最弱が世界を救う。

しにん。

緊張。

「なんだか緊張するなぁ……」
「私まで緊張してきた……」


この日2人は極度の緊張を味わっていた。
リリーは姉の王女様で慣れ、セレネはあまり興味が無いといつも通り真顔で見ている。
一体何が起こっているかというと──


「ラフィナの『アテナ』参りました。」


案内の元『アテナ』のチームニケ隊長ゼノ・フェンルとチームアイギス隊長ゼル・フェンルが立っていた。
ラフィナの『アテナ』と言うと、世界最強の軍隊である。先日、《嫉妬》の悪魔を追い込んだが惜しくも逃げられたと聞いた。
七大悪魔にも屈せず力を磨いてきた最強の2人である。
金髪で赤と青の瞳を持った少年がゼノ、腰まで伸びた金髪を持ったどこか元気がない少女がゼル。
2人は兄弟だと聞いている。


「お初にお目にかかります。チームニケ隊長のゼノ・フェンル。」
「チームアイギスの隊長ゼルっす。」
「どうぞよろしく。」


2人は同時にお辞儀をし、4人と握手を交わした。
その間も、エクスとレインは顔を強ばらせ緊張していた。エクスは昔から『アテナ』のことを知っており憧れていた。レインは相手が相手なだけに緊張していた。


ひとまず、客間へ案内し話をすることにした。


「は、はじめまして!エクス・フォルトと言います!」
「私はレイン・シェインといいましゅ!あ、噛んだ……」


あまりの緊張によりいつもより大きな声を出し、レインに至っては噛んでしまう失態を犯した。


「そこまで緊張しなくてもいいんだよ?それにエクスくんと言ったかな、君のお父さんには良くしてもらってるからね。」


ゼノは2人の緊張をほぐすように笑いエクスに視線を向ける。


「ち、父を知ってるんですか?」
「えぇ、私の剣の師でございます。」


ゼノは10年前に剣をゼクスに習ったらしい。
エクスは父がどんな人生を歩んできたかわからなかった。ゼクスの事を知ってる人は多いと聞くが、今まで父を知っていたのはリリーの姉、シャルテと謎の仮面の男ファントムだけだった。


「そうだったんですか……父のことをどれほど知ってますか?今は家を出たっきり帰ってきてないのです……」
「10年前に剣を教えてもらいました。1ヶ月という短い間でしたがその期間だけで私は、ラフィナ一番の剣士となれました。あのお方はとてもお強い。もう一度会えるなら是非剣を教えて貰いたい。」


ゼノがゼクスの事を話している横でゼルがソファーにくつろぎ寝だした。


「あぁ、すまない。こっちは姉のゼルだ。見ての通りいつもこんな感じさ。」


とても幸せそうな顔で寝ていた。
エクスとレインは一度こんな人物を見たことがある。気になり質問しようとしたがゼノが


「姉のことは心配しなくてもいい。《怠惰》の呪いはかけられていないよ。小さい頃から変わらないんだ。」


ピンポイントで聞こうとしたことについて言われた。2人は《怠惰》の呪いにかけられたリリーを思い出したが、ゼノが言うには無関係らしい。


「それで、単刀直入に言うが君たちは本当に《暴食》を倒したのかい?《暴食》は《傲慢》の次に強いと言われている。」


鋭い目線で四人を見渡し質問をする。
真っ先にリリーが口を開く。


「私は直接《暴食》と手を合わせた訳ではありません。」


リリーは《暴食》とは直接的な戦闘はしていないが、使い魔であるケルベロスを倒したことを伝える。


「わかりました。それでは3人は《暴食》と戦い勝利されたのですね?」
「はい。まぁ3人……になるんですかね。」


エクスはムシュの事を言おうとしたが説明が難しいため一応3人と答える。


「では、3人には私と剣を交わしてもらいます。安心してください。真剣ではなく木刀でするので。」


3人は唖然とした。

「最弱が世界を救う。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く