外れスキルのお陰で最強へ 〜戦闘スキル皆無!?どうやって魔王を倒せと!?〜
第1話 魔王トイフェル
何やら偉そうな格好をしていたため、聡は目の前の中年男性が、王様か何かかと判断し、不敬罪などと言われても困るため跪いてこうべを垂れる。
「む?何故跪く?面をあげ、立ち上がってくれ。」
「え?良いんですか?貴方、何処からどう見ても、王様かそれに比類する身分の方ですよね?」
『良いんですか?』と口にしながらも、聡は中年男性の言う事に従い立ち上がる。
その際、一応偉い人だった時のため、畏まった口調で身分を聞いておく。
「如何にも。余は第16代魔王トイフェルである!」
荘厳な雰囲気で、名を告げるトイフェル。
「な…。魔、王様でいらっしゃいますか。」
『召喚先は、魔王の元でした〜』などという小説はあまり見ないため、呆ける聡。
「それでだ。何故余が貴様を態々異世界から呼び寄せたかというとだな―」
非常に難しい顔をしているため、『ゴクリ』と唾を飲む聡。一体何をさせられるのか。この状況で緊張しない者は、余程脳天気な人間であろう。
だが、緊張する聡の耳に飛び込んできたのは、思いもよらない言葉であった。
「―余を倒してほしい。」
「…は?魔王様を?なんの取り柄もない俺が?」
驚愕で素が出てしまっているが、聡は気付かずに思考の海に入る。
-え?今この中年オヤジは、『余を倒せ』って言ったよな?俺が?特にチートを貰ったとかいう実感もない、一般人の俺が?自称魔王のコイツを?…いや、若しかして召喚時に何かしらの細工をして、俺に戦闘系のスキルを付与したとかか?それならワンチャンあるのか?-
「―おい、聞いているのか?」
「え?あ、はい、すみません。何でしょうか?」
思考に一旦区切りがつくと、自称魔王が呼び掛けてきていた事に気付き、慌てて向き直る。
「余の話はしっかり聞いておけ。未知の場所で、その場の頂点に君臨する者の言葉を聞かなければ、タブーに触れて切り捨てられる事も多々あるのだぞ。それに情報収集も怠ってはならん。」
「す、すみませんでした。状況がイマイチ掴めていないため、少々混乱しておりました。」
まさか異世界に来て、最初にする事が魔王であるトイフェルに叱られる事であるとは思っていなかった聡。
釈然としない気持ちを抑えながら、正直に現状を理解していないと伝える。
「ふむ。そうだな。取り敢えず落ち着くために、貴様の自己紹介でも聞くか。」
するとトイフェルは、聡に自己紹介をするように指示する。
そんなトイフェルの急な要求に戸惑うも、拒否するという選択肢は存在しないため、聡は口を開く。
「え、はい。…荒井聡といいます。年齢は21歳です。趣味はファンタジー系の小説や漫画を読む事と、筋トレをする事です。好きな食べ物はカツで、特に地元で売ってる名産品の物が好きです。嫌いな食べ物は魚介類全般と、枝豆です。…これくらいで大丈夫ですか?」
小学生の自己紹介みたいになってしまったが、トイフェルは満足したようで頷きながら言う。
「うむ。貴様はアライサトシというのか。」
「あ、荒井は家名なんで、気軽に聡と名前で呼んでいただければ。」
「そうか。サトシだな。」
「はい。あ、それで、貴方を倒して欲しいというのは、何故でしょうか。」
自己紹介効果かは分からないが、先程まで聡の内で渦巻いていた様々な感情が、少しは落ち着いたため、話を本題に戻す。
「その前にまず、今この場の状況で、何かおかしいと思う事は無いか?」
「え?」
唐突な魔王の問い掛けに、聡は辺りをグルッと見回す。
今までは目の前のトイフェルの存在に気を取られ、気が付かなかったが、今2人は『体育館か!』とツッコミを入れたくなるくらいの広さの部屋に居るらしい。全面に高級そうな赤い絨毯が敷かれており、壁には絵が飾ってあり、また壁際にはこれまた高そうな壺や胸像やらの調度品もある。
「特に変わった様子は…ん?」
『特に変わった様子は無い』と聡は言いかけるが、何やら引っかかった事があったようで、もう一度辺りを見回す。
「ふむ。どうやら気が付いたようだな。」
「はい。この部屋には、何故か私と魔王様の2人しか居ない、という事ですね?」
「あぁ、そうだ。その通りだ。」
「…つかぬ事をお聞きしますが、配下の方々はどちらにいらっしゃるのですか?」
核心をついた聡の問に、トイフェルは重々しく口を開く。
「余の配下達は、既にこの世に居らぬ。魔王軍は、恐らく余を残して全滅だろうな。」
その口調は、配下を死なせてしまった無能な自分を責めるかのようなものであった。深い自身への怒り、失った配下への悲しみ。
トイフェルの心中には、到底口で言い表せない程の感情が渦巻いているのだろう。
トイフェルから、膨大な量の何かが吹き荒れて舞い上がる。
「こ、この圧は!」
物理的な圧力ではなく、精神に直接訴えかけてくる何かに、聡は後退りをする。
「ん、すまないな。つい気が昂って、魔力が流れ出てしまったわ。はははは!」
「…。」
何故か高笑いをするトイフェル。
そんなトイフェルに対して、『何故これ程の力を感じるのに?』と配下を失った理由が気になる聡だった。
「む?何故跪く?面をあげ、立ち上がってくれ。」
「え?良いんですか?貴方、何処からどう見ても、王様かそれに比類する身分の方ですよね?」
『良いんですか?』と口にしながらも、聡は中年男性の言う事に従い立ち上がる。
その際、一応偉い人だった時のため、畏まった口調で身分を聞いておく。
「如何にも。余は第16代魔王トイフェルである!」
荘厳な雰囲気で、名を告げるトイフェル。
「な…。魔、王様でいらっしゃいますか。」
『召喚先は、魔王の元でした〜』などという小説はあまり見ないため、呆ける聡。
「それでだ。何故余が貴様を態々異世界から呼び寄せたかというとだな―」
非常に難しい顔をしているため、『ゴクリ』と唾を飲む聡。一体何をさせられるのか。この状況で緊張しない者は、余程脳天気な人間であろう。
だが、緊張する聡の耳に飛び込んできたのは、思いもよらない言葉であった。
「―余を倒してほしい。」
「…は?魔王様を?なんの取り柄もない俺が?」
驚愕で素が出てしまっているが、聡は気付かずに思考の海に入る。
-え?今この中年オヤジは、『余を倒せ』って言ったよな?俺が?特にチートを貰ったとかいう実感もない、一般人の俺が?自称魔王のコイツを?…いや、若しかして召喚時に何かしらの細工をして、俺に戦闘系のスキルを付与したとかか?それならワンチャンあるのか?-
「―おい、聞いているのか?」
「え?あ、はい、すみません。何でしょうか?」
思考に一旦区切りがつくと、自称魔王が呼び掛けてきていた事に気付き、慌てて向き直る。
「余の話はしっかり聞いておけ。未知の場所で、その場の頂点に君臨する者の言葉を聞かなければ、タブーに触れて切り捨てられる事も多々あるのだぞ。それに情報収集も怠ってはならん。」
「す、すみませんでした。状況がイマイチ掴めていないため、少々混乱しておりました。」
まさか異世界に来て、最初にする事が魔王であるトイフェルに叱られる事であるとは思っていなかった聡。
釈然としない気持ちを抑えながら、正直に現状を理解していないと伝える。
「ふむ。そうだな。取り敢えず落ち着くために、貴様の自己紹介でも聞くか。」
するとトイフェルは、聡に自己紹介をするように指示する。
そんなトイフェルの急な要求に戸惑うも、拒否するという選択肢は存在しないため、聡は口を開く。
「え、はい。…荒井聡といいます。年齢は21歳です。趣味はファンタジー系の小説や漫画を読む事と、筋トレをする事です。好きな食べ物はカツで、特に地元で売ってる名産品の物が好きです。嫌いな食べ物は魚介類全般と、枝豆です。…これくらいで大丈夫ですか?」
小学生の自己紹介みたいになってしまったが、トイフェルは満足したようで頷きながら言う。
「うむ。貴様はアライサトシというのか。」
「あ、荒井は家名なんで、気軽に聡と名前で呼んでいただければ。」
「そうか。サトシだな。」
「はい。あ、それで、貴方を倒して欲しいというのは、何故でしょうか。」
自己紹介効果かは分からないが、先程まで聡の内で渦巻いていた様々な感情が、少しは落ち着いたため、話を本題に戻す。
「その前にまず、今この場の状況で、何かおかしいと思う事は無いか?」
「え?」
唐突な魔王の問い掛けに、聡は辺りをグルッと見回す。
今までは目の前のトイフェルの存在に気を取られ、気が付かなかったが、今2人は『体育館か!』とツッコミを入れたくなるくらいの広さの部屋に居るらしい。全面に高級そうな赤い絨毯が敷かれており、壁には絵が飾ってあり、また壁際にはこれまた高そうな壺や胸像やらの調度品もある。
「特に変わった様子は…ん?」
『特に変わった様子は無い』と聡は言いかけるが、何やら引っかかった事があったようで、もう一度辺りを見回す。
「ふむ。どうやら気が付いたようだな。」
「はい。この部屋には、何故か私と魔王様の2人しか居ない、という事ですね?」
「あぁ、そうだ。その通りだ。」
「…つかぬ事をお聞きしますが、配下の方々はどちらにいらっしゃるのですか?」
核心をついた聡の問に、トイフェルは重々しく口を開く。
「余の配下達は、既にこの世に居らぬ。魔王軍は、恐らく余を残して全滅だろうな。」
その口調は、配下を死なせてしまった無能な自分を責めるかのようなものであった。深い自身への怒り、失った配下への悲しみ。
トイフェルの心中には、到底口で言い表せない程の感情が渦巻いているのだろう。
トイフェルから、膨大な量の何かが吹き荒れて舞い上がる。
「こ、この圧は!」
物理的な圧力ではなく、精神に直接訴えかけてくる何かに、聡は後退りをする。
「ん、すまないな。つい気が昂って、魔力が流れ出てしまったわ。はははは!」
「…。」
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