異世界スキルガチャラー

黒烏

ナビゲーターの異世界講座 1

『はいはいじゃあ早速行きましょうか!ではまず、ステータスに表示されているアルファベットやらについてです!』

ヴァーリュオンから数キロ離れた草原のド真ん中で、ナビゲーターは「解説」を開始した。
止めようとしても聞かなさそうなので、啓斗は地面に座って話を聞くことにした。

『まず、LvとHP、MPは分かりますよね?「Levelレベル」と「HitPoint体力」、そして「MagicPointマジックポイント」です』
『P・ATKは「Physical物理・ATtacK攻撃」で、M・ATKは「Magical魔法・ATtacK攻撃」です』
『DEFはもちろん「DEFense防御」です。DEXは「DEXterity器用さ」のこと』
『SPDは「SPeeD素早さ」で、LUKは「LUcK運の良さ」といった具合ですね』
『ちょっと前にも言いましたが、ステータスの最高値はSSで最低値がGです。C〜Eあたりが普通ですかね』
『お分かりいただけました?』

理解した証拠に啓斗は1つ頷く。

『では次。ガチャの排出率とスキルのレアリティについてお話しましょう』
『最初にご説明したのは2週間前でしたね。あの時はアバウトなことしか話してませんでしたから、今回は細部までじっくりお話します』
『まず、スキルのレアリティは「Normalノーマル」、「Rareレア」、「SuperスーパーRareレア」、「UltraウルトラRareレア」、そして「cheaTチートRareレア」の5種類があると言いましたが……』
『はい、ここで問題です!今の説明で違和感がある場所はどこでしょう!?』

いきなり振られた質問に、啓斗は一瞬戸惑った。が、少し考えればすぐに分かること。

「そういえば、チートレアだけ英単語の頭文字ではなく最後の字が使われているな」
『ピンポン!正解!その理由をこのガチャの排出率についての説明も合わせて教えます!』

そう言ってナビゲーターはいつの間にか手元に持っていたタブレットのようなものを操作した。
すると、啓斗の目の前に「ガチャ出現率一覧」と題された画面が現れた。


ガチャ出現率一覧
N:50%
R:40%
SR:9%
UR:0.98%
TR:0.02%


「予想はしていたが、SRから極端に排出率が低いな」
『理不尽だとか思います?』
「いや別に。このくらいが妥当だと思うぞ」
『それは良かった!で、ここからが問題なんですよね』

ナビゲーターはまたタブレットを操作する。
すると、一覧の画面が変化した。

N:50%
R:40%
SR:9%
UR:0.98%
CTR:0.019%
TER:0.001%

「TRが分離したのか?」
『はい、嫌なカラクリですよねー。まあ、不安感を与えないための措置と言えば納得する輩もいますが、私は正直ダメだと思います』
『なんたって、ってことを教えないんですから』

ため息まじりにナビゲーターはそう言った。

「出さない方が……いい……?」
『はい。スキルの種類名は「TerriblEテリブルRareレア」、訳すと「最悪レア」です。0.005%の方のTERがそれです。もう教えたんでCheaTチートTerriblEテリブルで表記は分けますねー』
『……はいおっけー。これからはチートレアは「CTR」、テリブルレアは「TER」と表示するように設定しました』
『……最初にこの「ガチャ」を作る時にどっかの誰かさんが決めたんですよ。「自身に不利益な効果のあるスキルがあるなど教えない方がいい。同じアルファベットを持つチートレアの頭文字を操作してそこに重ねろ」って』

その話をしている間、終始ナビゲーターは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

『このヤバイTERは、本当に啓斗様に害しか及ぼしません。自分のスキルなのにそのせいで死んでしまう、なんてことが有り得ます』
「……「この世に存在する全てのスキルが排出される」、か。確かに、今まで可能性を考えていなかったな」
『はい。1番出現率が低いですが、出たら最後。100%啓斗様にとって損なことが起こります』
『啓斗様には言っておいた方が良いかと思いまして……あの、ご迷惑でした?』

啓斗は脳内で考えを巡らせていた。

(参ったな。今まで何も考えずにバンバン回していたが、やはり危険が潜んでいたか)
(幸と不幸はプラマイゼロ、長所と短所は表裏一体と言うが、本当だな)
(しかし、この情報は有用だ。出る可能性が分かれば心構えくらいできる。それに……)
(俺より危うい状況にルカはいるんだ。たかが0.005%の確率にビビっていられるか!!)

吹っ切れた啓斗は、ナビゲーターに向かって言った。

「いや、貴重な情報をありがとう。それより、もっと気になったことがある」
『は、はい? なんでしょう?』
「その「どっかの誰か」って、お前にとって何者だ?」
『………あ!!』
「答えてもらうぞ。異世界に転移させた人間に対する情報の制限を命じることが可能で、その名を出すと「天使」なはずのお前が険しい表情をするような人物とは、誰だ?」
『……………………』
「言え!そいつは何者だ!?」
『………分かりました、言いますよ。言えばいいんでしょ?』

ナビゲーターは少し泣きそうな顔と声をして言う。

「ああ、言え」
『……そいつは、現在天界を支配している大天使です。今は天使達に「上様」と呼ばれて威張り腐ってます。名は「メタトロン」。現代でも「神の代理人」とかいう異称で広く知られています』

ナビゲーターから告げられた名に、啓斗は一瞬絶句した。

「………ということは、「神」はいないのか?その天界に」
『いません。皆、遠い昔に死にました。ちなみにこの世界には「天国」も「地獄」もありません。もし人が死んだら、魂は消滅するかゴーストになるか、もしくは魂を餌にするタイプの魔物に食べられるかの3択しかありません』
『善人だから天国へ、悪人だから地獄へ、なんて違いもありません。魂になれば、辿る道は同じです。……昔はこんなんじゃなかったんですけどね』

ナビゲーターは憂いに満ちた目で遠くを見ながら語った。
が、すぐにいつものスマイルに戻る。

『おっと、話が逸れましたね!では、次は昨日名前だけ出した「マスターズ・キー」についてお話しましょう!』

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