最弱が世界を救う。

しにん。

エピローグ

ゼウスとの戦いが終わり、世界に平和が訪れた。
人間と悪魔の間で平和条約を締結し、互いに協力し助け合う関係になった。
最初は戸惑う者や不安な者も少なくなかったが、生き返った七大悪魔全員がエクスと肩を並べ、全世界へ向けて言い放った言葉により混乱は最低限となった。


「我々人間と悪魔は、只今ただいまを持って契約を結んだ。その内容として、一つ、命を奪う争いをしないこと。もし犯してしまった場合、死刑よりもこくな刑を処す。主に終身刑に加え、身動きの自由やその他諸々の自由を剥奪する。そして二つ、困った時は協力する。三つ、互いに差別をしない、だ」


英雄エクスの言葉によって、安心する者が増えた。
そこまで影響を与えるほど、エクスの信頼は厚かった。


「しっかし、人間の王様よそんなひでぇ処罰でいいのか?あまりに酷すぎて文句を言われるんじゃないのか?」


「その心配は要らないよ。さっき言った自由を全て奪うってのは嘘さ。単なる脅しと思って構わない。先にどれほどの重さの罪なのか理解させるために、あそこまで酷いことを言ったのさ」


「なるほどねぇ。んじゃ、俺様たちはもう行くぜ。また逢う日まで生きておけよ?」


「ハッハッハッ。全く冗談は強さだけにしてくれよ……それじゃあ行くんだね、みんな」


「七つの大罪全員……と言いたかったが一人欠けちまった。でもま、残り五人で上手く悪魔をまとめてみせるさ、必ず」


レインとレヴィを除く五人の七つの大罪は、手を振り悪魔達の所へと帰っていった。
協力し合う関係になったものの、すぐには納得しない者も多い。
そのため、しばらくの間は悪魔と人間は少し離れて暮らすことになった。
しかし、悪魔として人間に認知されたレインは例外だった。
正体を明かす前に悪魔を倒していたことと、エクスの嫁であるため危険な存在という意識が無いらしい。


「さぁて、これからどうするか……」


「ひとまず今はあの人の元へ行こ、エクスくん」


「そう……だな。アイツのお陰で俺の今がある。この世界のことは任せろって言いに行かないとな」


エクスとレインとルーは三人で墓地へ訪れた。
今まで消えていった命達は、大きな墓へ名前を彫り一つの場所で追悼出来るようにした。
そして、大きな墓の近くに小さな墓がある。
そこに刻まれた名前は――


「レヴィ、俺が強くなれたのはお前のおかげだ。魔法を教わり、戦い方も教わった。俺の二人目の師匠だ。本当に……ありがとう」


エクスの目には涙が溜まっていた。
やがて、溢れ出した涙は頬を伝いポタポタと地面へ落ちていく。
隣に立っていたレインもハンカチで涙を拭いていた。
ムシュの言っていたとおり、ゼウスとの戦いが終わった後全員が生き返った。
正確には、ゼウスとの戦いが始まる前には生き返っていた。
そして、生き返った七つの大罪はレヴィを除き六人。
エクスの呪いや傷、全てを回復させた魔法はまさに万能。
回復できないものはない、完璧な魔法。では無かった。
いつの時代も、何事にも代償は付き物。
得られるものが大きい分、その代償も大きい。
万能な魔法の代償は、生命力。
即ちレヴィの命そのもの。
エクスを助けるため、ゼウスに勝つために自らの命を代償へ捧げた。


「初めて会った時は本当に偶然だったな……小さな子が迷子でその子を助けるために二人で色々やったっけな……時の流れってものは早いもんだな」


「そうだね。エクスくんと旅に出てもう二年もの月日が流れたんだね。出会いや別れ、楽しいことや辛いこと、苦しいことや嬉しかったこと。どれも私の大切な宝物だよ」


「あぁ、俺もだ」


エクスは泣きながら笑い、今までの旅を思い返す。
本当に濃い人生だったと思うほど、エクスの人生にとって大きな影響を与えた。


「よし……行こうか、二人共」


「パパとママと一緒なら何も怖くないよっ」


「うん。行こう」


三人は手を繋ぎ、世界を見ていた。
これは……最弱と呼ばれた少年の、成長を綴った物語。
そして、最も新しき伝説の一ページ――

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