最弱が世界を救う。

しにん。

頼み。

エクスは3日に1度レヴィの元へ訪れていた。


「《嫉妬》の悪魔の使い魔……それは手強かっただろう。」
「ゼノがいなければ確実に負けていました。」
「世界最強の軍隊の隊長にして、エース。唯一無二の存在か……」


レヴィは休憩の時に、エクスから先日のマーメイド襲撃の事を聞いていた。
離れていたラフィナからでも見えるほど、ゼノの雷は強大であった。


「それじゃ、今日は1つ技を教えるよ。」
「技……?」
「1度エクスくんには見せたことがあるはず。」


そう言い、レヴィの手に水が集まり一つの槍となった。
二又に分かれていて、レヴィの身長よりも長い槍だ。


「これはネプチューン。まずは初歩的な所から始めよう。」
「はい!!師匠!!」
「師匠はやめてって……///」


レヴィは照れくさそうに笑った。
エクスはもちろん、わざとやっていた。
レヴィはいじると必ずと言ってもいいほど、頬を赤く染めて、反応が面白い。


「それで、どんな事をすればいいの?」
「そ、そうだね。最初にこれ程まで形ははっきりしなくてもいいから、長い棒を生成することからかな。」


その日は全く感覚も掴めず、夕方までレヴィと共に時間を過ごした。
お城へ戻ったのは午後8時を過ぎていた。


「エクスくん!!こんな時間までどこに行ってたんだよ!!心配したんだからねっ!!」


部屋の扉を開けるとそこには、ほっぺを膨らませ怒っていたレインがいた。
レヴィの元へ行く日はいつも、機嫌が少し悪くなる。そうエクスも感じていた。


「おっ、姉ちゃんまた夫婦喧嘩かい?」


近くを通りかかった、『アテナ』の皆は笑いながらレイン達をからかっていた。
いつも通りの日常を過ごしていると、目の前からゼノが歩いてきた。


「夜遅くにすまないが、少し話があるんだ。いいかな?」


ゼノは2人を別室へ呼び、向かい合うように座った。


「マーメイド討伐以降、私は戦場への復帰は厳しい。もちろん、やれるだけのことはやるつもりだ。そこで、《嫉妬》の悪魔を倒すまででいい。君達に『アテナ』のリーダーを任せたい。」
「お、俺らが?」
「君達になら任せられる。1ヶ月後、《嫉妬》の悪魔の住処と言われる場所に行く。この怪我の完治もおよそ1ヶ月。だから、それまででいい。頼む……」


ゼノは深々と頭を下げエクス達に頼んだ。
こんなにも弱々しいゼノを見るのは初めてで、どうしても助けたくなったエクスは、


「わかった。1ヶ月間俺らにリーダーを任せてくれ。それでいいよね、レイン。」
「私はエクスくんの意見に賛成しかしないよ?」
「ありがとうレイン。」


2人は互いに微笑み、ゼノへと視線を戻す。


「エクス、レイン。本当にありがとう。この恩は必ず……」


先程同様、深々と頭を下げできたので、慌てて止めに入る。


「そんなに頭を下げなくていいって。困った時は助け合い。よく言うでしょ?」
「あぁ、そうだな。ありがとう。」


ゼノとエクスは、『アテナ』入隊の日のように強く握手をした。

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