濃密すぎる1日を終えた彼は、2秒で気を失った。
向かいの部屋には、思考が停止してそのまま眠りについた少女がいた。
ルカは腕を引っ張られて人々の中に引き込まれそうになっている。
「おい、お前達!大臣達にしては随分品がないじゃないか!?ん!?」
しかし、シーヴァの怒鳴り声でその騒ぎはピタリと止んだ。
「さあ、ここからは社交パーティとなんら変わらないんだ!1度グラスを傾けて来い!」
この言葉には、言外に
「今は僕達が話すのだからあっちに行っていろ」
という意味が込められていた。
それを理解した貴族達は潔く引き下がっていった。
「いや、すまないね。多分、君の実力を見て早くも手駒にしたいと思っているクズ共だ」
「どれだけ国が素晴らしくても意地汚い輩は必ず居るものさ。気をつけた方がいい」
シーヴァはいつになく毒舌で言う。
「まぁいい。そうだ、乾杯しようじゃないか。英雄同士の信頼を、共に酒を酌み交わすことによって確固たるものにしよう!」
そう言って酒類が置いてあるテーブルにシーヴァは歩いていってしまった。
そこで素早くゼーテに聞いてみる。
「なぁ、ゼーテ。この国はアルコール類って何歳から飲んでいいんだ?」
「17からよ。シーヴァ、今年から飲めるようになったからって、色んな種類飲み比べしまくってるの。気をつけてね。
って言っても、会場からは出られないから逃げても捕まると思うけど」
ゼーテから逃走不可能だという宣告を突き付けられた。
そうこうしているうちに、シーヴァがお盆にグラスを4つ乗せて戻ってきた。
「さあ、グラス持て。おいゼーテ、嫌がるな!これは儀式に等しいんだから!」
「なにが儀式よ、気持ち悪いこと言わないでくれない!?」
シーヴァは3人に(無理やり)グラスを渡し、自分もグラスを持つ。
「では、改めて!ここに揃いし救国の英雄4人に、乾杯!」
シーヴァは気取って、ルカはノリノリで、ゼーテは嫌がりながらも楽しげに、啓斗は諦めを滲ませて、グラスを掲げた。
そしてアルコールを摂取した4名(ルカは「今年17歳だから問題ないない!」と言って啓斗の制止を聞かなかった)はどうなったかというと、啓斗は意外とアルコールが大丈夫だったらしく、おかしくならずに済んでいた。
ルカは3杯目に口にした桃の果実酒が美味しかったらしく、様々な果実酒を試しては一喜一憂していた。
問題は、この双子である。
「そこで僕がこう言ったのさ!「我が闇と煉獄の火炎にて消え去るがいい」とね!その時の奴らの怯えた顔ったらもう!」
先程からシーヴァは魔物の住処を全滅させた際の武勇伝を2時間休み無しで語り続けている。
一方のゼーテはと言えば、
「まだ来ないの?仕事がおっそいわねー」
数分前、ジェイド王に何やらコソコソ話しかけたあと、何かをずっと落ち着きなく待っている。
その正体はすぐに分かった。
ステージ上にはいつの間にかピアノとオーケストラセット、さらに人員まで揃っていた。
「それでは皆様!パーティの最後にダンスでもいかがでしょうか!」
ゼーテが声を張り上げる。
次々と歓喜の声が上がる中でたった2人、背筋が冷たくなった人物がいる。
もちろん啓斗とルカだ。
2人とも立場は違えど、お互いダンスなど生まれてこの方1度もしたことがない。
オロオロしていると、啓斗はゼーテに、ルカはシーヴァに声をかけられた。
「男なのに女性にダンスのエスコートもできないの?じゃ、徹底的に今から叩き込んであげる」
ゼーテの顔は悪魔の笑みを浮かべていた。
「お目に麗しい妖精の森のお嬢さん、僕と踊って頂けますか?」
シーヴァの目はどこまでも優しい色をしていた。
軽快なリズムに合わせて参加者は全員ダンスを始める。
ルカはシーヴァの動きに合わせて踊っているのだが、正直シーヴァ達が少し驚愕するレベルで感覚と運動神経が良い。
啓斗はゼーテに無理やりターンやステップを教えられており、ぎこちなさが目に見える。
そんな対照的な2組のダンスは、最後の曲に差し掛かる。
情熱的なアップテンポの曲だ。
一気に激しさを増した動きに、既にヘトヘトな啓斗はきりきり舞いにされ、ルカは全身全霊でシーヴァの動きに合わせる。
そして最後に、シーヴァとゼーテが2人を回転させ、同時に押す。
ルカと啓斗が抱き合った瞬間、曲は終わり、拍手喝采が沸き起こった。
「ああ……まだ胃の中がグルグルしてるな……」
見るからに疲労困憊といった状態で啓斗は呟く。
啓斗とルカは、ジェイド王に指定された部屋へと続く廊下を歩いていた。
「そう?私はすっごく楽しかったよ!」
ルカはまだ興奮が冷めやらない様子だ。
そんなルカを見つめていた啓斗は、おもむろに後ろを振り向く。
「……そこのフード被った怪しい奴。お前に構ってる暇はない。さっさと帰れ」
突き刺すような視線を廊下の真ん中に向ける。
「な……私の幻覚術が通じないだと…!?」
啓斗の背後を尾行していたフードを被った人物が驚きを露わにした。
「いや、最初に気づいたのは俺じゃない。尾行が得意なのか?尾行されるのは慣れてないらしいが」
「なっ……」
その瞬間、フードの人物の体が急速に膨張したかと思うと、見事に爆散した。
「おっと、生かしておいた方が良かったか?」
「別にいいんじゃない?これなら尋問とか無しで掃除だけで済むし」
その奥には、眼帯を外した双子がいた。
「よし、面倒事なんて無かったということだ。それじゃあ、お休み!ケイト君、ルカさん、良い夢を!」
「じゃ、また明日ね」
すぐに眼帯を着け直すと、そう声をかけて2人は去っていった。
ルカと啓斗は向かい同士の一人部屋だ。
「じゃ、また明日」
「うん、お休み」
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「あ、そういえば、ドレス凄い似合ってた。ゼーテのセンスが良かったのもあるかもしれないけど、俺は良いと思ったぞ」
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