最弱が世界を救う。
終戦と出会い。
「パパ、顔色悪いけど大丈夫?」
「心配するな、このぐらいでへこたれるほど俺は弱くない。安心しろ」
白い歯を見せ、ニッと笑う。
「パパは強いもんねッ!信じてるから……!!」
満面の笑みを見せ返事をする。
「あとほんの少しだけ耐えてくれ……」
ルーに聞こえないほどか細い声で、弱音を吐く。
ファントムの前に立ち、余裕の表情を見せるエクスだが、突然膝をつく。
「パパッ!?」
『また、怒りに身を任せ全てを滅ぼすか?』
「やめろ、やめろおおおおお!!!」
頭を抱え、もがき苦しむ。
耳を劈く叫びは、徐々に声量を増していく。
「パパッ!!!!」
エクスは自分の身を抱き、震えだす。
『何も考えなくて良い。お前はただ怒りを、憎しみを、負の感情全てをさらけ出せ!!一層の事、我に全てを委ねよ少年』
「俺の中に入ってくるなああああ」
その瞬間、体中から黒い謎の雲が身を包み込む。
『さぁ、唱えよ地獄の王』
「サ、地獄の王」
『まだまだ弱いな少年』
すっと立ち上がり、何事も無かったかのようにファントムへと歩み寄る。
『さぁて、お前が敵だよな』
「エクスくん、君まさか操られているのか?無様だな、最愛の者のために我が身を捨て世界を壊すつもりなのか」
『ほう、この少年はエクスというのか。いいぞエクス、もっとだもっと怒りを!!もっと憎しみを!!!』
「パパ、やめて!人に戻れなくなる」
ルーは大粒の涙を流しながら、エクスに抱きつく。
『お前か、一度私を封印した者は。確かこの力は双星……だったか。お前もまだまだ弱いな、あのレベルじゃ封印のうちに入らねぇぜ?』
エクスを操る何者かは、ニタァと笑い嘲笑する。
「エクスくん、君は本当に弱い。ソロモンの時と同じではないか!簡単に他人に精神を乗っ取られ、挙句の果てにはその力に頼る。あぁ、あぁ!!なんて無様なんだ!!いい、シナリオとは少し違うが面白い、実に面白い!!」
ファントムが大きく笑い始めると、エクスは右手を動かし始める。
三叉の槍、トリアイナを顕現させそのまま自分の腹部を貫く。
『お前自分が何やっているのかわかっているのか?』
「俺の体から出ていけ……!!」
『もう少し怒りを貰いたかったんだがな、まぁいいだろう。次会う時が楽しみだッ!!』
エクスの体から黒い謎の雲は消えたが、未だに顔には黒い文字のようなものが残っていた。
「まさかまさか!自力で精神を奪い返すとは……これは戻ってあの方に報告をしなければ────」
「逃がすと思うなよ……憤怒の裁き」
「やりおった、まさか先ほど精神を奪っていた者が《憤怒》の悪魔だったとは……とてもいいことを知った、フハハハハッ!!」
「お前はもう俺の領域からは逃げられない」
「何を言って────」
逃げ出すことは愚か、瞬き一つすら出来ない。
力を込め、必死に動かそうとするがビクともしない。
「幻術か……?」
僅かに動く舌を思い切り噛む。
これが幻術の類ならこれで解けるはず……一体何が起こっている……
「お前は有罪だ」
「がああああああああ!!」
ゆっくりとファントムへ近づき、心臓を握りつぶす。
やがて、ファントムの意識は亡くなりドサッと音を立て倒れる。
「パパ?何が起こったの……?」
「俺の精神を乗っ取った奴が残していった力だ。なんて力だ……こんなのが敵だなんて、どう勝てと言うんだ」
「安心して、パパ。私も付いてるから大丈夫。ママもいるから絶対に勝てるよ!!」
「そんな話の次元を超えてる……正直勝てる未来はいと思ったがいいかもだな……」
「あのー、終わりましたかー?」
ムードをぶち壊した、セレネの呼び声に今はただ振り向き返事をすることしか出来なかった。
七大悪魔の《怠惰》《色欲》を倒した場所へ向かい、記憶解除のための魔石を集めファントムの死体の元へ集まる。
「セレネ、俺の予想が正しければこいつ偽物だな?」
「はい、その予想はほぼ確定です。死体を見る限り普通の死体ですが、心臓以外の臓器がありません。あやつり人形の類でしょうか?」
「やっぱ殺せてないのか……それで、レインの心臓は?」
「その事なら安心してください。戦いが終わったと同時にレインさんの脈は戻ってきましたよ」
安堵の息を吐き、暗い表情へと一転する。
《憤怒》の悪魔の力を目の当たりにしたことを、全て打ち明かす。
「それほどまでの強敵……ですか。厄介なんてレベルの話しじゃありませんね、七大悪魔も残り二人、相手側もいつ仕掛けてくるかわからないです」
「あぁ、だからもっと修行や練習をしないと、そうは思っているんだが今の世界に俺よりも強いヤツはレインしかいない。師になる人物がいればいいんだが……」
頭を悩ませていると、レインが起き上がるのが視界の端で見えた。
目を開き、勢いよくレインの元へ駆け寄る。
「エクスくん、また助けられちゃったね」
「構わない、俺はレインを守るためなら世界だって、神様だって敵に回してやる」
「うん、その覚悟私は好きだよ」
二人は抱き合い無言の空間が広がる。
便乗するかのようにルーが走りだしたが、セレネが止める。
「今はお二人の時間を邪魔してはいけませんよ」
「なら、お姉ちゃんに話があるんだ。パパやママには話せない」
「双星の事ですか?」
ルーは肩をビクッとさせ、一度セレネへの警戒レベルを最大まで上げる。
「その反応、やはり語られることのない伝説は本当だった、という事ですね。かつて最強と呼ばれた二人の子ども、それが貴方ですね」
「まだ記憶にもやがかかっているけど、正解です」
「双星の伝説は当時、本当に凄まじかったです。ですが、私以外双星のことに関する記憶が誰も残りませんでした。何らかの仕業だと私は模索しましたが、何も手がかりがなく今に至ります」
ルーは少し悲しそうに口を開く。
「そっか……本当のパパとママは誰にも語られることなく命を落としたんだ」
「なんかその、ごめんなさい。まさかこんな暗い空間になると思ってなくて」
「気にしなくて大丈夫だよ!ルーにはパパとママがいる!それに今この時を生きることの方が大切だからね!」
「ふふ、エクスさんたちも本当にいい子を授かりましたね。話は変わりますが、私に話しかけるということは何かあるんですよね?」
「実は────」
ルー達と離れたところで、エクスはレインの看病へと費やす。
「なにか痛いところとか、きつい所あるか?」
「ほんとエクスくんは心配性だなぁ……私なら大丈夫、今すぐ戦闘と言われたら厳しいけど」
「────ッ!レイン、今の感じ取れたか?」
「うん、なにか来る」
強力な力の存在が突如として現れた。
その事を感じ取り、一気に全神経を研ぎ澄ませ警戒態勢へと。
「ふぃー、なんだここ?なぁ、本当にここに俺の師となる奴がいるのか?」
「うるさい、さっさといけ童貞」
エクス達の目の前に、黒いワームホールが出現した。
一人の男性と一匹の猫。
両者とも強い力を持っている。
レイン、すまねぇ。ここで死ぬかも……
エクスは死を覚悟し、立ち上がる。
「お前ら、七大悪魔か?」
「はぁ?なんだよそれ。初耳だな」
「おっとすまない、別に怪しい者じゃない。少し話を────」
「レインは守りきるッ!穿て!地を割り、海を割りて、星をも貫けッ!海王ポセイドン《トリアイナ》」
「創造か!?おい、聞いてないぞ」
「ふぅむ。あれは魔法だな。何にせよ相手は話を聞いてはくれないそうだな」
「ったく使えねぇ神だな。しかたない、創造、獅子王の拳」
男は拳に燃える獅子の顔をした篭手らしきものを装着する。
相手が火なら俺は負けねぇ───ッ!!
属性の有利を過信し、エクスはトリアイナを振り下ろす。
バキンッ!と鈍い音が響くと、エクスは冷や汗をかき察する。
折れたのは間違いなく自分の武器の方だ。
「ここまでか……すまない、レイン。先に逝くわ……」
「おいおい、待てって。早とちりすんなよ早漏かよお前。いいから俺らの話を聞けよ」
「話?俺たちを殺しに来たんじゃないのか?」
「殺さねぇよ。殺すメリットがねぇ」
「さて本題に入らせてもらおう。その力、君がエクスくんで間違いないか?」
エクスは一度冷静になり、状況を把握する。
あっ、と気づきよく見ると猫が話しかけてきていた。
「な、なんだこいつ!しゃ、喋ってたよなこの猫!!」
「そんなに驚かないでほしい……わしのガラスのハートが砕け散っちゃう……」
「うっ、な、なんかすまん」
「わかればいい、わかれば。で、エクスくんで間違いないんだな?」
「あ、あぁ。確かに俺はエクス・フォルトだ」
「あまり時間が無い単刀直入に話を進める。そこの童貞に剣を教えてくれ」
童貞と呼ばれた男の方へ視線を送ると、ヒラヒラと手を振っていた。
ドウテイ?名前か何かか?
「おっと、童貞は名前じゃない」
「心の声でも聞こえてんのか!?」
「一応……神じゃし……馬鹿にしないで欲しいなぁ……わしのガラスのハートが……」
「あー、わりぃ。この神とか言い張ってるクソ猫は野良猫だ。頭がおかしいからなんかすまん」
「な、何だか頭が痛くなってくる……」
「んじゃ、改めて。俺の名前は古山玲央、レオって呼んでくれ」
見た目はさほど年齢が変わらないように見えるが、エクスにはどこか頼りがいの無い年上に思えた。
「レイン、この人たち信用しても大丈夫と思うか?」
「何とも言えないってのが本音かな……でも、悪い人じゃなさそうだよ」
「了解、レオとか言ったか?いいぜ、剣を教えてやる。その代わり交換条件を出したいんだがいいか?」
「俺に出来ることであればいいぞ」
「さっきの篭手、恐らく俺の魔法とどことなく似てる。俺は今後更に強力な敵と戦う、その時の戦力としてお前からなにかを貰いたい。もちろん、アドバイスでも構わない」
「それはつまり、師であると同時に弟子……ってことか?」
「簡単に言うとそんなところだ、お願いできねぇか?」
「りょーかい。そのぐらいならお安い御用さ。手合わせした時気になる点があったからな」
エクスとレオは互いに強く握手をし、絆が生まれる。
「心配するな、このぐらいでへこたれるほど俺は弱くない。安心しろ」
白い歯を見せ、ニッと笑う。
「パパは強いもんねッ!信じてるから……!!」
満面の笑みを見せ返事をする。
「あとほんの少しだけ耐えてくれ……」
ルーに聞こえないほどか細い声で、弱音を吐く。
ファントムの前に立ち、余裕の表情を見せるエクスだが、突然膝をつく。
「パパッ!?」
『また、怒りに身を任せ全てを滅ぼすか?』
「やめろ、やめろおおおおお!!!」
頭を抱え、もがき苦しむ。
耳を劈く叫びは、徐々に声量を増していく。
「パパッ!!!!」
エクスは自分の身を抱き、震えだす。
『何も考えなくて良い。お前はただ怒りを、憎しみを、負の感情全てをさらけ出せ!!一層の事、我に全てを委ねよ少年』
「俺の中に入ってくるなああああ」
その瞬間、体中から黒い謎の雲が身を包み込む。
『さぁ、唱えよ地獄の王』
「サ、地獄の王」
『まだまだ弱いな少年』
すっと立ち上がり、何事も無かったかのようにファントムへと歩み寄る。
『さぁて、お前が敵だよな』
「エクスくん、君まさか操られているのか?無様だな、最愛の者のために我が身を捨て世界を壊すつもりなのか」
『ほう、この少年はエクスというのか。いいぞエクス、もっとだもっと怒りを!!もっと憎しみを!!!』
「パパ、やめて!人に戻れなくなる」
ルーは大粒の涙を流しながら、エクスに抱きつく。
『お前か、一度私を封印した者は。確かこの力は双星……だったか。お前もまだまだ弱いな、あのレベルじゃ封印のうちに入らねぇぜ?』
エクスを操る何者かは、ニタァと笑い嘲笑する。
「エクスくん、君は本当に弱い。ソロモンの時と同じではないか!簡単に他人に精神を乗っ取られ、挙句の果てにはその力に頼る。あぁ、あぁ!!なんて無様なんだ!!いい、シナリオとは少し違うが面白い、実に面白い!!」
ファントムが大きく笑い始めると、エクスは右手を動かし始める。
三叉の槍、トリアイナを顕現させそのまま自分の腹部を貫く。
『お前自分が何やっているのかわかっているのか?』
「俺の体から出ていけ……!!」
『もう少し怒りを貰いたかったんだがな、まぁいいだろう。次会う時が楽しみだッ!!』
エクスの体から黒い謎の雲は消えたが、未だに顔には黒い文字のようなものが残っていた。
「まさかまさか!自力で精神を奪い返すとは……これは戻ってあの方に報告をしなければ────」
「逃がすと思うなよ……憤怒の裁き」
「やりおった、まさか先ほど精神を奪っていた者が《憤怒》の悪魔だったとは……とてもいいことを知った、フハハハハッ!!」
「お前はもう俺の領域からは逃げられない」
「何を言って────」
逃げ出すことは愚か、瞬き一つすら出来ない。
力を込め、必死に動かそうとするがビクともしない。
「幻術か……?」
僅かに動く舌を思い切り噛む。
これが幻術の類ならこれで解けるはず……一体何が起こっている……
「お前は有罪だ」
「がああああああああ!!」
ゆっくりとファントムへ近づき、心臓を握りつぶす。
やがて、ファントムの意識は亡くなりドサッと音を立て倒れる。
「パパ?何が起こったの……?」
「俺の精神を乗っ取った奴が残していった力だ。なんて力だ……こんなのが敵だなんて、どう勝てと言うんだ」
「安心して、パパ。私も付いてるから大丈夫。ママもいるから絶対に勝てるよ!!」
「そんな話の次元を超えてる……正直勝てる未来はいと思ったがいいかもだな……」
「あのー、終わりましたかー?」
ムードをぶち壊した、セレネの呼び声に今はただ振り向き返事をすることしか出来なかった。
七大悪魔の《怠惰》《色欲》を倒した場所へ向かい、記憶解除のための魔石を集めファントムの死体の元へ集まる。
「セレネ、俺の予想が正しければこいつ偽物だな?」
「はい、その予想はほぼ確定です。死体を見る限り普通の死体ですが、心臓以外の臓器がありません。あやつり人形の類でしょうか?」
「やっぱ殺せてないのか……それで、レインの心臓は?」
「その事なら安心してください。戦いが終わったと同時にレインさんの脈は戻ってきましたよ」
安堵の息を吐き、暗い表情へと一転する。
《憤怒》の悪魔の力を目の当たりにしたことを、全て打ち明かす。
「それほどまでの強敵……ですか。厄介なんてレベルの話しじゃありませんね、七大悪魔も残り二人、相手側もいつ仕掛けてくるかわからないです」
「あぁ、だからもっと修行や練習をしないと、そうは思っているんだが今の世界に俺よりも強いヤツはレインしかいない。師になる人物がいればいいんだが……」
頭を悩ませていると、レインが起き上がるのが視界の端で見えた。
目を開き、勢いよくレインの元へ駆け寄る。
「エクスくん、また助けられちゃったね」
「構わない、俺はレインを守るためなら世界だって、神様だって敵に回してやる」
「うん、その覚悟私は好きだよ」
二人は抱き合い無言の空間が広がる。
便乗するかのようにルーが走りだしたが、セレネが止める。
「今はお二人の時間を邪魔してはいけませんよ」
「なら、お姉ちゃんに話があるんだ。パパやママには話せない」
「双星の事ですか?」
ルーは肩をビクッとさせ、一度セレネへの警戒レベルを最大まで上げる。
「その反応、やはり語られることのない伝説は本当だった、という事ですね。かつて最強と呼ばれた二人の子ども、それが貴方ですね」
「まだ記憶にもやがかかっているけど、正解です」
「双星の伝説は当時、本当に凄まじかったです。ですが、私以外双星のことに関する記憶が誰も残りませんでした。何らかの仕業だと私は模索しましたが、何も手がかりがなく今に至ります」
ルーは少し悲しそうに口を開く。
「そっか……本当のパパとママは誰にも語られることなく命を落としたんだ」
「なんかその、ごめんなさい。まさかこんな暗い空間になると思ってなくて」
「気にしなくて大丈夫だよ!ルーにはパパとママがいる!それに今この時を生きることの方が大切だからね!」
「ふふ、エクスさんたちも本当にいい子を授かりましたね。話は変わりますが、私に話しかけるということは何かあるんですよね?」
「実は────」
ルー達と離れたところで、エクスはレインの看病へと費やす。
「なにか痛いところとか、きつい所あるか?」
「ほんとエクスくんは心配性だなぁ……私なら大丈夫、今すぐ戦闘と言われたら厳しいけど」
「────ッ!レイン、今の感じ取れたか?」
「うん、なにか来る」
強力な力の存在が突如として現れた。
その事を感じ取り、一気に全神経を研ぎ澄ませ警戒態勢へと。
「ふぃー、なんだここ?なぁ、本当にここに俺の師となる奴がいるのか?」
「うるさい、さっさといけ童貞」
エクス達の目の前に、黒いワームホールが出現した。
一人の男性と一匹の猫。
両者とも強い力を持っている。
レイン、すまねぇ。ここで死ぬかも……
エクスは死を覚悟し、立ち上がる。
「お前ら、七大悪魔か?」
「はぁ?なんだよそれ。初耳だな」
「おっとすまない、別に怪しい者じゃない。少し話を────」
「レインは守りきるッ!穿て!地を割り、海を割りて、星をも貫けッ!海王ポセイドン《トリアイナ》」
「創造か!?おい、聞いてないぞ」
「ふぅむ。あれは魔法だな。何にせよ相手は話を聞いてはくれないそうだな」
「ったく使えねぇ神だな。しかたない、創造、獅子王の拳」
男は拳に燃える獅子の顔をした篭手らしきものを装着する。
相手が火なら俺は負けねぇ───ッ!!
属性の有利を過信し、エクスはトリアイナを振り下ろす。
バキンッ!と鈍い音が響くと、エクスは冷や汗をかき察する。
折れたのは間違いなく自分の武器の方だ。
「ここまでか……すまない、レイン。先に逝くわ……」
「おいおい、待てって。早とちりすんなよ早漏かよお前。いいから俺らの話を聞けよ」
「話?俺たちを殺しに来たんじゃないのか?」
「殺さねぇよ。殺すメリットがねぇ」
「さて本題に入らせてもらおう。その力、君がエクスくんで間違いないか?」
エクスは一度冷静になり、状況を把握する。
あっ、と気づきよく見ると猫が話しかけてきていた。
「な、なんだこいつ!しゃ、喋ってたよなこの猫!!」
「そんなに驚かないでほしい……わしのガラスのハートが砕け散っちゃう……」
「うっ、な、なんかすまん」
「わかればいい、わかれば。で、エクスくんで間違いないんだな?」
「あ、あぁ。確かに俺はエクス・フォルトだ」
「あまり時間が無い単刀直入に話を進める。そこの童貞に剣を教えてくれ」
童貞と呼ばれた男の方へ視線を送ると、ヒラヒラと手を振っていた。
ドウテイ?名前か何かか?
「おっと、童貞は名前じゃない」
「心の声でも聞こえてんのか!?」
「一応……神じゃし……馬鹿にしないで欲しいなぁ……わしのガラスのハートが……」
「あー、わりぃ。この神とか言い張ってるクソ猫は野良猫だ。頭がおかしいからなんかすまん」
「な、何だか頭が痛くなってくる……」
「んじゃ、改めて。俺の名前は古山玲央、レオって呼んでくれ」
見た目はさほど年齢が変わらないように見えるが、エクスにはどこか頼りがいの無い年上に思えた。
「レイン、この人たち信用しても大丈夫と思うか?」
「何とも言えないってのが本音かな……でも、悪い人じゃなさそうだよ」
「了解、レオとか言ったか?いいぜ、剣を教えてやる。その代わり交換条件を出したいんだがいいか?」
「俺に出来ることであればいいぞ」
「さっきの篭手、恐らく俺の魔法とどことなく似てる。俺は今後更に強力な敵と戦う、その時の戦力としてお前からなにかを貰いたい。もちろん、アドバイスでも構わない」
「それはつまり、師であると同時に弟子……ってことか?」
「簡単に言うとそんなところだ、お願いできねぇか?」
「りょーかい。そのぐらいならお安い御用さ。手合わせした時気になる点があったからな」
エクスとレオは互いに強く握手をし、絆が生まれる。
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