嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

約束してないんですが1

色々と打ち合わせをして、その日は依頼人が来ることは無く帰ってきた。帰ろうとすると同時刻に別の高校や中学から帰る奴らが俺とは逆の方向から進んできてちょっと歩きにくい。やっと田園調布駅に戻ってきたのだしちょっと疲れたからマッカンでも買って行こうと思ったがこうもリア充が多いと甘いものをのどに通す気もうせてしまう。ここは帰って風呂にでも入ってから甘いお手製ジュースを飲むに限る。と、思ったのだが家に帰ると珍しく春が厨房に立っていたので作れない。
「え、何?どったの?」
「いや、別に何も無いけど?たまにはお兄ちゃんじゃなくて私が料理を作ってあげようかと思ってね。何かよくわかんないけどすっごい働いてるんでしょ?」
「ん、まあなぁ。でもその分癒しもあるしなぁ」
「癒しって八街さんと北風原さん?」
「いや、紅茶とクッキーとハチ・・じゃなかった八街の声。」
「えぇ、素直じゃないなぁ。っていうか何?あだ名で呼んでるの?」
「あだ名ってそんな特別じゃないだろ?先生もお前もめんどくさいな」
ホント、あの頃からすればあだ名なんて何てこと無かったんだけどな。でもまあ、やっぱり可愛い女の子をあだ名で呼ぶと結構疲れるかもしれないしどきどきする。
「ま、お前もそこそこ料理上手いしな。なに作るんだ?」
「ああ、うーん・・・わかんない」
「何で?もう、火ついてるよな?」
「創作料理?」
「何故疑問系??」
まあ、期待していなかった。確かに俺が教えたから料理の腕はそこそこのはずだ。けどな。残念なことに春が基礎をすっ飛ばして教えろとか言ったせいでもともとの料理下手は直らなかったからな。料理が上手いっていっても俺の監視下でならレシピを勝手に変えないってだけでみて無いとバンバン変えていく。
「ま、いいか。ちょっと色々準備があるし出来たら呼んでくれ。」
ライデイのレートもそろそろ終わってしまう。何かライデイを作ってる会社が新しいビッグタイトルを作るらしくてレートの管理をする余裕が無いらしい。なので五月いっぱいでレートは終了。まあ、発売される次のビッグタイトルが楽しみだ。まあ、ライデイのレートでは一位をとり続けたいのでやるのはもちろんのことちょっと本気で休みたいというのが一番である。
「ふーん。まあ、疲れてるって言ってたしいいけど。」
こういうときだけは俺にも優しいのはありがたい。拓がいないってことを考えると母さんがあやしてるか何かなんだろう。よく分からんがあんまり拓に近づかせてくれなそうだしな。子供3人目だと長男の扱いは酷くなるから嫌だ。まあ、それでも?離婚危機にあったときに俺を一緒に連れてビルから飛び降りるところまで考えてくれたわけだから愛されてるといっていい。何より天才児だし脛はかじるだけかじりつくしたいところだ。
「んあぁ・・・・・・・」
ちょっと本気で疲れて着替えてベッドに倒れこむとすぐに声を漏らしてしまう。ベッドに沈みこむ体が軽く感じた。いい疲れという風には感じないがそれでもやっぱり疲れていてもああやって癒しがあるというのはいいものだ。




翌朝。休みということもありついおきるのが遅くなってしまったがそれでも春の逆鱗に触れたせいで9時に起こされてしまった。なんか知らんけど人がきてるらしい。でも思いやり部つながりでもそうでなくても今日は約束していなかったはずなんだけど。
「さっさと出る。全く、休みの日だからって9時までごろごろしてないでよ。約束してたんじゃないの?知らないけど」
「いや、約束してないし。そこには自信があるぞ。俺は記憶力には自信があるんだ。明日と明後日。それ以外は俺は外に出ないんだが」
「ごたごた言ってないの。ほら、髪型整えて髪洗ってすぐに出る。」
「えぇ、マジめんどくさい」
「ん?なんか言った?」
別に怖くは無いのだが可愛い妹だ。いや、可愛くは無いけどまあ俺の妹だし社会一般的には可愛いんだろうな。でもまあ、妹がここまで言うんだしいってやるべきだろう。
「んん・・・あぁ、ま、しょうがねぇか。」
ベッドから起きて「んんっ」と伸びをしてから洗面台まで降りて顔を洗い軽く髪を整えてちょっとモードを切り替える。正直俺は、学校の人間を絶対家に入れないというポリシーがあるので入れる気は無いがパッとみて汚いと嫌だしささっと掃除する。まあ、いつもやってるのでそこまで時間が掛からず玄関に急ぐ。
「はいはい、何方ですか?」
そういいながらドアをあけるとそこには俺が昨日恐怖した人間がいた。人を恐怖の対象として捉えるなんてことは、普段じゃありえない俺なのでその一言で表現が足りる。いうまでも無く生谷猫真である。昨日、ほんの少し話してそれだけで分かってしまった情報しか持ち合わせていないがとにかくやばい。
「え、えっと・・・・・なんで家に?」
「いや、理由は無いんだけどねぇ。私、ゴールデンウィーク暇じゃん。だから暇つぶしに付き合って欲しいんだよね」
「いや、暇とか知りませんし俺、家出る気無いんですけど」
「えぇ、でも明日と明後日は外行くんでしょ?ならいいじゃん」
「ぐ・・・・・・・・・。」
ホントこの人はやばい。どこから外行くって情報を得てきたのか、俺の家の場所を知ったのか。それらが謎だ。俺は高校の人の中に家の場所を教えた奴は誰一人おらずポリシーをしょうがなく無視して案内した北風原とハチだってこの人とのつながりはほとんど無いであろう。
「あ、え、ん・・・・・・・・」
情けない声を漏らしてしまうが結局何もいえない。言葉をのどにつっかえらせてしまったとでもいうんだろうか。声が出てくれない。
「用事も無いんでしょ?」
「・・・・・・・・・じゃ、とりあえずカフェかなんかに入りますか?近くにありましたよ。」
「んーー、まあそれでもいいかなぁ。君って面白いんでしょ?沙良ちゃんが言ってたよ。」
先生経由か。っち、あの先生、俺のプライバシーをなんだと思ってるのかな。ほんとにちょっとガチギレしそうなんだけど。
「じゃ、もうちょっと待っててもらえますか?着替えてくるんで」
「あーー、そだね。そういう所に気を使うのは結構ポイント高いなぁ。けどまあ・・」


「警戒心を隠せてないなぁ」
と、言った気がした。きっと自覚があったんだろう。だからそう思っただけなのかもしれない。だが、実際に言ってたかもしれないし気のせいかもしれない。けど、本気で怖かった。毒針で心臓を突き刺される感じだった。

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