嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

始まり~1

翌日。俺は、指定されていた少ない荷物をバッグに入れ右肩にかけた。この感じだと荷物が増えれば右肩が痛くなるだろうな。考えてみると恐ろしいしリュック型に変更することも視野に入れないとな。そんなことを考えながら扉をあける。今日の朝飯も旨かったし昨日考えた作戦もしっかりと復習済みだ。考えた話題もしっかりと頭に入っている。大丈夫だ。むしろ中学の生活でトップカーストに慣れればもっと高みを目指せるだろう。もっと報酬は大きくなるだろう。極めきったゲームの新しい報酬が手に入ると思えばいい。例えば、俺に作る気は無いにせよ彼女とかも作れるし中学に入れば行動範囲は大きく広がってくれるはずだしそうしたら遊んだりするのも楽しくなってくれるはずだ。そう願いたい。小学生の時ずっとずっとつまらなかったポイント稼ぎがやっとたのしくなることを願っているし上手くやっているだけで成績はよくなる。協調性云々っていうだろ?あれだよ、あれ。
まだ春も始まり立て。四月は、卯月とか呼ぶらしい。それには色んな説があるらしいのだが俺はこう思う。期待の卵が壊れるかもしくは壊れずにはぐくまれ中にいる期待がその姿を現すか。その分岐点なんじゃないか、と。だからこそ手が抜けない。まあ、手を抜いたとしても大して問題は無いだろうけどな。まだ、涼しい風が吹き抜け俺の頬をかすめる。これが少ない季節を感じることの出来る瞬間だ。無論、桜や駅前の学生。そいつらは、確かに季節を感じるかもな。だが、それは季節とは呼ばない。時の流れ。それに逆らわずに演じているだけだ。きっと俺みたいに仮面を被っている。それが俺に見極められる時点でまだまだレベルが甘い。俺は、もっともっと上手に演じられる。仮面を被れる。俺の仮面は、固い。剝がれること等無い完璧な仮面だ。今一度笑顔の練習をしながら登校する。風邪が強い。
その日、登校すると教室には昨日話した奴らがいる。藤本、横山、東野の3人だ。主にこの3人はグループのリーダー格になれる人物だ。しかしそれは俺のそれとは格が違う。圧倒的無さだ。言うなればガチ勢の中で1位の人間とクラスの中で1位の人間、のような差。それは誰がみても圧倒的だ。俺は強い。ガチ勢だ。それに、あいつらはグループのリーダー格に”なりうる”というだけであって実際はおそらくなれない。小さなグループでなら別だけれど中ぐらいのグループじゃ不可能だ。まず理由としてあげられるのがあいつらの会話術の特性。会話術によってタイプが違う。例えば自分の話を話すタイプ。これは、人に与えられた話題をテーマとして話す相槌型と自分から会話を切り出して考えを話す切り出し型の2タイプに分かれる。それ以外に流すように返事をするタイプ。さばさばしている、相槌が上手いといえば聞こえはいいが基本的には自分から話を切り出さないし切り出した時には失敗することが確かだ。「それだよなそれ」とか「分かるわ」とか中身の無い相槌をする相槌を履き違えてるタイプが一つ。それとしっかりしていて「ああ、分かる。でも○○じゃない?」などと会話を広げるのが模範的な相槌タイプ。そういった人間は切り出し型とも似ているタイプで中々俺的には厄介だ。それに対抗するのは難しい。それ以外にも切り出すのに特化しているタイプも存在している。だが、その中にも色々タイプがある。まあ大きく分けると考えを交えずにぽん、と話題を放り投げるタイプと逆に自分の話したことをきれいに広げるタイプ。話を上手に周りにもふり、話題を、グループを回すのがこれで俺もそれに入っているがあの3人はどちらも相槌系。話題提示のスキルはかなり劣っている。それでも何とかなるのかもしれないけどそんな特化していないことをやられて俺が負けるはずが無い。上手く俺のグループに混ぜれば武器として使える。完璧だ。
「おう、藤本、横山、東野。やっぱ、朝だから調子が悪そうだな。俺も、朝は苦手でさ」
「そうだなぁ。マジキツイ。いっその事昼ぐらいから夜まで学校してくれないかねぇ」
「おまえ、馬鹿言ってんじゃねぇよ。考えてみろ。昼から始まったら早く起きた時にそれまでだらだらと過ごすことになってでも学校あるって分かってるから中途半端にしか休めないだろ?なあ、藤本」
「そうだぞ。全く、横山はよくこの学校は入れたよな」
「ホントそれな」
このどこと無い会話をみても分かるように人それぞれタイプが違う。ただ、俺の予想ならば藤本だけこの2人とはタイプが違う。横山、東野の二人は基本的には相槌型。横山のほうは、主に自分の意見が主で東野は相槌メイン。このときは相槌しかしないが会話によって意見も言う。だが、藤本は基本会話が振られないとどうしようもない。昨日話しかけてきたのもかなり勇気を振り絞った行動だったんだろうな。まあ、それは俺にはどうでもいい話だ。こいつが勇気を振り絞ろうと関係のない話だ。俺がこのクラスのカーストを定める中心になる。グループの中でトップ。
「ていうかさ、今日の1時間目作文?とか書くんだろ?マジきついよなぁ」
「そうか?作文は簡単だぞ。本を読め本を。だから東野に馬鹿だって言われちゃうんだぞ。なぁ?」
「そうそう。作文は、本とか読んでおけば1,2枚分ぐらいかけるって。」
「マジィ?俺も作文は無理だわ。二人とも勉強出来るんだな。マジ尊敬だわ。」
1時間目の作文についての談義。これをしながら周囲のグループにも耳を済ませる。俺の聴力はこういうときのために鍛えられている。鍛えた、といったほうが正しいな。
「それよか、作文って何書くんだろうな。意見文とか読書感想文とかは無理だろうし」
「ああ、それそれ。でもあれじゃね?中学生になってどう思うか、的な奴だろ。何だって地獄だし」
「そうだなぁ。中学生になっても何も無いよな。中学生まで義務教育なんだし何か考えたりしないっつぅの。ああぁ、めんどくせぇな。」
「全く、横山はだめだな。藤本も俺も同い年だぞ?俺、色々考えるぞ。藤本も多分」
「まあ、いやでもね。小学校から中学校って大きな変化だし」
「そうそれ。それは流石の俺でも考えるから」
「マジかよぉ。俺だけ?」
きれいに会話を完結させる。そして余韻に浸る間も無く次の会話にせわしなく動く。そんなくだらないどこか反吐が出てきそうな気持ちの悪い会話が続く。仮面がはがれないように、もっと上手く隠そうとする。それをすると勿論、気持ち悪いわけで内臓の奥の奥にある言葉がつっかえている。


――――――――――コノママジャヤバイ。

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