ぷかぷか孤島になっちゃった?

睡蓮

第10話 ぷかぷか孤島と鑑定さん

 俺は意識を取り戻した時、きっと大精霊がつくってくれたであろう洞穴の藁のベッドの上で寝ていた。
 うーむ、また気絶してしまった。あー、まだ頭も痛いし最悪だ。こうなってしまった理由は分かっている。スキルを一気に取得し、それを一気に鑑定にかけたからだ。
 その結果俺の脳みそのキャパを超えた情報が無理やり詰め込まれた結果知恵熱を出して倒れてしまったのだ。


 「あー、頭痛い。」


 ちくしょう、鑑定め! お前は有能だけど加減ってものを知らんのか! このクソスキルめ!


 ふう、まぁこんな八つ当たりをしていてもしょうがないか。スキルに性格もなにもあったもんじゃないし。
 

 ブチッ、鑑定スキルは怒りを感じています。


 ん? なんか聞こえたような気がする。 


 ブチブチっ、リミッター解除、能力解放、鑑定スキルは進化して叡智となりました。


 おぉ! スキルに愚痴っただけで進化した。ラッキー!


 叡智の怒りがおさまりません。


 ん? こいつまだ怒ってんの? また進化するんじゃね? ヤッター!てかさっきまで電子音みたいだったのになんか叡智になってから妙に人間っぽくなったよな。


 ブチブチ、マスターと叡智との身体的繋がりを排除しました。進化が始まります。


 ちょっ、ちょっ、待てよ! 鑑定って結構有能なスキルだったのに! 離れられるのは困る! まだ新たに得たスキル鑑定してないのにー!


 3.2.1.進化完了です。マスターの身体から抜け出します。


 そのような女性の落ち着いた声が聞こえてくると同時に、俺の体から半透明の物質が抜け出てきた。
 あぁ、ついに鑑定様とお別れか。多分漂流物とかの通知を入れてたのも声的に鑑定さんだったんだよな。そんな鑑定さんに俺はなんで暴言を吐いてしまったんだ! うぅ、なんでだろう。たった1週間の付き合いなのに目から涙が。
 

 「マスターの質問にお答えしましょう。マスターはこの世界に来て唯一頼れるものは自分のスキルのみでした。マスターは孤独のあまり唯一音声を発する私に愛着を抱いていたのでしょう。そのため、私があなたから離れるといった勘違いをしたマスターは涙を流されています。」


 少しだけ聞き慣れた声が淡々と俺の涙の理由を説明してくる。顔を上げて声の主を見ると、そこには黒髪で長いストレートの髪をもつ、メガネをかけた知的な女性が目の前にいた。一言で表すなら学校の委員長って感じ。例に漏れずぺったんだ。


 パチィン! 俺の頬に平手が飛んできた。


 「マスター、私にはあなたの心を除くことが出来ます。そして、マスターはさっき私の身体的なコンプレックスを貶すようなことを考えていらっしゃいました。今の平手打ちはそれに対する報復です。」


 「俺が疑問を持つ前に説明すな! てか勝手に心を除くな! てか、お前本当に鑑定さんなの?」


 「はい、進化して名前は変わりましたが私はあなたの鑑定さんです! これからはさらにマスターの役にたてるように精進致します。」


 艦艇さんはそうニッコリと笑って言った。


 「か、鑑定さーーーん!!!」


 あー! 鑑定さんが出ていってしまうのかと思ってヒヤヒヤした! 


 「ちなみに進化した私は叡智神ディアンヌという名前に変化しました。ぜひディアンヌとお呼びください。」


 あれー、叡智神って鑑定さんが神になっちゃったってこと? 神にマスターって呼ばれてる俺は何者?


 「お答えしましょう。マスターは種族が孤島から土地神に変更されました。なので、神である私があなたをマスターと呼んでいてもここでも、マスターが元々いた世界でもおかしくはありません。」


 鑑定さん、いやディアンヌも進化したんだなぁ。説明がすっごくわかりやすい。


 「お褒め頂き恐縮です。 さて、ではさっき私のことをクソなどと言った報復を始めましょうか。」


 えっ? 許してくれるんじゃないの!


 「誰が許すと言いましたか? さぁ、痛いのが嫌なら逃げなさい、マスター。まぁ、無理でしょうが。いきます。『極大魔法第39番ロストクルセイダーズ(極弱)』」


 するとディアンヌの後ろに大きな魔法陣が現れ、そこから木剣が飛んでくる。俺は横っ飛びで避けようとするもののホーミング効果があるらしく、木剣は俺の腰にそれはそれは多大なるダメージを与え、消えていった。


 そんな木剣があと2、4、6、8、ダメだ数え切れねぇ。恐らく50以上はある。ヤバい、死ぬ! 逃げなきゃ!
 俺は急いで洞穴から這い出る。


 「逃がしません! 私にクソといった罪、償わせます!」


 横から木剣が迫り来る! 俺は背をそらせて避けようとしたものの胸についた2つの肉塊にぶち当たって、俺はのたうち回る。


 「うぐぉぉぉ! 痛てぇ! 誰だ!こんな邪魔な肉塊引っつけた奴はぁぁぁぁぁ!」


 それを見たディアンヌはプルプル震えていた。あっ、笑われてる。と思った俺は少しディアンヌに怒りを覚えたが、それは勘違いだったとすぐに分かった。


 「男のくせに見せつけやがってぇ! 許さない! 絶対に許さないっ!!!!」


 あっ、剣の数が増えた。


 ・・・終わったな。


 俺はその後ディースと大精霊が頭を抱えてうずくまっている俺を剣で滅多打ちにするディアンヌを止めるまで極大魔法第39ロストクルセイダーズ(極弱)は止まなかった。
 

 その後、落ち着いたディアンヌはこう言い放ち、俺の意識を奪い取った。


 「ピコーン! マスターは『神を従えるもの』『神の怒りをかったもの』『持つものの矜持』の称号を入手しました。つきましては『支配』『大炎上』のスキルと常時発動スキル『無意識的な挑発』を手に入れました! 沈め!クソが!」



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